サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から  県の空の玄関として2009年に開港した富士山静岡空港。訪日中国人客の増加で昨年度の搭乗者数は70万人に迫った。また、国際線の搭乗者数が初めて国内線を抜くなど、地方空港でありながら国際空港の性格を色濃くしている。6月の「風は東から」は開港して8年目に入った同空港を取り上げる。空港を活用した県東部の活性化について、同空港の出野勉社長に聞いた。聞き手は静岡新聞社の海野俊也東部総局長。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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静岡空港の国際化が加速 東部と結ぶ二次交通課題
■増える中国路線
■中国だけでなく、東南アジアの玄関として期待される富士山静岡空港
海野 開港8年目に入りました。昨年度は全体売り上げが前年比54・9%増の29億9000万円と、6年連続黒字化を達成しました。
出野 中国路線の需要が増えたことが第一の要因です。従来は中国沿岸部からの旅行客が多かったのですが、所得水準が上がるにつれて内陸部からも増えてきました。ここは富士山に近く、ゴールデンルート上にあることも大きな理由でしょう。天津航空や北京首都航空など、日本初就航の航空会社も静岡を選んでいます。
海野 国際線の就航先は現在11路線ですね。今後の就航予定はいかがですか。
出野 3月末に済南、5月に瀋陽が就航しました。7月から大連が加わります。大連は県内の企業も数多く進出しているのでビジネス利用が増えると期待しています。
今後の増加を見込んで、県では現在1時間に1本の国際便の発着を、18年秋からは1時間に3便発着できるよう増改築を計画しています。
海野 昨年度の搭乗者数は約70万人、うち国際線が半数超の約39万人。もはや、地方空港ではなく国際空港ですね。
出野 昨年夏の中国便に限って見れば中部国際空港を抜き、羽田空港と肩を並べました。
最近は静岡空港でもトランジット利用が増えてきています。数は多くありませんが、例えば欧米からアシアナ航空で韓国の仁川(インチョン)に飛び、そこから静岡に入るという使い方も見られます。
札幌雪まつりの期間中も、仁川や上海から静岡に来て、ここから国内線に乗り換える方が大勢いました。というのも、直行便はすぐに満席になってしまう。そこでこの路線があることを見つけたそうです。日本人は飛行機利用というと直行便を考えがちですが、飛行機に乗り慣れている世界の方はいろいろな使い方を思いつくようです。
海野 静岡空港が広く認知されてきて、いろいろな人が注目し始めると、使い方も幅広くなるという好例ですね。


■空港で伊豆のPRを
海野 県東部の私たちが静岡空港の利活用を考えた時、どのような働き掛けが必要とお考えですか。
出野 昨年から沼津・静岡・浜松の各商工会議所会頭に空港の役員就任をお願いしています。沼津商工会議所の市川厚会頭からは、県東部の多くの会合で話をする機会をいただいています。出張などで空港を利用すると特典がある「企業サポーターズクラブ」にもたくさんの企業が加入してくださいました。
また、三島信用金庫の稲田精治理事長には、県東部の信金と北海道東部の信金間を協定で結び、年金旅行のお客さまの相互送客をしていただいています。
開港直後から力を入れているのが北海道からのゴルフツアーです。北海道は11月中旬から4月下旬までゴルフ場がクローズになります。そこで、雪のない県内、特に東部方面へのゴルフツアーを企画し、年間約2000人が訪れています。富士山を見て、ゴルフも楽しめるのが大きな魅力です。こうした活動が根付いてリピーターにつながっています。
■出野勉氏
富士山静岡空港社長

1975年静岡県庁入庁。企画部知事公室長、厚生部理事、文化・観光部長などを経て、2012年知事戦略監兼企画広報部長。13年5月より現職。


■個人客対応を重視
■国際線の多さは地方空港でもトップクラス。7月から新たに「大連」が加わる
海野 県東部と空港を結ぶ二次交通をどうするかが開業以来の課題ですね。
出野 空港と静岡駅、島田駅は路線バスで結ばれています。藤枝市は昨年から藤枝駅までバス運行の社会実験を始めました。昨年3月からは浜松市内と空港を結ぶ予約制のリムジンタクシーを始め(一人1500円)、13カ月で既に7000人以上が利用しています。また、7月1日からは掛川駅と結ぶ「静岡空港シャトルタクシー」が始まります。これは一人片道1000円の定額制です。
東部地域の方々にも静岡空港を使うメリットをもっとPRしないといけないと考えています。車だけでなく、新幹線や在来線をうまく利用したルートを提案できるよう、地元の交通会社や旅行会社と話を進めています。
海野 最近は海外からの個人旅行客が増えていますが、個人客対応の面からも二次交通は重要です。
出野 昨年の4〜5月は路線バスを使う中国のお客さまは少数でしたが、今は小グループが目に見えて増えました。こうした方々は公共交通機関を利用して旅行しています。個人客対応の一例として、静岡駅行きのバスを路線バスから連絡バス方式にしました。路線バスの時は、飛行機が遅れても定刻に発車していましたが、連絡バス方式にし、到着時間に合わせるようになりました。満席で出発した便もあります。
 また、最近は韓国や台湾の方は国際免許でレンタカーを利用するお客さまも増えています。カーナビも多言語DVDを各社が用意しています。新東名や東駿河湾環状道路ができたので、車なら沼津まで1時間程度で行けるようになりました。
海野 レンタカー利用者向けに空港で東部や伊豆の地図、パンフレットなどを提供することも必要ですね。
出野
 静岡空港には見学客を含めて昨年は117万人のお客さまが訪れました。そうした方向けにも総合案内所のラックなどをぜひ活用してください。伊豆で1泊してもらう、周遊してもらう、といった仕掛けをどんどん提案してほしいですね。


■ビジネス需要に期待

海野 無料駐車場は静岡や浜松ナンバーの車で平日でもいっぱいです。
出野 浜松方面の方も最初は中部国際空港を利用していましたが、リムジンタクシーを始めたり、駐車場が無料ということがだんだん周知されたりして、利用が広がりました。
海野 今月、ANAを傘下に持つANAホールディングスと包括連携協定を締結しましたね。ANAのネットワークを生かした県産品の販路拡大が期待されています。
出野 ANAの機内食やラウンジサービスで県産品を積極的に使ってもらっています。また、ANAが持つ那覇の貨物輸送基地には、日本中からさまざまな品物が集まって世界に出ていきます。例えば東部から品物を送る場合、静岡空港からANA便で那覇に行き、その日の夜にシンガポール便で届けることも可能です。宅配便とも連携していますから、生鮮品も送れます。
貨物輸送はこのところ増えていて、台湾から胡蝶蘭の定期便があったり、ボジョレーヌーボーが入ってきたりしています。
また、輸出面でも、山梨県の薬品メーカーが静岡空港から薬を輸出しています。中部横断自動車道の全面開通を見越しての取り組みです。こうした、付加価値の高いもの、また小ロットのものの扱いは今後増えてくるでしょう。
海野 中部横断自動車道が佐久小諸JCTまで全面開通すれば、さらに広域からの利用が増えますね。特にビジネス需要は期待できます。
出野 もともと山梨県の企業は清水港を利用していますが、航空貨物は成田空港でした。けれど、成田は大変混みます。その点、静岡はスムーズに手続きが行えるので、こちらにシフトし始めています。そのために税関はもちろん、検疫、動物や植物の検疫などの手続きも全て静岡空港で行えます。
このように、成田、羽田の代替というだけでなく、静岡空港が目的地になるような利用の仕方が増えてきています。特に観光面では、伊豆や富士山をはじめとする素晴らしい本県の魅力を堪能することを目的とした個人旅行客に、羽田や関西国際空港経由でなく、静岡に直通で来た方が良いと思っていただけるよう、国際線のさらなる充実を図っていきます。

■海野俊也氏
静岡新聞社静岡放送東部総局長兼業務部長

1983年、静岡新聞社入社。天竜、掛川、焼津支局、東部総局などを経て2010年、経済部長。14年に編集局次長兼政治部長兼論説委員。16年6月から現職。


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