サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から  2020年をにらみ、スポーツに対する関心がますます高まっている。こうした機運を経済活動に結び付けようと、県内にスポーツ産業振興協議会が立ち上がった。11月の「風は東から」は、15日に行われたサンフロント21懇話会東部地区分科会のパネル討論を取り上げる。パネリストに、日本政策投資銀行の桂田隆行参事役、羽立工業の中村哲也社長、東部地域スポーツ産業振興協議会の宮崎真行専務理事(三島市地域活性化戦略監)を迎え、スポーツ産業振興の道筋について議論した。コーディネーターはシードの青山茂副社長(サンフロント21懇話会TESS研究員)。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ8

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脚光浴びるスポーツ産業 地方創生の目玉に浮上
■ 2020年を見据え 国家戦略に位置付け

青山 20年前に300万人強だった訪日観光客を、2003年に始まった国のビジットジャパンキャンペーンが押し上げ、今年は2000万人に到達しました。スポーツ産業振興も同様に、国が国家戦略に位置付けたことで、マクロレベルの変化が起こると考えています。
 県内は、東・中・西部でそれぞれスポーツ産業振興協議会が立ち上がっています。国の方針を受け、スポーツ産業にどう参入していくのか、今日はその方向性や指針を見いだしたいと思います。
桂田 「スポーツ産業」は日本で急激に市民権を得た言葉で、きちんと定義付けができておらず、また、あえて決めなくてもいいと思っています。
 ただ、数字で押さえる必要があり、市場規模を5.5兆円としています。体育など教育分野まで入れると7.5兆円、競馬や競輪などの公営事業まで入れると11兆円です。このようにスポーツにはシナジー効果があります。また、地域での効果が比較的大きいのもスポーツです。
宮崎 東部地域スポーツ産業振興協議会(E‐Spo)は一昨年発足しました。20市町と民間企業55団体が加盟しています。
 サイクル、クラブスポーツ、合宿の三つの部会で構成され、大会誘致やシンポジウム、セミナーの開催などを行っています。
 事業化は難しいです。ただ難しいと言っているとほかの地域に置いていかれてしまいます。ですから、2020年を見据えスポーツを産業と認識しながら活動を進めていきたいと思っています。
中村 当社は戦後の復興が始まるタイミングで起業し、バドミントンの羽根で事業拡大をしました。今は、ノルディックウオークのポールや健康サービス事業を展開しています。
 西部地域スポーツ産業振興協議会は設立5年目、異業種交流会的に運営しています。毎年実証事業を行っていて、浜名湖、遠州海岸、ジュビロ磐田などの地域資源や交通の利便性の高さを生かし、浜名湖ウオークフェスタやグラウンドゴルフのチャンピオン大会など全国レベルの大会誘致をしています。

■桂田 隆行氏
日本政策投資銀行参事役

1999年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。入行後は化学業、ホテル・旅館業などへの融資業務に従事。現在は地域企画部に在籍し、スポーツ産業に関する調査研究を担当。

 



■ 試算以上の経済波及効果を期待

青山 スポーツ産業の経済波及効果をどうお考えですか。
桂田 スポーツ産業は、純粋なスポーツ産業とスポーツ関連産業に大別されます。スポーツ産業は、スポーツ用品、フィットネスクラブなどの健康事業。関連産業は合宿×スポーツ、観光×スポーツ、健康×スポーツなど幅広くあります。
昨年、経済波及効果の試算をしたところ、1.6倍程度でした。感覚的にいうと医療福祉と同じ程度です。数字だけ見ると波及効果の伸びは大きくはないのですが、波及する前の元値、スポーツ産業自体が大きくなってくるはずなので、絶対額としてはもっともっと大きくなるというのが私の認識です。
青山 アスルクラロ沼津が来季からサッカーJ3に参入します。スタジアム建設の話も出る中、地方にとってスタジアムは有効なのでしょうか。
桂田 「スマート・ベニュー」という概念があります。スポーツを核とした街づくり、スタジアムを核とした交流空間の形成を言います。スタジアム単体では黒字化は難しい。だから無駄というのではなく、スタジアムはスポーツ産業のインフラであって、いろいろな人や企業・組織が参入することで黒字化する。一つはIT化や観戦環境を良くしてチケット販売額を上げたり、ファンが満足する環境をつくったりするスタジアム自体の高付加価値化です。もう一つは、周辺の商店街などと連携して地域に波及効果を広げる。その結果、スタジアム本体は赤字でも町全体は黒字という絵を描いています。
宮崎 地域への波及という意味で、アスルクラロ沼津の試合後に、飲食店や物販店に立ち寄るとサービスが受けられる「スポーツバル」という企画を進めています。10月から始めて、今40以上の店が参画してくれています。この取り組みは2次的にいろいろなものに波及する、より幅広い産業振興につながると思います。
青山 スポーツ産業市場は工夫次第で広がるということですが、ノルディックウオーキング市場を広げるために何をされていますか。
中村 ノルディックウオーキング市場は100万人です。しかし、散歩をする人口は4000万人と言われていますので、その1割の400万人まで伸びるだろうと、商品開発や普及活動をしています。静岡県ノルディック・ウオーク連盟に所属し、指導員養成プログラムを開発して、県内で350人ほど育成しました。自治体などから引き合いがあると、近い方に声掛けをして教室を運営してもらっています。実際は非常に大変で、普及活動は先行投資的な意味合いが強いですね。
宮崎 E‐Spoはスポーツ産業振興とともに、スポーツコミッションの役割も担っています。ですからコミッション機能を発揮するためのシステム化が必要です。すぐには進まないでしょうが、今後合宿や大会誘致が伊豆・東部地域に有益と判断すれば、労を惜しまずやるつもりです。

宮崎 真行氏
東部地域スポーツ産業振興協議会専務理事(三島市地域活性化戦略監)

三島市地域振興部長、産業振興部長を経て、現職。街中がせせらぎ事業、みしまコロッケの立ち上げなどで産業振興施策を担当。
中村 哲也氏
羽立工業社長

慶応義塾大工学部を卒業後、岡村製作所入社。現在は羽立工業、羽立化工などの社長を務める。
湖西少年少女発明クラブ会長

■ 先進地・静岡県 次の一手に工夫必要

青山 スポ―ツ産業振興の全国の動きについてお話しください。
桂田 スポーツコミッションの事例は全国に増えています。ただスポーツ産業をテーマにした協議会、プラットフォームは見当たりません。実は静岡県は先進地。二番手は沖縄県ですね。
 スポーツ産業を振興するにあたり、その啓発に地元メディアが重要な役割を担います。岡山の山陽新聞は「スポーツ新考」というコラムを長く続けていました。このおかげでスポーツで何かしようという思いが地元の経済同友会や商工会議所、大学などと共有できたようです。
青山 E‐Spoの今後の活動予定をご説明願います。
宮崎 E‐Spoには20市町が加盟していますが、小さくてもいいのでそれぞれにスポーツコミッションがほしい。そうすることでE‐Spo経由でさまざまな投げ掛けができる。そうすれば民間とマッチングができると思います。その仕組みはスピード感をもってつくらなければいけません。
 もう一つは美しい伊豆創造センターとの役割分担です。例えば自転車合宿の誘致は同センターの命題だと思いますが、県、同センター、E‐Spoがどう役割分担すれば良いのかを話し合う場が必要と考えています。
中村 国が後押しをしてくれる今こそ、中小企業にとって大きなチャンスだと思います。西部もこの会を活用して積極的に自ら考え創造力を働かせて企画を提案する、という人がたくさん増えないとうまくいかないと考えています。
 浜名湖のウオーキングイベントは天気の関係で参加者が昨年の半分にとどまりましたが、これを1万人規模の大会にし、イベントビジネスとして商売にしたいですね。
青山 国の政策を地方の動きにどうつなげればいいのでしょう。
松山大貴スポーツ庁参事官付参事官補佐(基調講演者) 国の成長戦略に位置付けられたことでスポーツが地方創生事業の対象になってきました。この事業は自治体が国に申請してきた事業をある程度審査して交付金を決めるのですが、その際市や県の財政局内でまず優先順位を決めていきます。
 今までは社会保障や教育、産業施策が優先されたと思いますが、これからは堂々と地方創生の新しい取り組みとしてスポーツを通じた地域活性化の申請が出てくると思います。国として取り組むという大きな旗を揚げたので、地方自治体の活動も活発化していくと思います。
青山 その準備に当たる「弾込め」を、地域の協議会を活用して官民挙げてやってほしいと思います。


青山 茂氏
(株)シード取締役副社長

オリエンタルランドを経て、現在静岡県内外の企業及び自治体のプロジェクトのコンサルティングから事業プロデュースまで幅広く手掛ける。
サンフロント21懇話会TESS研究員


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