サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2024.5.24 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会30周年記念 県東部首長リレーインタビュー

官民一体で県東部の活性化策を探る「サンフロント21懇話会」は、光輝く地域づくりに向けて研究・提言活動を行っている。来年6月には設立30年の節目を迎える。それを記念して「風は東から」では、懇話会と二人三脚で県東部を盛り立ててきた20市町の首長にリレー形式で登場いただく。第一弾は、頼重秀一沼津市長と豊岡武士三島市長に、今後のまちづくりへの課題や抱負を聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ2

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沼津市 変革の時代に県東部の拠点都市の役割果たす
■駅周辺総合整備が本格化
■頼重 秀一 沼津市長
1968年静岡県沼津市生まれ。91年日本大理工学部卒業後、民間企業、国会議員秘書を経て2003年に沼津市議会議員に初当選。以降4期連続で当選し、2017年には議長に就任。18年沼津市長に初当選し、現在2期目。

本市は、伊豆と県東部を結ぶ交通の結節点であり、官公庁や民間企業の支店等が集積するなど、県東部の拠点都市として地域の政治、経済、文化の中心的役割を担ってきた。その立ち位置は今も昔も変わらない。今後も県東部の中心的な自治体であり続けるには、産業の活性化、利便性の向上、都市の魅力の向上、雇用創出、定住人口拡大などやるべきことはさまざまだ。
昨年、市制100周年を迎えた。社会環境や人々の価値観が変化する中、本市は今、変革の時期を迎えている。中でも、まちづくりの中核である沼津駅周辺総合整備事業は昨年度、新貨物ターミナルの本体工事が着工され、本年度は新車両基地の工事も始まる。こうした動きを受けて民間による再開発も活発化している。
特に中心市街地は、ヒト中心のまちづくり、歩いて楽しいまちづくりを目指し、駅前をはじめとする商店街の活性化に重きを置いている。具体的には、個店の魅力の向上、商店街の活動支援、人流の創出の三つを進めているところだ。
産業が元気なまちとして、ひとつにはファルマバレー・医療田園都市構想をどう進めるかにある。今までも医療関連企業進出への補助金や、県東部の三次救急を担う沼津市立病院を中心とした医療体制の充実などを進めてきた。今後は、フレイル対策の推進や地域包括ケアシステムの強化など、医療・福祉・介護の充実、また市内事業者(※1)の協力の下、「XーTech NUMAZU(クロステックヌマヅ)」による高度デジタル社会に向けた対応に力を入れていく。

■沼津駅南口駅前広場将来イメージ


■東部広域連携を推進

さらに視野を広げると、県東部には圏域で総合的に相乗効果を発揮できる連携体制が必要だ。本市は海という優れたコンテンツがあり、食材やマリンスポーツなどさまざまなものを提供できる。沼津の海を提供しつつ、伊豆長岡をはじめとして伊豆の国市、伊豆市の温泉場と連携する。例えばスポーツツーリズム。自転車を楽しみながら沼津では海の幸を堪能し疲れたら温泉に漬かる、という魅力が提供できるだろう。せっかく富士・箱根・伊豆・駿河湾という世界的に優れたブランドを持っているのだから、その構成員である自覚をもって物事を考えるか、自分のところだけを考えるかで取り組みの仕方も変わってくる。
また、首都圏に近い優位性がありながら、それらの優れたコンテンツを活用しているとは言い難い。これは非常にもったいないことだ。甲府市、宇都宮市、前橋市など東京から100`圏の都市は圏域をきちんと形成しており、まちづくりにおいてもその取り組みが非常にスピーディだ。しかしながら、県東部エリアは自治体が細かく分かれており、市町の境が地域の持つ優れたポテンシャルの活用の面で大きな弊害になっている。まちづくりもしかりだ。
今のままだと小粒は小粒のままで終わってしまう。ある程度の財政規模圏域がないところには民間も投資をしない。道州制を出すと話が大きくなるが、関東圏でも名古屋圏でも県東部は一番端だ。だからこそまとまって「存在感」を出す必要がある。そういう点で県のリーダーシップの下、「地域循環共生圏」として連携していく仕組みをつくる事が重要であり、医療田園都市構想、自転車ツーリズムなどはその代表例だ。
首都圏に近い優位性を活用できる「特区」として戦略的な枠組みを県東部全体で作っていきたい。

(※1)IHI、富士通Japan、明電舎、RICOH



三島市 市民と共に日本一ウェルビーイングなまちへ
■医療系企業、施設が集積
■豊岡 武士 三島市長
三島市出身。静岡県職員を33年間、県議会議員を3期務めた。2010年から市長を務め現在4期目。日本獣医畜産大(現:日本獣医生命科学大)獣医学部卒

昨年度、本市は三島市自治会連合会、三島商工会議所と「めざせ!ウェルビーイング宣言」を行った。ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好で満たされた状態を指す。平たくいうと、市民一人ひとりが元気で明るく楽しく暮らせる地域づくりをしていこう、という意思表示だ。心身共に満たされた状態になることで、周囲の人々にも幸せの輪が広がる。ありがたいことに、本市には地域を良くするために自ら行動を起こしてくれる「シビックプライド」の高い方々が大勢住んでいる。そういう方々の行動の輪を広げ、誰かのため、地域のため、自分の幸せや夢の実現のために活躍でき、生まれて良かった、育って良かった、暮らして良かったと思えるまちづくりを進めたい。
また、本市は医療田園都市を目指し、医療系企業の誘致を積極的に進めている。一つは三ツ谷工業団地。ここに感染症迅速診断キットの最大手企業のタウンズが進出する。先般起工式が行われ、25年5月ごろには新しい工場が竣工予定だ。東駿河湾環状道路の玉沢インターからほど近い三島総合病院隣接地に、整形外科・脳外科等の分野におけるインプラント・手術器械の開発・製造を行っている東海部品工業の進出も決まっている。県のふじのくに感染症管理センターと県健康福祉交流プラザも開設した。
にぎわいの核づくりとして、三島駅前の開発がある。リーマン・ショックや東日本大震災の影響もあり、若干紆余曲折もあったが、西街区は2020年に富士山三島東急ホテルが完成。東街区についても再開発事業により27年の竣工を目指して工事に着手したところだ。完成すればこの30年間で本市最大の変化が訪れるではないかと思っている。

■三島駅南口東街区再開発の完成イメージ
 (三島駅南口東街区A地区市街地再開発組合 提供)


■歴史文化を守りつつ新たな挑戦を

「絵本のまち」宣言

中心市街地の都市化を進める一方で、変わらず守ってきたのが水資源だ。NPOなども加わった源兵衛川の整備などを通じ、貴重な財産である湧水とせせらぎを市民の生活や観光に生かしている。毎年行っている河川清掃は今年44回目を迎え、新幹線駅から徒歩5分でホタルの乱舞に出会える環境は健在だ。もう一つは文化。今年から三島にゆかりのある宮西達也さんやえがしらみちこさんなど、4人の絵本作家と「絵本のまち」宣言を行った。昨年行った「三島満願芸術祭(※2)」は移住してきた方が中心となり、三島を舞台に開催したアートイベントだ。
移住者やスタートアップ企業などは積極的にサポートしている。また、常に新しいことに挑戦し続けなければならないと考えている。庁内にデジタル戦略課を設け、全庁的にデジタル化に取り組んでおり、コロナ禍での給付金給付は電子申請を活用し、迅速に給付した。昨年は、チャットGPTとメタバースの研究会を市の若手職員が立ち上げた。これはAIやメタバースを行政運営にどう活用するかを研究するものだ。市内のさまざまな企業や団体が加わった「スマートシティ推進協議会」も立ち上がっている。先日はデジタル産業における日本を代表する業界団体であるJEITA(電子情報技術産業協会)の方がお見えになり、今後、地域課題の解決を一緒に図っていくことになった。
三島は「三つの島」と書く。一つ目は「美」島、二つ目は「味」島、三つ目が「魅」島だ。そんな三島を描きながら、さまざまな分野でオンリーワンを生み出し、この地域の元気づくりをしたい。

(※2)三島に滞在した作家太宰治が、地元の人との触れ合いを描いた短編「満願」から来ている。



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