サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2023.11.24 静岡新聞掲載」

今年の3月19日、伊豆縦貫自動車道の河津下田道路(U期)河津七滝IC〜河津逆川IC間(約3`b)が開通した。これにより、下田方面への所要時間が短縮され、伊豆地域の観光に大きく寄与することが期待されている。
11月の「風は東から」は、伊豆縦貫自動車道の一部開通で、地域の観光動向がどのように変化したか、また地域活性化にどのように寄与するかを、下田市観光協会の渡辺一彦会長と、松崎町の深沢準弥町長に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ8

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アクセス向上を好機に関係人口づくりを強化
■下田方面のアクセスが劇的に改善

河津下田道路の開通区間(国土交通省沼津河川国道事務所提供)

国土交通省沼津河川国道事務所が5月に発表した資料によると、ゴールデンウィーク(GW)期間中の河津七滝IC〜河津逆川IC間の交通量は、1日約5200台。国道414号及び下佐ケ野谷津線を利用する車両の約4割が、開通した河津下田道路への利用に転換したとみられる。また、この道路を利用することで、GW期間における下田中心部への所要時間が国道414号ルートは約9分、国道135号ルートは約12分短縮した。
特に、狭小で急カーブの多い国道414号の現道区間が避けられるため、安全性も向上。所要時間が短縮したことで、観光客のさらなる増加やリピートが期待されている。
下田市観光協会の渡辺一彦会長は「新型コロナウイルス感染症の5類への移行とも重なり、GWから夏にかけて車で来るお客様が増えた」と語る。
「伊豆半島に来るお客様は天城越えの山道と、国道414号の現道区間に大きなストレスがあったはずだ。それが今回の開通で大きく緩和され、往復30分の時短にもなっている。それにより日帰りやフリーで来るお客様が増えている」。そのため、飲食店などで夕食を取る人も増えたという。

松崎町の深沢準弥町長も、土日や連休の観光客が増えている実感はあるという。コロナ禍の影響による宿泊施設の閉鎖などもあったが、民宿の宿泊客数はコロナ前の8割にまで回復した。また、インバウンド(訪日客)についても「西伊豆は公共交通機関がぜい弱な事もあり、インバウンドは少ないが、最近は欧米の方が自分で運転したり、高級旅館に家族連れで来たりと、今までにない数の外国人が来ている」と語る。

下田市観光協会
渡辺一彦 会長




■「もの」から「こと」へ旅行の質が変化

アクセスが良くなったことで、熱海や修善寺方面など、伊豆半島の主要観光地と下田周辺を連泊する観光客も増えている。「第二の伊豆急ではないが、伊豆急が通り伊豆の観光が大きく変わったように、縦貫道が通ることであらたな観光時代が到来するのではないか」と渡辺会長は期待する。
一方で、旅行の質も変化している。渡辺会長は、「今まではキンメダイなど“もの”を目的とした観光が主だったが、ここ数年は、体験などの“こと”を求めて訪れている」と語る。深沢町長も「海水浴に来る人が減った代わりにSUP(スタンドアップパドルボード)やダイビングなどの体験を楽しむ人が増えている。着目したいのは、そういう人たちが地元との接点を求めていることだ」。コロナが明け、なじみの宿に再訪する人も増えているという。
松崎町ではこうしたニーズに対応するため、体験メニューを増やしたり、平日は割安になる仕組みを導入したりすることで連泊を促している。
10月21日〜11月12日には「松崎まちかど花飾り」を開催。季節の花を寄せ植えした昔の民具や桶(おけ)など約100点を中宿通り、なまこ壁通り周辺に配置。昨年、今年はアーツカウンシル静岡と連携し、花飾りのライトアップや、現代美術家の持塚三樹氏と町民の有志が制作した「マツタキ今昔物語絵巻プロジェクト」の作品の一部を映像化して、伊豆の長八美術館にプロジェクションマッピングを実施した。
その長八美術館が来年40周年を迎える。実は、スペインの「サグラダ・ファミリア」で芸術工房監督を務める外尾悦郎氏の作品がここにあるが、あまり知られていない。深沢町長は「道が便利になるのは歓迎するが、それだけでは地域活性化にはつながらない。この地域にしかない歴史や風土をアピールできるよう、どう知恵を絞っていくかが肝要」と語る。

深沢準弥 松崎町長



■人を軸にした観光で交流人口拡大へ

道路アクセスの向上は、単に観光客の増加にとどまらず、地域の交流人口の拡大にも変化をもたらす。
松崎町は近年、学生との協働に力を入れている。現在、静岡大、常葉大、早稲田大、立教大と観光や環境、教育などさまざまな分野で協働が始まっている。深沢町長は「高齢化が進む松崎町にとって、若い世代との接点づくりは地域活性化に欠かせない」と語る。
3年ほど前からは、移住定住を促進する「松崎町移住定住促進協議会」を立ち上げた。協議会メンバーには実際に同町に移住してきた「経験者」も入っている。移住を検討している人に向けた補助金や、移住経験者による相談会など、ワンストップのサービスを展開している。すでに、子育て世代3組が移住している。

松崎町移住定住促進協議会のメンバー

歴史を感じさせる「ペリーロード」(下田市)

道路アクセスの向上は、単に観光客の増加にとどまらず、地域の交流人口の拡大にも変化をもたらす。
松崎町は近年、学生との協働に力を入れている。現在、静岡大、常葉大、早稲田大、立教大と観光や環境、教育などさまざまな分野で協働が始まっている。深沢町長は「高齢化が進む松崎町にとって、若い世代との接点づくりは地域活性化に欠かせない」と語る。
3年ほど前からは、移住定住を促進する「松崎町移住定住促進協議会」を立ち上げた。協議会メンバーには実際に同町に移住してきた「経験者」も入っている。移住を検討している人に向けた補助金や、移住経験者による相談会など、ワンストップのサービスを展開している。すでに、子育て世代3組が移住している。



安全性の向上と地域特性のPR両輪で
富士急シティバス 井原一泰社長(サンフロント21懇話会会員)

旅行需要はだいぶ戻ってきている実感がある。新型コロナウイルス感染症が5類に指定されてから、修学旅行をはじめとする学生の団体旅行や企業の視察旅行は元に戻りつつある。しかし、一泊旅行、慰安旅行、温泉地への旅行は少ない。その代わりに日帰り旅行が増えてきた。
この10月から貸切バス運賃制度が変わり、貸切バス料金は3割アップとなった。また、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる「2024年問題」も控えており、バス旅行は今後ますますコンパクトになっていくことが予想される。こうした対策として、車両のラグジュアリー化、ガイドをはじめとする従業員の質の向上など、付加価値をどこに見出していくかが課題だ。
道路アクセスの向上で、運転手のストレスが減少し、労働時間の短縮につながり、安全性が高くなる。料金も安く提供することができる。いまだ伊豆半島は道路が混んでいるイメージがあるが、伊豆縦貫道のような高規格化道路が整備されれば、三島・沼津を玄関口とした新たなルートとして、伊豆観光の活性化に大きく寄与すると思う。それには、昨年の大河ドラマのような「地域の特性」を十分にPRすることが求められる。



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