サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東からサイクルスポーツ関連で盛り上がりつつある県東部。4月の「風は東から」は、先月行われたサンフロント21懇話会富士山地区分科会のパネル討論を取り上げる。パネリストに、県スポーツ局長の山本東氏、県東部地域スポーツ産業振興協議会(E-Spo)サイクルスポーツ部会長の木部一氏、伊豆箱根鉄道総務課長の芹澤章裕氏、ブリヂストンサイクル所属で自転車競技の元五輪選手の飯島誠氏が自転車による地域づくりについて議論した。コーディネーターは静岡経済研究所の大石人士常務理事(サンフロント21懇話会TESS研究員)。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1

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多様な魅力を産業振興に自転車の聖地化目指す
■サイクルスポーツの魅力あふれる競技

大石 県東部でサイクルスポーツ関連の動きが活発ですね。
山本 県庁で話題になり始めたのは3〜4年前です。当初は道路の整備や交通安全教室の開催などでしたが、昨年度スポーツ局ができ、スポーツの参加意識の向上、地域振興などを担っています。東京から近く、富士山がきれいで、住民がとてもフレンドリーで、かつ、自転車に興味を持っている、サイクルスポーツの中心地なんだと世界中から思ってもらうことが重要と考えています。
木部 県東部地域スポーツ産業振興協議会は現在東部20市町、県、民間団体の計101団体からなります。4年前に立ち上がりました。名前の通りスポーツを産業として振興させる、地域の産業として根付かせることを官民で進めています。
芹沢 伊豆箱根鉄道の広報を担当しています。自転車関連の仕事が増える中、鉄道沿線に伊豆ベロドロームが完成しました。
私が自転車を始めた理由は健康のためで、すでに5キロほど減量に成功しました。週末しか乗っていませんが、効果が出たと思っています。
自転車に乗っていると集中できます。もちろん、気分転換にもなります。また、カメラが趣味で、風景や建物を撮りに出掛けます。車の場合は駐車場に困ることもありますが、自転車はその心配もありません。当然、特別な装備もいりませんので町の温度や匂いを感じることができます。 
木部 自転車の魅力は、乗る人によって変わってきますが、通勤通学などの移動ツールとしての需要が一番大きいでしょう。次に旅行先での楽しみです。また、気分転換になったり、仲間とのコミュニケーションツールになったりもします。ファッションも楽しめますね。もちろん、健康にもなります。
人によっては急坂にばかり挑戦したり、1日100キロも走ったりしています。この多様性がスポーツ振興にも産業振興にもつながるのではないでしょうか。
自転車で代表的なイベントはニューヨークで行われています。ニューヨークの公道を、大手を振って自転車で走れるというもので、地元の協力をもとに毎年5月に約3万人が集まるイベントとなっています。また、コペンハーゲンは約500キロの自転車通行帯が整備されています。
飯島 競技の魅力や観戦ポイントを少しお伝えします。
まず、トラック競技です。伊豆ベロドロームは1周290メートルの国際基準を満たした木製コースです。走行抵抗が少なく、走路の幅が広いので、好タイムが期待できます。また、選手との距離が近いのがトラックレースの魅力です。選手が走った風、ウエアの洗剤の匂いまで分かります。視覚的にも迫力があり、五感で魅力を感じられます。
次にロードレースです。平地と山岳地の200キロほどの距離を一斉に走るチーム競技です。見どころは各チームの「エース」を勝たせるための戦略。特に上り坂は絶好の観戦ポイントです。
マウンテンバイク(MTB)はロードやトラックと違ってスピードは速くありません。選手たちは高温と多湿に苦しめられるのでサバイバルな展開が予想されます。勝敗はタフさやスタミナで左右されます。
ビーエムエックス(BMX)は非常に注目が集まっています。スタートは24人、決勝は8人です。何が起きるか分からないのがこの競技です。コース上にトリックと呼ばれるさまざまなものを置き、自転車競技の中では唯一の採点競技です。成熟したスポーツ競技に新しい風を吹かせる種目です。

山本 東 氏
県文化・観光部スポーツ局長
1986年県庁に入庁、港湾振興、国際、観光などの部署を経て、2015年スポーツ交流課長、17年オリンピック・パラリンピック推進課長、18年4月より現職。



木部 一 氏
県東部地域スポーツ産業振興協議会サイクルスポーツ部会長

チャイナエアラインを経て2013年シード社長室次長、17年営業企画部企画推進室次長。15年より現職。県サイクルスポーツ協議会安全部会委員、県サイクルスポーツの聖地創造会議企画広報幹事会幹事などを兼任。



■応援する気持ちの仕組みづくりを

大石 県は自転車活用推進計画をまとめていますね。
山本 スポーツ局で自転車に関する施策を取りまとめています。競技振興を先頭に、その下に観光が位置付けられます。車では味わえない魅力を味わうサイクルツーリズム、本県は伊豆だけでなく富士山、浜名湖もありますので、モデルコースとして環境整備をしていきます。
また、通勤通学に使うだけでなく、正しく乗る、楽しみを分かってルールを知る、安全に乗れる人を増やしていく。その一環として、自転車の条例を考えています。
一番大事なのは、道路の整備ですね。自転車専用道路の確保は難しいのですが、自動車に対して自転車が通る場所だという注意喚起をするため路上表示となる矢羽根の整備を進めています。
木部 サイクルスポーツの聖地創造会議の中に裾野拡大安全部会があります。安全部会の大きなテーマが、事故率が高い高校生の事故を防ぐことです。推進計画には数々の安全対策を織り込んできましたが、こうすれば安全というのは紙に書いて配っても広がりません。地道な草の根活動が必要と思っています。昨年11月のサイクリストクラブの立ち上げはその具現化です。
地域とのつながりを創る上では、三島市にご協力をいただき、地元食材をアスリートの皆さんに提供しようということをしています。ブリヂストンは明治と取り組みがありますので、三島市、タニタ、ブリヂストン、明治の4者で開発して、定期的に食べてもらっています。小さな取り組みですが地域が応援していることの一つの象徴になればいいですね。
芹沢 地域の方に自転車に親しんでもらう一つとして、サイクルトレインを行っています。駿豆線の三島〜修善寺間で、折りたたまずにそのまま自転車で電車に乗り入れることができます。ラッシュの時間帯を避け、おおむね9〜15時の間に行っています。
16年12月から翌年3月に実証実験をしました。ホームの広さなども考えて最後尾に3台、特別料金なしで載せられることが分かりました。17年4月からは本格運用をしております。毎週土日、休日などは7〜18時まで行っています。少しずつご利用の方も増えています。
狩野川の堤防は初心者でも安全に楽しめますので、自転車で最寄り駅まで行っていただいて、伊豆を楽しんでいただければと思っています。
飯島 この東部は自然が豊かです。首都圏から近いことは最大の武器です。県民にサイクルスポーツをより深く知ってもらう、世界の人に静岡県の良さを知ってもらうことが大切です。それには、すべての方の協力があって成功すると思いますので、官民一体で自転車を根付かせるという目標に向けて進んでほしいと思います。
山本 5月は全国各地を転戦するツアーオブジャパンが小山町、伊豆市で開催されます。外国のチームもたくさんやってきます。もう少し市民と接するチャンスをつくろうと思います。そこから始まるのではないでしょうか。知っている選手を応援に行こうという心の仕組みもつくりたいですね。

芹澤 章裕 氏
伊豆箱根鉄道総務部総務課長

1984年プリンスホテル入社、91年伊豆箱根鉄道に転籍。レジャー事業の営業企画を経て、2010年より現職。プレスリリースやマスコミ対応など広報を担当。休日には、県東部や山中湖、神奈川県を自転車で楽しむ。



飯島 誠 氏(元自転車競技選手)
ブリヂストンサイクル

中学より自転車競技を始める。2000年シドニー、04年アテネ、08年北京五輪に出場。11年ブリヂストンサイクル入社。リオ五輪中距離ヘッドコーチを経て、18年TEAM BRIDGESTONE Cycling総監督。19年よりブランド推進部。



コーディネーター
大石 人士 氏
(サンフロント21懇話会TESS研究員)

静岡銀行入行後、1982年静岡経済研究所出向。2005年より研究部長、12年理事。専門分野は地域経済、企業経営、まちづくり、商店街活性化、行政改革など

 



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