中山 伊豆の観光と現状について伺います。
森 伊豆半島は風光明媚(めいび)、気候温暖、農・海産物など豊かな自然資源に恵まれています。しかしそれが生かされているとは言い難い。最大の要因は、車社会に対応しきれない道路体系でしょう。下田から沼津インターまで3時間ほどかかる。鉄道やバスなどの接続も悪く、交通結節点へのアクセスが非常に脆弱です。
さらに、人口減、少子高齢化、観光業の低迷や雇用の場の不足など課題は山積で、「今のままでいい」という伊豆半島の意識を変えない限り、“美しい伊豆の創造”はありません。
伊豆半島7市6町首長会議が策定した「伊豆半島グランドデザイン」の実践組織「美しい伊豆創造センター」が稼働し、伊豆縦貫道が修善寺までつながった今こそ、伊豆が変われる最後の、そして最大のチャンスと考えています。
村上 伊豆半島の観光交流人口は昨年約4000万人、対前年比103%、宿泊客数は1051万6000人、対前年比101%、県内シェア57〜58%です。一見伸びているように見えますが、宿泊客数はピーク時(1991年)の約53%、観光交流人口も2005年の約95%です。これは競合地域の台頭で伊豆に来る機会が減っているのだろうと思います。われわれ観光事業者が取り組むべきは、自分たちの魅力をもう一度見直し作り直すこと、リピーターやファンを作り直すこと、感動体験をしていただけるような場所を作り出すことです。
落合楼が5年前から取り組むボランツーリズムは、国登録有形文化財の宿を掃除していただく代わりに無料で宿泊してもらう、というものです。参加してくれた若者たちは、文化財を磨く中で新鮮な発見をし、宿のファンになってくれるという効果が生まれています。
国保 大学では、伊豆出身の若者の地元愛は強く、皆帰りたがっていると感じます。しかし帰っても活躍する場、仕事する場がなく、戻りたくても戻れない。若者が活躍できる場さえあれば、流出は何とかなると楽観的に感じています。
次世代の居場所づくりについては、観光産業の観点から言うと、お金を払ってでも受けたいサービスは何か、それを求めている人がどこにいるかを正確に見極めることが課題だと思います。
古賀 韮山反射炉を造った江川坦庵は甲州街道を管轄しており、江戸にもお屋敷がありました。もともと江川家は保元の乱の関係で、奈良県五條から酒造りの技術を持って伊豆に入ってきています。歴代江川家は朝廷や松尾芭蕉など、その時々の一流文化人との付き合いがある。蹴鞠(けまり)の免許があったり、雅楽にも通じていたりしています。
江川家の財産一つとっても、時代的に、また広がりで見てみると、新しい価値がつくれるのではないでしょうか。特に外国人はヒストリーツーリズムが大好きです。 |