サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 スポーツを軸にした交流人口を増やす取り組みが各地で行われている。豊かな自然環境と首都圏から至近の立地を生かした伊豆のスポーツツーリズムをどのように振興するのか。12月の「風は東から」は、伊豆地区分科会のパネル討論を取り上げる。パネリストに、コンシストの傍士銑太取締役常務執行役員、スポーツマネジメントの脇田英人代表取締役社長、伊豆市の菊地豊市長、アスルクラロスルガの山本浩義代表取締役社長を迎え、伊豆のスポーツツーリズムのあり方について聞いた。コーディネーターはサンフロント21懇話会シンクタンクTESSの青山茂研究員(シード取締役副社長)。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ9

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スポーツ半島伊豆へ本格始動 自然環境活用したツーリズムを
スポーツで育む子どもたちの郷土愛
●パネリスト
脇田 英人氏(わきた ひでと)
スポーツマネジメント 代表取締役社長
1994年愛知国体でサッカー愛知県代表選手として全国3位となる。その後、2000年都内にスポーツマネジメント(株)を設立。合宿・サッカー大会などを開き、年間約3000団体を扱う。

大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
●パネリスト
傍士 銑太氏(ほうじ せんた)
コンシスト 取締役常務執行役員
日本開発銀行(現日本政策投資銀行)、(財)日本経済研究所を経て、2013年ITを活用した経営コンサル会社(株)コンシスト取締役常務執行役員。Jリーグ理事、日本サッカー協会国際委員などを務める。
青山 スポーツを軸にした伊豆の新たな観光振興について伺います。
菊地 伊豆市にとって、二つの大きな機会があります。一つは、東京オリンピック。サイクルスポーツセンターにある伊豆ベロドローム(世界標準仕様の自転車トラック競技施設)は日本で唯一の施設で、自転車のいわばナショナルトレーニングセンターです。これを伊豆半島の財産として使わない手はありません。
もう一つ、間もなく伊豆縦貫道が東名・新東名から月ケ瀬インターまでつながり、首都圏と伊豆市がぐっと近くなります。天城ドームは雨の影響を受けませんし、土肥の野球場、狩野ドーム、ワイナリーの多目的グラウンドなど、さまざまな用途の運動施設があります。美しい自然と温泉、選択肢の多い宿泊施設もある。首都圏の方にとって伊豆は日常の一部であり、生活満足度を向上する場を提供するという姿に変えていくべきだと思います。
 脇田 私たちはスポーツの中でも、アマチュアのサッカーに特化した会社です。サッカーイベントの企画運営、大会の主催、合宿の手配を主に行っています。代表的な地域の運営方法をいくつかご紹介します。
茨城県の神栖市波崎地区はグラウンド70面、宿泊施設が18軒、4000人を収容できます。宿がそれぞれグラウンドを所有し、組合を作っています。
広島県のしまなみビレッジ(福山市)は人工芝3面、1000人収容の宿泊場所があります。ここは廃校を利用しています。
石川県七尾市の和倉温泉多目的グラウンドは人工芝が3面、フットサル場、多目的広場などがあります。グラウンドは自治体が所有していますが、企業が窓口になっています。
 青山 山本さんは20年以上にわたりスポーツを通じた青少年の育成、サッカーの普及に取り組んでいます。
 山本 来シーズンからサッカーJ1、J2に続きJ3が始動します。東部からもプロチームを作りたいと6月にJリーグに申請を上げ、9月に承認されました。将来この地域にプロチームができる可能性が高くなりました。
申請に当たって、東部に対する思いが三つありました。一つは東部から一流の選手を育てたいということです。
二つめは、東部の子どもたちに一流の試合を見せたい。今回、スタジアム環境の条件が緩和され、愛鷹スタジアムでもJ3の試合ができるようになりました。プロの試合を見ることで将来プロを目指す子どもたちが出てくると思います。
三つめはスポーツを通じて地域の活性化をしていきたい。プロチームができれば、メディアはこぞって配信します。またアウェーチームのサポーターがこの地を訪れます。いろいろな意味で経済効果があると思います。
傍士 自分たちの町に大人のチームがあり、いつかは自分もその場に行きたいと幼い時に思いながら育っていく。常に子どもが将来という憧(あこが)れの場を持てる。こうした環境は、生まれ育った郷土への誇りを持って生きていく、という大きな財産をつくりだします。



戦略的な施設整備と広域連携の誘客を
青山 スポーツツーリズムの振興のために何をすべきですか。
菊池やはり広域連携でしょう。先日、観光誘客の視察でシンガポールに行きましたが伊豆市単独では勝負になりません。シンガポールの人は、富士山も北海道も伊豆市も知っています。アウトレットは御殿場でしょう?富士山は山梨でしょう?なぜいまさら伊豆なのですか?と言われます。
とんでもない、駿河湾フェリーから海越しに富士山が見られるのはここだけです。早咲きの河津桜を知っていますか?南伊豆ではトライアスロンもやっています。ダイビングもできます―。つまり、広域になることで、伊豆半島の魅力を自分の材料として言えるのです。
広域連携は空振り防止にもなります。伊豆長岡で雨に三日間降り込められたチームに、伊豆市の室内練習場を1日紹介し、全力プレーができました。ここならマリンスポーツ、ここならバレー、サッカー場と1市1町ずつ戦略的に整備して広域連携をすべきだと思います。  脇田 市場を細分化して成功した例もあります。
「関東のアマチュアのサッカー団体に、天然芝グラウンドを合宿で利用してもらう」という絞り込みをしました。大きかったのはサッカーをやっている人にとって天然芝でプレーできることは、距離や宿泊施設の質などすべてをかき消してしまうほどの優位な動機づけとなったことです。
 傍士 ドイツにはスポーツツーリズムという産業的な言葉は馴染まないようです。人が動く理由が自然だからでしょう。たとえば、日本だと環境とか観光とか、とても役所的な言葉ですが、ドイツではおいしい空気を吸いたい、という文章になっていて、だから空気をきれいにするんだという感じです。スポーツももっと人間的で生活の一部になったほうが楽で広がると思います。
 山本 わたしたちは東部地域にプロチームをつくろうということに賛同していただける方を集めています。ソシオ(スペイン語で仲間)会員3万人を目標に地域の皆さんに支えられたクラブづくりを進めています。そういう活動の中でいろいろな方にクラブにかかわっていただき、個からグループ、集団へと輪が広がっていくことで必然的にほかの地域との交流が始まると思っています。
●パネリスト
菊地 豊氏(きくち ゆたか)
伊豆市長
1981年防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。在ドイツ日本国大使館防衛駐在官、内閣官房内閣衛星情報センター主任分析官などを歴任し、2007年退職。08年伊豆市長、現在2期目。伊豆市(旧天城湯ケ島町)出身。

大木貴之 ワインツーリズムプロデューサー
●パネリスト
山本 浩義氏(やまもと ひろよし)
アスルクラロスルガ 代表取締役社長
青少年のスポーツ活動を中心に、地域の「健康」と「コミュニティー」づくりを支援している。2013年沼津市にアスルクラロスポーツクラブを設立。14年度スタートのサッカーJ3への参入を目指している。沼津市出身。


施設や立地条件 景観も大事な要素
●パネリスト
青山 茂氏(あおやま しげる)
シード 取締役副社長
オリエンタルランドを経て、現在(株)シード取締役副社長。県内外の企業、自治体のプロジェクトプロデュースを手掛ける。ふじのくにしずおか観光振興アドバイザーをはじめ静岡県、静岡市、沼津市などの委員を務める。

青山 地元としては何からやるべきですか。
脇田 この地域がどの競技でやっていくのかシミュレーションをするといいと思います。既存の施設でチャレンジできるか、新たに施設を作らなければならないのか、ならばどうするかという順番だと思います。既存の施設でどのくらい誘客できるかは具体的な数字にできますので、判断材料になると思います。。
青山大会を開催する際、対戦相手のレベルやバリエーションも一つの大きな魅力になるのでしょうか。
山本 静岡県は各競技のチーム数が多く、どのようなチームが来ても対応できます。うちのクラブでは10年前に規格に沿った広さのサッカー場と人工芝のグラウンドとテニスコートをつくりました。それまでは土のグラウンドが主流でした。グラウンドを作ったこと、また交通の便がいいので、かなり遠くからも試合に来てくれます。対戦相手とともに、施設や立地条件も大切な要素です。
菊池 伊豆半島は極めて多様な自然に恵まれています。たとえば、富士山が見えない地域の人にとって、富士山を見ながらのサイクリングは何物にも代えがたい。毎年コースを変えて伊豆半島を自転車で楽しむのは大きな魅力だと思います。
サイクリング、ウオーキングはお金にならないと言いますが、伊豆半島には年間4000万人が訪れます。一人が1000円余計に使えば400億円です。今、売上高400億円の企業誘致は難しい。少し汗をかいてもらって1000円余計に使ってもらう。それだけで400億円増えるのです。これは伊豆半島がまとまってやることでのみ達成できる。7市6町首長会議が今年1月に策定した伊豆半島グランドデザインの枠組みの中で進めたいと思っています。
傍士 なぜ日本ではスキー場や海水浴場が国際保養地にならないのか。伊豆には海も山も温泉も、全てがそろっていながらなぜもっと付加価値の高い地域を目指さないのでしょう。海外には携帯がつながらない宿がありました。電話がかかってきてほしくない人たちが来るのです。
お金で人や企業を集めてそこに文化を生み出す都会主導のツーリズムでなく、文化に人を集めてそこに資本を誘導するような、地元主導のツーリズムを伊豆で実現してほしいですね。




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