サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 東部地域のにぎわいの拠点としてサンフロント21懇話会が提言し、実現した旧キラメッセぬまづの開業から16年。今月、県の国際会議場が開業し、民間ホテルと合わせていよいよ複合型の大型コンベンション施設「プラサヴェルデ」が沼津市にお目見えした。7月の「風は東から」は、グランドオープンを迎えた「プラサヴェルデ」を取り上げる。地域経済活性化に結び付ける取り組みを関係者に聞いた。

風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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動き始めたプラサヴェルデ 地域企業との連携強化へ
■来場者目標は年間70万人

 今月20日、JR沼津駅北口にグランドオープンした総合コンベンション施設「プラサヴェルデ」は、国際会議にも対応できる県会議場施設と、昨年リニューアルした沼津市の多目的展示場「キラメッセぬまづ」、民間ホテル「ダイワロイネットホテルぬまづ」で構成されている。
会議場施設は鉄骨造り4階建て延べ約1万1,200平方b。最大1,100人収容のコンベンションホールA、400人収容のホールBのほか、50〜150人収容の小中規模の会議室計12室を備える。白を基調にし、県産材をふんだんに使ったデザインは清潔感とぬくもりを感じさせる。屋上庭園やカフェもおしゃれなイメージだ。指定管理者はキラメッセぬまづと同じコングレ・コンベンション静岡グループ。プラサヴェルデ全体で年間70万人の来場者を見込む。
グランドオープンを前に、周辺にはビジネスホテルも数多く立地し始めている。
一足先に開業した新しいキラメッセぬまづの昨年7月から今年3月までの稼働率は、多目的ホール64%(目標65%)、市民ギャラリー70%(目標55%)。来場者数は目標35万人に対し、32万人と健闘。1年間に換算すると40万人に上る計算だ。東部地域コンベンションビューローの後藤豊事務局長は「旧キラメッセぬまづは平均70%以上もの高い稼働率を誇った。その素地に加え、音響や照明を改善した期待値もあり、昨年度の予約は順調に伸びた」と振り返る。
プラサヴェルデの田中伸幸館長も「4月に県会議場の下見ができるようになってから予約件数が急増した。見ていただければ気に入ってもらえる施設。これなら目標の来場者数30万人は難しい数字ではない」と手応えを感じている。
グランドオープン記念事業の「フラワーデザイン国際競技会アジアカップ2014」は複合施設の特徴を生かしたコンベンションとして県が誘致した。県の神戸重敏ふじのくに千本松フォーラム整備課長は「多くの方に実際に施設を見てもらい、使い勝手を体感していただきたい。その中で利用につなげていってもらえれば」と期待を込める。

■グランドオープンしたプラザヴェルデの外観(上)は沼津駅北の風景を変えた。国際会議場の屋上庭園(右下)はハーブやカラーリーフを使い、まるで都会のオアシスにいるよう。ホールA(左下)は県産材を多用しており、赤やオレンジがモダンな印象を与える



■理念を共有具体化図る

■コンベンションビューローのMICE(会議コンベンションの総称)プランは、伊豆全域をカバー

 目標である年間70万人の来場者数を達成するには、戦略的なコンベンション誘致と旧キラメッセ時代から続く「日本一親切で使いやすい施設」の理念を具現化することが必要だ。
神戸課長は「指定管理者に任せきりにするのでなく、県、市、ビューローも理念・目標を共有し、一緒に実現に向けて努力したい」という。コングレは2,000〜3,000人規模の学会や国際会議、コンベンション静岡はがんセンターを中心とした500〜600人規模の医療系学会、沼津市は地元企業を中心としたイベント、県は県域で開催する全国大会やブロック大会―といった具合に、4者それぞれの得意分野に働きかけている。
県会議場施設ができてからは、ビューローとプラサヴェルデが一緒に動くケースが多くなっているという。「情報は引き続き市や県からいただいているが、話が具体的になるので2者で動く方が効率が良い。本年度に入ってからすでに5件の営業活動をしている」(田中館長)。
正式稼働する8月1日には「日本脳低温療法学会」が学会第1号として開催される。まだ新しい学会で、これからその活動が注目される。県の紹介でセールスをしてきた中から開催にこぎつけた。
後藤事務局長は「コンベンションは口コミが強い。特に学会は手づくりのものもあり、主催者が初めて開くという場合もある。きめ細かな運営上のアドバイスができれば、主催者の満足度も高く、次につながる」と語る。



■地元の受け皿づくり急務

■ホテルや飲食店の出店が相次ぐ沼津駅北口周辺

 地域経済への波及を考えた時、コンベンション事業への地元企業の積極的な関与が欠かせない。受け入れの中心を担う地元PCO(※1)コンベンション静岡は「抄録一つ見ても学会により編集のルールが違ったり、表紙のデザインを毎回変えたりする。海外からの参加者がある場合、どのレベルの通訳が必要なのかなど、事前の確認作業のポイントが分かるのがコンベンション静岡の強みの一つ」と自信をのぞかせる。
 沼津市は市内の宿泊、飲食、運輸関連の団体を中心に「プラサヴェルデ連絡会」を立ち上げている。現在参加企業は25団体で、プラサヴェルデでのイベント情報を共有し、広く活用法を議論している。
特に周辺ホテルとは密に連携を取り、常に約2,000室を確保できる体制だ。各ホテルにはコンベンションが決まった段階で情報を知らせている。また、連絡会で話をする中で、今まで北口になかったスイートルームを沼津キャッスルホテルが最上階に4部屋設置した。
 タクシー団体も迎車料金を無料にするなど、新たなサービスを展開。現在は、三島駅から定額料金で行けるような検討をしているという。周辺飲食店のランチマップも好評で、「結構お客さんが来るようになったと聞いている」(田中館長)。
プラサヴェルデは今後も地元企業との取引を積極的に進める予定だ。「現在4社の印刷会社と取引しているが、われわれから声をかけたところもあれば、地元の金融機関から紹介してもらったところもある。先日は飲料メーカーが直接営業に見えて、新しく開設するレストランへの納入が決まった。ぜひ、直接あるいは金融機関、商工会議所を通じてわれわれとの関わりをもってほしい」と呼び掛ける。
 地元自らがプラサヴェルデの活用法を考え、商売につなげていくような“積極性”が地域ににぎわいを生み、経済の活性化につながる第一歩だ。

 

視点の広げ方に工夫を

■サンフロント21懇話会シンクタンクTESS
中山 勝研究員
(企業経営研究所常務理事)

旧キラメッセぬまづの理念である「日本一親切で使いやすい施設」をプラサヴェルデ全体で踏襲しているのが大きなポイントになる。利用者が「本当によかった」と口コミで広めてくれるレベルでなければ、あえて地方都市でコンベンションを開催する意味はない。オープンして1年がたったから評価するのでなく、走りながら日々点検することも必要だ。
地域の皆さんには積極的に関与してほしい。沼津港深海水族館や伊豆市のベロドロームなどでのユニークベニュー(※2)はもちろん、たとえば沼津仲見世商店街なら何ができるのか。福岡はコンベンション参加者向けのパーティーを商店街で開催している。仙台ではコンベンションビューローの会員が自ら伊達正宗を巡るツアーなどを企画している。沼津なら我入道の渡しを使った仕掛けもいいだろう。
今は主にコンベンションビューローが考えているが、地元のこの施設を使えばこんなことができるというのを、地域自らが考えれば、まだまだ可能性は広がるはずだ。ぜひ、自分の商売に生かしてほしい。
今、静岡がんセンターを中心にファルマバレーをテーマにした都市づくりや地域づくりを進めているが、コンベンションを生かした都市づくりというのもあると思う。これからは、沼津市に建設が予定されている「人と動物の未来センター」やスポーツコミッションもこの地域の重要なテーマとなってくる。
もう一つ、実は沼津をはじめとする県東部は働く女性の割合が決して低くない地域。こうした特徴も活用したい。医療産業に関する会議に加え、女性のための会議、子育てのための会議ならプラサヴェルデといった切り口があってもいい。

地元との共生を第一に

■プラサヴェルデ
田中伸幸館長

 沼津に来て1年がたち、近隣の学校や商店街の方と大分顔つなぎができた。一つの現れが、サッカーワールドカップのパブリックビューイングだ。日本代表の初戦を見ようとキラメッセぬまづに約2,000人が集まった。
パブリックビューイングの相談を持ち掛けたのは沼津商工会議所「まちの未来創造部会」の大田紀人会長(大田呉服店代表取締役社長)。ぜひやってみようとなり、県のサッカー協会東部支部に話を持っていったところ、快諾いただいた。600インチの大画面サイズということもあり、試合は負けてしまったがかなりの盛り上がりを見せた。今でも「見に行きましたよ」という声を掛けていただく。あのイベントがきっかけで、今までプラサヴェルデを訪れたことのない方に認識してもらえた。
今、キラメッセのロビーの壁には小学生の習字が飾ってある。近隣の学校の先生方にご理解いただいて開いているものだ。
 これほどの施設を預かる身として責任重大だが、県知事、沼津市長、沼津商工会議所、そして地元の方、本当に応援していただける方が増えたので、その点は心強く感じている。そういう意味では昨年1年間あちらこちら飛び回った結果が今ようやく花開き始めた感じだ。今までは、地固めをしようと沼津市内に軸足を置いてきたが、県の会議場施設も稼働するので、今後は県全体に視野を広げたい。
 プラサヴェルデは想像力をかきたてる場所だと思う。色遣いや壁の曲線など、無機質でない情緒あふれるデザインは、非常に抽象的な言い方だが大ファンがたくさんできるのではないか。一度使っていただくと良さが実感できると思う。そのためにわれわれも精いっぱい支援できるようにしたい。将来的に、地元の方が数多く運営に携わることができればもっと郷土愛にあふれた施設になるだろう。

(※1)PCO コンベンションなどを専門的かつ総合的に組織・企画・運営する専門業者、Professional Congress Organizerの略。「コングレ・コンベンション静岡グループ」はPCO国内最大手「コングレ」と学会専門の地元PCO「コンベンション静岡」の共同企業体だ。
(※2)ユニークベニュー 歴史的建造物や公的空間などで、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場。



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