大坪 農業が今や総合的なビジネスになりつつあります。
川勝 和食がユネスコ無形文化遺産になったのは追い風です。本県は食材数が日本一の439品目(二位は218品目)の「食材の王国」です。本県民の健康寿命が世界トップクラスなのは、本県が四季折々の「旬の食材」が日本でもっとも多彩であるおかげでしょう。
機能性表示食品として三ケ日みかんが生鮮食品で国内第一号に認定されましたが、「医食同源」「薬食同源」の伝統的理念に本格的に科学の知見を加えることにしました。その拠点として沼津市の東海大学の旧校舎を活用して、先端農業推進拠点「AOI PARC(アオイ パーク)」を整備します。
岡野 この拠点の大きなミッションの一つは、生産性の向上です。質の良い作物を作る農家は後継者不足に悩んでいます。こうした「匠の技」を科学的に分析し、若い人たちが効率良く習得できるようにすれば、もっと農業に参画する人も増え、本県の農作物のレベルも上がるのではないでしょうか。
川勝 それが狙いの一つです。この拠点には、理化学研究所と慶応大(環境情報学部)という日本トップクラスの研究機関が入ります。慶応大はICTの活用で日本に固有の「匠の技」に結晶している経験や勘などの「暗黙知の見える化」を目指します。
岡野 現在、難波喬司副知事を中心に慶応大との提携を進めています。先日はNHKで同大の神成淳司准教授の研究が紹介されました。今夏の開設に向け、すでに入居企業も約10社が決まっていると聞きます。大手から中小企業まで参入するので、新しい研究成果が楽しみです。 |