清流が生み出す伊豆のわさび
日本の沖合を流れる黒潮から大気に水蒸気が供給され、風に乗って東へ運ばれます。伊豆半島に達し、天城の山に沿って上昇気流が起こり、多くの雨がもたらされるのです。天城山は、水が染み込みにくい緻密な岩盤の上に亀裂が多く、水が染み込みやすい火山の噴出物が堆積しているため、降った雨が帯水層を地下水として流れ山裾から湧き出します。地下水温は概ねその土地の年平均気温と一致することが知られており、この水はわさびの生育に適した13度を一年中保っています。
大地が生んだ伊豆文学
天城湯ヶ島出身の作家井上靖の代表作「猟銃」は主人公の男の孤独な心情と、滑沢渓谷の黒々とした岩肌や流れる水の清冽(れつ)さを重ね合わせています。この渓谷を形作ったのは、滑沢火山から大量に流れ出した溶岩。長い年月をかけ、磨き上げられた岩肌が作家のイマジネーションを喚起させました。多くの文人たちに愛され、描かれた伊豆の大地に「ジオパーク」という名前が新たに加わり、これからもここを訪れる多くの人の心を打つことでしょう。
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