サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から 東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、活動の模様や地域が抱える課題を毎月1回「風は東から」で取り上げている。本年度は、スポーツ産業の振興や、昨年開館した「富士山世界遺産センター」などを取り上げた。年度最後の3月は、川勝平太知事、懇話会代表幹事の岡野光喜スルガ銀行会長を迎え、15年がたったファルマバレープロジェクトを中心に東部の地域づくりについて聞いた。聞き手は懇話会アドバイザーで、静岡産業大学総合研究所の大坪檀所長。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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活力生むファルマバレー ライフスタイル一新へ
■ スタートから15年 世界のひのき舞台へ
大坪 この鼎談も今回で20回を数えます。振り返るとさまざまなことがありましたが、ここ数年の東部の発展は地方創生のモデルになるのではないかと期待を持って見ています。中でもファルマバレープロジェクトは、大きな成果が出ていますね。
川勝 知事就任後すぐにファルマバレーがイギリスの科学雑誌『ネイチャー』に紹介されました。当初から国際的に注目されていました。
東部のファルマバレー、中部のフーズ・サイエンスヒルズ、西部のフォトンバレーの3つの産業クラスターを進めていますが、中でもファルマバレーは、明確な方針のもとにメリハリをもって発展をしてきました。「ものづくり」「ひとづくり」「まちづくり」の戦略に「世界展開」を加え、慶大・早大・東工大・農工大など大学や研究機関と連携が深まりました。

川勝平太 知事
健康法は「毎朝1,000歩の足踏み」

また、企業の医療健康産業への参入を推進しましたので、医薬品・医療機器・化粧品の合計生産金額は6年連続全国1位です。一昨年はファルマバレーの拠点「静岡県医療健康産業研究開発センター」が完成し、大坪檀先生にファルマバレーを推進する「ふじのくに医療城下町推進機構」理事長をお引き受けいただきました。
民間・地域・行政が協力して「世界のひのき舞台」に打って出る時を迎えています。
岡野 ファルマバレーは地域経済にも良い影響を与えています。静岡がんセンターがある長泉町は23年連続で人口が増加しています。子育て支援にも力を入れていて、医療補助は中学卒業まで、保育料の補助は認可外保育園も対象です。
また、この4月からは、JR三島駅から新幹線通学する大学生・専門学校生に月額2万円の補助をするようで、首都圏の通勤・通学世帯が今後も増えそうですね。これはファルマバレーが進展するこの地域が経済的に元気だということの表れだと思います。


■ 失敗恐れずチャレンジを

岡野光喜  スルガ銀行会長
サンフロント21懇話会代表幹事
健康法は「1日2食で内臓を休める」

大坪 ファルマバレーの大きなテーマが「イノベーション」です。研究開発拠点もできたので、これからはフォトンバレーやフーズ・サイエンスヒルズとも連携して、新しい価値創造産業にしていってほしいと思っています。
川勝 フォトンバレーの光技術は医療分野にも使われています。フーズ・サイエンスヒルズは健康産業と直結しており、クラスターの連携を今まで以上に進めてまいります。
使い方を変えることもイノベーションで、東海部品工業(沼津市・盛田延之社長)は自動車部品から医療機器分野に参入し、輸送機械や模型用の微小なねじの技術を人体の骨をつなぐマイクロねじに転用して、成功しています。静岡がんセンターなどの臨床現場もあり、中小企業のもつ技術を医療分野に適用していく支援体制を整えています。東部地域を医療・健康にかかわる新しい学びや発見の場、失敗を恐れないイノベーションの場にしましょう。
岡野 本田宗一郎さんの有名な言葉に「成功は99パーセントの失敗に支えられた1パーセントだ」がありますが、最近の若い人たちは失敗を恐れるあまりチャレンジをしない。でも、失敗を許容する組織でないと新しいイノベーションは起きないと思います。
大坪 科学技術のほかに社会的イノベーションも起こるのではないでしょうか。

大坪 檀  静岡産業大学
総合研究所所長

サンフロント21懇話会アドバイザー
健康法は「いつもほがらかに過ごす」

岡野 いま、盛んに「働き方改革」が叫ばれていますが、同じことをやっていては改革になりません。例えば、定型的な業務を繰り返し反復するような作業は、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を使うと人を介せず処理ができます。これからは業務を可視化し、RPAやAI(人工知能)を使って効率化を図ることが必要です。
またクラウドへの移行も積極的に進めるべきでしょう。今まで通り、集まって会議を開くにはスケジュール調整や資料の準備など、膨大な手間と時間がかかります。クラウドなら資料の準備もいりませんし、チャットやテレビ会議で済ますことができます。
生産性を上げるためのツールがいろいろできているので、それらを使って働き方を変えていく。それで余裕のできた時間でどう人生をエンジョイし、地域に貢献していくか。技術革新が早いなかにおいて、最新技術をいち早く取り入れ活用した組織や企業が生き残っていくでしょう。


■ スポーツ産業を活性化の起爆剤に

■ふじのくに型人生区分

大坪 県は健康経営にも取り組んでいますね。
川勝 県の方針で、企業だけでなく、家庭や地域を丸ごとで健康経営していこうという取り組みです。本県独自の「ふじのくに型人生区分(図)」が評判で、後期高齢者という言い方をしません。70歳を祝う「古希」は「まれ」という意味でしたが、今では元気な70歳が多く、まれではありません。76歳まで「壮年」です。77歳あたりから自愛に努め、生活スタイルを替え、その先は初老(77歳〜)、中老(81歳〜)、長老(88歳〜)となり、100歳で長寿をことほぐ「百寿者」と呼んでいます。静岡型人生区分は内外から大好評で、多言語化への要望にもこたえています。
大坪 スポーツも産業と結びつけるべきですね。高付加価値の産業が生まれてくるのではないですか。
岡野 2020年には自転車のトラック競技とMTBが伊豆市で開催されますが、先日、ロードレースのゴールが小山町に決まりました。スポーツが一つの起爆剤になると思います。
川勝 自転車競技4種目のうち3種目が本県開催です。野球でいうと4打数3安打、イチロー以上の成績です。ロードレースは、東京から見える富士山に向かって走りたいという世界のサイクリストの強い意向があって決まったそうです。
岡野 伊豆半島には主なダイビングエリアが30カ所もあります。ピーク時は25万人ものダイバーが訪れていましたが、今は12万人です。再び海を楽しんでもらうにはどうしたらよいか。施設も老朽化していますし、サインも未整備です。サイクリングだけでなく、ダイバーにも楽しんでもらえる地域を2020年までに作ることができれば、伊豆のブランド力はより高まるのではないでしょうか。
川勝 2020年には新東名が神奈川まで延伸されます。絶景の富士山、伊豆はジオパークも温泉もあります。美しい景観の中でさまざまなスポーツを楽しみ健康になる―。この県東部・伊豆からライフスタイルのイノベーションが起こることを期待しています



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