サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

風は東から 最近、旅行雑誌やテレビで度々特集される「道の駅」。「休憩」「情報発信」「地域の連携」の3機能を持ち、国土交通省が認定する。1993年に制度がスタートし、今年4月現在、全国で1117カ所を数える。その役割は観光振興だけでなく、近年は地域産業の振興や移住定住支援、介護、防災と多岐にわたる。運営形態も第3セクターや指定管理などさまざまだ。6月は、伊豆の玄関口函南町に先月オープンした道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」を中心に取り上げ、観光だけでなく、地域振興にどのように活用しているのか探った。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

バックナンバー


多彩な役割担う道の駅 地域振興の主役に
■ 年間目標上回るか
 伊豆半島で8番目となる道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」。5月1日の開業以来、好天にも恵まれ、一カ月で15万6000人の来場者を記録。当初目標の年間70万人を大幅に上回りそうなペースだ。
 「ゲートウェイ」の名前が示す通り、伊豆半島の道路情報・観光情報を網羅。常勤のコンシェルジュを配置した観光案内、ジオパークビジターセンターも併設。地域の物産販売所「いずもん」は函南町で育った新鮮な野菜が毎日届き、地元の特色を生かした土産物が並ぶ。コミュニティー広場は災害時の避難地として救護物資の中継地点の役割も担っている。
 道を挟んだ西側には、現在「川の駅」を整備中。道の駅と川の駅を結ぶ展望歩道橋からは富士山が見え、24時間営業のコンビニエンスストアも併設された。
 伊豆ゲートウェイ函南は、その整備運営手法でも注目されている。PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)と呼ばれる事業手法で、公共施設を造る際、従来のように行政が施設を整備するのではなく、民間資金を活用し民間が施設整備と公共サービスの提供を受け持つ。

 ■伊豆ゲートウェイ函南オープンには大勢の関係者が集まった

 


■ 計画遂行に手応え

 中心となって事業を進めた森延彦函南町長に手法やメリットを聞いた。
 ― PFIを計画段階から行ったのは全国でも珍しい事例と伺いました。
  PFIの手順は、(1)企画・計画(2)事業実施(3)管理運営(4)維持管理です。(1)を行政が行い、(2)から民間事業者の提案を受けるプロポーザル方式に進むのが一般的ですが、公共事業費の激減や町の財政見通しなどを踏まえると、従来の公共主導の進め方では厳しい。そこで、われわれは(1)から(4)までの一連の事業をプロポーザル方式で行いました。
 最初の企画・計画段階で民間事業者の提案内容をどう評価するかが最大の課題でした。知恵を絞った結果、26に上る評価項目を作り、定量的に評価ができるようにしました。
 国土交通省の補助採択を受け先導的官民連携可能性調査を実施したこと、また金融機関の意見を参考に、事前の需要予測を多角的に進め、計画遂行に手応えを感じることができました。
 ― PFIを採用した評価をお願いします。
  特産品の販売に当たっては、民間事業者に販売促進のインセンティブ(目標を達成するための刺激や誘因)を付与しました。特別目的会社「いずもんかんなみパートナーズ」(代表企業・加和太建設)を設立し、売り上げを上げれば上げるほど町に対する手数料率が下がり特別目的会社の利益が増える仕組みにしています。
 また、コンビニエンスストアも欲しかった機能です。というのは、防災の観点から24時間営業で水や食料を売っていること、オンライン銀行があることからです。ただ、これは従来のPFI枠では無理がある。これはPFIの付帯事業として自主事業枠を創り、民間事業者の自由提案にすることで解決しました。コンビニが出来たことで利用者の利便性向上と売り上げ増が図られています。

■森延彦 函南町長
東京農業大卒業後、1969年静岡県庁入庁。2007年函南町副町長に就任し、10年3月より現職。函南町生まれ


■ 経済効果は町外にも

 ― 地元への経済効果についてはいかがですか。
 建物の建設は言うに及ばず、出荷者協議会には地元の事業者を中心に58社(個人41、法人17)が参加しています。函南産の野菜も、大型連休中は1日3回転では間に合わないくらいの売れ行きでした。雇用も生まれています。伊豆のお土産を数多く扱っていますので、波及効果は函南だけにとどまりません。
 また、周辺地域のコミュニティーFMや県内ラジオ局がここから番組を発信しています。イベント広場も地元のお祭りに使ったり、伊豆の物産展を開いたりして多目的な活用をする予定です。
 ― 併設して整備される川の駅も楽しみですね。
 道の駅に隣接して国土交通省直轄事業「かわまちづくり事業(水辺に親しむ事業)」「河川防災ステーション事業(防災拠点)」を同時進行しています。川の駅は階段護岸やワンド(入り江)を造り親水エリアとします。河川法が改正されたので、川辺でドリンクや食べ物も楽しめるんですよ。ドッグランを造る計画もあります。
 道の駅中心に約29fは県の内陸フロンティア総合特区のモデル地域の設定を受けており、道の駅の供用開始に伴い、ある企業が新規出店準備を進めています。
 この4月から「環境・健康・交流都市函南」という三つのキーワードの下、関連事業をしっかりと進めていこうとしています。道の駅はまさに起爆剤。函南町のまちづくりに貢献していく施設になると思います。

 
■「二つの顔」を持つ 〜富士川楽座
■富士山を望む景観が楽しめる富士川楽座
 道の駅「富士川楽座」は、東名高速道路と県道に面している。全国でも珍しい「二つの顔」を持つ。2000年にオープンし、運営は指定管理会社「富士川まちづくり」が担う。第3セクターからスタートしたため通常の機能以外に、プラネタリウム、子供向け体験館、セミナールーム、展示ギャラリーがある。
 年間利用客数は約340万人(16年度)。そのうち地元客が4割を占める。セミナールームやギャラリーは地元住民の活動拠点だ。週末は、地元だけでなく近隣市町の子供会がバスで訪れ、体験施設やプラネタリウムで1日遊んで帰る。
 12年の新東名開通で一時279万人まで落ち込んだが、プラネタリウムの導入や立体駐車場の整備などで巻き返しを図った。加えて、14年の富士山世界遺産登録で、徐々に客足が戻ってきたという。展望ラウンジは富士山から駿河湾まで一望できるぜいたくな景観が人気だ。
 こうした「追い風」の一方で、毎週末フリーマーケットや植木市、骨董市などを開催。プラネタリウムの解説に人気声優を起用するなど、ソフト中心の施策を丁寧に積み重ねてきた。
企業関係者の利用も多い。高速道路と一般道に面しており、駐車場やレストランもあるため、ビジネスの打ち合わせがワンストップできるからだ。ギャラリーにはインターネットでつながった仲間同士が全国から自慢の作品を持ち寄る。
今年2月、隣接する土地に観覧車が開業し、来訪客が2割増加。観覧車の営業時間に合わせ、野菜売り場やプラネタリウムの営業時間を20時まで延ばすなど、柔軟に対応している。
同社の関佑輔広報・渉外課長は「富士川楽座の由来は、楽市楽座から。名前通り地元からも、県外からも多くの方が集まる場所になってほしい」と語る。

 

■ 地域に寄り添い盛況に 〜くるら戸田
■くるら戸田は地域のコミュニティづくりを担っている
 一昨年4月、沼津市戸田地区に道の駅「くるら戸田」が開業した。
 もとは同市の戸田地域活性化センターとして整備され、津波被害の及ばない範囲で戸田地域に点在する行政機関をすべて集約。防災拠点や避難所の役割を担う。観光・物産コーナーの奥に、同市別庁舎(市民窓口)、戸田地区センター、高齢者交流ルームがある。日帰り温泉施設「壱ノ湯」も引っ越し、多くの人が訪れている。
 指定管理会社は「呉竹荘」。高齢者交流センターでの振り込め詐欺撲滅教室や健康教室、子供向け食育教室なども企画する。同社の永井亮介駅長は「高齢者のグループ活動が活発で月1回の利用受け付けが難しい状況」と盛況ぶりを語る。
 観光客向けのサービスにも力を入れている。最近は、キャンピングカー利用者が増え、週末ともなると駐車場にキャンピングカーがずらっと並ぶ。こうした新しい客層に、くるら戸田では地元の飲食店情報を紹介。最近は首都圏から移住したイタリアンシェフが深海魚を使ったランチやディナーを週末限定で提供している。
 周辺飲食店の売り上げが2割アップし、地域活動を盛り上げるための一般社団法人もこの4月に設立された。自転車で訪れる人も増え、バイシクルピットやサイクルラックも置いている。人口3000人のこの地区に今や年間20万5000人が訪れているという。


■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.