青山 伊豆地域では医師の偏在や病院の統廃合が課題として指摘されています。今後の持続可能な医療体制づくりの鍵は、やはり「総合診療医」の育成にあるのでしょうか。
今野 そう思います。総合診療医とは、内科や外科など専門領域にとらわれず、患者さんの全体像を診て、必要に応じて専門医へ橋渡しする役割を担う存在です。人口が減り高齢化が進む地域では、この「総合力」が医療の質を保つうえで欠かせません。ただし現状では数がまだ少なく、各地域に十分に配置できていないのが実情です。 国の新たな施策として「かかりつけ医機能報告制度」があります。これは医師や医療機関が、自分がどの疾患に対応できるかを公示し、住民が自分の町の医療資源を見える化できる仕組みです。まずは地域の医療を「点から面」へとつなぐ第一歩になると考えています。
伊藤正 制度面の整備と同時に、現場ではすでに総合診療を実践している先生も少なくありません。小児科や内科の開業医が、地域の患者さんの幅広い症状に対応し、必要な場合に専門医につなぐという形です。そうした先生方を明確に位置づけ、評価する仕組みが必要です。総合診療医を増やすだけでなく、今いる医師の力を「見える化」して活かすことが大切だと思います。
伊藤由 お二人の話に加えたいのは、世代ごとのアプローチの違いです。中堅以上の医師が改めて総合診療を学び直すのは確かにハードルが高い。その一方で、グループプラクティスのように、異なる専門を持つ医師がカルテを共有し、互いに相談できるチーム医療の形は現実的です。たとえば皮膚科・内科・眼科の3人がグループを組めば、日常的な疾患の大半をカバーできます。地域の診療所が連携して「小さな総合診療チーム」をつくることが、現場の即戦力になるのではないでしょうか。
伊藤正 総合診療医を育てていくには時間がかかります。今すでに地域で活躍している先生方をきちんと明らかにしながら、その間に育成していくことも大切ですね。若い先生には、専門医か総合医かで悩みながらも、自分の軸を見つけて大きく育ってほしい。専門を持ちながらも、地域で幅広く診られる医師が増えることを期待しています。
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