青山 超高齢社会における幸福感について伺います。
山口 人生の前半は「獲得の時代」ですが、後半は「喪失の時代」が訪れます。若い時のような幸福感は期待できません。その代わりに、「豊かな心」を育むことが大切で、そこには、五つの要素があると思います。
一つは「生老病死」。いつかは死ぬということを理解する。二つ目は、自分の身の回りの「森羅万象」に気付く。患者さんは道端の野花にも喜びを感じます。三つ目が「幸せの域値を下げること」。当たり前のことが幸せなのだ、ということを理解する。四つ目は「絆」です。病気になって初めて、他人の情けが身にしみます。最後に「生きがい」です。小さな志を立てることをお勧めしています。
天野 寝たきり寸前の70歳の男性が家を建てようと決めたら、健康を取り戻したのです。こうした事例はたくさんあります。家を建てたりリフォームしたりする過程で、こうしたい、ああしたいと考えることが幸福感につながります。
打ち合わせでは図面だけでなく、木材を見ながら、その香りを感じながら話をします。それだけで随分やる気が出て来ます。家具も木で作るようにしています。難しいことではありません。日常的なことを現実化するのが大切ですね。
竹林 認知症はかなり分かってきました。アルツハイマーになるとどんどん忘れていって、年齢を聞くと「19歳」と答えたりします。それが進んで3歳になったとしても、上手に介護すると幸福感覚や相互理解ができるのです。また、介護する側も幸福感を覚えます。ですから、認知症になったら終わりと絶望的にならずに「認知症は個性」ということを言いたいですね。 |