サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2023.6.22 静岡新聞掲載」

国が2006年に沼津駅の高架化を事業認可して約17年、今年3月に鉄道施設本体工事を具体的に進めるための工事協定の調印式が県、JR東海、JR貨物の三者で行われた。秋には新貨物ターミナルの工事に着手し、いよいよ事業が本格化する。6月の「風は東から」は県東部で進む「まちづくりプロジェクト」を取り上げる。今年市制100周年を迎える沼津市の沼津駅周辺総合整備事業を中心に県東部の“未来の青写真”を紹介する。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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人と動物の共生社会目指し 進む意識改革と環境整備
■駅の高架化で癒しの空間が出現

沼津市の中心市街地、JR沼津駅周辺が大きく変わろうとしている。現在は、鉄道に南北が分断され、のぼり道・あまね・三ツ目の三つのガード下は慢性的な渋滞や、雨天時の冠水など課題も多い。しかし近年は駅周辺にマンションの立地も増え、人口の流入も見られる。様々な業務機能が集積して利便性が高いが、一方で子育て関連の機能や、緑の癒し空間が少ないといった市民の声も多い。
鉄道高架の関連事業はこうした同市が抱える課題を解決し、変革のチャンスをもたらすものだ。JR東海道本線と御殿場線が高架化すると、南北の交通状況が格段に良くなる。また、鉄道施設のスリム化により、駅周辺に広い新たな土地が生まれる。市はこうしたインパクトを最大限生かすため、「中心市街地まちづくり戦略」を2020年3月に策定した。
戦略には四つの方向性が示されている。戦略1は「ヒト中心の公共空間の創出」。沼津駅周辺の公共空間を車中心からヒト中心の空間に再編するため、駅周辺の地区交通体系を整理する。戦略2は「拠点機能の立地促進」。鉄道施設跡地や高架下空間に地域の発展に必要な機能を入れ込んでいく。戦略3は「まちなか居住の促進と市街地環境の向上」。空き店舗や低未利用地の活用を図り、まちの魅力を高める。戦略4は「周辺地域資源との連携」。沼津港や千本松原をはじめとする地域の観光資源などとの接続や回遊性を高める。
高架化で沼津駅南に新たに生まれる土地と交通の再編を行うことで、イメージパースにあるような緑とにぎわいにあふれる空間を生み出していく。同戦略の推進に取り組む市まちづくり政策課の渡辺尚志課長補佐は「このイメージは20年後のものだが、それまで市民の目に見える形で段階を踏んだ整備を行っていく」と語る。



■まちなかのにぎわいづくりに着手

その第一弾として昨年度は実証事業「OPEN NUMAZU」を開催。駅前商業施設「イーラde」南側の車道を1車線規制し、歩行者空間として椅子やテーブルを設置。統一感のあるデザインのもと、人がくつろげる空間づくりを行った。約1か月の試行で、パソコンを打つ人、読書をする人、ファミリーで訪れる人など、今までのまちなかでは見られない景色が現れたという。車線を減らしたことによる渋滞も見られなかった。
続く第二弾は、仲見世商店街での居心地の良い滞留空間づくり。商店街の協力のもと、買ったものが食べられる椅子・テーブルを設置し、出店やイベントができる空間を設けた。結果、滞留者数は2・1倍、滞留時間も増加し、商店街の活気や訪れるきっかけづくりに寄与した。

昨年度の結果を踏まえ、今年度も引き続き実証事業を行う。今年度は、仲見世商店街に日常的に椅子やテーブルを設置したり、定期的に出店イベントなどを開いたりする予定だ。イーラde前には、ウッドデッキを置き、休める空間を作って検証する。「こうしたステップを踏んで最終的には車線を減らし、生み出された空間を市民や事業者に自由に使ってもらいたい」と渡辺課長補佐。あと4〜5年もすると目に見える形で駅前が変化する様子が見られるという。




スポーツ、海、人中心のまちづくりを

市制100周年を機に、
今後の100年を見据えたまちづくりについて
頼重秀一沼津市長に聞いた。


懸案だった総合整備事業が大きなターニングポイントを迎える。 鉄道高架事業をはじめとした総合整備事業は、1988年3月、当時の渡辺朗市長の就任時に鉄道高架推進を表明した時までさかのぼる。それから約30年、私を含めて6人の市長のさまざまな思い、市民、事業者の皆さんの思いが積み重なった事業といえるだろう。
駅が高架化されれば、その下に生まれる空間を利活用できる。当市は東部地域の交流拠点を目指しており、交流拠点にふさわしい機能を誘致できるよう整備していく。
広い土地が中心市街地に生まれるので、拠点性を図ると同時に市民の利便性の向上、市民サービスの向上に資する公共公益施設を導入する。また、店舗の出店を促す形でまちのにぎわい創出や活性化を図る。昨今、災害がクローズアップされており、南海トラフ巨大地震も避けては通れない。さまざまな備えという意味で防災の拠点、防災公園という位置付けも考えている。 駅前再開発整備が進む中、にぎわいを生み出すのは人。
近年、リノベーション関係で新しい交流人口も増えている。
駅の周辺は残念ながら緑がない、人が訪れて憩える空間がない、という市民の声が多い。特に駅前広場はバスロータリーやタクシーなど、車のための空間だった。昨今の「人を大事にする」というコンセプトにおいては、まちづくりも人を中心に据えていく。
2015年から着手しているリノベーション事業や昨年の「OPEN NUMAZU」は、我々行政だけでは進まない。多くの事業者、商店街、地域住民との連携が大切だ。どこかの成功事例を移植するのでは、地域の皆さんの思いが何も反映されないミニ東京ができるだけだ。より多くの方に参画してもらい、まちづくりを自分事としてとらえてもらい、しっかり協議をすることが大事だと思っている。 周辺自治体で新たなまちづくりが進む中、どのように存在感を示すのか。 どの街も拠点化の事業展開をしているが、それぞれが強みを持ち連携することが大切と考えている。
今年3月、沼津市総合体育館がオープンした。バスケットコートが5面、県大会や全国大会だけでなく、国際大会も誘致できる環境が整った。ベルテックス静岡や東レアローズなどトップリーグの選手を迎えたイベントも打ち出すことができる。また、本市ではフェンシングを活用したまちづくりを進めており、全国大会を誘致している。これらの今までできなかった規模の大会誘致によって、子どもたちにはプロや全国レベルの技に間近で接してもらい、関心を高めてもらうとともに、総合体育館を中心に、近隣市町との連携によるスポーツツーリズムを推進したい。
本市は63`bの海岸線がある。マリンスポーツのメッカであり、環境省の「水質が特に良好な水浴場」にいくつも選ばれている。海を活用したさまざまな取り組みができ、また沼津港は年間166万人の観光客が訪れる。
スポーツ、海、人を中心とした新たな中心市街地と、三つの強みが生まれる。これらをうまく連携させ、まちづくりを総合的に盛り上げていきたい。市制100周年の今年、これからの100年を見据えた取り組みがスタートすることは奇跡に近い巡り合わせだと思う。



事例紹介
県東部で進むまちづくりプロジェクト
三島駅南口東街区再開発 三島駅前における広域健康医療拠点の整備。都市機能の更新や利便性の向上を図り、また、複合的な機能が導入されることによるにぎわいの創出が期待されている。
富士駅前再開発 富士駅北口は、老朽化が進む建物を更新し、商業・居住・公益機能などの整備が進められている。駅前広場の一体的な再整備も進み、同市の顔である富士駅北口の機能向上を図っている。


■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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