サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から14日夜半にはじまった熊本〜大分の一連の地震は自然災害の恐ろしさをまざまざと見せつけた。一方で、自然は私たちに豊かな恵みも与えてくれる。「南から来た火山の贈りもの」である伊豆半島は、温暖な気候、風光明媚な景色で数多くの人々を魅了し続けている。4月の「風は東から」は、伊豆半島ジオパークの拠点「ジオリア」(伊豆市)を取り上げる。ジオリア開設を機に、ジオパークと地域活性化をどのように結び付けるか、関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1

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伊豆の旅はジオテリアから 多彩なツアーに期待
■大地の物語を紡ぐ新拠点に

 フィリピン海プレートに乗って南から来た火山島、という稀有(けう)な成り立ちを持つ伊豆半島。その大地(ジオ)が育んだ貴重な資産を保全しながら地域振興に活用しようと、2011年に県、伊豆13市町と企業、市民団体、大学などが協力し「伊豆半島ジオパーク推進協議会」を設立した。「南から来た火山の贈りもの」をメーンテーマに、世界ジオパークネットワーク加盟を目指している。惜しくも昨年の加盟は逃したが、今秋、再び挑戦すべく準備を進めている。
 こうした活動に弾みをつけるのが、今月2日にオープンした伊豆半島ジオパークミュージアム「ジオリア」だ。映像投影システム「プロジェクションマッピング」や映像シアター、パネル展示で、伊豆半島の成り立ちや特徴などを紹介する。また、ジオガイド2人が常駐し、来館者に施設案内や伊豆各地108カ所のジオサイト情報を提供している。
 同協議会は今までもパンフレット、現地看板、13あるビジターセンターなど、ジオパークの情報を発信する方法を複数用意してきたが、伊豆半島全体を俯瞰(ふかん)できる拠点がないのが課題だった。
 ジオリアのオープンで、地域外から来た人は現在位置や目的地までの距離を知ることができ、また「堂ヶ島の岩壁はなぜ白いのか」といった疑問にも答えられる。同協議会の高橋誠事務局長補佐は「伊豆はすばらしい温泉、海や山、川もある。おいしい食べ物もたくさんある。ジオリアはこうした魅力がバラバラでなく、実は深いつながりがあることを伝える施設」と言う。
 例えば、伊豆市茅野地区を取り上げた企画展では、はちくぼ山から流れた溶岩が浄蓮の滝をつくり、平地で稲作やワサビ栽培が始まったこと、川では地形を利用したキャニオニングができることなど、すべてを紡ぎ出す大地の物語が紹介されている。今後は企画展にあわせたジオツアーなども積極的に用意していく。

 一般的な観光案内所と違い、ジオリアには市町別の観光パンフレットが雑然と並んでいるという風景はない。「大地の物語を提案する場所」なので、その文脈に沿わない情報は極力控える方針だ。

■伊豆半島誕生の秘密を多角的に説明する体験型施設「ジオリア」


■ガイドツアーにジオリア活用

■プロジェクションマッピングを使って伊豆の
地理的特徴を解説する鈴木専任研究員

 ジオリア開設を受け、各方面からの問い合わせも増えた。近隣の小学校からは、遠足の班別行動にジオリアを組み込みたいとの要望が寄せられた。ジオリアの機能を事前に知らせ、児童自らが学習プログラムを作るという動きが出ている。また、宿泊者を対象にした講座やツアーの引き合いもある。
 同協議会の鈴木雄介専任研究員は「プロジェクションマッピング」を活用し、「ジオ×観光」の可能性を提案している。ジオツアーなどの行程はもちろん「自転車ツアーを計画中の人に、伊豆半島全域の勾配が一目で分かる地図情報が提供できる。それに、ここはきつい坂が続くけれどその先にこんな絶景が待っている、といった旅の味付けを皆さんで考えてほしい」。 
 富士山が見えるスポットを表示したり、温泉の泉質の分布図を作ったり、地図上に地質などさまざまなデータを組み合わせて可視化することで多様な伊豆の姿や活用法が浮かび上がる。「伊豆の観光振興にこういう新しいアプロ―チがあるのを知ってもらいたい」(鈴木研究員)。
 ガイドツアーの充実化が課題だと指摘するのは高橋事務局長補佐。「今までの伊豆観光でガイドツアーの占める割合は少ないが、ジオパークのジオツーリズムではそれが求められる。シーカヤックに乗って海から海岸線を眺めたり、街歩きや山歩きでその地域を深く知ったりするためにガイドの存在は重要。どのようにガイドツアーを提供していくか、ターゲットや種類を明確にして打ち出していく必要がある」と語る。
 伊豆半島ジオガイド協会の安藤裕夫事務局長は「ガイドの質の向上が課題」と指摘。「担当エリアを説明できるだけでなく、伊豆半島全体のガイドがきちんとできる人材の育成に力を入れる。また、相手の興味に応じて情報の濃淡をコントロールできる力量が必要」と言う。同協議会も、本年度は新規ジオガイドの養成講座は開設せず、認定ジオガイドのスキルアップ講座を準備している。


■マーケティング強化が課題
■伊豆半島の高低差を可視化したマップ。自転車ツアーなどへの応用が期待される
 ジオツアーをつくる上で、マーケティングは欠かせない。
 訪れる人が日帰りなのか宿泊なのか、2時間で完結するツアーがいいのか、まる一日かけられるのか。三島のようにビジネスで訪れる人が多い地域は、街中を歩いて名物のウナギを食べてもらえるような提案、天城にトレッキングに来る人には体力に合わせた多彩なメニュー提案と、「どうすれば地域にお金を落としてもらえるか、ガイドのみなさんもぜひそこを考えてほしい」と高橋事務局長補佐。今後はビッグデータなどを活用し、伊豆各地を訪れる観光客の動向を把握しながら、地域に見合ったツアーをつくっていく。
 自らもジオガイドで、松崎町で旅館を経営する佐野勇人さんは「今まで、ジオツアーを用意してもお客さんに紹介する窓口がなかった。伊豆を訪れる方は土地勘も距離感もないので、ジオリアで各地のガイドツアーの詳しい説明が受けられ、その中からお客さんは好きなツアーを選んで楽しめる、そんなサービスが提供できる拠点になってほしい」と語る。
 世界ジオパークネットワークへ加盟するには、外国人観光客の受け入れも条件の一つ。ジオリアの表示も英語表記はあるが、今後多言語化の対応を図っていく。また、英語版のアクティビティー体験映像を昨年度末に作った。特に欧米人の個人旅行者を対象にさまざまな場面で流していく予定だ。
 「ガイド協会としても多言語対応は直面する問題。通訳案内士はいるが、オリンピックも控えており数人では対応できない」(安藤事務局長)。ガイド向けの英会話研修や、ジオサイトで提示する英語の説明カードづくりを検討しているという。
 鈴木専任研究員は「まず、地元の方に来てほしい。見慣れた地形や地質が、実はわざわざミュージアムに展示するほど面白いことを知ってほしい。その面白さを知ることで、伊豆半島に住む69万人が総観光ガイドという理想像を目指したい」と抱負を語る。ジオリアを拠点にどのような「伊豆の物語」が紡がれるのか。今後の展開が期待される。


■鈴木伸二ジオリア館長

ジオリアから新たなツーリズムを

 ジオパークの要素を使えば今まで以上に伊豆の楽しみ方が広がる。金鉱のような今まで使われなかった資源も、ジオパークというフィルターを通せば「金鉱めぐりツアー」といった着地型ツーリズムになる。それをジオリアで情報提供し、各ジオサイトやビジターセンターで体験してもらうのが理想だ。ここはむしろそういう情報をどんどん出していく場所にしたい。また、滞在時間を長くするのもジオリアの一つの使命と考えている。例えば、車なら半日で回れてしまう場所を、ジオサイトを見ながら自転車でのんびり2〜3日かけてゆっくり回るといった提案もしていきたい。



ジオリアDATA

開館時間
9:00 〜 17:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休   館
水曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
入   館
無料
駐車場
あり
バリアフリー情報
車いす可(事前にご連絡ください)
問い合わせ
〒410-2416 伊豆市修善寺838-1
修善寺総合会館内 TEL:0558-72-0525 FAX:0558-72-1355


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