サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2022.8.25 静岡新聞掲載」

7月28〜31日にかけ、伊豆市の伊豆ベロドロームで自転車競技の「2022ジャパントラックカップ」が開催された。昨年の夏以来で初となる国際大会。会場には、昨年、女子オムニアムで銀メダルを獲得した梶原悠未選手をはじめ、海外チームの強豪選手が集い、圧巻のレースを繰り広げた。8月の「風は東から」は、大規模国際スポーツ大会を踏まえて改定した県が進めるスポーツ推進計画の概要と、県東部の拠点となるサイクルスポーツセンター(CSC)の取り組みを関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ5

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レガシーによる地域振興CSC核に官民一丸で
■県内に2つの拠点
■「2022ジャパントラックカップ」が開催された伊豆ベロドローム。国際大会の開催やアスリートの養成が期待されている
昨年夏、新型コロナウィルスによる様々な制約の中、世界的なスポーツの祭典が無事開催された。県は、2019年のラグビーワールドカップを含めたこうしたビックイベントを契機に、スポーツを軸にした地域づくりを進めている。これら、大規模なスポーツイベントを通じてボランティアの育成やスポーツ体験の機会づくり、子どもたちへの普及と底上げを行ってきた。
本年3月に、県は「静岡県スポーツ推進計画」を改定。計画推進にあたっては、3つの方針を立てている。
1つ目は、スポーツをすることで、県民の体力向上や健康増進を目指す「スポーツによる健康づくり」。2つ目は、アスリートの活躍によるスポーツへの理解促進やスポーツを通じて多様性の認識を深めあう「スポーツ文化の醸成とスポーツを通じた共生社会の実現」。3つ目は「地域特性を活かしたスポーツによる地域と経済の活性化」。県スポーツ・文化観光部の鈴木学理事兼スポーツ局長は「この3つの柱を実施することがまさに大会のレガシーを継承し発展させることになると考えている」と語る。
具体的には、東西に2つの拠点を設け、それぞれ西はラグビー(エコパ)、東は自転車(CSC)を中心に、モデル事業を展開していく。
■「自転車という、新たに生まれたレガシーを地域文化に根付かせたい」と語る県スポーツ・文化観光部の鈴木理事
同じく県は18年に、県知事を議長とする「サイクルスポーツの聖地創造会議」を立ち上げ、官民でサイクルスポーツに親しめる環境整備を進めている。これまでに国、周辺自治体、地域団体とも連携し、バイシクルピットやサイクルコースなど、サイクリストの受入環境の充実に取り組んできた。また、太平洋岸自転車道のナショナルサイクルルートへの登録、台湾と本県をオンラインで結んだ「富士山バーチャルサイクルフェスタ」の開催、さらには、自転車通勤利用の促進や走行空間の整備(矢羽根型路面表示)などが具体化した。 「船下に広がる日本一の深海には、栄養豊富な湾が広がり、多様な生物の営みがあり、1年に4センチずつ伊豆半島が海底に沈みこんでいる。そうした事に意識を向けると、同じ景色も全く違う見え方になってくる」と大津教授。4時間に及ぶ初顔合わせを経て、試行錯誤を繰り返し、紹介動画の作成や操舵室の見学、船長との会話などを取り入れた教育コンテンツを作り上げた。


CSCを自転車のハブに
■「自転車文化の司令塔として、自ら汗をかき、周囲を巻き込みながら活動していく」と決意を語る県スポーツ・文化観光部の加藤参与
CSCを拠点に自転車競技のエリート選手から初心者までが集う自転車トレーニングヴィレッジ構想を進めるのは、県サイクルスポーツコミッション推進協議会(会長:加藤博昭県スポーツ・文化観光部参与)だ。参加団体は、県、CSC、県自転車競技連盟、伊東市、伊豆の国市、伊豆市、美しい伊豆創造センター、NPOサプライズなどで、事務局を県が担う。
主な活動は(1)スポーツコミッション機能の構築に向けた検討(2)自転車競技の普及・裾野拡大と、自転車を核とした住民へのスポーツサービスの提供(3)スポーツによる交流の拡大及び地域活性化―などだ。
加藤参与は「ここに世紀の大イベントが来た事を、地元の人たちと一緒にどう受け止めてどう活用するかを考えたい。例えば、住民の健康増進。例えば、将来の自転車アスリートの育成。また、国際大会の誘致・開催による地域振興。このレガシーを何倍にも膨らませて、地域を盛り上げるハブとして活動していきたい」と意気込む。
ほかにも、初心者向けのマナー講習や正しい乗り方講座、矢羽根型路面表示の意義を伝え、サイクリストも車も共に楽しめる共生環境を啓発する勉強会、サイクルツーリズムの推進や、自転車に関係する団体や個人のネットワークづくりなど、同コミッションの「TODOリスト」は膨大だ。
4月の立ち上げ後、すでにいくつかの事業が始まっている。例えば、自転車競技のプロチーム向けの「ワーケーション」可能性調査。これは、大会で転戦するプロチームに、ワーケーションと練習環境を提供するもの。7月に1週間、全日本実業団自転車競技連盟所属の「レガルスイ・イナーメ信濃山形」が滞在した。
ジュニアアスリートの育成にも力を入れる。5月にMTBのユースタレント発掘・育成事業を行った。近隣市町からMTBに興味のある小中学生を募り、体力テストを行い、合格した生徒は引き続きトレーニングに参加している。また、本年10月にはUCI(国際自転車競技連合)から公認を受けたジャパン・マウンテンバイク・カップの開催が決まっている。
加藤参与は「県東部にはMTBやロードのコースがたくさんある。西伊豆の山伏トレイルを経験した人が、次は富士山南麓のダウンヒルコースに行ってみようなど、我々が情報を集約し、練習したい人と場所をつなぐ役割を担いたい」と語る。いわば、自転車に特化したDMO(観光地域づくり推進組織)だ。これらを通じ、将来的には同コミッションの自立化を目指す。


「レガシー創出」に期待する
自転車競技の専門家に聞いた。
ブリヂストンサイクル
渋谷淳一チーム戦略室長

育成も地域貢献もかなうCSCは「理想の環境」

当チームは2018年、三島市に拠点を移し、チーム選手の大半が日本代表のトラック強化指定選手として、現在はCSCでナショナルチームとチームブリヂストン活動の両立でトレーニングをしている。
中距離選手の強化に当たっては、トラックはもちろん、ロードも並行して練習することが必要で、その意味でも静岡県東部エリアに立地するCSCの設備や取り巻く環境は理想的だ。
選手の本分は競技と練習だが、地域の協力がなければチームの活動は成り立たない。チームは現状を十分に理解しており、地域貢献の在り方を現在も模索している。一例として、地元の学校訪問などを行っている。また、選手、スタッフが講師となり、「チームのお仕事体験」と称して地域の子どもたちにチームの活動を見てもらったり、室内での自転車トレーニング、整備や補給食作りなどの体験をしてもらったりしている。全国の高校生トップ選手の合宿に出向き指導に当たるなど、後進の育成にも力を入れている。
年間活動の大半をレース、合宿に出ており、その合間で練習をしている。そのため日程調整は必要だが、地元を自転車で一緒に盛り上げたい気持ちは大きい。こうした触れ合いや練習体験の中から、将来パリやロスを目指す子どもたちが出てきてくれるとうれしい。

MTBコースの恒常的な活用で自転車文化の創造を

ヤマモトアスリートファーム
山本幸平代表(MTB日本代表選手)

北京から東京まで4度出場し、各地のコースを走ってきた。CSCのMTBコースは、テクニカルなセクションが8カ所もあり集中力を切らせない。難易度は高いが、トップ選手にとっては非常にエキサイティングなコースだ。コース随所に名付けられた「天城越え」や「桜吹雪」など、日本らしさも感じられる。また、1カ所から複数の見どころが楽しめ、観客にとっても良いコースだ。
MTBコースは常に走っていないと傷んでしまう。現在はクローズしていると聞くが、ぜひ一日も早い再開を願いたい。しっかりとコースをオープンさせ、世界最高峰の練習や大会ができてこそのレガシーだと思う。当然維持管理費はかかるが、MTBのクラブチームやスクールは全国各地にある。そうしたところにどんどん貸し出し、常に稼働できるようにすべきだ。
もともと修善寺は、競輪選手の育成を長年行っている。ロードも盛んだ。MTBが加わり、多様な自転車の活動が楽しめる。ぜひ地元にはクラブチームをつくり、一流選手と触れ合ったり一緒に走ったりしながら、自転車文化を創ってもらいたい。そうすることで引退後の選手の活躍の場もつくれ、子どもたちや親御さんの選択肢の一つに「自転車」が入ってくるだろう。

●2022サイクリング レガシーイベントin OYAMA

7月30日、富士スピードウェイ西ゲート前で「2022サイクリングレガシーイベント in OYAMA」が開催された。同日には「東京2020オリンピック・パラリンピック1周年記念自転車ロードレースレガシーサイクリング」も同時開催され、著名人らが武蔵の森公園(東京)から富士スピードウェイへのゴールを目指した。



■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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