サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から今年から来年にかけ、世界的なスポーツの祭典が開かれる静岡県。中でも東部地域は、サッカー、バレーボール、自転車など多彩なスポーツが楽しめる地域だ。サンフロント21懇話会は、スポーツによる地域活性化を支援活動の一つに挙げている。昨年8月、富士スピードウェイ(FSW)に隣接する土地でモータースポーツを核にした「モータースポーツビレッジ」(仮称)計画が発表された。1月の「風は東から」は、この計画を取り上げる。計画の概要や地域づくりにどうつなげていくかを関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10

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富士を望む好立地で 車の魅力の発信拠点を
■雇用創出も開発目的に

■「世界中から訪れる人をもてなしたい」と語る込山正秀町長

当該地は、2021年に開設予定の新東名高速道路小山パーキングエリア(PA)=仮称=に隣接する27ヘクタールの縦長の土地。小山PAにスマートインターが設置されることから、豊富な地域資源を活用した観光サービスや防災拠点の創出が求められていた。
町はプロポーザルにより事業協力者を公募し、昨年8月、東和不動産(名古屋市、鵜飼正男社長)と基本協定を締結、モータースポーツを核とした新たなまちづくりがスタートした。
同町の込山正秀町長は「県議時代から、モータースポーツによる地域振興を考えていた。日本のモータースポーツの中核ともいえるこの地域で、一体的な開発ができることをうれしく思う」と語る。町が、開発に必要な道路の整備と用地買収、許認可関係を行う。
東和不動産はトヨタグループの不動産会社。自動車業界が大変革期を迎える中で、グループの価値創造と地域貢献をしたいと、この事業に手を挙げた。
同社の村端達也常務は「FSWは2000年にトヨタが取得したが、リーマンショックなどで攻めの投資ができなかった。近年、体制も整ったので、しっかりモータースポーツの文化・歴史的意義を継承・発信したい」と抱負を語った。
広大な敷地には、モータースポーツの国内プロチーム用ガレージ、個人用のガレージをはじめ、レーシングカーの展示保管施設やホテル、カフェ・レストランなどの整備が予定されている。雇用創出も開発目的の一つで、このエリアだけで300人程度の雇用を見込む。各施設は、21年春頃から順次開業予定だ。

■富士の麓に広がるモータースポーツの聖地(イメージ図=東和不動産提供)



■車とレースの文化 全て分かる施設に

 ■富士スピードウェイに隣接する開発エリア。
  東側には新東名が開通予定だ

プロチーム用ガレージは、すでに5社から申し込みがあり、追加募集中だ。1カ所に集まることで、チーム同士が互いに協力できるメリットがある。
個人用ガレージは、普段首都圏にレーシングカーを置いている「ジェントルマンレーサー」と言われる人々がターゲット。現状は大型の積載車でレース場まで運び込まねばならず、所有者の負担となっている。同ビレッジは、FSWに近接している上、ガレージからレース場までの公道を、ナンバーなしでも自走できるよう「規制緩和」を県、小山町、東和不動産が国に働き掛けている。また隣接地にチーム用ガレージがあるため、メカニックも常駐しているのが魅力だ。
目玉となるのは、トヨタ自動車をはじめ国内外の自動車メーカー各社が開発した、歴史的なレーシングカーを保管、展示する施設だ。自動車文化、カーレース文化の全てが分かるという、世界的にも稀有な施設を目指す。
モータースポーツだけでなく、富士山や周囲に広がる自然を楽しむ施設も併設する。レース場でキャンプをしたい、という需要に応え、グランピング施設の整備も予定されている。レジャー型の高級版と気軽に泊まれる簡易版の両方を作る予定だ。また、管理棟には大浴場を作り、温泉も楽しめるという。
レストランでは、宿泊客への食事の提供をはじめ、景色を生かしコンサートなどイベントも楽しみながら食事ができる場所にする。大きな芝生広場は、普段はイベントスペースとして、有事の際は防災拠点として機能する予定だ。
 


■まちづくりにモータースポーツを

■「モータースポーツの可能性を発信したい」と語る村端達也常務

開発の背景には、市街化調整区域への宿泊施設建設の規制緩和がある。同町では、富士山世界遺産認定や御殿場プレミアムアウトレットの集客力などの後押しもあり、14年から緩和された。込山町長は「長い間各方面に働き掛けてきた結果。せっかくこれだけの景観があるにもかかわらず、宿泊施設ができないことで地域のポテンシャルを生かし切れていなかった」と振り返る。
観光資源としても有力なモータースポーツを支えるのは主に富裕層だが、村端常務は「観光資源として価値を高め易いのはアジアでは、日本だと思う。さらに、富士山の麓という、この立地が海外からのお客さんを呼ぶ魅力になる」と力説した。
モータースポーツ界から見ても、今回の開発は大きな意味がある。同社の伊奈和久東富士開発準備室長は「プロチームの一番の課題は人材確保」と語る。プロチームのガレージも「隠す」から「見せる」方向にシフトしており、技術者が高年齢化する中、見てもらうことでメカニックにあこがれる若いファンを増やすのも命題だ。「町には、小中学校の遠足コースに組み込んでもらいたいとお願いしている。実際のマシンを見て、触ってもらって、車の世界に興味をもつ子どもたちを増やしたい」と期待している。また、FSW周辺には60代、70代の技術者もたくさんいるため、こうした人たちが集まる工房を作り、若者に技術を教える仕組みも作りたい意向だ。
昨年、FSWは24時間耐久レースを試験的に復活させた。50年ぶりという。込山町長は「このレースを、モナコのような市街地を走るレースにしてほしいとお願いしている。一日も早く実現してもらい、町ににぎわいを生み出したい。おもてなしは町が全力でする予定だ」と力を込めた。
村端常務も「FSWの誕生以来、サーキットレースだけの活動に終始し、地域との接点があまりなかった。この開発をきっかけに交流人口の拡大や雇用の創出など、地域と共生できる施設にしていきたい」と話している。
東京から車で約1時間、モータースポーツに加え、富士山、温泉などの魅力が集まるこの地から、次の時代の地域づくり、自動車文化づくりが始まろうとしている。


クルマの楽しさを伝える 聖地の誕生に期待
ネッツトヨタ静岡
梨本幸博社長

(サンフロント21懇話会会員)
海外のモータースポーツでは、走る側は新たな技術のトライアル・研さんの場として、また観る側は、キャンプを楽しんだり、バーベキューを楽しんだり、思い思いの楽しみ方ができるフェスティバルとして定着しています。
自動車はこれから自動運転の進歩等により、より快適により安全に移動できる利便性の高い移動手段に進化していくものと思います。
そうした技術的・物質的な進化とクルマ=われわれの生活をより豊かにするもの≠ニしての情緒的・文化的な取り組みが両輪となった豊かなクルマ社会の実現に向け、自動車販売に携わる者としても力になりたいと考えております。
そのためにも、モータースポーツをはじめエンターテインメント性のある施設を持つモータースポーツビレッジがクルマの楽しさを伝える聖地となることを大いに期待しています。また、その輪が広がっていくことで地域振興・活性化への貢献にも大きくつながるものと感じております。


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