サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回「風は東から」で取り上げている。本年度は、新生キラメッセぬまづの開設や、東駿河湾環状道路の開通などを取り上げた。年度最後の3月は、川勝平太知事、懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長を迎え、ファルマバレープロジェクトが進む東部の地域づくりについて聞いた。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学総合研究所の大坪檀所長。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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医療機器開発で地域経済を元気に 世界レベルの心の癒やしを提供
■全国一の医薬品・医療機器生産

大坪 静岡県は健康寿命日本一になりました。世界も注目する日本の健康長寿。それを産業にまで広げようというのがファルマバレープロジェクトです。
岡野 20世紀の日本の産業は自動車と電気がけん引してきましたが、新しい世紀になり、静岡県では医薬品・医療機器の生産額が初の1兆円を超え、3年連続して全国1位となりました。この勢いを止めず、さらにこの分野に力を入れていくと東部の経済もより明るくなると思います。
川勝 静岡県の医薬品・医療機器の生産額は、2010年が8300億円、11年が9300億円、12年が1兆円強と、毎年1000億円ずつ伸びる成長を示しており、3年連続日本一です。
県の医療機器の生産額は直近で4000億円弱、2位の栃木県(2000億円以下)を大きく引き離しています。医療機器は本県得意のものづくりなので、開発に伴う規制緩和を進めます。
日本全体では、医療機器は5000億円の輸入超過で、輸入品は欧米人の体型に合わせており、改良の余地があります。日本人の体に合った機器を国産化し、膨大な人口のアジアにむけて市場を開拓していきます。
岡野 ファルマバレーに弾みをつける意味でも旧長泉高校の跡地に予定されている拠点整備を早く進めていただきたいですね。
また、今年7月に総合コンベンション施設「プラサヴェルデ」がグランドオープンを迎えます。今まで東部には情報の発信や交流の拠点がありませんでしたので、プラサヴェルデができることの意義は大きいですね。
川勝 浜松のアクトシティ、静岡のグランシップに匹敵する、東部の拠点です。昨年、展示場がオープンし、来場者に感想を聞くと、沼津の「千本松原」のイメージが生かされて、文化的な香りがすると褒めていただいています。
今年夏のグランドオープンではフラワーデザイン国際競技会「アジアカップ2014」が予定されています。

■県東部の本年度を振り返る(左から)大坪所長、川勝知事、岡野社長
■川勝平太知事


■恵まれた「場の力」を生かす

大坪 地域全体でスポーツ産業に取り組む「静岡県東部地域スポーツ産業振興協議会」が西部に続いて立ちあがりました。東京オリンピックを5年後に控えて盛り上がりそうですね。
川勝 オリンピックはもとより、2019年のラグビーワールドカップ日本大会、2015年の岩手国体も視野にいれ、東京に近く、温泉や施設も整っており、合宿誘致を目指します。
岡野 地元サッカーチーム「アスルクラロ沼津」が日本フットボールリーグ(JFL)に昇格したのもうれしいニュースです。これからJリーグを目指して戦っていきますから、沼津市民をはじめ東部地域のみなさんも楽しみにしていると思います。
大坪 また昨年は、富士山が世界文化遺産に登録された記念の年になりました。韮山反射炉も「明治日本の産業革命遺産九州・山口と関連地域」の構成資産になっています。
岡野 東駿河湾環状道路の開通も大きな出来事ですね。
 富士宮市の浅間大社から、新東名を通って韮山反射炉まで45分しかかかりません。富士山、浅間大社、反射炉、各地のジオサイトと、スムーズに移動できるようになりましたので、案内看板をもっと充実させたいですね。地元のわれわれは知っていても、東京や関西の方はわからない。それを告知する手段を作らないと観光客は立ち寄ってくれません。
川勝 昨年、訪日外国人客数が1000万人を突破しました。政府は2030年に3000万人、東京オリンピックの2020年には2000万人を目標にしています。この動きを本県に取り込みます。伊豆半島は首都圏から近く、ふじさん空港の利用者には「海の県道223(ふじさん)号」を利用して清水港から伊豆半島に入るルートも売り出したい。
 川端康成は伊豆序説で「伊豆半島全体が一つの大きな公園である」と喝破しました。ノーベル賞作家の感性をとらえた伊豆の「場の力」は富士山、南アルプス、浜名湖に匹敵する世界標準です。

■岡野光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事

■大坪 檀 静岡産業大学
総合研究所所長

サンフロント21懇話会アドバイザー


■東部・伊豆を日本の桃源郷に

大坪 昔の伊豆半島というのは多くの傑出した人を輩出していた土地です。あの地域から海軍兵学校ができ、日本の高等教育にも大きな影響をもたらしました。今は優秀な人が出て行って人口が減っていってしまう。
岡野 これはわれわれが反省すべき点で、地元に魅力がないからです。魅力をつくり就労機会をつくれば戻ってくる。一つのヒントですが、前世紀は首都圏に人口が集中しましたが、これからは自然に恵まれた地域に人が帰ってきます。
 リタイア後はかつて過ごした古里のような緑あふれた田舎に住みたい。けれど都心には1LDK程度の家を持ち、ウイークデーはそこで何かをして、週末を田舎で過ごす、というような生活パターンが増えてきています。その中で静岡県が、東部が何を提供できるかを考えるのが一番いいのではないでしょうか。
 たとえば、伊豆には「伊豆八十八ケ所霊場」があるそうです。ガイドブックも出ています。西国巡礼は有名ですが、伊豆にも同じようなものがあることは案外知られていませんね。
川勝 埋もれた感のある伊豆八十八ケ所霊場巡りを、もっと強力に掘り起こしましょう。
 国宝の「願成就院」(伊豆の国市)の仏像、平安・鎌倉時代の「かんなみ仏の里美術館」(函南町)、同じように古い仏像のある「河津平安の仏像展示館」(河津町)など、伊豆が心の故郷であることを示しています。
岡野 富士山があり、温泉があり、おいしいものや宿もたくさんあります。巡礼ができるようになれば心の癒やしを求めて多くの人が訪れると思います。
 懇話会も今までプラサヴェルデ整備の提言などを行ってきましたが、今度は日本人の心をもう一度見直す文化的な企画をしていけるといいと思います。
川勝 東部・伊豆は、富士山と海との絶妙のコンビネーションの土地柄です。海と山の風景の画廊であり、そこに食べ物のおいしさが合わさり、日本のいわば「桃源郷」として、健康と観光を両軸にしたPRをしていきます。富士山は昔から霊峰として仰ぎ見られ、伊豆半島には巡礼の伝統があります。ともに聖地としての特徴をもっています。
 オリンピックは、内外の多数の人々に、その魅力を知っていただくチャンスです。東部・伊豆半島をスポーツのメッカにもしたい。東部・伊豆地域は連携を深め、プラサヴェルデを活用し、丁寧に人の心のひだに分け入っていくようなプロジェクトを立ち上げていきましょう。

 


サンフロント21懇話会とは…

 サンフロント21懇話会は、県東部の活性化に向けてさまざまな提言を行うことを主旨として、1995年に産業各界、市町村をはじめ国・県関係機関など県東部地域のリーダーを中心に発足しました。
懇話会が提言した「東部の賑わい拠点形成のための大型展示施設の設置」は、1998年、沼津駅北の「キラメッセぬまづ」開設につながりました。また、伊豆の観光活性化をにらんだ取り組みは、伊豆地域観光活性化協議会の情報サイト「ゆうゆうネット伊豆」として具体化し、人気を集めています。

 ことし20年目を迎えた懇話会は、今後も東部活性化に向けた取り組みを行っていく予定です。


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