サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2024.12.22 静岡新聞掲載」

サンフロント21特別編 首長座談会PART2

サンフロント21懇話会の設立当初の大きなテーマが広域連携。設立以来30年が経ち、この間の環境、社会の変化は大きく、地域が生き生きと輝くためには、行政の境を越えた連携が欠かせない。「風は東から」特別編では、県東部20市町を東部、伊豆、伊豆南部、富士山の四つの地区に分け、これからの広域連携の在り方について語っていただく。
第二弾は、沼津市の頼重秀一市長、三島市の豊岡武士市長、清水町の関義弘町長、長泉町の
池田修町長、函南町の仁科喜世志町長に、現在進んでいる様々な連携の在り方と、今後の
展開について聞いた。(聞き手は編集部)
注)本座談会は2日間に分けて開催し、紙面上で構成・編集しています

[サンフロント21懇話会企画]

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良好なアクセス武器に首都圏から選ばれる場所に
■沼津駅の高架と新幹線三島駅 2つの拠点強化に期待

左から頼重秀一沼津市長、豊岡武士三島市長、関義弘清水町長

― サンフロント21懇話会の設立当初からのテーマである「広域連携」。本日は、県東部地域でどのような連携が行われているのかについて伺います。
まず、県東部の中核を担う沼津市から、地域活性化のカギとなる沼津駅の高架事業についてお願いします。
頼重 本市の中心部は、線路で市街地が南北に分断されていることや、沼津駅周辺の恒常的な渋滞などが市民生活や経済活動にもたらす影響が長年の課題でした。その解決に向け、沼津駅周辺総合整備事業に取り組んでおり、市街地分断の解決につながる第一歩として、昨年の新貨物ターミナルに続き、今年は新車両基地造成工事が始まりました。
全ての工事完了までにはまだ長い時間がかかりますが、本事業により、南北の交通の円滑化、駅周辺の回遊性向上、都市機能の集積に伴う拠点性の向上など、地域全体にもたらす効果は大きいと考えます。

仁科 私は沼津駅の高架化がこの地域の発展に必要不可欠と思っています。東西軸の鉄道、南北軸の道路がある場合、南北の往来をスムーズにするには高架事業が絶対条件。加えて東駿河湾環状道路が原まで開通する。つまり、それが本来の東駿河湾の道路網の姿です。そうすることで物流が大きく変わると思います。
― エリアの核という意味では、新幹線三島駅もそのひとつ。現在、南口の再開発事業が進んでいます。また、三島、裾野、清水、長泉の2市2町は「富士山南東スマートフロンティア推進協議会」をつくっていますね。
豊岡 この2市2町は、新幹線三島駅を利用している方が大変多いのが特徴です。人口規模は20万人余で中核市に相当しますし、大学も二つ三つございます。国際的な研究機関もあり、製造品出荷額は1兆円を超えるポテンシャルを有しています。首都圏への通勤者も多く、このエリアをもっと魅力的な場所にして、移住してくる方や企業の誘致を一緒にしていこうというのがそもそもの発想です。
裾野市に建設中のウーブン・シティと三島駅をどう結ぶかについての議論もこの中でしています。駅の南口にホテル建設を予定していますので、ウーブン・シティに視察に来られる海外の方々も、多く利用してくださるのではと思っています。
 この協議会は様々な地域課題の解決に向けて、広域連携による取り組みを進め、民間事業者との連携や先進技術の活用などの検討を行うとともに、それぞれの地域資源や主要プロジェクトなどの知見を共有し、世界に発信できる魅力あるエリアの形成を目的としています。
昨年度は国土交通省の地域公共交通確保維持改善事業費補助金の採択を受けまして、三島駅北口と御殿場線下土狩駅を結ぶ下土狩文教線約1.5キロの間で、小型バスタイプ車両を用いた自動運転実証運行を行いました。
池田 当町は、富士山南東スマートフロンティア推進協議会以外にも、し尿、火葬場は裾野市、消防は三島市・裾野市と連携しています。既存の枠組みで何もかも協議するのではなく、テーマや課題ごとに柔軟な連携が必要と考えます。伊豆縦貫自動車道や伊豆湘南道路などは広域的な視点で連携していきたい。課題ごとに連携し、町民にとって町にとって有効であるものをどんどん行っていきたい。成果を出すという点は常に意識をしています。

頼重 秀一 沼津市長
沼津市出身。1991年日本大理工学部卒業後、民間企業、国会議員秘書を経て2003年に沼津市議会議員に初当選。以降4期連続で当選し、2017年には議長に就任。18年沼津市長に初当選し、現在2期目



■連携のテーマは様々 交通網整備も地域一帯で

池田修長泉町長(左)と仁科喜世志函南町長(右)

― 今「テーマで柔軟に連携していく」というご意見が出ました。現在、県東部ではどのような連携が進んでいるのですか。
仁科 2000年に、伊豆半島の7市6町による「美しい伊豆創造センター(美伊豆)」が設立され、伊豆半島のグランドデザインが定められました。「伊豆はひとつ」を合言葉に、観光や道路、防災などについて議論しています。この枠組みの中に伊豆半島ジオパーク推進協議会もあり、清水町、長泉町も加わっていただいています。
 伊豆半島ジオパーク推進協議会では、町の宝である柿田川の「保護」「教育」「持続可能な開発」について思いを一つにしていただいています。昨年は、沼津市市制100年、本町町制60年を記念し、ジオパークロゲイニング大会を開催したところです。来年3月には、松崎町と南伊豆町を舞台とした大会も予定されています。

頼重 アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台になったことを機に始まったアニメーションツーリズムも連携の一つでしょう。3日にわたり行われた「沼津地元愛まつり」には、全国、いや世界中からファンが押し寄せていますので、宿泊や飲食などは我々だけでは追い付かず、近隣市町に協力していただいています。最近ではスピンオフ作品に清水町の柿田川湧水が登場し、隣接するショッピングセンターなどと開催したイベントに、我々が持っている情報やツールなどを提供しました。
豊岡 県境をまたいだ事例としては、小田原市から箱根町、函南町、三島市で、箱根八里街道推進協議会を作っています。来年の11月に全国街道交流会議の大会が三島で開催され、東海道と下田街道がテーマになります。
同様に、来年開催される大阪・関西万博に箱根町、本市、大阪の枚方市、和泉市の3市1町で東海道五十三次ならぬ五十七次で出展します。和泉市には歌川広重の素晴らしい作品がたくさんあります。箱根町は大名行列、三島は一般商人の旅がテーマで、江戸時代の旅を知っていただきます。万博には外国人の観客が350万人訪れると想定されていますので、きっと富士山を見に県東部へ来てくれるのではと考えています。
― 交通網の整備などはいかがですか?
 道路網の発達や、自動車保有率の高さから、この地域はいわゆるモータリゼーションが定着しています。人口減少などによりバスなどの地域公共交通の利用者は減少傾向にあり、交通事業者の独立採算が成り立たず、従来の路線を維持できない地域が多くなっています。一方で、少しずつではありますが高齢者ドライバーの運転免許返納も増え、返納後の自家用車に代わる移動手段が求められています。
地域公共交通は、単独の自治体で完結するものではないと考えています。県東部地域の住民の生活を考えますと、近隣市町を含めた広域の生活圏の中で互いに行き来しておりますので、近隣市町の皆様と密接な連携体制が必要と考えています。
豊岡 前提となる道路整備ですが、清水町と三島市の間では西間門ー新谷線の整備が進んでいます。国道136号に結び付けるということで、新谷地区の用地買収を進めています。長泉町とは、池田柊線と谷田幸原線を結びつけることをしています。将来的にライドシェアや自動運転が考えられますが、当面は路線バスを維持していただくということで、路線バスの運転手確保に向けた二種免許取得のための補助金を今年4月から始めました。
頼重 特に沼津、三島、清水、長泉の2市2町は生活圏が一体ですから、単独で公共交通体系を考えても意味がありません。三島駅をハブに、沼津、原、片浜、大岡、函南、下土狩駅を地域の核にし、それらがしっかり連携することが、国が進めるコンパクトプラスネットワークに繋がります。それらを公共交通で結ぶ環境が整備されることが、地域住民が安全安心に暮らせるエリアの実現に繋がると思います。

■豊岡 武士 三島市長
三島市出身。静岡県職員を33年間、県議会議員を3期務めた。2010年から市長を務め現在4期目。日本獣医畜産大(現:日本獣医生命科学大)獣医学部卒

■池田 修 長泉町長
長泉町出身。1980年工学院大電気工学科卒業後、長泉町役場へ入職。職員として教育部長、総務部長などを務めた後退職し、2013年に長泉町副町長に就任。その後17年に長泉町長に初当選し、現在2期目



■多様な魅力を共に発信 地域コミュニティー創出に工夫

― 首都圏を中心とした地域間競争に打ち勝つために、今後この地域がどのような連携をしていけば良いか伺います。
頼重 県東部は、首都圏100キロ圏という中では、甲府、前橋、水戸、宇都宮市など県庁所在地を相手にしていくことになります。ですから、エリア内での足の引っ張り合いは他地域の優位性を高めるだけです。これだけ恵まれたエリアが一致団結すれば、ポテンシャルはものすごく大きいと思います。
沼津の産業界の方に話を聞くと、三島市や清水町などの魅力を活用したいとおっしゃる。同様に、近隣市町の方は本市の人口規模や、港をはじめとした海を活用したいとおっしゃいます。近隣市町と連携することで強固な基盤を築き、持続可能なエリア、つまり「地域循環型共生圏」をしっかり確立するのが重要と思います。
豊岡 さらなる発展の決め手はリニア新幹線です。リニアが開通すれば、ひかりとこだまが増発されます。今は、のぞみが1時間に12本走る時間帯があり、ひかりやこだまの入る余地がありません。それが解消されると品川駅周辺の大規模開発が進んでいるエリアからここまで30分でアクセスできるのです。
池田 100キロ圏内という大きな話が本来であって、沼津市から長泉に転入して喜んでいる時代ではない。一番やりたいのはここのエリアの魅力を発信することです。それも、東京駅にポスターを貼るのではなく、人を介した情報発信をしたいと思っています。
先の富士山南東スマートフロンティア推進協議会の枠組みでの情報発信は有効と思います。三島駅では自動運転の実証事業を行った、沼津はアニメの聖地になっているなど、このエリアのさまざまな情報発信の積み重ねが大切です。一発逆転の広報なんてありません。せっかく取り組むならとにかく数多く発信することが肝要です。
仁科 かつて本町の別荘地は大手企業の保養所がたくさんあり、企業戦士が週末に休みに来るところでした。静かな場所で、富士山を見ながらゆっくり温泉につかり英気を養う場所でした。時代は変化しこうした動きは一掃され、コロナ禍を経て首都圏に週1〜2回出社して、あとは地方でのんびりというライフスタイルが現れました。
海辺に行ったり、山に登ったり、夜が楽しい銀座で過ごしたり、首都圏から100キロ圏内の人たちは多種多様な住み方をするのではないでしょうか。いま、2拠点住居も増えています。しかしながら、その場に家があるだけで地域住民との関係値が築けているとは言い難いですね。
池田 住んでいる場所に関わることで個人の充実感を感じてほしいですね。いま、町内に高価格帯の分譲マンションが3棟同時にできる予定です。首都圏からの移住者も多く、中には情報感度の高い「エッジの効いた人」も数多くいると思うのです。その人たちがただ会社と家の往復に終始してはもったいない。そういう方々も町に引き込みたいな、そのための面白い仕掛けができないかな、と考えています。
その一つ、町の定住応援事業や新幹線通学支援を受けている学生のことを「未来人」と呼んでいます。中でも新幹線通学支援を受けている未来人は200人を超えていて、その学生たちにまちづくりに企画段階から参画してもらい、町を紹介する動画の制作や防災イベントを一緒に行ってもらっています。彼らの2人に1人は卒業後も地元に残ってくれています。
仁科 県東部には複数の大学や専門学校があります。地元の学生、県内、県外から通う人も多い。せっかく縁あってこの地で4年なり2年なり学ぶのですから、そういう人に向けた「静岡学」があってもいい。この地域の文化や歴史、産業を学んでもらい、地域に興味と愛着を持ってもらう。自治体の職員が講師になってもいいですね。そうすることで、ここで働こう、住んでみようという人が増えるのではないでしょうか。
 この県東部は、唯一の観光資源を持っている市町や、特殊な才能を持っている人たち、素晴らしい歴史文化など、たくさんの強みを有しています。市町のそれぞれの強みを理解し、不足部分を補っていければ、このエリアが発展し、若者たちにも選ばれる地域になることを確信しています。

■関 義弘 清水町長
清水町出身。1978年、清水町役場へ入職。企画財政課長、総務課長などを歴任し、2015年から清水町副町長に就任。その後19年から清水町長に就任し、現在2期目。東京理科大理工学部卒

仁科喜世志 函南町長
函南町出身。1973年法政大社会学部卒業後、函南町役場へ入職。約37年間職員として勤務した後、2011年に静岡県議会議員に就任(2期)。その後18年に函南町長に就任。現在2期目



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