サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 「サンフロント21懇話会」(代表幹事・岡野光喜スルガ銀行社長)の第19回全体会が昨年12月、みしまプラザホテル(三島市)で開かれ、俳優で日本野鳥の会会長の柳生博氏が「花鳥風月の里山」をテーマに講演した。同懇話会は本年度の活動方針の一つに「県東部地域再生に向けた都市づくり支援」を揚げている。1月の「風は東から」は、先月行われた全体会の模様と、併せて三島市が進める「ガーデンシティみしま」について紹介する。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10

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自然との共生模索する時代 市民主体のまちづくりに本腰
■全体会「花鳥風月の里山」
俳優・(公財)日本野鳥の会 会長 柳生 博氏
 ■ 「野良仕事とは、野を良くする仕事」と語る柳生氏
 日本の里山には、田んぼがあり、農業用水用の小川があって、雑木林がある。集落がある。この4点セットだ。関東の場合はクヌギ、栗、コナラが多い。1本の木が直径20センチに育つには18年かかる。木を切って炭を作る。今年はこの地区を切ろう、来年はここを切ろうと、持続可能な社会を続けてきた。雑木林は誰が作ったか。今生きている人ではない、昔の人だ。福岡県飯塚市には、千数百年前からの雑木林があった。水田は毎年やってもいい。定着して農耕をする。それを知ったツバメたちがはるかかなたから来る。
 季節の移ろいを何で感じるか。八ケ岳に行けば今なら乾いた音がする。室内にはまきのはじける音が伝わって来る。伝わる音が何となく湿気を帯びるとツバメが飛来する。日本中で田んぼに水を入れる、水生昆虫が羽化している、それをツバメが食べる、それが伝わって来る。
 八ケ岳では家を何軒も建ててきたが、現地で10日以上家族4人でテント生活をする。家を建てるときは、その地の生き物、文化、歴史、神々に失礼があってはいけないといつも思う。
 たとえば三島市に高いビルを建てるのは失礼ではないだろうか。現実的には経済効果があるし、もうかるだろう。しかし、そうした時代は終わった。
野鳥の会では、原発被災地を訪ねるツアーを企画した。1人7万円もするツアーがすぐに埋まった。そういう人たちが新幹線で東京から来る。もちろん許可を得た上で現実を見てもらう。福島県浪江町にはツバメが1羽も飛んでいない。なぜなら、田んぼを作ってないからだ。南相馬市に入ってしばらく行くと田んぼがある。そうするとツバメがいる。懐かしい風景がこんなにもすごいものだということが、それで分かる。
■里山ののどかな光景は、人の心を豊かにする
 「トコロジスト」も野鳥の会で7、8年取り組んできたこと。場所を良く知る人のことだ。ここなら三島市、三島の中のこの地区、1本の川でもいい、散歩する範囲をイメージしてほしい。「トコロジスト」はその範囲のことなら何でも知っている。鳥ならどのような植物の実を好んで食べるのか。エゴの木にはヤマガラがいっぱい来る。オオマシコという鳥と混群でくる。それを見たくて子どもたちが来る。
 三島は富士山やせせらぎがあり、ホタルも街中で見られると聞く。こうした文化、人が老いていくときにどうするのか、機嫌のよい暮らし方ができるか、お集まりの皆さんがそのリーダーになっていけるか、という話をした。市長が号令をかける時代は終わった。皆さんがアイデアを出しながら、こうやってみようよと行動する時代だ。


「ガーデンシティみしま」で絆づくりと産業振興を―
 ■街中を流れるせせらぎではしゃぐ子どもたち
 三島市は、市民総参加のまちづくり指針「ガーデンシティみしまアクションプラン」を3月中に発表する。同市と市民団体、NPO事業者など100以上が所属する「ガーデンシティみしま推進会」が、1年をかけ策定した。今月18日のシンポジウムでは、アクションプランの内容を市民に説明した。
同市は、1996年から市民、企業、NPOなどが協働し、中心市街地の水辺や緑の自然空間、歴史・文化などを活用し、「歩きたい街」「住みたい街」をつくる「街中がせせらぎ事業」を展開してきた。その後も三島大通りの電線地中化、源兵衛川沿いの散策道や駅前広場の整備などを通じたまちづくりを行ってきた。
こうした活動を引き継ぎ、発展させるために2年前に結成されたのが「ガーデンシティみしま推進会」だ。街中がせせらぎ事業で整備された河川や水辺の管理・清掃などを継続しつつ、世界文化遺産となった富士山から届けられる湧水や緑、景観などに「花」を加え、市民・観光客が癒やされ美しく品格のあるまちを目指す「ガーデンシティづくり」を進めている。
アクションプランは、同推進会の活動をコミュニティーの醸成や地域産業の活性化にまでつなげるための「市民が主役」の仕組みだ。(1)美しく、潤いのある街をつくる(2)地域の絆づくりの機会とする(3)産業振興・観光振興を推進する―を目的に、四つの戦略を立てた。

T.市民力強化戦略
U.みしまのブランド戦略
V.癒やし空間の創出戦略
W.「ガーデンシティみしま」広告戦略



■フェイスブックを活用した情報発信例
 内容は多岐にわたる。「市民力強化戦略」は、花の専門的な知識が必要な場合の専門家の派遣や、花の育成に必要な知識を学んだり、情報を共有する場を設けたりする。また、「癒やし空間の創出戦略」では、楽寿園を核としたにぎわいの創出や、ホタルなどが生息する自然環境の保全などが盛り込まれている。
新たに、「みしまのブランド戦略」と「『ガーデンシティみしま』広告戦略」も入れた。「みしま」の名前を活用した商品開発や、コミュニティービジネスの担い手への支援強化、ブログやフェイスブックなどを活用した効果的な情報発信、美しい景観を生かした映画・ドラマの誘致などにも着手する。
次年度から、アクションプランに基づく企画を同推進会の専門部会が発案、検討し、具体的な事業に落とし込む。
 ■街をきれいにすることが住民同士の絆を深める
現在、一人でも多くの市民に参加してもらおうと、アクションプランの概要版を作成中だ。四つの戦略がおしゃれなイラスト付きで分かりやすくまとめられ、「自分たちのまちは自分たちでつくっていくとこんなに素晴らしくなる」というのが一目でわかる。これも市民の発案だ。
また同市は、市民がすこやかで幸せに暮らせるまちを目指す「スマートウエルネスみしま」も進めている。「ガーデンシティみしま」と両輪で市民が生き生きと活躍できるまちづくりが始まっている。

■問い合わせ
三島市商工観光課 電話055(983)2655




美しく品格のあるまちを目指して
 ■豊岡武士 三島市長
 三島市は富士山からの湧水が随所にせせらぎをつくり出し、楽寿園には木々が生い茂り、気持ちの良い木陰をつくっている。三嶋大社は歴史の重みを感じさせる。この景観に「花」を加え品格のあるまちづくりを進めている。今年は全国花のまちづくり三島大会(5月31日〜6月1日)を予定しており、美しく、魅力ある三島を大きくアピールしていきたい。
三島市は三つの世界的都市と友好提携をしている。中国・浙江省麗水市、ニュージーランドのニュープリマス市、そして、米国・カリフォルニア州のパサディナ市だ。パサディナは、花で飾ったフロート(山車)で町がいっぱいになる「ローズパレード」が有名だ。フロートは町の住民がボランティアで作る。それがステータスであり、地域アイデンティティーや住民同士の絆づくりに一役買っている。
ドイツのフライブルグ、アメリカのロサンゼルス近郊、カナダ、オーストリアなど海外の多くの町で、花を中心にしたガーデンシティと呼ばれるまちづくりをしている。三島市も同様だ。
■「ローズパレード」のフロート
まもなく東駿河湾環状道路、圏央道が開通する。富士山の世界文化遺産登録や東京五輪開催の機を逃さず、市民が自信と誇りを持ち国内外から大勢の人々が訪れる場所にしたい。


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