サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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 伊豆半島の目指す方向性を示し、伊豆の未来を創造することを目的に7市6町首長会議が策定した「伊豆半島グランドデザイン」。その推進組織「美しい伊豆創造センター」が4月に稼働を始めた。6月の「風は東から」は同センターの概要や、伊豆の課題に対する取り組みについて、同センターの森延彦会長(函南町長)、県賀茂振興局の土屋優行局長に聞いた。 風は東から

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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美しい伊豆創造センター共通のみらい創造へ始動
■欠けていた共通ビジョン

 ― 美しい伊豆創造センターの役割は何ですか。
  2000年に伊豆新世紀創造祭を開催しましたが、その後10年以上たっても伊豆は一向にまとまりませんでした。このままでは観光だけでなく、人口減少、経済の低迷、高齢化といった伊豆半島が直面している喫緊の課題に対応できないと、首長会議で伊豆半島のグランドデザインをつくろうと提案したのが発端です。
 各市町に総合計画はあるが、伊豆半島が直面している負の要因をしっかり受け止めて新しい伊豆をつくるには、実践的なグランドデザインが必要だと申し上げ続けました。そして「7市6町首長会議」の賛同を受け、13年4月に「伊豆半島グランドデザイン」が策定されました。初めて伊豆地域が共通の将来ビジョンを持ったのです。
 土屋 創造祭当時、私は県の財政課で大きな予算を投入しましたが、何ら変わらなかったというのが実情です。市町には多くの観光協会があるが、線や面の活動につながらない。いつまでも「伊豆は一つずつ」でした。今のやり方、もっと言えば行政組織のあり方を考え直さないと活性化しないと思っておりましたので、グランドデザインができたと聞いた時も、その効果については正直半信半疑でした。
  地域がまとまる転機は何といっても東駿河湾環状道路の開通でしょう。東名沼津インターから伊豆市まで高規格道路でつながったことで、地域にさまざまなインパクトをもたらしています。
 函南の例で言うと、函南大場インターを通る1日平均の車台数は3万台以上になりました。また住宅着工件数が増加し、観光入込客も伊豆市、伊豆の国市を含め4割増です。函南以外でも公共バスの運行が始まった、ビール工場が立地した、という経済効果が多く出ています。
 さらに本年度、沼津西の未開通区間が高規格道路の事業化にこぎつけました。長年懸案だった天城峠も計画段階評価に進み、下田までの全線開通が現実味を帯びてきました。
 土屋 このままでは、伊豆半島の人口は2060年には今の半分になります。また、子どもたちが大人になって地元に残るのは半数程度。南伊豆、西伊豆に至っては2割台です。これでは、いくら出生率を上げても人口減に歯止めがかかりません。
 特に賀茂郡は県、市町の役割を分けるのではなく、国も含めて県が調整をするので、行政レベルが連携しようと、この4月、新たに「賀茂振興局」を開設しました。賀茂地域の危機管理体制の確立と、地域が一体となった振興を進めています。

 夢物語だった伊豆縦貫道の全線開通が十数年後に見えてきた今、地域に魅力をつくっておかなければ人口流出が起きるのは目に見えています。創造センターができ、賀茂振興局ができた今こそ、最大のチャンスだと賀茂地域の首長さんには申し上げました。

■美しい伊豆創造センター会長(函南町長)
森 延彦 氏

東京農業大学農学部卒業後、1969年静岡県庁入庁。2007年函南町副町長に就任し、10年3月函南町長に初当選。現在2期目。1947年函南町桑原生まれ。


■県賀茂振興局長
土屋 優行 氏

1978年静岡県庁入庁。2002年から中川根町助役を務め、05年企画部調整室長で県庁復帰。その後、財務局長、知事戦略局長、経済産業部長などを経て15年より現職。



■一体感醸成へあの手この手

■4日、函南町役場で開かれた「美しい伊豆創造センター」の設立総会
【組織の概要]
伊豆半島グランドデザインを推進するために2015年設立、16年にはジオパーク推進協議会を統合する予定。
理事会、幹事会、事務局3部会(観光・ジオ・道路)を設置し、それぞれがグランドデザイン推進のための事業計画の立案と執行について協議する。各市町首長を理事として置き、幹事会は各市町企画担当部課長、交通事業者・観光協会の代表で構成する。各部会は、各市町担当部署の課長及び各団体の担当者などで構成する。
事務局は当面、伊東市役所だが、修善寺総合会館の整備が終わり次第移転する。

 ― 創造センターが開設され、伊豆が一丸となって取り組む活動を次々と打ち出していますね。
 創造センターは県、13市町から派遣された職員と、ジオパーク推進協の職員の計21人で構成されています。13市町が一つの場所にいることが重要です。職員には、郷土の誇りを持ちつつ伊豆半島全体を見る視点を大切にしてほしいと言っています。
5月下旬には、12人の首長が台湾へトップセールスに行きました。また、今月3日は県と一緒に、国へ伊豆縦貫道の早期実現に向けた要望活動を行いました。こうした動きは今までなかったことです。
土屋 「伊豆は一つ」の機運醸成のため、伊豆のコミュニティーFMラジオ6局を結んだキャンペーンを、また、ケーブルテレビを活用した番組提供も予定しています。地方創生を進めるための小さな拠点として国土交通省が選定する重点「道の駅」にも「伊豆道の駅ネットワーク」が選ばれました。
― 創造センターができたことで変化を感じますか。
 西伊豆の町長が「西伊豆の夕陽、東伊豆の朝日、夕陽と朝日をセットにして売り込んだら」とおっしゃっています。
台湾にトップセールスに行った時にある首長さんが、伊豆半島全体の地図がない、とおっしゃった。今のような市町別の地図では、新幹線の最寄り駅や東名のインターの位置すら分かりませんね。
土屋 市町が「伊豆は一つ」を掛け声に終わらせず、具体的に示す意識の改革が必要でしょう。
花にしても、河津桜のポスターには河津桜の写真だけです。爪木崎の水仙まつり、熱海の梅園など花の情報を一つにまとめた方が良いのに、現状ではそれができていません。
 黒船祭、按針祭など伊豆の国際イベントを全て集めて発信すれば大きなインパクトになります。東駿河湾環状道路の開通を記念して行ったマラソン大会で、伊豆半島全域から飲食ブースを募集したところ、参加者からも出店者からもとても喜ばれました。

■12首長が台湾でトップセールス
4月には伊豆半島12市町の首長がそろって台湾を訪れ、トップセールスに取り組んだ。台北国際観光博覧会への参加や自治体への表敬訪問などを通じて、伊豆観光の魅力をPRした。

このように、個別政策を顕在化させて、集合させるのはものすごく大事で、こうした編集も創造センターの役割ですね。
土屋 例えば松崎のなまこ壁を守っていくなら、都市景観に取り組みたい市町は伊豆の別のエリアにもあるでしょう。ならば伊豆全体が魅力あふれる景観になるようなビジョンを描けばいい。ビジョンを実現する財源の確保は工夫できます。
 県はすでに景観セミナーを予定していますが、伊豆半島全体の景観形成のガイドラインを地元自らつくろうという意識がないと進みません。個別の成功事例が出てくるとまちづくりは面白くなります。例えば賀茂地区でワークショップをやって、出てきた意見をどう吸い上げ具体化するか。そういう「仕掛け人」役になることも創造センターに期待しています。 土屋 伊豆半島はこのままではだめになるという共通認識に対して、地元が具体施策をもって、ボトムアップ、トップダウンを使い分けながら、他力でなく自分たちで解決するんだという気概を持ってもらいたい。創造センター開設を起爆剤に、将来の希望が持てる伊豆半島にしたいと思います。


主 な 事 業

(1)伊豆半島の地域振興を図るための企画・調整・立案に関すること
(2)伊豆半島に共通する誘客事業を国内外において展開すること
(3)伊豆半島の自然・文化・歴史・産業等の情報収集及び情報発信に関すること
(4)伊豆半島のインフラ整備・景観の保護・ユニバーサルデザイン化の推進に関すること
(5)伊豆半島に地域振興を図るための人材育成に関すること
(6)伊豆半島ジオパークの推進に関すること
(7)伊豆半島全体の道路ネットワークの活用による地域活動の創造に関すること
(8)伊豆半島の防災対策の啓発、促進に関すること
(9)その他目的達成に必要な事項に関すること

■ロゴマーク 〜 クラスターを表現
伊豆半島を構成する市町を一房のブドウになぞらえ、東名高速道路と伊豆縦貫自動車道をブドウの軸に、
富士山を葉に見立てている。各市町が団結し、世界から賞賛され続ける美しい半島・伊豆を目指すことを表現した。



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