サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から 昨年末、県富士山世界遺産センターが富士宮市に開館した。外壁を県産富士ヒノキで飾った逆さ富士のフォルムは、富士山本宮浅間大社の真っ赤な鳥居と雪をかぶった真っ白い富士山と絶妙なコントラストを生み出している。1月の「風は東から」は同センターの遠山敦子館長(トヨタ財団理事長)に富士山の魅力や同センターの意義・役割について聞いた。聞き手は海野俊也 静岡新聞社・静岡放送 東部総局長。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10

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最新技術で富士山体感 世界に誇れる拠点に期待
■ 先端デジタル技術で富士山を楽しむ
 海野 富士山世界遺産センター開館おめでとうございます。大変目を引く外観に加え、内部の展示も随所に創意工夫がみられる素晴らしい施設ですね。
 遠山 外観は逆さ富士を模しています。水盤に映ると富士山の形になる。少し目線をずらせば本物の富士山が見えます。外側の材木は地元の富士ヒノキを使っています。ミリ単位の精巧さで下から順に組み上げていきました。大変難しい施工技術だったと聞いています。
 海野 館内展示は体感できる工夫が随所にありますね。
 遠山 入り口から、約200メートルの螺旋(らせん)の通路が5階まで続いています。通路に沿って海から見た富士山の風景が現れ、登っていくと森林を抜け山肌が見える岩場を通過し、最終的には頂上から見た景色が広がります。つまり、疑似登山ですね。そして、5階の展望スペースに行きつくと、大迫力の富士山が出迎えてくれます。これは、他ではなかなか体験できないのではないでしょうか。
 通路の途中には展示室があり、信仰、芸術、自然などをテーマにした展示が楽しめます。シアターでは富士山の映像を見ることができますが、これはNHKエンタープライズにも協力いただいた本格的な内容です。
 裸眼3Dシステムや9面マルチモニターなど、最新のデジタル技術を随所に使っています。展示は5カ国語表示が可能で、これだけ整えている博物館はあまりないですね。
 海野 山梨県側の世界遺産センターとは連携されるのでしょうか。
 遠山 すでにデジタルアーカイブインターネットシステムがあり、双方の研究成果などを共有しています。
 また、富士山は火山学、地質学、生態学などいろいろな学問の対象になります。それらの共同研究をしたらいいと思いますし、その成果を発表するシンポジウムを一緒に開きたいですね。
 海野 山体の保全管理についても中心となると伺いました。
 遠山 保全の取り組みは非常に評価されています。イコモス(国際記念物遺跡会議)からは世界の山岳遺産の関係者に参考になるように、途中経過を教えてくれと言われていて、内容を考えているところです。
 世界遺産センターは「究める」「伝える」「交わる」「守る」という四つの機能を持っています。考古学、文化人類学、信仰関係、芸術関係、文学関係の専門家も5人採用しました。彼らの研究を中心に、外部の研究者とも積極的に連携していきたいですね。

遠山 敦子 氏
県富士山世界遺産センター
館長
1962年東大法学部卒業後、文部省に入省。文化庁長官、駐トルコ共和国日本国大使等を経て、2001年小泉内閣の文部科学大臣に就任。現在は、トヨタ財団理事長、富士山世界文化遺産学術委員会委員長なども務める。


■県富士山世界遺産センター外観(写真家:平井広行)


■ 新たな観光とまちづくりの拠点に
 海野 世界遺産センターはすでに観光の拠点になっているようですね。
 遠山 開館したばかりですが、国内外から団体客の見学の申し込みが数多くあり、何十もの団体を受け入れました。各国大使も訪れています。また、学校向け、旅行会社向けなどの見学会がさまざまに組まれていて、まさに観光の中心になってきていると思います。
 ここを拠点に、周囲には浅間大社があり、白糸の滝や朝霧高原があり、少し足を延ばせば三嶋大社、柿田川湧水群などもあります。うまく広域で連携していければいいと思っています。
 海野 富士宮市もセンター周辺のまちづくりを積極的に進めていますね。
 遠山 散歩で湧玉池に行ってきました。神田川の親水スペースも美しく整備されてきています。富士宮市が大変頑張ってくださって、開館を記念した周辺の環境整備をしていただいています。センターを起点に、周辺を観光地としてふさわしい形にしたいというご意向のようですから、大いに期待しています。センターに来た人が食事や買い物を十分に楽しめる、そういうことが可能になるようなまちづくりをされると地元の経済にも良いのではないでしょうか。
 海野 今後のセンターの進化についてどんな期待を寄せていますか。
 遠山 富士山はいつも私にとって生きる際の目標であり、生き方のあこがれです。このセンターは富士山の信仰・芸術、自然についても学べる場所ですから、多くの人に来ていただけるとうれしいです。浅間大社という、信仰の中心を担う場所の第一鳥居の中にできた建物です。ぜひ地元の人の誇りになるような場所にしたいと思っています。そうでないと本当の意味で地元に裨(ひ)益する建物になりませんからね。
 特に県東部の皆さんは必ず来てほしいと思っています。美しい富士山が見えるに越したことはないですが、たとえ見えない日でも楽しめると思いますし、何度来ても新たな発見がある施設を目指しています。
海野 俊也 氏
静岡新聞社・静岡放送
東部総局長


■「品格」キーワードにまちづくり邁進(まいしん)

須藤 秀忠 富士宮市長
 県富士山世界遺産センターは、世界的に有名な建築家・坂茂氏の設計で、その斬新なデザインは多くの人々をひきつけます。それを見るために国内外から多くの人々が訪れるものになると思います。
 市では、世界遺産センターの建設を機に、にぎわいの創出と世界遺産にふさわしい品格のあるまちづくりを進めるべく、「富士宮市世界遺産のまちづくり整備基本構想」を策定し、現在、その具体化を目指しています。
 その成果として、富士山本宮浅間大社にある「神田川ふれあい広場」では、水と緑の空間を創出した再整備を行いました。神田川から美しい川の流れ越しに見える富士山は絶景です。また、世界遺産センター南側には、市内を訪れる観光客のために大型バスも利用できる神田川観光駐車場を整備しました。
 浅間大社東側の市有地には、民間事業者による富士宮の食文化を発信するブルワリーレストランの建設が予定されています。また、観光客の玄関口となる富士宮駅前でもホテルの建設が進んでいます。
 このように、同センターから浅間大社までのエリアを中心に世界遺産にふさわしいまちづくりが進んでいます。ライトアップやイルミネーションの設置など、夜景も楽しめるよう工夫を重ねています。これらを通じて、国内外から訪れる観光客が商店街を回遊し、飲食が楽しめるようなにぎわいとおもてなしができる環境を官民一体で整えていきたいと思います。
■ライトアップされた県富士山世界遺産センター
 センターから大社までの参道軸については、富士宮市の玄関口としてできるだけ「まちなか」の空間を確保するための整備をしていきます。しかし、民間の所有物件もあるため、ご理解とご協力をいただくには時間がかかるでしょう。ここはじっくりと粘り強く進めていきたいと考えています。


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