サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2025.06.27 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会30周年記念 県東部首長リレーインタビュー

 官民一体で県東部の活性化策を探る「サンフロント21懇話会」は、光輝く地域づくりに向けて研究・提言活動を行っている。今月12日には設立30周年の節目を迎えた。それを記念して「風は東から」では、懇話会と二人三脚で県東部を盛り立ててきた20市町の首長にリレー形式で登場いただいた。最終回となる6月は、南伊豆町の岡部克仁町長と西伊豆町の星野浄晋町長に、少子高齢化対策とインフラ整備について話を聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ3

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南伊豆町 自然と調和した安心・安全な暮らしを実現
■若者と高齢者、両方が安心できる暮らしを
■岡部 克仁 南伊豆町長
1963年生まれ。南伊豆町出身。
高校卒業後、内装業を経て、2015年南伊豆町議会議員に当選。17年南伊豆町長に当選し、現在3期目

今年、本町は町制施行70周年を迎える。これまで長い歴史の中で尽力いただいた先人の方への感謝を忘れず、高齢者の皆さんに還元しながら、今後の町の未来を担う若者が住みやすい町をつくっていきたい。
まずは高齢者にやさしいまちづくりだ。現在、町民の約半数が65歳以上となっており、福祉や医療の仕組みを再整備することは急務である。例えば、町では病院の送迎支援を行うボランティア制度の導入や、町内各所から役場や病院に移動できるバスの運行などを行い、買い物や通院の不安を少しでも減らす努力を続けている。また「長命草」の生産にも力を入れている。長命草は優れた栄養素を持ち疲労回復などの様々な健康効果をもたらすと言われる。今後は地域おこし協力隊の力も借りながら、さらなる生産量の拡大を図り、町民の健康増進に寄与したい。
一方、子育て世代にとっても安心できる環境を整えることが重要だ。認定こども園の設立や、出産祝い金、医療費の無償化、高校生の通学費補助などを行っている。また大学卒業後5年以内の町民に対して奨学金返済補助を行うことで、若者のUターンを促している。加えて、移住者支援制度にも力を入れている。2016年に地方創生室を立ち上げ、他の市町に先駆けて地方創生事業に取り組んだ結果、県下でもトップクラスの問い合わせ数が来るようになった。現在は、東京都杉並区で移住者相談会を開催しており、杉並区から移住してくる人も多い。
これらの施策の効果もあり、昨年、消滅可能都市から脱却することができた。人口の減少率は抑えられているので、今後も町民ファーストの町政を進めていきたい。

■高齢者送迎ボランティア
■杉並区移住相談会


■町ならではの観光と防災の両立を目指して

■防災訓練の様子

本町の最大の資源は、やはりその豊かな自然と温暖な気候である。下賀茂温泉や弓ヶ浜、石廊崎など、全国に誇れる観光資源がありながら、これまで十分に生かしきれてこなかった面がある。しかし、ここ数年でようやく民間事業者との連携が進み、観光の形が大きく変わろうとしている。ふるさと納税を活用した「納税トリップ」や、週末に地域での暮らしを体験する「週末アドベンチャートリップ」などの取り組みは町外からも注目されている。こうした取り組みが少しずつ町の経済に活力を与え、雇用の創出にもつながっている。
観光振興と同時に、防災への備えも避けて通れない。近年は大雨や台風などの災害リスクも高まっているため、町として町民の避難路の整備や備蓄の確保を行っていく。さらに、伊豆縦貫自動車道の南進については、町の将来を左右する重要なインフラ整備と位置づけている。本町は地理的にも孤立した位置にあり、救急や物流の観点からも道路整備は不可欠だ。
行政同士の連携も課題に応じて進めていきたい。例えば行政の専門職の横のつながりをつくれば、他市町で人手不足が生じた場合に派遣することができる。各市町が自立しつつ、人口減少による課題に対して補い合える関係をつくることが望ましい。



西伊豆町 逆境こそチャンスに発想と連携のまちづくり
■教育と暮らしを「町の強み」に
■星野 浄晋 西伊豆町長
1978年生まれ。西伊豆町出身。
立正大学仏教学部卒業後、2004年に旧西伊豆町議会議員に初当選し、合併後の西伊豆町議会議員を3期務めた。17年に西伊豆町長に初当選し、現在3期目

日本中が少子高齢化の渦中にある中で、町の未来像を描くのは決して容易なことではない。ただ、逆境こそ発想の転換が必要であり、そこにこそ町の成長の芽があると信じている。
例えば、教育分野では小中学校の少人数体制を活かし、バイリンガル教育の導入を目指している。ALTを活用し、幼少期から英語を習うのではなく、触れる環境を整えていく。小さな町だからこそ、個々の子どもたちに寄り添った語学教育が可能だ。いずれは「西伊豆に通えばバイリンガルになれる」という評判が広がり、教育移住の波を起こすことも夢ではないかもしれない。
子育て支援策としても、給食費の完全無償化、通学助成、中学生の海外派遣など、段階ごとに支援を積み重ねている。特に、中学生を台湾に派遣する取り組みは、町外からも高い関心を集めている。
一方で、健康寿命の延伸も町の重要な課題である。高齢化率が50パーセントを超える町だからこそ、自立した老後の支援に取り組んでいる。ラジオ体操の全町展開や、地域サロンの運営など、日常に健康増進を取り入れる仕組みをつくっている。その結果、町民の健康指標にも変化が表れ、介護保険料も県内最低水準に近づいている。

■ALT(外国語指導助手)の活用



■地域資源とデジタルの融合が生む未来

本町には、全国に誇れる自然資源と、それを生かす柔軟な発想がある。地域通貨「サンセットコイン」はその代表例であり、町内の消費に5パーセントの還元を導入した。高齢化が進む中でも町民の理解と協力があってこそ成り立っている仕組みである。この仕組みにより、コロナ禍では国からの給付金もスピーディーに全町民へ届けることができた。
また、釣りや海藻養殖といった一次産業に、デジタル技術や地域通貨を掛け合わせる取り組みも進めている。遊漁船で釣れた魚を地域通貨で買い取るしくみや、アプリを活用した入場管理による釣り場の開放、そして未利用魚の有効活用など、西伊豆ならではの知恵と連携が随所に生きてきている。
空き家対策や移住促進も、地域おこし協力隊とプロジェクトマネージャーを起点に前向きに進んでいる。空き家の片付け支援、貸出マッチング、リモートワーク支援、教育移住の促進まで、他自治体に先駆けた柔軟な制度設計を行っている。特に、空き家を活用した古民家の再生や、移住者による地域経済への参画は、新たな地域の活力となっている。
観光施策では、「ロケさぽ西伊豆」による積極的なロケ受け入れやSNSを通じた情報発信により、誘客効果が出始めている。従来、閑散期であった9月にも若年層の来訪が増加し、町に新たな経済の流れが生まれている。今後は、ヘリコプタークルージングなど、これまでにない角度からの観光提案も視野に入れている。
行政の運営においては「まずやってみる」精神を重視している。職員には「3割打てれば成功」と伝えており、失敗を恐れず提案する風土を育てている。こうした文化が、サンセットコインや海釣りアプリなど、数々の先進事例を生んでいる。
西伊豆町は、人口の多さではなく、挑戦の質で未来を切り拓く町である。これからも「できることからやる」を合言葉に、一歩ずつ、確実に前進していく。

■空き家を利活用し雑貨店を開業


■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

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