サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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静岡県が進める「内陸のフロンティアを拓く取組」。南海トラフ巨大地震などの有事の備えを第一としつつ、地域の特性を最大限に生かした美しさと品格のある、かつ、活力のある地域づくりを進め、新しい産業集積、新エネルギーの導入や自然と共生するライフスタイルの創造など、これまでにない地域づくりを展開し「新しい静岡県の姿」を示す取り組みだ。「風は東から」2月は「内陸のフロンティアを拓く取組」を取り上げる。防災・減災と地域成長の両立を図る取り組みの内容と、県東部の具体的な事例を紹介する。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ11

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防災・減災と地域成長を両立 新産業とゆとりある生活創出
■沿岸部の再生と内陸部の革新
 東西に長い静岡県は、東名高速道路、国道1号など日本の大動脈沿いに発展を遂げてきた。2012年、新東名高速道路が開通し、今まで中山間地域と言われていた内陸部にサービスエリア(SA)やインターチェンジ(IC)ができ、発展の核になる可能性が出てきた。
 また、南海トラフ巨大地震に伴う津波の想定高が発表されると、今まで経済発展してきた沿岸・都市部から高台に移転する動きが顕在化。津波対策を最優先に沿岸部の空間を再生し、より暮らしやすい地域づくりが求められている。
そこで県は防災・減災を図りながら、内陸部、沿岸部ともにバランスの良い地域づくりを目指そうと「内陸のフロンティアを拓く取組」を進めている。

■「内陸のフロンティアを拓く取組」は、“ふじのくに”発の新しい日本のグランドデザインだ(イラストはイメージ図)


 目指すのは、安全・安心で魅力ある「ふじのくに」の実現。「防災・減災機能の充実・強化」「地域資源を活用した新しい産業の創出・集積」「新しいライフスタイルの実現の場の創出」「暮らしを支える基盤の整備」の四つを目標に、県内各市町と連携して進めている。
「内陸のフロンティア」というネーミングから、中山間地域の開発をする取り組みと思われがちだが、「まずは沿岸・都市部の防災・減災対策を最優先としながら再生を進めるとともに、内陸・高台部の新たな地域づくりをしていこうというものだ」と県地域政策課の長澤由哉課長。
 県は、県内全域に取組を拡大するため、14年4月に「内陸フロンティア推進区域」制度を創設し、すでに、県内17市町37区域が指定を受けた。東部では沼津市、三島市、伊東市、富士市、御殿場市、裾野市、東伊豆町、長泉町、小山町の9市町18区域が指定され、全体の約半数を占めている。
  推進区域を指定する基準は、(1)「防災・減災」と「地域成長」の両立を図る取組であること(2)現行法令の枠組みの中で進められること(3)実現性が高い地域であること(市町が策定した構想に位置付けられている、14年から4年以内に事業実施が見込まれる、官民一体の推進体制が整っている)、の3点だ。


■さまざまなメニュー
 一例を挙げよう。
伊東市が進める「伊豆・いとう地魚王国推進区域」は、老朽化した伊東魚市場を改築し、有事の際にも対応できるよう、津波避難場所としての防災機能を備えた複合型魚市場を整備する。荷さばき・加工・直売機能も強化し、漁港の新鮮な水産物を提供することで賑わいの創出を図る。事業主体は伊東市といとう漁業協同組合だ。詳細な計画を作るにあたっては県がアドバイザーを派遣した。今年基本設計に入り、19年のオープンを予定している。
このような「防災・減災」の視点と「地域成長」が見込める推進区域の事業にはさまざまな支援メニューが用意されている。調査費への助成や、工場用地取得のための補助率のかさ上げ、上限10億円の「内陸フロンティア推進貸付」などがそれに当たる(※1)。
■(※1)内陸フロンティア推進区域に対する支援

 県の推進区域制度に先立ち、一昨年には国の総合特区にも指定された。これにより総合特区支援利子補給金が活用できるようになった。この制度は指定金融機関から融資を受けて対象事業を行う場合、土地の購入費、造成費、施設などの建設費、機械設備の整備にかかる費用について、最大0.7%の利子補給を5年間受けることができる。現在、14件(東部は4件)の活用実績がある。


■地域の知恵の絞りどころ

 一昨年5月には、経済4団体が発起人となり内陸フロンティア推進コンソーシアムを立ち上げた。4団体とは、商工会議所連合会、経営者協会、商工会連合会、中小企業団体中央会で、参加する民間企業・団体は300を超える。民間の視点で同取り組みへの提言、支援を行っている。
 こうした追い風を弾みに、県地域政策課はすべての市町へ取り組みを広げたい考えだ。長澤課長は「支援制度は今後も拡充していく。企業立地の支援制度の活用はもちろん、特に伊豆半島は、観光関連への支援策なども考えていければ」と意気込む。
 東名、新東名という並行した大動脈と、三遠南信、中部横断、伊豆縦貫自動車道など南北を結ぶ幹線道路の延伸で、近い将来、沿岸部と内陸部が快適な広域ネットワークで結ばれる。安全・安心でゆとりある暮らしの実現に向け、自分の地域の資源を上手に組み合わせた地域づくりに取り組んでもらいたい。



東部の事例

■長泉沼津IC周辺で建設が進む「イオン長泉プロセスセンター」
○東伊豆町「稲取高原特色を生かした観光地づくり推進区域」
既存の広場を活用し、地域住民のレクリエーションや滞在型観光の拠点となる憩いの広場の整備や、観光資源の情報発信の強化により交流人口の拡大を図る。有事の際には、仮設住宅や自衛隊宿営地などに活用する。
○長泉町「長泉沼津IC周辺物流関連産業等集積区域」
長泉沼津IC周辺に近接。広域交通網の結節点としての良好な交通条件を活用し、農畜産物の加工や惣菜の製造のほか、県内イオングループ各店舗への配送を行う「イオン長泉プロセスセンター」の建設が進んでおり、地域の新たな雇用創出が期待されている。
○富士市「田子の浦港周辺防災対策・にぎわい創出推進事業区域」
田子の浦港周辺住民および進出企業と一緒に防災対策(津波浸水ゼロを目指す)を推進しつつ、県営ふじのくに田子の浦みなと公園や田子の浦港を活用した新たなにぎわいゾーンを創出する。

本腰入れ、今進める時

■内陸フロンティア推進コンソーシアム 副代表(中小企業団体中央会会長)
諏訪部敏之丸善工業会長
 一時期、南海トラフ地震を懸念する声もあったが、県の防災対策により、現在その懸念は払拭されつつある。また、最近の円安傾向で製品加工の一部を日本国内に戻す動きも出てきている。このまま為替が120円前後で安定すれば、東名、新東名のニつの大動脈と、開通が待たれる中部横断自動車道、さらに富士山静岡空港を有する本県は、十分立地に値する地域になろう。
また、清水港や田子の浦港などの港湾整備も重要なカギを握る。茨城県ひたちなか市の臨港地区を例に見ても、輸出の利便性から大型建設機械メーカー2社が進出している。
「内陸のフロンティアを拓く取組」について、中小企業は現時点での経営状況から進出し難い面もあるが、中堅、大手が進出すれば、下請けとなる中小企業にも恩恵がもたらされるだろう。
 そういった意味で、この取り組みは今までが助走期間。これからが本腰を入れて進めるべき時だ。



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