― 本県が農業に力を入れる背景の説明をお願いします。
若原 農業は今、世界的に大きな変革期にあります。個人的には、1万年前の農業開始から、18世紀の資本主義経営の誕生、そして20世紀、「緑の革命」に代表される化学肥料などによる穀物の大量増産に続く第4の革命期と考えています。
具体的には、ICTを活用し農業の生産性を飛躍的に伸ばす時代に入った、というのが現状です。
もはや国土が広いというだけで農業輸出国として成功する時代ではありません。ICTを活用し、温度・湿度・二酸化炭素などをコントロールし生産性を高めることなどで、九州とほぼ同じ大きさのオランダは今や世界第2位の農業輸出国となりました(トップは米国)。
日本でも「スマートアグリ」と言われる手法が数年前から本格化してきました。本県では昨年稼働したサンファーム富士小山(小山町)の高糖度トマト「アメーラ」プラントが代表例です。オランダの環境制御システムをベースにアメーラ用に大幅な改良を加えました。
本県には豊富な日射量と良質な水があり、339もの多品種の食材を生み出すばかりか、それぞれが一定の評価をいただいています。
また、すでに「アメーラ」や、ロボット工学から農産物の流通システムに参入したエムスクエアラボ(加藤百合子社長・菊川市)など、農業分野で先進的な取り組みをしている企業がたくさんあります。
こうした本県の「場の力」に加え、ご縁があって、理化学研究所(理研)や慶応大環境情報学部など日本でもトップクラスの研究機関と一緒に、農業の高度化に取り組む機会を得ました。
現在、沼津市の愛鷹山ろくに位置する東海大学旧開発工学部を活用し、農業・食・健康をテーマに、産学官・農商工連携したオープンイノベーション拠点「アグリイノベーションセンター」を整備しています。
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