サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

風は東から サンフロント21懇話会が提言した「原・浮島地区まちづくり構想」。新たにJR新旅客駅や新スタジアム建設などを盛り込み、人・モノ・情報が行き交う複合交流拠点の創出を目指している。12月の「風は東から」は先ごろ行われた東部地区分科会パネル討論を取り上げる。パネリストに、全国まちなか広場研究会の山下裕子理事、沼津市商工会の大村保二会長、県立大大学院の西野勝明特任教授、慶応大大学院の矢作尚久准教授を迎え、同地区のまちづくりについて討論した。コーディネーターはシードの青山茂副社長(サンフロント21懇話会シンクタンクTESS研究員)。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ9

バックナンバー


郷土を育てるまちづくり 複合交流拠点に地域一丸
■ 原・浮島地区のポテンシャル

 青山 今日は懇話会が提言した基本構想をベースに、原・浮島地区のまちづくりについて考えます。
 大村 新東名が開通して5年がたち、スマートICが完成しました。東海大の跡地に県の先端農業技術研究所「AOIパーク」ができ、農産物の研究が進められていきます。この地域で一番の課題だった軟弱な地盤も新放水路の着工で改良が進むと思います。まさに100年に一度のチャンス。地域を挙げてこの提言を実現させたいと思います。
 矢作 AOIパークは8月にオープンしました。慶応大SFC研究所も入居しており、研究領域、教育連携、産官学連携を進めていきます。
 日本の健康教育は遅れていますので、小中学校の段階で教育したいと思っています。また第一線の研究にも触れさせたい。研究については、一つはAI農業です。農業そのものを科学とデータで高度化していく。二つ目が農業と食料、健康情報の連携基盤の開発です。
 静岡県も就農人口の高齢化が急速に進んでいます。医療業界でも臨床技術が継承できない問題があり、暗黙知をどうやって次世代につなげるかが非常に重要です。また農産物も外国産に押されつつありますので、どう付加価値を高めていくかを真剣に考えていかなければならない。そこに特化しようと思っています。
 西野 この地域の可能性を考える上で、東部地区全体の産業構造を俯瞰(ふかん)する必要があります。産業でいうと電子機器、製紙。ファルマバレーも全国1位の医療産業集積になりました。先端産業である健康関連産業が次の静岡県全体をリードするという構造になっています。また炭素、セルロースナノファイバー(CNF)などの新素材もあり、ポテンシャルはとても高いと考えています。
  交通については、東駿河湾環状道路が延伸すればここが中心となるでしょう。また、中部横断自動車道が3年後に全面開通する予定です。清水からこの地域が物流の拠点になります。これは大きなもので、おそらく若者も含め、新潟、長野、山梨などから相当多くの人が太平洋側に来てくれるのではないか。観光面でも相当期待できると思います。

大村保二氏
沼津市商工会会長

明治大を卒業後、山陽紙器入社。南部工業、フジテック、三友化成工業を経て、1986年(有)大村興業を設立。2002年に大村興行(株)に組織変更後、16年より現職。
矢作尚久氏
慶応大大学院政策・メディア研究科准教授

2000年慶応大医学部卒業、04年同大学院博士課程修了。11年ハーバード大MHCDプログラム修了。横浜市立市民病院で小児科医として勤務後、国立成育医療研究センターで開発薬事、情報戦略等を担当。


■ ここならではの価値を創る
 青山 にぎわいの街づくりを進める上のポイントをお願いします。
 山下 地域にこだわるのでなく、周辺エリアを巻き込んで活性化していくといいですね。例えば九州の久留米市は、古くから交流都市として発展してきましたが、物流革命で問屋街が必要なくなってしまっています。でも人と人との交流拠点というポテンシャルはある。そこで、全国で活躍している人の話を聞く企画を立てました。周辺の熊本、別府、長崎の人が久留米に集まって話を聞き、交流できるという企画を続けています。
 西野 人口減少の中の社会減が非常に地域にとってマイナスに働いています。沼津市は人口減少数県内第2位とかなり深刻です。
 この地域が発展するには、当然沼津市の経済基盤が発展しないと難しい。沼津駅の高架化で空いた土地を活用すると同時に、経済基盤をまず維持発展させるのが大切です。先端産業の基盤ができていますから、それを活用して企業を呼び込むなり新たな産業基盤をつくるのが良いと思います。
 大村 今回の計画の中にもある道の駅の構想は、前々から地域の農作物を販売する拠点をつくろうと取り組んできたものです。商工会もいろいろ視察に行きました。昔は道の駅はトイレ休憩や情報発信が主な役割でしたが、今は道の駅そのものが目的になっていて、そうしたところが成功しています。
 私たちも地域に道の駅を作るのであれば「地域ならでは」を作らないとならないと思っています。矢作先生のお話を聞いて、何とかこの地域に根を下ろしていただいて、研究されたものを“この地ならではの特産”として出したいと強く思いました.。
 矢作 バイオテクノロジー的な込み入った内容、細胞レベルでとなると時間がかかりますが、例えば、遠隔医療ロボットのダ・ヴィンチは、一般には遠隔操作しやすいと思われています。実は医療現場では座って手術ができることが評価されています。農業も高齢化が進み重労働で大変という部分を、取って代わることができるというような発想の転換が必要ですね。

山下裕子氏
全国まちなか広場研究会理事

富山に移住し、演劇やアート関連イベントの企画制作に携わる。2007年よりグランドプラザ運営事務所勤務。14年より「広場ニスト」として独立し、久留米・明石・神戸など全国のまちなか広場づくりに関わる。

西野勝明氏
県立大大学院特任教授

東北大法学部卒業後、静岡県庁入庁。1990年静岡県北米駐在員としてロスアンゼルス赴任。2002年財団法人静岡総合研究機構研究部長、08年静岡県立大学経営情報学部・大学院 教授。17年より現職。


■ ビジョン実現の第一歩
 青山 今回のまちづくりを進めるために地元ではどのような取り組みをしていきますか。
 大村 かれこれ30年、鉄道高架の議論をしています。騒音や迷惑施設という一点をとらえるのでなく、まちづくり全体を考えてほしい。慎重になっている人は大概高齢者。そうでなく、自分たちの子どもや孫、40年、50年先を見据えてまちづくりをしていかないとならない。
 商工会から地域の皆さんに、必ずこの地域は将来良くなるということを言い続けるのが必要と思います。家庭でも将来についての話ができる環境づくりをしていきたいと思います。
 山下 富山への視察来訪は年間300件以上ですが、県外から来られた方は、市役所、町の人、広場スタッフが皆同じ方向を見ていると言います。関係性はいろいろだけれど方向は同じという状況をつくるために、富山市では市長自らが3年間タウンミーティングで毎回話をされました。
 また、キャスティングが重要です。やりたがっている人は必ずいますが、地域の方同士だとしがらみがあってなかなか言いにくい。その時に外から来た人が言うといいと思います。
 矢作 人間は今の状態によって意思決定をしていきます。例えば、具合が悪いと購買行動は起こしませんし、仕事に追われて疲れていても2日間休みがあれば何かやるでしょう。医療や健康、生活情報の連携基盤ができれば、今の状態に応じて何が最適なのかがわかります。極論的には自分で考えないでも夕飯の献立が届く。それも生産者から直接届く、という世界を考えています。
 いい意味で考えなくて良いところは仕組み化してしまおう。もっと人生を豊かにするところに時間を使ってもらう。農業・生産、生産をサポートするIT、中小企業で、東京ではできないものをここで創ってしまおう。交通の便が悪いと難しいですが、ここは良いので展開できると思います。
 西野 ステークホルダーが集まって学術的な分析をし、提言して実行するという仕組みを創ることが大切です。県中部の5市2町の首長や会頭、大学、NPO、シンクタンクなどから構成する県中部未来懇話会は、地域の課題を1年かけて研究し、行政に提言しています。沼津市は民度が高いことで有名ですから、専門家も入れた形で協議しながら夢に向かって進めてはいかがでしょうか。

青山 茂氏
(株)シード取締役副社長
オリエンタルランドを経て、1986年シード入社。県内外の企業及び自治体のプロジェクトのコンサルティングから事業プロデュースまで幅広く手掛ける。サンフロント21懇話会シンクタンクTESS研究員。


■サンフロント21懇話会「原・浮島地区まちづくり構想」概要
【理念】時空を超え、人・モノ・情報が行き交う複合交流拠点の創出(周辺幹線道路の整備と新旅客駅、新スタジアムにより新たな人の流れとにぎわいを創出)
【全体像】
新旅客駅と複合型スタジアムを核に、道の駅・物流センターゾーン、健康文化タウン、白隠の郷を配置。南北交通円滑化のためのアンダーパスなど道路整備を促進。



■企画・制作/静岡新聞社営業局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.