植松 早期開通を実現するための地元の役割についてご説明ください。
藤井 私の個人的な思いとしては、予算の状況にもよりますが、おおむね10年をめどに、下田までの全線開通を実現したいと考えています。
道路を造るにあたり、重要なことが二つあります。一つは事業予算の確保、二つ目が地元の方々からの用地のご提供など、事業環境の整備です。予算を確保する上で一番大切なのが地域の方の声です。私の持論ですが、道路は造ることが目的でなく、どう地域の方々に使ってもらうかが重要です。地域の方々には、そこを今一度、全線開通を見据えて議論していただき、必要性について期成同盟会などを通じて東京や名古屋に発信していただきたいですね。
望月 地域で観光業を盛り上げるためには宿泊や買い物で消費を増やしてもらわないとなりません。今までは点でアピールしてきましたが、背骨ができ、肋骨が整備されると、回遊性が高まりより多くのチャンスが生まれます。長期滞在も容易になるでしょう。河津桜を見てそのまま帰るのではなく、東伊豆を経由して伊東で泊まってもらう。春は河津だけでなく、桜の名所が各地にありますし、桜以外の花もたくさん咲いています。
肋骨を整備し、大型バスが通れれば回遊性が高まります。2020年を見据え、早急に整備する場所、中長期的に取り組む場所を整理しながら進めています。
藤井 3月に水わさび栽培が世界農業遺産となり、4月にはユネスコの世界ジオパーク認定がありました。また、自転車競技はトラックとロードの世界レベルの大会が開催できるようになるなど、伊豆半島への期待感が高まってきていると思います。
デービッド・アトキンソン氏(※3)の本によると、世界の主要な観光地には気候、自然、文化、食事の4条件があるそうです。伊豆には全部そろっています。道路整備の醍醐味は、ポテンシャルのあるところに造ることで需要を喚起できることです。
防災面でも脆弱(ぜいじゃく)ですから、地域の安全安心の確保と、暮らしと経済を支えるインフラ整備を当事務所としても責任をもって進めていきたいですね。
望月 人は魅力がないところにはいくらアクセスが良くても行きません。どうやって魅力を発信するか、利便性を高めるかは地域振興の両輪と考えています。
※1 防災・減災と地域成長の両立を目指した取り組み。企業が事業を展開しやすい環境づくりとさまざまな支援を展開している
※2 下田市、東伊豆町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町
※3 英国出身で日本在住の小西美術工藝社社長。日本の文化財修復の専門家 |