フィリピン海プレートに乗って南から来た火山島、という稀有(けう)な成り立ちを持つ伊豆半島。その大地(ジオ)が育んだ貴重な資産を保全しながら地域振興に活用しようと、2011年に県、伊豆13市町と企業、市民団体、大学などが協力し「伊豆半島ジオパーク推進協議会」を設立した。「南から来た火山の贈りもの」をメーンテーマに、世界ジオパークネットワーク加盟を目指している。惜しくも昨年の加盟は逃したが、今秋、再び挑戦すべく準備を進めている。
こうした活動に弾みをつけるのが、今月2日にオープンした伊豆半島ジオパークミュージアム「ジオリア」だ。映像投影システム「プロジェクションマッピング」や映像シアター、パネル展示で、伊豆半島の成り立ちや特徴などを紹介する。また、ジオガイド2人が常駐し、来館者に施設案内や伊豆各地108カ所のジオサイト情報を提供している。
同協議会は今までもパンフレット、現地看板、13あるビジターセンターなど、ジオパークの情報を発信する方法を複数用意してきたが、伊豆半島全体を俯瞰(ふかん)できる拠点がないのが課題だった。
ジオリアのオープンで、地域外から来た人は現在位置や目的地までの距離を知ることができ、また「堂ヶ島の岩壁はなぜ白いのか」といった疑問にも答えられる。同協議会の高橋誠事務局長補佐は「伊豆はすばらしい温泉、海や山、川もある。おいしい食べ物もたくさんある。ジオリアはこうした魅力がバラバラでなく、実は深いつながりがあることを伝える施設」と言う。
例えば、伊豆市茅野地区を取り上げた企画展では、はちくぼ山から流れた溶岩が浄蓮の滝をつくり、平地で稲作やワサビ栽培が始まったこと、川では地形を利用したキャニオニングができることなど、すべてを紡ぎ出す大地の物語が紹介されている。今後は企画展にあわせたジオツアーなども積極的に用意していく。
一般的な観光案内所と違い、ジオリアには市町別の観光パンフレットが雑然と並んでいるという風景はない。「大地の物語を提案する場所」なので、その文脈に沿わない情報は極力控える方針だ。
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■伊豆半島誕生の秘密を多角的に説明する体験型施設「ジオリア」 |
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