サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東からファルマバレープロジェクトの推進エンジンとして、旧長泉高校跡に開設した静岡県医療健康産業研究開発センタ ー。開所から3カ月がたち、企業やベンチャー、大学、研究機関が自前の技術やアイデアを持ち寄り、共同で新製品開発などを進める「オープンイノベーション」の成果が出始めている。12月の「風は東から」は同センターの取り組みを紹介する。医療健康産業への参入支援や入居企業同士で始まった共同研究などについて特別座談会出席者に聞いた。(聞き手:編集部)

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ9

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ファルマ新拠点開設3カ月医療分野の製品化加速
■ 資格取得を強力支援

―県医療健康産業研究開発センター(新拠点)の役割と機能について説明をお願いします。
 植田 主に医療健康産業分野の製品化・販路拡大、新規参入の加速に向けて、オープンイノベーションによる創薬開発、医療機器開発、部品開発、試作などを行っています。特徴は(1)ワンストップによる企業支援(2)成長ステージに応じた支援(3)交流・連携機会の提供(4)人材の高度化―です。支援機関のファルマバレーセンター(PVC)は、入居企業ごとにラボマネージャーやコーディネータを配し、きめ細かな支援を行っています。
 深澤 地元で50年以上製造業をしていますが、新拠点の開設を機に自社の技術を生かして医療機器分野に参入したい、売り上げの3割を医療機器関連にしたいと考えました。
 ただ、医療機器分野は資格がないと参入ができません。そこで、昨年からPVCの指導の下、医療機器製造業の登録を目指し、今年1月に資格を取得しました。現在は、次のステップとして医療機器の品質マネジメントシステムの構築を行っています。
 関口 PVCだけでなく、リーディングパートナーとして入居されたテルモからこの分野に精通した人材を派遣、指導してもらっています。今まで深澤電工をはじめ9社に同様の支援を行っています。
 佐野 MEセンターは自社が持つ品質マネジメントシステム構築などのノウハウをできるだけ地域企業にお伝えすることが大事な役割と捉えています。先の人材の派遣もMEセンターにとどまらず、全社挙げて支援しています。


■特別座談会出席者


■ 技術力の上に信頼性を構築

― 深澤電工の小型・高性能電子基板技術はテルモに役立ちそうですね。
関口 テルモの品質に対する要求は世界レベルです。いかに技術力が素晴らしくても、品質管理ができていないと取引できません。その点で、深澤電工はISO9001の取得、また、工場管理の基本「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」を30年間実行し継続しています。
深澤電工ならテルモの高い要求にも応えられるのではないか、とわれわれが間に入って話を進めています。
佐野 地元企業とは今まであまりお付き合いがありませんでした。そういう意味で今回、深澤電工とお仕事をするのは当社にとっては新たな出会いと考えています。ビジネスとしてはまだ入り口。これから時間をかけてお付き合いさせてもらいたいと思います。
上原 医療電子機器は家電と違い商品のライフサイクルは約10年単位ですから、モデルチェンジのタイミングで小型化・軽量化などの技術革新を常に入れています。
一方で、あまり最新鋭の技術を採用すると信頼性、耐久性が担保できない。10年先も部品の品質保証をしてもらわないとなりませんし、万が一の医療事故につながりかねません。技術力だけでなく信頼関係の構築が重要です。
植田 このセンターは地元企業がテルモに対して自社の技術力をアピールする、言うなれば展示場の側面も持っています。



■ がんセンターとの連携模索
■オープンイノベーションが始まった新拠点
― 静岡がんセンターに隣接するメリットをどうお考えですか。
 佐野 がんの分野は当社にとっても重要課題ですので、がんセンターとの連携はぜひ模索したいと思っています。何といっても距離が近いですし、全国トップクラスの病院ですから学ぶところは多いと思います。
 植田 入居企業向けのがんセンターツアーを企画しようという話が山口建総長から出ています。例えば、抗がん剤を扱うスペースは非常にクリーンな環境で薬剤が漏れない仕様になっています。こうしたところを実際に見ていただくことで、企業から新しいアイデアが出ることもあるでしょう。倫理面からも検討し、ぜひ実現にこぎつけたいと考えています。
― がんセンターとハヤブサは共同研究が始まったそうですね。
 植松 医療現場のニーズをもとに、新しい医療機器の開発をしています。各病棟に現場のニーズを募集する「投書箱」を設置し、その中から開発テーマを見つけています。今回、ハヤブサの3Dプリンター技術なら試作ができるのでは、と声を掛けました。
 奥田 今までは家電と自動車部品を量産していましたが、ここへの入居をきっかけに医療機器へ参入しました。高機能プラスチックは金属に比べ安価で、耐熱性や耐薬品性、抗菌性を備えており、医療現場でのニーズが高まっています。今開発中の試作品も高さを変えたり、羽根を付けたりと要求がたくさんきますが、当社の3Dプリンターならすぐに試作対応できます。
 また今月、医療機器製造業の申請を提出し、順調に行けば来年1月には登録になります。その支援はPVCにやっていただきました。
 関口 医療機器開発は、製造業登録→製版業許可取得→薬事承認というステップを確実にクリアーすることが不可欠です。製品をグレードアップするための改良も同時並行でやっていきます。
 奥田 直接医療従事者から意見をもらえるのがいいですね。改良を重ねて先生や看護師さんから評価をいただけるのがとても励みになります。
 今開発しているものは2017年度中に市場に出したいと考えています。
 植松 ハヤブサは地の利を生かした製品開発を実践しています。また、この事例のように医療現場のニーズを地元企業の技術力で製品化し、医療現場と二人三脚で改良し商品化する、という仕組みを確立したいですね。


■ 販路拡大が大命題

― ほかにも共同開発が進んでいるそうですね。
 深澤 同じく入居企業のヤザキ工業と共同開発している案件があり、会議も12回を数えました。PVCが間に入り、あるテーマについて、ヤザキ工業がまとめ役、基本設計など主要な部分は私どもがやっています。今月には試作品ができ、来年1月末には量産試作が完成します。また、一部部品の試作をハヤブサにお願いしました。現在、3社でものづくりが進んでいます。
 植田 大手メーカーの生産拠点があり、研究開発をしている企業が一緒になっている施設は全国を見てもそんなに例がありません。生産拠点があるからこそ、有益なアドバイスや支援がもらえる。それが新拠点の強みですね。
 奥田 今取り掛かっている製品開発のサポートはもちろん、良いものを作っても売れなければ意味がないので、今後販売に向けた支援をぜひお願いしたいと思います。
 佐野 医療機器は販路が非常に特殊ですから、出口をどこに定めるか、どこからアプローチするかが重要です。そういう知識をもった人にアドバイスしてもらわないと、幅広い顧客の獲得が難しくなります。
 関口 そういう意味ではテルモに代表されるメーカーとのパイプをコーディネータやラボマネがいかに作れるかが非常に重要。もう一つは代理店。これも大事です。そのネットワークづくりが大きな課題ですね。地元中小企業が新拠点やPVCに求めていることだと思います。

■入居企業一覧

 



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