サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

風は東から「2021.2.25 静岡新聞掲載」

「ウィズコロナ時代の地域づくりを考える」
住民の健康増進から、観光、シティープロモーションまで、スポーツがもたらす効果は大きい。2月の「風は東から―ウィズコロナ時代の地域づくりを考える」は、スポーツによるまちづくりを取り上げる。日本フェンシング協会と包括連携協定を結んだ沼津市の頼重秀一市長と、豊富な地域資源を生かし、スポーツツーリズムを推し進める富士市の小長井義正市長に、コロナ禍でのスポーツの意義や、スポーツを通じたまちづくりについて聞いた。併せて地元出身選手を応援するネッツトヨタ静岡の梨本幸博社長に、その思いを語ってもらった。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ11

バックナンバー


スポーツ軸にまちづくり 地域資源の活用がカギ
■フェンシングのまちへブランド化加速 (沼津市)
■合宿で沼津市を訪れたフェンシング日本代表チームの迫力ある練習風景
沼津市は来年度、県内初の常設フェンシング場を整備する。昨年6月に官民連携の「フェンシングのまち沼津推進協議会」を立ち上げ、同協議会がフェンシング場を整備運営する。
同市とフェンシングの関わりは、1957年の静岡国体で沼津西高がフェンシング会場になったことに端を発する。それを機に市内3校にフェンシング部ができ、地域で盛んになった。現在、小学生から高校生までを対象とするクラブチームが四つあり、全国で活躍する選手も輩出している。
2019年には日本フェンシング協会(太田雄貴会長)と包括的連携協定を結び、元五輪代表の長良将司氏を市職員に迎え、小中学生を対象にオリンピアンの育成を目指している。頼重秀一市長は「市長就任後すぐに太田会長と対談する機会があり、私のスポーツに対する思いと、太田会長のトップアスリートとしての思いが重なり、同協会が掲げる地方拠点都市構想ともうまくマッチした」と振り返る。
フェンシングのまちとしてブランド化を進める同市は、新年度に策定する第5次総合計画の中でもスポーツを柱に位置付けている。4月から新たに市長部局の「ウィズスポーツ課」を設ける。スポーツ施策は主に教育分野が担ってきたが、今後は観光やまちづくりなど幅広い分野と絡めて戦略的に取り組む。
同市御幸町に建設する総合体育館は、空調など最新の設備を導入するのはもちろん、今までバラバラの場所にあった道場、弓道場なども集約され、さまざまなスポーツがワンストップで楽しめる複合型だ。体育館利用者だけでなく、サイクリストやランナー、香貫山や沼津アルプスを訪れるハイカーなどが気軽に立ち寄れる喫茶コーナーも整備され、新たなにぎわいの核が誕生する。
■フェンシングのまちづくりに力を入れる頼重秀一沼津市長
「一つの施設を造るというのでなく、隣接する文化センターや中心市街地、沼津港との連携も視野に、競技だけでなく、まち全体を楽しんでもらえるスポーツツーリズムを振興したい」と頼重市長。
人生100年時代、体だけでなく心の健康はますます重要視される。一方、コロナ禍で外出制限、行動制限がなされ、運動不足やメンタル面のマイナス部分が指摘されている。それらを払拭(ふっしょく)するためにも軽運動やスポーツに取り組む環境や体制づくりが求められている。
同市は海・山・川などの地域資源に恵まれ、サイクリング、ダイビング、サップなどのアウトドアスポーツも従来から盛んな土地。本格的なフェンシング場や新体育館などの拠点も整備され、親子トリム教室や高齢者の体操教室などスポーツを幅広く捉えた取り組みも進む。 「スポーツを軸とした市民の生き生きとした生活を、本市の活力や活性化にしっかり結び付けていきたい」と頼重市長は将来を展望している。


■自転車の聖地目指しルート整備着々 (富士市)
■自転車を活用したまちづくりに意欲を見せる小長井義正富士市長
コロナ禍でほとんどのスポーツ大会が中止になる中、富士市は年末の風物詩「富士山女子駅伝」を例年通り開催した。毎年、市民ボランティア2800人が参加する、市民挙げての大会だ。「沿道での応援が途切れないのが特徴だったが、昨年はボランティアに年齢制限(71歳未満)を設けたり、テレビ観戦を呼びかけたりした」と小長井義正市長は振り返る。そのかいあって感染者を一人も出すことなく大会は無事終了。テレビ中継の視聴率も大幅に伸びたという。
同市は大淵の富士総合運動公園一帯を「スポーツウェルネス交流ゾーン」に設定。スポーツと健康をテーマにさまざまな整備を行っている。東名、新東名にも近く、野球場、陸上競技場、庭球場、相撲場、水泳場などが集積し、新総合体育館の整備も進む。先ごろ常葉大跡地に民間スポーツ合宿施設「エスプラットフジスパーク」も進出。市民の利用はもちろん、各種スポーツ大会や卓球などのプロリーグの誘致・開催も視野に入れているという。
アクセスの良さと富士山の借景を武器に、全国大会の誘致も盛んだ。富士川河川敷に広がる富士川緑地は、51ヘクタールを超える広大な土地に野球場、サッカー場などが整備されている。特にフライングディスクの最高峰「アルティメット」の全国大会は年に5〜6回開催され、中でも毎年3月のドリームカップは大学生チームを中心に、150チーム2500人が訪れる。
同大会は市内のホテル旅館業組合が誘致したのが始まりだ。当時、北関東で分散開催されていた全国大会を、1カ所に集約し、アクセスしやすい利点を生かし誘致に成功した。
近年、同市が力を入れているのがサイクルツーリズムだ。同市を通る太平洋岸自転車道がナショナルサイクルルートの候補に選定され、富士山1周サイクリングルートも設定されている。また、東京電力が所有する高圧線の管理道を活用したマウンテンバイク専用コース「フジヤマパワーライントレイル」もオープンした。
■富士市内を疾走するレバンテフジ静岡の選手
地域密着型のプロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」も同市に拠点事務所を構える。地域活動にも熱心で、交通安全期間の街頭指導や学校でのキャリア教育支援を行っている。
今年10月には市内で、同チームが参加する競技団体「ジャパン・サイクル・リーグ(JCL)」のロードレースの開催を調整している。「クリテリウム」という競技で、1周2キロの周回コースでスピードを競う。プロの迫力を間近で体感でき、他地域の開催では5000〜6000人が観戦に訪れる。小長井市長は「富士山ろく周辺の広域林道でのレースと合わせ、2日間の開催をしたい」と意欲を見せる。「自転車の聖地化」に向けた取り組みが着々と進んでいる。


地元選手の応援で地域を元気に ネッツトヨタ静岡梨本幸博社長
沼津市出身のフェンシング選手・鈴木穂波さんがコロナ禍で所属先を探しているという話を社員から聞き、本社のある沼津市はフェンシングが盛んで、まちおこしに活用していることも重なり、当社でバックアップできないかを考えサポートさせてもらうことになった。彼女の活動拠点は基本的には東京のため、月1〜2回本社に来て活動を報告してもらっている。将来的には、市のフェンシングのイベントなども要請があれば積極的に受けていきたい。
自動車販売会社はエリアが決まっており、隣県で車が売れるからといって売りに行けるものではない。地元に貢献し、元気にすることで共に伸びていく業態だ。
今、コロナ禍の中で、会社として何ができるかを考えてきた。昨年7〜9月は、医療従事者や子ども食堂の方たち、また、環境保全の取り組みに対しお客さまも一緒に参加し盛り上げていきたいとの思いから、新車1台成約につき1万円、中古車は5千円を寄付した。10〜12月は、地元の皆さんに前を向いてもらいたいとの思いから花火を12会場で打ち上げた。1月からは、鈴木選手にアンバサダーになってもらい、頑張っている人の応援を通じて自分自身も勇気をもらおう、というキャンペーンをしている。
こうした活動は直接販売につながらないかもしれない。ただ、われわれ企業は地元の方に生かされているという思いを常に持ち、地元をもっとよく知り、地元を元気づけ、盛り上げる使命”があると考えている。社員にも、地元あっての会社ということを意識し、地元を元気にする取り組みを自主的に行ってほしいと思っている。



■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.