サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2025.1.24 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会30周年記念 県東部首長リレーインタビュー

官民一体で県東部の活性化策を探る「サンフロント21懇話会」は、光輝く地域づくりに向けて研究・提言活動を行っている。今年6月には設立30年の節目を迎える。それを記念して「風は東から」では、懇話会と二人三脚で県東部を盛り立ててきた20市町の首長にリレー形式で登場いただく。1月は、下田市の松木正一郎市長と東伊豆町の岩井茂樹町長に、人口減少対策や観光振興について聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10

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地域資産と異文化が交ざり新たな未来を創造する
本物の文化を観光資源に
■松木 正一郎 下田市長
静岡県下田市出身。建設会社勤務を経て、1989年静岡県庁に入庁。都市計画課長、交通基盤部景観まちづくり課長、下田土木事務所長など務める。2020年より下田市長に就任。現在2期目

当市は市制50周年を契機に、「下田市グローカルCITYプロジェクト」を始動させた。グローカルとは40年ほど前に提唱された概念で、グローバルとローカルの合成語。地域特性を磨くことで地元への誇りと愛着を持ち、国際社会で活躍できる人材の育成と、人・モノ・地域といった横のつながりをつくり、世界に通じる魅力的で持続可能な未来の下田の創出を目指していくものだ。
当市は港町として長い間、異なるものを受け入れてきた。江戸時代、大坂と江戸を結ぶ海路の基地として賑わい、幕末には下田港にペリーが来航し、開国の舞台として様々な交流が生まれた。こうした特徴を生かし、観光振興を図るとともに世界で活躍する人材育成を目指した国際教育など、様々なプロジェクトを進めている。
また、地域資源として旧市街の町並みもさらに活用していきたい。ペリーロードなど旧市街には、数多くの路地がリアルな生活空間として今もなお残っている。昨年11月には「全国路地サミット」が開催され、全国の“まちづくりのプロ”が当市に集った。地域に暮らす人々や建物などは全て大切な文化資源だ。それらを実体験しながらリモートワークで働くようなデジタルノマド(※1)なども包摂した新しい観光まちづくりに積極的にチャレンジしていきたい。

■グローカルCITYプロジェクトの取り組み


■安心・安全なまちづくり

■全国路地サミットの様子
■耐震改修シンポジウム

全国各地の市町村で少子化が進んでいる。半島という不便な地域ではさらに厳しい。したがって人口が減少しても社会が回るようにすることが大切だ。市民が安心して暮らし続けられる新たな社会設計が求められていると思う。
その中で重要な課題が防災だ。台風も大雨も自然現象である。しかし、ひとたび川が氾濫し、住居や人に被害を及ぼすと「災害」になる。自然には抗えないので、私たちには災害を防ぐ事前投資が合理的かつ効率的だ。そこで、昨年11月に耐震改修シンポジウムを市民向けに開催した。タイトルは「津波の前に、逃げられますか?」。各々の住居の構造に応じて改修設計を工夫することで、費用を抑えることができるといった話が出た。また、避難場所となる体育館の空調設置に向けた検討も行っている。酷暑の昨夏、南海トラフ地震臨時情報が出たとき、設置の必要性を実感した。生命は憲法に保障されている。それを守る努力をこれからも続けていきたい。

※1 インターネットやデジタルツールを使って特定の都市や国に定住せず、旅行をしながら仕事をするライフスタイルを実践している人を指す。



社会変化に対応し次世代に繋ぐ持続可能な町へ
ベビーファースト宣言で子育てが楽しくなる町に
■岩井 茂樹 東伊豆町長
愛知県名古屋市出身。民間建設会社勤務、政治家秘書などを経て2010年より参議院議員を2期務める。安倍内閣のもと経済産業大臣政務官、菅内閣で国土交通省副大臣を歴任。22年3月より現職

当町は総合計画策定義務が外れたことを機に、町民にわかりやすく職員も動きやすい新たなまちづくりの総合的な指針「東伊豆町まちづくり総合指針」を策定した。「チェンジメーカー東伊豆町~町を変える 日本を変える~」を将来都市像に定め「緩和」、「適応」、「全員参加」の3つのコンセプトをもとに、施策を推進している。
まず「緩和」は、移住・定住や関係人口の促進、出生率の向上など人口減少を緩やかにする取り組みを行う。特に少子化を町の最優先課題と捉え「ベビーファースト宣言」を行った。取り組みの一つに、当町で子育てができる保育園留学を実施している。入園するお子さんだけでなく、普段子育てしながら働くお母さんに、当町の自然を感じながら、のびのびと仕事をしてもらいたいという想いから取り入れた。
また関係人口の拡大に向けて、台湾と連携した「熱川台湾提灯プロジェクト」を実施している。以前から観光客に温泉街を歩いてほしいと思っていたものの、施設の老朽化や街灯の少なさから、歩く観光客が少なかった。
そんな中、一昨年台湾の九份(きゅうふん)を訪れた際、その雰囲気に感動し、熱川にも九份をつくろうと決めた。早速台湾から提灯を1000個以上輸入し、温泉街に設置。昨年4月6日に点灯式を行った。現在も毎日点灯している。この取り組みで、お客さんがそぞろ歩くようになったり、新たに出店しようとする町民が出てきたりと少しずつ成果が出てきている。

■熱川台湾提灯プロジェクト


■ライドシェアで交通課題の解消へ

2つ目のコンセプト「適応」では、コンパクトシティなど、人口が減ったとしても耐えうるまちを目指している。人口減少が進み町の人口は1万1千人である一方、観光客は年間70万人前後。実働しているタクシーは6台と少なく、飲み会の帰りや幼稚園の送迎などに利用できないといった状況が続いている。路線バスも限界が来ている。こうした地域交通のハードルを乗り越えるため、相乗りサービスのライドシェア「ノッカル」を取り入れた。現在は前日予約制だが、使いやすくするため、1時間前のタイミングでも配車ができることを目指し、企業と打合せを重ねている。
3つ目のコンセプトは「全員参加」。教育や福祉などの町の課題を一部の人にお願いするのではなく、町民自らも参加し分かち合い助け合うことで心地よい空間を生み出したい。
例えば町では、少子化から学校の統廃合が課題となっているが、町民からの存続の要望もあり、幼稚園から高校までの一貫性ある教育を提案した。現在では少しずつ考え方が受け入れられるようになっている。
町民一人ひとりが自ら考え、行動していくとともに全員参加でつながりを持つことが町の未来を切り開いていくと考えている。

■ライドシェア「ノッカル」


■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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