サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2023.4.28 静岡新聞掲載」

富士山地区分科会

スポーツを楽しむだけでなく産業として生かす取り組みが増えている。4月の「風は東から」は2月に行われた「サンフロント21懇話会」富士山地区分科会のパネルディスカッションを取り上げる。パネリストに県スポーツ担当補佐官で元観光庁長官の溝畑宏氏、富士市の小長井義正市長、時之栖の庄司政史社長、伊豆市地域おこし協力隊のマルコ・ファヴァロ氏を迎え、スポーツを通じた地域づくりについて聞いた。コーディネーターは、懇話会TESS研究員で静岡経済研究所シニアチーフアドバイザーの大石人士氏。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ1

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まちづくりにつながる スポーツビジネス振興を
■スポーツによる地域おこし活発化

大石 現在取り組んでいるスポーツを活用した地域活性化についてお話しください。
小長井 2022年4月より、本市は第6次総合計画と併せて第3次富士市スポーツ推進計画を進めています。その取り組みの一つに富士市総合体育館の建設があります。単に体育館としてだけでなく、観光交流拠点としての役割をどのように果たすかが大きなテーマです。
また、本市はスポーツイベントも積極的に誘致しています。海外との交流も盛んで、スイスの水泳チームやラトビアのチームを受け入れてきました。19年、スイスは世界水泳選手権の事前合宿を静岡県富士水泳場で行いました。今年も同様に事前合宿を行いますので、引き続き連携しながら交流を深めていきます。
庄司 御殿場市に「御殿場MTB&RUNパークFUTAGO」をつくりました。市が整備した道にマウンテンバイクコースを設けた施設です。水や木育を大切にしたい、そして自転車のレガシーを残したいという市の思いをくみ、土地・山一帯を大きくリノベーションしました。
また、台湾の自転車メーカー「メリダ」と組み、道の駅「伊豆のへそ」に自転車の交流展示場を設けました。200台に上る新しい自転車の展示のほかレンタルバイクが設置されており、自転車の情報発信拠点になることを目指しています。
これらの取り組みは基本的に私たちが広げていくというよりは、自治体など周りから相談を受けてどんなことができるか一緒に考えています。まだ途上段階ですが、周囲と一緒に話し合いながら進めていきます。
ファヴァロ イタリアはかつて、日本を超えるほどの車社会でした。1970年代に、車による公害問題が生まれ、車の数を制御して街を住民たちに戻そうという大きな活動が起こりました。85年、街の中心部に車は入ってはいけないという法律が作られました。今は緩和されましたが、今も当時の名残で車が入りにくい石畳が敷かれています。そのような時代背景から、ヨーロッパは市民の足として自転車が普及しています。
イタリアは競技レースも多く、「エロイカ」というイタリア発祥のヴィンテージ自転車イベントも開催されています。人口が少ない街で開催されますが、多くの観光客が集まり地域の経済活性化に貢献しています。

■溝畑 宏 氏
静岡県スポーツ担当補佐官、大阪観光局理事長 元観光庁長官

1985年自治省入省。2002年大分県企画文化部長。10年国土交通省観光庁長官。12年内閣官房参与、大阪府特別顧問、京都府参与。15年大阪観光局理事長(大阪観光局長)。17年大阪府・大阪市IR推進会議座長
■小長井 義正 氏
富士市長

1997年富士市議に当選。2013年まで5期務める。09年富士市議会議長、全国特例市議会議長。14年富士市長に初当選。18年全国施工時特例市市長会監事、20年静岡県東部市長会会長。21年から静岡県市長会副会長。現在3期目



■景観生かしスポーツ版シリコンバレーに

大石 県東部におけるスポーツビジネスへの期待や、今後の取り組みについてお願いします。
溝畑 ぜひ静岡県は日本のスポーツ版「シリコンバレー」になってほしいと思います。スポーツは様々な産業が関わっているため、行政や企業などすべての英知を結集し、分野ごとに産業として自立する仕掛けをつくっていく必要があります。また、県と各市町が連携すれば、シリコンバレーのように、世界中からスポーツでビジネスを興していきたいと考える企業や人を静岡に集めることが可能だと思います。
本県は四季の変化をしっかり味わえて、スポーツを楽しむための景観も持ち合わせています。そこに自信を持ち、スポーツを中心に世界へ挑戦していってほしいと思います。
小長井 富士市は自転車活用推進計画の中でサイクルスポーツやサイクルツーリズムの振興をテーマに掲げています。
サイクルツーリズムの振興として、21年11月に富士市サイクルステーション「ふじクル」をオープンしました。電動自転車を借りたり、情報発信したりすることができる拠点です。今まで富士山を活かした観光モデルができていなかったため、サイクルツーリズムを推進することで滞在型の観光につながるのではないかと大いに期待をしています。
また、本市は自転車の交通分担率が5lと全国平均の半分以下で、男性のメタボリックシンドロームの割合が高いことが課題です。そこで自転車を活用することで、健康面でも良い効果をもたらしてくれるのではないかと考えています。
さらに、富士市を拠点に活躍するプロのサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」が拠点地域でサイクルロードレースを開催しました。1周1・8`bのコースを周回するもので、迫力のあるレースになりました。それにより観戦者の宿泊や飲食などで大きな経済効果がもたらされました。今後もサイクルスポーツ、サイクルツーリズムの推進を図り地域の経済活性化に貢献していきます。

■庄司 政史 氏
時之栖社長

1965年北海道生まれ。大阪の鉄鋼商社を経て95年時之栖入社。2006年専務取締役、12年代表取締役社長に就任。(公財)静岡県スポーツ協会副会長、(社福)富岳会理事も務める


■情報の一元化と企業誘致がカギ

大石 スポーツビジネスの課題についてお話しください。
ファヴァロ 5月13日と14日、伊豆市で「エロイカジャパン in 伊豆」が開催されます。富裕層や国会議員がやってくるほど、スポーツに対する興味関心が高まっています。国内外に静岡を知ってもらいたいので、これからはそういったスポーツイベントの情報を海外に発信していくべきでしょう。
また、経済活性化につながるサイクリングコースの条件は3つあります。まず走りやすい道があることです。次に美しい景色があること、そして文化を感じる道があることです。特に文化はまちづくりにおいて欠かせない点で、ヨーロッパは厳しい景観条例で守られています。まち自体に魅力がないとサイクリストは集まってこないので、まちづくりはとても重要です。
庄司 10年前、アメリカで世界各国から選手が集まる全寮制の学校を創業者が運営していました。それを模したのが私たちが進める「マウントフジスポーツアイランド構想」です。弊社が運営する施設だけでなく、もっと大きな規模でやっていきたいと考えています。そのためにも富士市や各市の施設を一つに集約した機能がほしいですね。
どの市町も、まず工業団地をつくり企業を誘致します。スポーツも同じく、企業を呼び込む機能をつくり、マウントフジを中心にスポーツだけでなく文化、食など様々な産業の集積を図っていくのがよいのではないでしょうか。
溝畑 ゼロカーボン社会、地球温暖化の防止などを進めていく中で、「自転車」は世界の潮流の一つです。イタリアのように、美しい街並みと文化がある場所でサイクリングは発展してきました。
観光は地域の総合的戦略産業としての側面が強くなっています。地域の魅力に磨きがかかってくると結果的にヒト・カネ・情報が集約し、雇用が生まれ持続可能な社会になります。
さらに、富士市の新体育館の開設をはじめ、静岡県はスポーツの資源がハード面、ソフト面でたくさんあり、様々なスポーツ競技を同時に誘致できます。今後、私たちが立ち上げたコミッションは様々な場所で行われるスポーツイベントの情報一元化に取り組む予定です。県全体でスポーツ都市の魅力を磨き「産業」としていくためにも、どう発信し、ブランディングしていくかがカギになるでしょう。
大石 するスポーツ、見るスポーツ、そして支えるスポーツという観点がスポーツで地域活性化する上で大切だということが分かりました。今回の話をぜひ県東部でも生かしていきたいですね。

■Marco Favaro(マルコ・ファヴァロ) 氏
伊豆市地域おこし協力隊 サイクリングイベントプロデューサー

1968年イタリア生まれ。スポーツジャーナリスト、通訳業務、サイクリングイベント主催。現在、伊豆市地域おこし協力隊として、サイクリング文化が定着できる地域おこしに挑んでいる
■コーディネーター
大石 人士 氏
静岡経済研究所シニアチーフアドバイザー(サンフロント21懇話会TESS研究員)

1979年静岡銀行入行後、82年(財)静岡経済研究所出向。2005年より研究部長、12年理事、14年常務理事、19年専務理事、20年よりシニアチーフアドバイザー。静岡地方労働審議会委員、静岡県雇用対策審議会委員



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