ファルマバレープロジェクトは2002年の第一次戦略計画の策定から11年が経過。同プロジェクトの中核的支援機関ファルマバレーセンター(PVC)を中心に、産学官金が連携して事業化・製品化を推進し、現在までに60を超える製品を生み出している。県全体の医薬品・医療機器生産額は3年連続全国1位。昨年は初めて1兆円を超えた。多くの産業が業績を伸ばせずにいる中、医療健康産業は数少ない右肩上がりの分野で、周囲の期待も高い。
しかし、地元中小企業が医療機器開発に参入するには、薬事法などの高い壁がある。そこで同プロジェクトでは、地元企業向けに医療機器参入を促す人材育成事業を展開している。
戦略構築を学ぶ「MOT講座」
今月7日に始まった本年度のMOT講座。オリエンテーションには全県から職種も業種もさまざまな21人が参加した。
MOT(Management of Technology)は、「技術経営」と訳される。科学技術の知識を利用して、市場ニーズに応える製品を生み出したり、新しい市場を創出する製品やサービスを具現化したりできる人材を輩出することが目的だ。
今年で10回目を迎え、受講生は190人を超えた。参加者には毎回アンケートを取り、その声をプログラムに反映させてきた。講座では事業計画づくりに必要な知識と理論や、補助金申請やファイナンスに必要なビジネスプランの作成とプレゼンテーションの方法などを学ぶ。実践で即役立つ内容だ。
県経済産業部新産業集積課は「医療機器は開発から製品化までの期間が長く、多品種小ロットで販路も特殊だ。難しい事業環境の中で、技術と経営を一体にした戦略が必要。MOT講座はその戦略構築に有効だ。また、参加企業は多岐にわたるので、人的ネットワークを築けるのも魅力」と語る。
受講生のひとり、東洋技研の木村哲也さんは「プログラマーの業界は競争が激しく、新規事業開拓が不可欠。この講座で戦略の立て方を学び、競争力をつけたい」と抱負を述べた。
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■産学官が連携し、ファルマバレーに必要な人材育成に力を注ぐ |
医用機器生み出す 「F‐met」
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■実践的なカリキュラムに定評があるF-met |
富士山麓地域の中小企業を対象に、医療機器開発をリードする中核的な人材の養成と、企業の技術力を生かした医療機器開発を促進する「富士山麓医用機器開発エンジニア養成プログラム(F‐met)」事業に注目が集まっている。
2009年度から文部科学省の支援を受け、(独)国立高等専門学校機構沼津工業高等専門学校(沼津高専)、東海大開発工学部の協力のもとスタートした。今まで延べ40人の「即戦力」を輩出している。
文科省からの補助事業は3月末で終了し、4月から沼津高専専攻科に「医療福祉機器開発工学コース」を新設。若手技術者の育成を目指すべく、教育カリキュラムを刷新した。
また、本年度から「沼津高専特別課程」として社会人向けに「F‐met」事業を継続して行っている。
新たな講座は、募集対象を全県に拡大し、医用機器開発に必要な薬事法に関する知識、医用材料・医療機器の基礎講座、医療現場・介護現場事情などを1年間、24回の講座で学ぶ。
PVCの植田勝智所長は「同プロジェクトの開始当初から10年間で、医療機器生産額は2・5倍、雇用は2・2倍に増えた。県内には100、県東部には51の医療機器製造事業所があり、うち創業・起業は5社だが、第二次創業や事業拡大での参入は数多い」と人材育成の成果を語った。
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