サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から 2005年、戸田村と合併し全長63キロもの海岸線を有するようになった沼津市。年間156万人を集める沼津港を中心に、風光明媚(めいび)な海岸線には近年、新たな魅力が加わり始めている。7月は沼津市の「海」観光を取り上げる。海を活用した観光をどのように地域の活性化につなげていくかを関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

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海岸線生かし観光振興 海路、陸路で実証開始
■ 沼津に新たな観光スポット続々

 2016年度の沼津市観光交流人口は約414万人に上る。白砂清松の千本松原、沼津御用邸、三津シーパラダイスや淡島マリンパークなどの観光スポットの集積に加え、ここ数年で内浦漁協が直営する「いけすや」や、北条水軍の拠点として国の史跡に指定された「長浜城」など、新しい観光スポットもお目見えした。最近では人気アニメの「聖地」としてファンが押し掛けている。
 市は本年度、(1)海(2)スポーツツーリズム(3)情報発信―に力を入れる。同市観光戦略課の湯川真由美課長は「見る観光から体験する観光が求められている。いけすやでとれたてのアジ丼を食べたり、長浜城北条水軍まつりで海に向かって放たれる火縄銃の『ドン』という心臓に直接響くような音を楽しんだり、五感で沼津の海を感じてもらいたい」と語る。
 また、海岸を使ったイベントの支援も行う。牛臥海岸の沼津ビーチフェスは市民中心に行われて今年で5年目。昨年からは牛臥山公園にエリアを広げ、ワークショップや各種のショップなども出店されるようになった。市がハード整備に力を入れ、市民や民間事業者がさまざまなアイデアで活用するという好循環が起こっている。
スポーツにも力を入れている。国際大会の事前合宿誘致やサッカーJ3「アスルクラロ沼津」の応援とともに、海や砂浜を活用したヨット、オープンウオータースイミング(遠泳)、ビーチサッカーなど、海水浴だけでないマリンスポーツのメッカを目指す。
また情報発信は、沼津を訪れる人に食事処や宿泊施設の紹介をはじめ、観光スポットなどを盛り込んだモデルコースを提案する観光ポータルサイトを本年度新たに作成する。

 ■沼津市内浦の発端丈山から見る夏の海岸線。左手は淡島

 


■ 海を楽しむ交通網整備に注力
■自転車は海沿いを楽しむ注目の“足”だ
■ドリーム★スターは手軽に「海旅」が体験できる
 この夏は、特に海を楽しむ“足”の確保に力を注ぐ。
 一つは船を使った交通網。エスパルスドリームフェリー(鈴木洋一社長)がゴールデンウイーク(GW)に次いで、土肥港〜戸田港〜沼津港を結ぶ快速遊覧船「ドリーム★スター」を今月22日から就航させた。夏休み中(8月末まで)毎日運航する。リニューアルを進めていた戸田の「駿河湾深海生物館」も就航に合わせてオープンする。
 また、遊漁船による海上タクシーの実験運航も8月5日からの土日祝日(9日間)限定で行う。沼津地区遊漁船協議会が全面協力し、沼津港〜内浦〜らららサンビーチを結ぶ。
 もう一つが自転車の活用だ。同市は昨年度から伊豆の国市、伊豆市、函南町とともに「狩野川周辺サイクル事業推進協議会」を設立。プラサヴェルデでの啓発イベントや、自転車と船を組み合わせたモニターツアー「ぐるっと“ぬまいち”」、自転車でログスポットを回り獲得ポイントを競う「シクログ」などを行った。
 本年度は、スポーツ自転車による有料のレンタサイクルサービスを導入する。これまでの「ぬま輪(りん)」という無料レンタサイクルは、リサイクルの観点から放置自転車を市で整備し貸し出していたため、スマートさに欠けていた。新たなレンタサイクルは「有料化しスポーツタイプを厳選することで、より軽快に、スタイリッシュに沼津を楽しんでもらうことができる」と同市スポーツ観光推進室の横山憲利主査は期待を寄せる。10月を目安に市内複数個所を拠点に貸し出し予定だ。
 また、「ドリーム★スター」の運行で人の周遊が見込まれる戸田地区でも、夏限定の有料レンタサイクルの社会実験を行う。並行してGWに好評だった無料のぬま輪も増やす予定だ。
 海と船、自転車を組み合わせ、そこに食や体験などを提案し、海を活用した観光の魅力を2倍にも3倍にもする取り組み。遊漁船を使った海上タクシーも、自転車ごと乗船できるよう、車載用の自転車ラックを船に転用する。


■ ガーデンポート実現へ第一歩
 沼津市の観光交流の核となる沼津港。2002年度に策定された「沼津港港湾振興ビジョン」に基づき、大型展望水門「びゅうお」、沼津魚市場「INO(イーノ)」、地元の特産品が並ぶマーケットモール「沼津みなと新鮮館」が建設されている。また民間企業による「沼津港深海水族館(シーラカンス・ミュージアム)」や飲食エリアができ、3年ごとの訪問客調査では10万人単位で増加している。一方、統一感に欠ける景観や中心市街地との連続性の欠如、休日の慢性的な渋滞などが課題となっている。
■INOではセリの様子が楽しめる
 沼津港を管理する県は15年度に「沼津港みなとまちづくり推進計画」を策定。10年、20年後の沼津港の将来ビジョンを有識者、市とともにまとめた。計画では、各エリアの機能や短期、中期、長期のロードマップが盛り込まれている。
 本年度は港湾の玄関口に当たる「北物揚場」の有効活用を検討するため、県が外港に大型バスの一時待避所を整備し実証実験を行う。同市水産海浜課の白岩秀訓主幹は「北物揚場には、沼津港の玄関口として快適なおもてなし空間を創出し、気持ち良く訪れてもらえる機能を配置したい。港湾の機能を損なわない範囲で、地元の意見と港湾管理者の意見、市のまちづくり政策などと調整しながら実現したい」と抱負を語る。用地確保などの課題もあり、新しい港の姿が明らかになるのはまだ先だが、行政、民間を問わず、地域ぐるみとなって「みんなで創り、みんなが集うガーデンポート」の実現に向け、第一歩を踏み出した。

目線を変えると見えてくる新たな海観光の魅力
エスパルスドリームフェリー
鈴木洋一社長
 沼津港〜戸田港〜土肥港を結ぶ快速遊覧船「ドリーム★スター」は、今年のゴールデンウイークに9日間の実験事業として行った。今回は夏休み期間中の41日間の就航だ。その結果を踏まえて、今後どのような形で継続できるかを決めていきたい。難しいのが船員の確保だ。地元の漁協にも相談しながら、人材を探している。
 伊豆の観光マップは伊豆半島だけを載せている。土肥港と清水港を結ぶ駿河湾フェリーの航路も途中で途切れている場合が多い。しかし、目線を変え、駿河湾を真ん中にした地図を描いてみれば、富士山を背景に大変魅力的なゾーンが広がっている。清水港から土肥港まで、フェリーで約1時間。今回はその先に、戸田港、沼津港までつながるルートを整備した。
 西伊豆の海は夕陽が非常に美しい。夕景の中に富士山があり、それらをつなぐ機能が船だ。堂ヶ島マリンさんや各地の遊覧船などとも協力し、この一帯の海からの景観を発信していきたい。戸田観光協会とはすでにウェブを使ったPR事業を共同で行っていて、戸田の知名度を上げるべく、海の魅力とともに発信している。
 西伊豆の海には、富士山、夕陽、船が似合う。それに音楽を加えた要素でこのエリアの魅力を発信してみたい。「世界で最も美しい湾クラブ」にも加盟した実力を、さまざまな人と一緒に遺憾なく発揮したい。


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