サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2026.01.23 静岡新聞掲載」

県東部では、“都市の顔”としての駅前が更新局面に入っている。沼津は鉄道高架という長期事業を見据えつつ、駅を中心としたまちなかで段階的ににぎわいと公共空間をつくり直す。三島は駅南口東街区の再開発工事が本格化、居住・商業・医療を核に新しい拠点形成が進む。1月の「風は東から」は、沼津駅・三島駅前の開発に焦点を当てる。事業の現在地と徐々に浮かび上がる新たな都市景観を紹介する。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ10

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変わる県東部のまち
沼津と三島、両駅前の現在地
■長期の骨格と短期の“変化の実感”
■沼津駅前広場南口鳥瞰(ちょうかん)図(完成イメージ)

【沼津駅前】 
完成時期が見えにくいと言われてきた沼津駅前の再整備。鉄道高架という長期プロジェクトを骨格にしながら、「少しずつ変わってきた」と感じられる風景があちらこちらで見られるようになってきた。
象徴的なのが、JR沼津駅南口西武百貨店跡地の活用だ。市は都市再生機構(UR)と連携し、民間事業パートナーとしてフィル・カンパニーを代表とする企業グループ(設計:フィル・コンストラクション/コンセプト監修:ブルースタジオ/施工・地域連携:加和太建設)を選定した。「緑あふれる暮らしの舞台」をテーマに、敷地約830平方メートルに延べ床面積約600平方メートルの2階建て施設を整備し、飲食・物販・まちづくり活動拠点などの導入を図る。

市も約1億円を投じ、イベント会場として活用できる芝生広場やキッチンカー利用スペース、トイレ等の公共機能を組み合わせ、駅前の人流と滞在の「拠点」をつくる。
2階建て施設は今年秋の開業を目指している。事業期間は高架完成後の駅前再整備まで見据えた2046年3月までだ。
一方、駅前広場の将来像も具体化してきた。市は鉄道高架後の駅舎・駅前広場のデザインイメージ案を公表し、広場の拡充と公共交通・一般車の分離、自然と調和する空間づくりを掲げる。
現在の駅前広場は南口約7800平方メートル、北口約9100平方メートルだが、高架化で生まれる土地を活用し、イメージ案では南口を約2万5000平方メートルへ拡大、イベント等に使えるオープンスペース約1万4000平方メートルを確保する。また、駅の南北をコンコースで結び、屋根(アーバンシェルター)を設けることで、駅と中心市街地の回遊性にも配慮する。
市は26年度末までに「沼津駅舎・駅前広場等デザイン基本計画」を策定する。現在、多くの市民などが集まる施設で、パネルを展示し、事業概要を説明しながら意見を聴取する「オープンハウス」を展開している。
中央公園の大規模リニューアルも進んでいる。人工芝広場や飲食店舗、イベント機能の強化などを段階的に整備、26年度末の全面供用開始を目指す。市は西武百貨店跡地広場とも連動させ、「まちなかの回遊性」を高める方針だ。
沼津駅周辺の土地区画整理事業に目を向けると、昨年、沼津駅南第一地区が竣工し、記念式典が行われた。一方で、駅南第二地区は鉄道高架の進捗に合わせて事業化する予定となっている。
鉄道高架が完成するのは約15年後の41年度末(予定)。その後、駅前広場を約5年で整備する。こうした長期計画のもと、駅前の公共空間を「ヒト中心」に再構成し、滞在と移動の質を上げることが今後の主眼となってくる。
長きにわたる停滞の時間を、短期の実装(にぎわい拠点、公園、社会実験、市民参加)で埋め、未来図を市民と共有し続けられるかが、次の勝負所だろう。

■中央公園(完成イメージ)
■ョ重秀一沼津市長
鉄道高架という長期事業の節目を見据えながら、駅前から「まちの更新」を確かな実感として積み重ねていきたい。西武百貨店跡地のにぎわい拠点や中央公園の再整備は、その第一歩であり、ヒト中心の公共空間を駅前と中心市街地に広げる挑戦でもある。市民や事業者と未来像を共有し、自然を感じられる駅前、回遊しやすい街なかを形にしていく。



■30年越しの構想が“建つ段階”へ

【三島駅前】
三島駅前の変化は、再開発の現場から空に向かって長く伸びる複数のクレーンに象徴される。駅南口東街区の再開発が「実際に建つ段階」へ進んだことが実感できる景色だ。事業は2024年に着工し、27年度末の完成を目指す。商業施設や高機能健診センター・クリニックが入る24階建て高層棟を核に、計6棟の整備が進む。
30年以上前から検討が続いてきた構想が、曲折を経て実現に至った経緯も含め、地元からは「まちの新しい顔」への期待も感じられる。
三島の再開発は、地下水・湧水に配慮して進められており、市で設置した専門家による委員会で、地下水対策を確認しながら事業が進められている。昨年2月には、一般向けに工事現場を公開し、地下水保全策を説明した。高層棟の掘削はほぼ完了し、基礎を打ち始める前に地下水への影響がないことを確認してもらう狙いだ。
対策として、水質・水位の観測体制を整え、杭を設けない直接基礎の採用などを説明。溶岩掘削の状況も現場で示し、市議・市民らが確認した。
また、別の現場視察では、敷地内の井戸での採水、地下水位や基礎標高の説明なども行い、工事期間中に地下水が染み出す状況は見られていないとの報告がなされている。
事業計画によると、市街地再開発事業の事業費は約287億円、財源は保留床処分金約163億円、再開発補助金等が約124億円、うち市負担は約34億円と整理されている。機能面では、医療機能の導入が具体化しており、順天堂大附属静岡病院の高機能健診センターやクリニックが入ることが予定されている。こうした居住、商業、医療・健診、宿泊を複合させることで、駅前を「通過点」から「滞在と生活の拠点」へ転換する狙いが読み取れる。市が掲げる「スマートウェルネスシティ」とも合致する取り組みだ。
周辺道路の無電柱化(地中化)も並行して進められ、三島停車場線・南町文教線・愛染院祇園線の3路線を対象に工事が進んでおり、26~28年度にかけて順次整備していく計画だ。また、南口駅前広場も、東西ロータリーの入れ替えや歩道部分の拡幅などの改修計画が進められている。再開発の建設工事とともに、駅前の景観と歩行環境を一体で更新する道筋が立っている。
駅南の再開発は、完成した瞬間から“運用のまちづくり”が始まる。地元商店街が荷物預かり所を設けたり、周辺商業施設が合同で紹介パンフレットを作ったりするなど、新たな動きも見えてきている。
駅を降りた人が、街に降り、街を巡り、住みたくなるーそんな循環をどう育てるかが、次の成果指標になる。

■豊岡武士三島市長
三島駅南口東街区の再開発は、長年の検討を経て、いま本格的な実装段階に入った。地下水・湧水への配慮を大前提に、安全と環境の両立を図りながら、様々な機能が共存し、多くの人でにぎわう魅力ある駅前拠点をつくりたい。周辺道路や駅前広場の再整備と合わせ、歩いて心地よい空間と回遊を生み出し、三島に来る人・住む人双方にとって「選ばれるまちの顔」を形にしていく。

■三島駅南口東街区再開発の完成イメージ

■再開発地区では着々と工事が進んでいる


■完成後に問われる「運用の力」

同じ「駅前」を舞台にしながら、沼津駅前と三島駅前の更新プロセスは対照的だ。
沼津は、鉄道高架という超長期事業を都市の骨格に据えつつ、西武百貨店跡地や中央公園の再整備など、短期的に変化を体感できる拠点を点在させ、回遊でつなぐ戦略をとる。一方、三島は駅南口東街区の再開発という明確な核を据え、居住・商業・医療を複合させることで、駅前そのものを新たな都市拠点として再定義している。
前者は「長期に渡る継続的更新」、後者は「短期における集中的更新」。規模や都市構造の違いを前提に、異なる解を選び取っている点に、県東部のまちづくりの多様性が表れている。
駅前整備は完成がゴールではない。行政が、地域の住民が、訪れる人が、整えた空間をどう使い、どう育て、担っていくのか。駅前を核とした「地域の運用の力」が試される。



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