サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

風は東から 東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回「風は東から」で取り上げている。本年度は、スポーツ産業の振興や、静岡空港の活用などを取り上げた。年度最後の3月は、川勝平太知事、懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行会長を迎え、ファルマバレープロジェクトが進む東部の地域づくりについて語り合った。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学総合研究所の大坪檀所長。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

バックナンバー


ファルマ起点のまちづくり 農・医・スポーツを産業化
■ 攻めの農業に拠点整備

 大坪 農業が今や総合的なビジネスになりつつあります。
 川勝 和食がユネスコ無形文化遺産になったのは追い風です。本県は食材数が日本一の439品目(二位は218品目)の「食材の王国」です。本県民の健康寿命が世界トップクラスなのは、本県が四季折々の「旬の食材」が日本でもっとも多彩であるおかげでしょう。
 機能性表示食品として三ケ日みかんが生鮮食品で国内第一号に認定されましたが、「医食同源」「薬食同源」の伝統的理念に本格的に科学の知見を加えることにしました。その拠点として沼津市の東海大学の旧校舎を活用して、先端農業推進拠点「AOI PARC(アオイ パーク)」を整備します。
 岡野 この拠点の大きなミッションの一つは、生産性の向上です。質の良い作物を作る農家は後継者不足に悩んでいます。こうした「匠の技」を科学的に分析し、若い人たちが効率良く習得できるようにすれば、もっと農業に参画する人も増え、本県の農作物のレベルも上がるのではないでしょうか。
 川勝 それが狙いの一つです。この拠点には、理化学研究所と慶応大(環境情報学部)という日本トップクラスの研究機関が入ります。慶応大はICTの活用で日本に固有の「匠の技」に結晶している経験や勘などの「暗黙知の見える化」を目指します。
 岡野 現在、難波喬司副知事を中心に慶応大との提携を進めています。先日はNHKで同大の神成淳司准教授の研究が紹介されました。今夏の開設に向け、すでに入居企業も約10社が決まっていると聞きます。大手から中小企業まで参入するので、新しい研究成果が楽しみです。

■岡野光喜 スルガ銀行会長
サンフロント21懇話会代表幹事

 

 


■ 進化する「医療城下町」

 大坪 昨年は医薬品・医療機器の2020年目標合計生産金額が2兆円に上方修正され、ファルマバレープロジェクトの新たな拠点「医療健康産業研究開発センター(愛称・ファルマバレーセンター)」が長泉町に誕生しました。
 川勝 医薬品・医療機器で1兆円に達しており、すでに日本一ですが、そこに本県の化粧品生産金額の約4000億円を加えると2兆円は夢ではありません。静岡がんセンターとこのセンターとは「美と健康の科学技術の拠点」であり、「医療城下町」づくりの車の両輪です。
 岡野 同プロジェクトは「臨床ニーズオリエンテッド」の製品を生み出し、参画企業に医療分野における品質マネジメントシステムの世界標準規格ISO13485の取得を働き掛けています。同センターにはテルモがリーディングカンパニーとして、また、医療機器分野に参入した地元企業も10社ほど入居しています。それぞれの企業の「得意分野」を生かしたオープンイノベーションが進んでいますね。
 川勝 プロジェクトの中核支援機関「ファルマバレーセンター」は、「静岡県産業振興財団」の一部門でしたが、研究開発拠点が定まって役割が大きくなるので、新法人として独立させ、機動力を発揮して地域企業を支援します。
 岡野 県が作った低利の融資制度(クラスター産業分野支援貸し付け)もぜひ活用しながらもっと多くの地元企業に参入してもらいたい。すでに入居企業と静岡がんセンターが協力して新製品の開発も始まっていますので、ここから、特にアジアに向けた医療産業が発信できると思います。2兆円も決して高い目標ではないでしょう。
 川勝 射程内です。静岡がんセンターの山口建総長が進める「患者さんとその家族を徹底支援する」という理念のもとで、プロジェクトの4戦略(ものづくり・ひとづくり・まちづくり・世界展開の推進)が目覚ましい実績をあげています。
 岡野 静岡がんセンターのある長泉町は県内で唯一、流入人口の多い町になりました。
 川勝 手厚い子育ての支援があり、国が目指す合計特殊出生率1.8をすでに抜いて1.82を実現しており、駿河平には別荘を持っている人も多く、公園、レストラン、美術館などが高級感を醸しています。子育て・医療・文化の三拍子がそろった品格のある地域になってきましたね。
 岡野 1973年にベルナール・ビュフェ美術館を造り、その後ヴァンジ彫刻庭園美術館開館に合わせ、訪れる皆さんに一日楽しく過ごしていただこうとレストランも造りました。
 大坪 また、新幹線三島駅周辺も大きく変わりますね。
 川勝 駅北口の東レ三島工場の壁面もきれいになり、JR東海の研修所も周囲の景観と調和しています。
 岡野 この周辺は道路整備が進んでいて、三島駅北口から国道246号をまたぎ、新東名高速道路につなげようとしています。駅南にハイクラスホテルの進出も決まりましたし、新幹線三島駅が地域のハブとしてもっと機能するでしょうね。

■川勝平太 知事

■ スポーツで地域に活力を
 大坪 伊豆市で自転車競技が行われる2020年の世界的祭典まであと3年です。
 岡野 その前年の19年にラグビーワールドカップが開催されます。
 川勝 ラグビーワールドカップの会場はエコパスタジアムですが、御殿場・裾野では7人制の女子ラグビー大会の開催や、公認キャンプ地に応募する動きが出てきました。ラグビーにも注目が集まっています。
 同じく19年2月には、伊豆市でトラック自転車競技世界選手権大会が開催される見込みです。世界選手権大会は種目も選手数も全ての大会のトップクラスです。県では、急きょ開催準備委員会を立ち上げました。この機を逃さず、東部・伊豆はもとより、本県全体を、スポーツを柱に「サイクリング文化の聖地」を目指します。
 岡野 当社も御殿場にあるサイクルステーションを拠点に、サイクリングツアーを手掛ける「リンケージサイクリング」と、東部・伊豆地域を走るイベントを何度も開催しています。今年も、下田・天城湯ヶ島などをめぐる2日間のチャレンジツアーや、初心者向けのランチファンサイクリングなど25回を予定しています。
 川勝 川端康成は「伊豆は海と山の風景の画廊」と表現しました。そこに富士山麓さらに箱根を加えて「美しい風景の画廊」ととらえ、その中を自転車で安全・快適に走るのです。近くには温泉があり、景色もよく、食事もおいしい。そういう所でスポーツを楽しむのは幸福でしょう。
 本県はイタリアのフリウリ・ヴェネチア・ジュリア州とスポーツ交流協定を結んでいます。相互に自転車大会を開きサイクリストの交流を始めています。
 大坪 こうした動きは産業化にもつながります。われわれの大学でもスポーツ経営学科がありますが、ラグビー、サッカー、自転車などのスポーツから新しい職業やサービスが生まれるといいですね。
 岡野 それには地元に強いチームを作らないとなりません。幸いサッカーは県内にJ1とJ3が2チームずつありますので、一番応援していただく県民の方が喜ぶような企画をどんどんやってほしいですね。
■大坪 檀 静岡産業大学
総合研究所所長

サンフロント21懇話会アドバイザー


■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.