サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 今月11日に開通した「東駿河湾環状道路」。東名沼津インターと天城北道路大平インターが30分で結ばれる。この機会をどう地域活性化に結び付けるか、また今後の伊豆縦貫道全線開通に向け、地域がどのように足並みをそろえていけばいいのか。2月の「風は東から」は、国土交通省沼津河川国道事務所の大儀健一所長に道路開通を契機にした地域振興について聞いた。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ11

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「伊豆は一つ」を道路から発信 地域で盛り上げ命の道をつなげ
■道の駅を活用し 観光振興
  ― 伊豆半島の新たな玄関口「東駿河湾環状道路」を観光誘客に結びつける地域の取り組みについて伺います。
 大儀 「伊豆は一つ」と言いながら観光情報の発信は地域がバラバラに行っていて、うまく連携がとれない、というのが地域の皆さんの悩みです。例えば、松崎の方は伊東で何が行われているのか知らない。伊豆に来るお客さんの6〜7割は関東の方ですが、伊豆全体でのPRがほとんどなされていないのが実情です。
 それができる仕組み、枠組みをどうやってつくるのか―私たちは伊豆にある六つの「道の駅」に着目し、ここをうまく活用して伊豆地域を活性化できないかと考えました。
 昨年1月に「伊豆道の駅ネットワーク会議」を立ち上げました。これから作る函南町を入れた七つの道の駅がある市町の首長、観光部局の職員、道の駅の駅長とわたしたち国交省がメンバーです。
 会議では道の駅を地域振興に活用するための事業を(1)コーディネート事業(2)マーケティング事業(3)伊豆自慢探し事業(4)伊豆インフォメーション事業(5)伊豆情報ステーション事業(6)ホスピタリティ事業(7)ウエルカム事業―の七つに整理しました。
 現在はできるものから着手しようと、情報発信機能の強化を重点的に進めています。
 また、この動きは伊豆全体で行うべきということで、昨年夏に伊豆7市6町首長会議で提案させてもらい、承認されました。本年度は7市6町の観光部局の職員、観光協会、道の駅駅長、県とわたしたちで「伊豆道の駅ネットワーク協議会」をつくり推進しています。
■東駿河湾環状道路の開通で伊豆がより近くに(写真は三島塚原IC)
■ 大儀健一 国土交通省沼津河川国道事務所長
1996年入省。大臣官房技術調査課事業評価調査官、九州地方整備局長崎河川国道事務所長を経て、2012年より現職。大学時代は自転車部に所属し全国各地を回った


■情報発信 機能を強化
 ― 情報発信機能の強化について教えてください。
 大儀 たとえばゲートサインです。道の駅への誘導に特化した専用のサインを設置しました。また、道の駅には大型モニターを置き、写真や映像を流しています。
 さらにはワイファイスポットを設置し、伊豆の春の花情報を提供するアプリをダウンロードしやすくしました。河津桜をはじめ、伊豆半島約50カ所の開花情報をリアルタイムでお知らせしています。
 イベント的に情報を発信しても次につながらないので、アプリ利用者の移動ルートや滞在時間のデータを集めて、交通の動向や情報発信の効果などを調べます。もちろん、ダウンロードは同意が必要ですし、個人は特定されません。分析したデータはマーケティング事業やウエルカム事業に生かしていきます。こうした実験を伊豆全体で行うのは初めてではないでしょうか。
 ― 6月に控えた圏央道の開通も追い風です。
 大儀 中央道、関越道方面と伊豆が直接結ばれ、川越―修善寺間が約2時間40分です。これは伊豆にとっては大きなことで、西東京や北関東が一気に誘客圏となります。海のない地域の方は海へのあこがれが強いですから、美しい伊豆の海は大きな魅力となります。
 三浦半島や鎌倉、江の島、湘南あたりがライバルです。夏になる前に、こちらから出向いて積極的にPRをすべきでしょう。


■災害に強い 道づくり重要
 ― 防災面、産業面でも東駿河湾環状道路の開通は大きな意味を持ちますね。
 大儀 南海トラフの巨大地震は大きな被害が想定されています。東日本大震災では国道4号や東北道の縦軸を開け、国道や県道を通って太平洋岸に向かって救命ルートを確保しました(くしの歯作戦)。そのため、自衛隊や警察が救命救援活動を早く開始できたのです。伊豆も縦軸をしっかりと持つことが大事で、それが伊豆縦貫道です。
 残念ながら、耐震対策が終わってない橋や法(のり)面が崩れやすくなっている場所が多いのが現状です。縦貫道は災害に強い高規格幹線道路です。それが下田までしっかりつながれば、いざという時にスムーズに救命救援活動に当たれます。
 縦貫道から海に向けて道を横に通すことも急がねばなりません。ここも県がしっかりと耐震化を進めています。
 ― まさに命の道路ですね。
 大儀 「伊豆版くしの歯作戦」をどう展開するかについては、伊豆半島の市町とわたしたち国、県、地元の建設業協会が集まって議論しました。昨年度末に基本方針をまとめ、アクションプランを作っているところです。
 基本方針では、指揮命令系統の作業合意をはじめ、道路啓開(障害を取り除き、道を切り開くこと)のための連絡体制や道路パトロール、被害状況の確認や手順を決めました。
 道路はネットワークとしてつながって初めてその機能を十分に発揮します。今後は事業化されていない天城峠をしっかり事業化し整備していくことが、地域の活性化と安心安全にもつながります。
 東駿河湾環状道路も、沼津市側の西区間を整備して初めて環状道路としての機能を発揮するのです。
■道路啓開検討協議会の様子
 ― 道路整備は産業振興にも役立ちます。
 大儀 この地域は県の「内陸フロンティア構想(※)」や「ファルマバレープロジェクト」も進んでいます。新東名や東駿河湾環状道路ができ、短時間かつ高い定時性で行き来できるルートが確保されると、物流をはじめとする企業活動にもプラスになります。これからさまざまな形で企業誘致などの具体的なメリットが出てくるでしょう。
 新しい道路の開通は、皆さんの日常生活やご商売を大きく変えます。うまく使ってもらえれば地域が元気になりますし、そうでなければ変わりません。どのように活用できるか、地域の皆さんとともに取り組んでいきたいですね。
※内陸フロンティア構想
新東名を新しい国土軸とした県の「内陸のフロンティア」を拓(ひら)く取り組み。防災・減災対策と地域成長の両立を目指している。


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