サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

風は東から「2025.7.25 静岡新聞掲載」

サンフロント21懇話会30周年記念 県東部首長リレーインタビュー

官民一体で静岡県東部の活性化に取り組む「サンフロント21懇話会」は、光輝く地域づくりに向けて研究・提言活動を続けている。今年、設立から30年を迎え、先月12日に記念総会が華々しく開催された。7月の「風は東から」は総会の様子と、懇話会の足跡、そして今後について関係者に聞いた。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ4

バックナンバー


官民連携で築いた30年 懇話会の歩みと未来への挑戦
■振り返る懇話会の軌跡 多世代で描く地域の将来像
     
■鈴木 康友 静岡県知事
        
■矢作 恒雄 氏
慶應義塾大名誉教授

■小野 伸二 氏
サッカー元日本代表(沼津市出身)

先月12日、沼津市内のホテルを会場に行われた記念総会には、会員企業や県東部の市長町長、県関係者など約170人が参加。和やかな雰囲気の中、参加者同士が旧交を温め合い、地域への想いや課題を共有する貴重な機会となった。
懇話会の代表幹事を務める静岡中央銀行の清野眞司会長は冒頭、「県東部・伊豆地域が活力を得るためには柔軟で独創的な新しい発想が必要」と挨拶。また、来賓を代表し、鈴木康友県知事が「医療産業の集積や企業誘致、スタートアップ支援など、地域の発展に大きな貢献をしてきていただいた。今後もリニア問題の解決、観光や移住の促進、伊豆地域でのスタートアップ誘致などを通じて、本県のポテンシャルを最大限に引き出していきたい」と祝辞を述べた。
総会中盤では、記念事業が披露された。懇話会特集記事「風は東から」の特別編「東部20市町首長座談会」ダイジェストと、「一人ひとりが輝く東部へ」をテーマに地元の高校生、大学生らが参加して実施した特別事業の発表を矢作恒雄慶應義塾大名誉教授が総括した。総括の中で矢作教授は、「観光は儲かるのか?」と問い掛けるとともに、日本一豊かな資源に恵まれながら、住民が県外に流出し続ける現状を課題と捉え、解決策として@県民への県の魅力の啓発A世代別魅力の提供 特に女性の社会進出に寛容な地域づくり、長泉町にならった子育て世代に優しいまちづくりB産業と防災の3つを提言した。中でも、若者の定住促進策として最先端大学院大学の設立を提案。「時代遅れの生成AIでなくAGI(汎用AI)に特化したトップクラスの研究・教育を」と語り、「大学院大学周辺にはスタートアップビレッジを創設し、起業家を招く。但しビレッジには予め起業ファンドを立ち上げておく必要がある」と指摘した。
また、戦略的産業振興の例としてマサチューセッツ工科大のスタートアップ企業が開発した技術に基づく、地下からの水の汲み上げ不要で地下3〜20キロメートルの灼熱で地上から注入した排出温泉湯などを加熱した、蒸気で発電する環境負荷の少ない新世代閉鎖循環系地熱発電を紹介した。
さらに記念講演では、沼津市出身でサッカー元日本代表の小野伸二氏が登壇。小野氏は、故郷である沼津への想いや、サッカーを通して気づき学んだこと、そして後輩へのメッセージなどを熱い言葉で語った。「自分はいつまで経っても静岡県沼津市に生まれた小野伸二であり、いつまでも誇りを持って、この沼津というものを胸にかかげてこれからも歩んでいきたい」と講演を結んだ。



■地域連携の羅針盤 懇話会30年の歴史

懇話会は県東部地域の未来を官民の垣根を越えて広く議論することを目的に、1995年に発足した。地方分権の流れが本格化する中、広域行政の推進と自立した地域経営のあり方を模索するため、県、経済界、自治体など多様な立場の有識者が集い、政策提言を行い、数々の実践的成果に結びつけている。
代表例が、旧キラメッセぬまづ(現プラサヴェルデ)の誕生だ。懇話会が96年に提言した「簡易型イベント施設」が、当時県東部に欠けていたコンベンション施設として形になった。また、観光分野では、県東部の観光情報を集約した「ゆうゆうネット伊豆」の構築に向けて、(仮称)観光活性化センター設立を提言。のちに静岡新聞社・静岡放送の情報サイト「アットエス」に形を変えたが、インターネット黎明期における先駆的な取り組みであり、今も多くの人々に利用されている。
2000年代に入ると、平成の大合併の波が本県にも押し寄せた。懇話会は東部地域の自治体再編を見据え、独自に住民アンケートを実施。広域連携の必要性や将来ビジョンを冊子にまとめ、各市町議員に配布するなど、合併議論の質を高める役割を果たした。県西部・中部のような大型合併には至らなかったものの、この過程で地域の連携機運が醸成され、以後の政策形成にも影響を与えている。

  
関連画像
■旧キラメッセぬまづ(1998年開館)


懇話会に期待する
土居 弘幸
懇話会アドバイザー

長年にわたる政策提言活動が高く評価される一方で、今後はさらなる事業化や成果の見える化が求められている。そこで懇話会アドバイザーの土居弘幸氏(救世軍清瀬病院院長)と、懇話会の市長町長連絡会議会長をつとめる沼津市の頼重秀一市長に、今後の懇話会が進むべき方向について話を伺った。

提言から伴走へ
懇話会の新ステータスに期待

アメリカの政治・経済学者ロバート・パットナムは、人と人との繋がりや信頼関係である「ソーシャルキャピタル」が地域経済の発展に大きく寄与すると提唱している。懇話会は、政策提言を行う中で、地域との大きな信頼関係を醸成してきた。今後は政策提言に加え、構築した信頼関係を基盤として、テーマを絞った実効性ある事業の提言も行うべきと考える。
テーマとしては、次世代がんセンター構想やAIによる医療DXの推進だろう。特に医療は財源が限られているため、効率化なしに未来はない。そして両分野におけるイノベーションの創出である。それにはアカデミアとの連携が不可欠だ。首都圏の総合大学との協力による知の拠点形成を急ぐ必要がある。また、地域資源を活用し、インバウンドや全国のベンチャー企業とのビジネス創出など域内を越えた経済活動も重要である。懇話会シンクタンクTESSを再活性化し、懇話会自身が事業提言のエンジンとなることを期待している。

広域連携で描く東部の未来
懇話会と共創する地域像

頼重 秀一
沼津市長

沼津市は、沼津駅周辺整備や民間開発が進み、新たな都市づくりが加速中だ。一方で全国の都市間競争に勝ち抜き、本市のみならず県東部地域全体が発展していくためには、広域連携による地域づくりが欠かせない。
県が進める「医療都市田園構想」やクラフトビールを活用した地域循環の取り組みなどはその象徴的な事例だ。このほか、観光誘客、二地域居住、地域資源のブランド化など、多角的に価値を高める仕組みが求められている。人口減少の中、こうした地域づくりには、官と民の連携が要となる。その中核を担うのが懇話会であり、多様な分野のリーダーが集う懇話会には、単なる提言にとどまらず、実行力を伴う地域連携の旗振り役を期待したい。



■企画・制作/静岡新聞社地域ビジネス推進局

▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.?ALL RIGHTS RESERVED.