― 熱海駅が11月に新しく生まれ変わりますね。
齊藤 駅舎が変わるのは実に90年ぶりです。熱海は1896(明治29)年の人車鉄道に始まり、軽便鉄道を経て1934(昭和9)年の丹那トンネル開通で一気に大衆化し、戦後、新幹線が通りました。今回の駅舎改修は熱海の発展の歴史上、大きなインパクトを持つ出来事です。平成の時代のニーズに合わせて新しく生まれ変わるという意味でも、駅は「新生熱海」の象徴になると思います。
― 広域観光の玄関口として周囲の期待も大きいでしょう。
齊藤 熱海駅は伊豆の玄関口でもあります。駅舎の観光案内所には、デジタルサイネージ(電子看板)を2カ所設置し、熱海の情報と伊豆半島の情報を常時発信します。
また、コミュニティーFMのサテライトスタジオをつくり、駅前ロータリーもスタジオに見たてて積極的な情報発信をします。インバウンドも意識し、パーソナリティーは外国の方にもお願いしました。駅前広場は歩道を広くゆったりと作ってあるので、イベントなども行えます。
― 駅ビルには観光、住民両方に利便性の高いテナントが入居予定だそうですね。
齊藤 特に私がこだわったのが高級スーパーです。別荘に行く前に駅でワインやチーズ、地元の食材が買える場が必要と考えました。熱海の別荘は1万世帯あります。年に2回別荘を訪れている方が4回、5回訪れるようになれば、市内への経済効果は今よりもさらに大きいものとなります。
― 駅前には超高層マンションも建設中です。
齊藤 熱海から品川まで新幹線で40分と通勤圏で、都内からのアクセスは抜群です。人口減少が進む中、この地の利を活かすためにも、子育てや教育とともに、働く場づくりにも力を入れています。
昨年度、宿泊客数は300万人を突破しました。今後は、基幹産業である宿泊業の高付加価値化が重要です。お客さまの満足と従業員の満足、双方を満たすようなまちにしていく必要があります。
また、新しいことに挑戦する方を地域ぐるみで応援する創業支援も進めています。例えば、首都圏から市内に移り住み、空き家をリノベーションして、工房を作った方がいます。このような動きを行政としても後押しするため、まちのリノベーションを進め、不動産の流動化を促し、気軽に熱海で事業を始めることができる仕組みづくりを行っています。
まだ小さな動きですが、観光一辺倒でない働き方ができるまちとしての模索をしています。今は多様な働き方を選択できる時代です。築60年のビルをリノベーションし、「Naedoco(なえどこ)」というコワーキングスペースもできました。市職員が常駐し、創業や移住を考えている方と一緒に悩みながら可能性を探っています。さらに、「熱海で林業」をコンセプトに、この秋から林業研修を実施し、若者を中心に新たな働き方も模索していきます。
― 2020年東京五輪開催も追い風になりますね。
齊藤 東京五輪に向け、Wi―Fiスポット等、誘客環境の整備を進めています。また、パラリンピックへの対応という視点も重要と考えています。例えば、障害をお持ちの方々を主体に運営されるホテルというサービス提供のあり方も考えられます。パラリンピックの選手や観戦客に熱海で心身ともにゆっくりしていただく。ここには「日本」があります。海、山、温泉、芸妓、初島にいけば富士山も見える。障害をお持ちの方が運営に参画しているとなれば、より安心ですよね。障害をお持ちの方にいいということは、高齢者にも健常者にもいいまちです。それが「住まうまち熱海」です。 |