サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から 4年前の富士山、そして昨年の韮山反射炉の世界遺産登録、2020東京五輪自転車競技の伊豆市開催の決定など、伊豆を取り巻く環境が大きく変化している。5月の「風は東から」は、こうした状況を戦略的に交流人口の拡大や地域振興につなげるヒントについて県文化・観光部の滝浪勇観光交流局長に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2

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外国人観光客増への準備 地域連携で稼ぐ仕組みを
■外国人宿泊者数15年度176万人

 

■滝浪 勇 氏
県文化・観光部 観光交流局長 1979年県庁入庁。合併推進室、議会事務局、企画広報部などを歴任し、2012年東部地域政策局長、今年4月より現職。静岡市出身

 県は2014年に策定した「ふじのくに観光躍進基本計画」の(1)ふじのくにの真の魅力を活用した観光地づくり(2)ターゲットを明確にした誘客促進 (3)おもてなし日本一の基盤づくり―の三つの戦略に沿った施策を進めています。策定から2年、現在の状況をお願いします。
滝浪 まず、外国人の延べ宿泊客数が大きく伸びています。基本計画で立てた17年度目標値87万人を大きく超え、すでに昨年度176万人を達成しました。
東部・伊豆地域は世界遺産の富士山、韮山反射炉があり、世界的にも珍しい成り立ちを持つ伊豆半島ジオパークがあります。また、東京五輪の自転車競技開催も決定したことで、今最も注目を浴びている地域でしょう。この機を逃さない手はありませんね。
 国が今年の3月に発表した「明日の日本を支える観光ビジョン」(図1)でも、インバウンドに関する目標値を大幅に引き上げました。
滝浪 ビザの緩和や出入国管理体制の充実、航空ネットワークの拡大などを進めた結果、12年に836万人だった訪日外国人旅行者数は15年に1974万人となりました。つまり、本県だけでなく全国的に増えているということです。
さらに国は、20年には現在の倍の4000万人、30年に6000万人の目標を掲げていて、これを実現するために大胆な規制緩和を進めています。われわれが注目すべきは、地方の外国人延べ宿泊者数を20年に7000万人にするという目標です。
 この好機を逃さないために伊豆は何をすべきでしょうか。
滝浪 もちろん観光客数も大事ですが、地域にお金を落としてもらう仕組み―、つまり「地域が稼ぐ力」を高めたいと考えています。
そのためには、地域のあらゆる主体の合意のもと、各種データの収集・分析、明確なコンセプトに基づいた戦略の策定などを、地域が自ら考え、実施する「観光地経営」の取り組みが求められています。こうした仕組みを国は「日本版DMO(※)」と呼んでいますが、イベントや観光事業者だけにとどまる従来のやり方では限界があり、全国的な地域間競争に勝ち残ることができません。
※Destination Management/Marketing Organizationの略



■「県版」「地域版」続々 DMOの連携強化へ

 県は2年前からDMOに着手していますね。
滝浪 「伊豆のせんたんツアーセンター」が伊豆でDMOとして立ち上がり、本年3月末で地域の魅力を生かした100を超える着地型プログラムを掘り起こし、提供しています。ただ、地域全体にお金が落ちる仕組みにまでは至っていません。
今年中には全県版DMO4「静岡ツーリズムビューロー」を県観光協会内に立ち上げる予定です。また、伊豆7市6町が「伊豆はひとつ」を目指して立ち上げた、美しい伊豆創造センターも伊豆広域のDMOをつくることが決まっています。市町でも伊豆市と伊豆の国市がDMOを立ち上げます。
 それぞれのDMOの役割分担や連携をどうお考えですか?
滝浪 4月27日に市と広域DMOの担当者を集めて意見交換会を行いました。その中で、市町レベルでは充分なインバウンド対応ができないので、そこを県に担ってほしいという意見が多く寄せられました。
国がこれだけインバウンドに力を入れていますので、外国人観光客が増えるのは間違いありません。それをいかに県内に呼び込むかは県の役割です。国ごとにどのような嗜好で、どこに行き、どこに何泊して、どんな遊びをしたいかなどを調査・分析し、マーケティングを通じて効果的な誘客を行いたいと考えています。
 現状は、静岡空港の利用者が増えているにも関わらず、県内に1泊して翌朝県外に行ってしまいます。
滝浪 ですから、地域DMOには、県内にとどまってもらえるような魅力的な地域づくりをお願いしたい。それには、農業、漁業、商業、各種団体など既存の観光にとらわれず幅広い人を巻き込み、DMOをどれだけ本気で進められるかにかかっています。
伊豆に一日でも長く滞在してもらうのが一番お金が落ちるわけです。けれど、一市町で3泊4日の商品を考えるのは難しいので、広域DMOが他地域の商品を組み合わせて提案していけば良いと思います。
6月からはDMO担当者の情報交換会で勉強会も始める予定です。また、多言語化などの支援も観光施設の補助金という形で、より統一感のある手を打っていきます。



■伊豆観光振興に手厚い布陣

 伊豆観光局も新設されました。
滝浪 県は昨年、伊豆担当の副知事を置き、今年4月からは県東部総合庁舎内に伊豆観光局を新設、職員を3人配置しています。伊豆半島の観光振興について、これまで以上に力を入れていく予定です。伊豆観光局の大きな役割は地域を回って各分野のいろいろな方から意見を伺い、それを広域的な取り組みとして生かしたり、美しい伊豆創造センターと連携をとり、その活動を支援したりするなど「伊豆はひとつ」を具現化することです。
 五輪開催が大きな目標ですね。
滝浪 観光は、地域振興の切り口の一つです。観光の先に地域がもうかる仕組みができればそこに雇用が生まれます。
2020年のオリンピック・パラリンピック開催は最大のチャンスであり、この間の取り組み次第だと思うので、20年以降も人が押し寄せるようなレガシーを残せるよう取り組んでいきたいと思います。伊豆を取り巻く環境は大きく変わっています。地域がそれに気づいて変わることができるか。それとも変わらないで置いていかれるか、今がその分岐点だと思っています。  



ブランド力強化 富裕層向けの商談会に参加

 世界的に有名な富裕層旅行商談会「ILTM」(インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット)が今年3月に都内で開かれ、静岡県とともに、伊豆の旅館を含む5施設が出展した。県の関典子観光振興課長は「東京五輪では役員やスポンサーなどのラグジュアリー層も訪れる。こうした人々に向けた付加価値の高い商品づくりをすることで、ブランド力を高め地域の魅力の幅を広げたい」と語る。
 海外マーケットは市町単位では効果的な訴求がしにくく、ターゲットに合わせた展開を広域で連携して行う予定だ。



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