サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回「風は東から」で取り上げている。本年度は、ヘルスケア産業の振興や、世界文化遺産・富士山の活用などを取り上げた。年度最後の3月は、川勝平太知事、懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行社長を迎え、ファルマバレープロジェクトが進む東部の地域づくりについて聞いた。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学総合研究所の大坪檀所長。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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ファルマを実験の舞台に 健康・スポーツで輝く地域へ
■県内初開催五輪

大坪 最近の県東部は五輪の話題で持ちきりです。いろいろな意味で、東部の、そして静岡県のチャンスになりそうですね。
川勝 1競技2種目とはいえ県内初開催五輪です。韮山反射炉の世界遺産登録と前後して決まり、伊豆半島も県も盛り上がりました。伊豆市の屋内自転車競技場「ベロドローム」は関係者からは交通アクセス以外は申し分ないと太鼓判を押されています。今後はスムーズにアクセスできる環境を整えていきます。
 この機会を最大限に活用するため、伊豆半島・東部に専任の副知事を置きました。県を挙げて東部・伊豆半島を応援します。魅力づくりの核が文化とスポーツです。
岡野 サンフロント21懇話会も発足から22年目を迎え、知事鼎談も18回を数えます。設立当時の皆の思いは現在も変わることなく、東部地域活性化のお手伝いをさせていただいております。スポーツも同じで、選手やサポーターの思いが強いチームをつくっていく。好例が男子サッカーのリオ五輪アジア最終予選決勝ですね。0対2からの逆転、あれは選手一人一人が監督を信じて思いをつなげたからです。
同様に、静岡県のスポーツの新たな出発は、東京五輪の自転車競技でしょう。もう一つは昨年知事が調印されたイタリア・フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州との自転車を通じた交流です。非常に大きなことですね。
川勝 フリウリとの交流は、イタリア大使の仲介で実現しました。イタリアには世界的に有名な「ジロ・デ・イタリア」という自転車レースがあり、そのクライマックスが最大22度の急こう配が続くゾンコラン山。そのゾンコランを富士山とつなぎたいというイタリア側のご提案を受けて、スポーツ交流の一環でサイクリング大会を富士山、伊豆半島で開催します。今秋にサイクリストが大勢お見えになります。
岡野 今年は日伊修好通商条約締結150周年ですし、イタリアはフランスと並ぶ自転車競技のメッカです。この東部・伊豆で世界トップレベルの地域からサイクリストを迎えて大会が開催できるのはすごい事。スポーツは「観戦する」「支える」「語る」といった応援の仕方があり、それらを通じて地域が活性化するのです。観光交流協定締結をスタートに、盛り上げていくのも懇話会の役目だと思っています。
また、一般の人も安全に楽しめるようなロードバイク専用の道路もつくっていただきたいですね。
川勝 自転車専用、歩道、車道と区別する道路づくりを東部・伊豆から始めるというのは説得力があります。そうした姿勢で、今後の道路づくりの基本方針を定めてまいりたいと思います。

■カルニア クラシック サイクリング大会ロゴ

川勝平太 知事





■健康長寿県を目指す
大坪 食、そしてスポーツと、東部は健康に暮らせる資源がたくさんあります。世界の健康長寿のモデル地域になるのではないでしょうか。
岡野 スポーツは、少年や青年がやるものだという先入観がありますが、中高年の方がスポーツをする、それも過度な運動量ではなく、ウオーキングやスイミング、太極拳など、楽しくスポーツに取り組めばもっと健康になりますね。その啓発をどうするか、というのがポイントだと思います。
川勝 若い人だけでなく、誰もが、体を鍛えることが大切です。運動すれば健康寿命は延びます。この相関関係をもっと明らかにしたいと思っています。というのも、県健康福祉部の行った調査で、「食」「運動の継続」「社会参加」の三要素が健康寿命を延ばすためには大事だということが分かっています。県民の健康寿命は世界トップです。その健康寿命を基準に、専門家を交えて、年を重ねても元気で活躍できる新しい人生区分を提起しています(図1)。

■図1:ふじのくに型「人生区分」
〇人生区分の呼称と年齢

どこに焦点を当てるかですが、66〜76歳「壮年熟期」です。定年退職した後、何もすることがない、という悲哀を人生で初めて突きつけられる。家にいると奥さんに「濡れ落ち葉」(※1)と言われたり…。
岡野 これからは、そういう熟期の人たちが社会参加できる受け皿を作るべきでしょう。フルタイムでなく、週何日かを社会に貢献できる活動に充てるような仕組みです。
※1 「払っても払ってもなかなか離れない」様子から転じて、主に定年退職後の夫が、特に趣味もないために、妻が出かけようとするとどこにでも付いて来る様子

岡野光喜 スルガ銀行社長
サンフロント21懇話会代表幹事


■新拠点への期待高まる

大坪 私たちの大学では「ルネサンス制度」という社会人の入学制度を始めました。シニアが対象で、若い学生にこれまでの知見を伝えながら共に学び、再就職を目指すものですが、貢献度に応じて授業料も格安となり、評判いいですよ。
川勝 年齢を重ねてから若い友人を持つと視野が広がり、年の功を生かせます。男性は今までの経験、技術、知識を社会に還元する、特に人材育成、青少年の育成に役立ててもらいたい。
「後期高齢者」という無礼な呼び方は“ふじのくに”静岡県から追放したいですね。
大坪 今、ファルマバレーは新たな段階に入っています。医療機器開発を加速させるため「県医療健康産業研究開発センター」ができました。
川勝 1998年度に「静岡アジアがん会議が始まり、03年度からは「静岡がん会議」として毎年続けられています。先日の「静岡がん会議」では、モンゴル大統領夫人が「がんのないモンゴル“イトゲルー希望”国家基金」の代表としてお見えになりました。静岡に学ぶことが多いと感謝を表明されました。
おかげさまで、ファルマバレープロジェクトは確実に育っています。現在は第3次戦略計画が、静岡がんセンターの山口建総長のもと「ものづくり」「ひとづくり」「まちづくり」「世界展開」の各分野で進んでいます。
プロジェクトの支援機関としてスタートした静岡県産業振興財団のファルマバレーセンターも、年々事業が拡大し、約40人もの職員を抱える組織となりました。この拠点に移ることもあり、「財団から独立したほうが良い」と思っています。
岡野 ファルマバレーも最初は小さな卵でした。ここまで大きくなったのは関わってきたわれわれにとってもうれしいことで、これからもっと発展してほしい。次に越えるべき壁は、医療分野における品質マネジメントシステムの世界標準規格ISO13485を取得する地元中小企業を増やすことでしょう。そうなると、ここで作られるさまざまなものが世界基準に合致し、ステージアップにつながると思います。
川勝 研究は、ごまかしがききません。知的レベルを上げ、常に世界の最高水準を取り込んで発展していくことが大切です。品質保証を客観的にできる体制を東部から整えていきたい。中小企業、中堅企業の世界標準規格取得は、行政が手厚く支援していきます。
大坪 単なるモノづくりから脱皮して、高付加価値のものを作る。また給料の高い仕事を生み出すことが重要です。高付加価値の日本の生活、産業はどういうものか、ファルマバレーを舞台に実験していくことが必要です。

■新拠点施設「静岡県医療健康産業研究開発センター」

大坪 檀 静岡産業大学
総合研究所所長
サンフロント21懇話会アドバイザー



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