サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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風は東から「2026.03.27 静岡新聞掲載」

県東部地域の活性化に向け、官民一体で提言を行うサンフロント21懇話会は、今年度設立30周年を迎えた。年度最後の「風は東から」は、県や市町と二人三脚で歩んだ30年を振り返りつつ、ファルマバレープロジェクト第4次戦略計画の総括や医療田園都市構想について、鈴木康友県知事と懇話会代表幹事の清野眞司静岡中央銀行会長に聞いた。聞き手は静岡新聞社の溝口将人取締役。

[サンフロント21懇話会企画]
シリーズ12

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30年の歩みを礎に ファルマバレー次の地域像
■官民連携が育てた土台

溝口 懇話会は今年度30周年を迎えました。今日は、懇話会の活動の歴史を振り返りつつ、今後の県東部の活性化について伺います。
鈴木 30年続くのは本当にすごいことです。官民の多様な立場の人が集まる懇話会からの提言により、これまで様々な政策が実現してきました。その象徴がファルマバレーで、先端医療の提供と企業の集積が進み、イノベーションが生まれてきたと感じています。
また、この30年で人々の価値観は大きく変わり、必ずしも都会にこだわらず、「住みやすい地域へ」という流れが強まりました。県内への移住も子育て世代を中心に増えています。富士山や温泉など自然資源に恵まれながら、首都圏にも近く、都市的な機能も備えた東部・伊豆にとって、この機運は追い風です。これからは30年の蓄積を次の発展に繋げていく段階ですね。

溝口 サンフロント21懇話会のような官民対話の場の意義をどう見ていますか。
鈴木 今は、行政だけで県民サービスを完結できる時代ではありません。官民連携で質を高めることが不可欠です。県はウェルビーイングの視点で幸福度向上に取り組んでいますが、これも行政だけでは実現できない。懇話会を通じて官民連携を進めてきた県東部は、モデル的な地域だと思います。
溝口 続いて清野代表幹事に伺います。30年の価値と、実現につながった例をお願いします。
清野 仕事柄全国各地を見てきましたが、30年続き、成果が形になっている会はそう多くありません。続いてきた背景には、核として静岡がんセンターがあり、そこから医療のクラスター形成へと広がったことが大きいと思います。気候も産品も工業力にも恵まれ、全体にギスギスしない土壌ですし、行政・経済界・メディアが驚くほどフラットに意見交換でき、提言で終わらず実装まで目指したことが継続の理由だと思います。
実装例としては、やはりキラメッセぬまづの早期実現でしょう。また、私が代表幹事に就任して初めて提言した、旧ヴァンジ彫刻庭園美術館の活用なども、具体的な取り組みにつながった事例だと思います。
溝口 改めて東部・伊豆のポテンシャルと課題をお聞かせください。
鈴木 強みは首都圏からの圧倒的な近さと、自然が豊かで住みやすいことですね。二地域居住の推進や、温泉旅館のリノベーションによるスタートアップ誘致など、様々な試みを進めています。一方で課題は、自治体の数が多く調整に時間がかかることでしょう。観光などはもっとダイナミックに広域で動ける余地があると思います。県として広域連携を進める仕掛けは必要だと感じています。
清野 人口減少は伊豆南部ほど深刻です。例えば私が勤める静岡中央銀行発足の地・松崎町のように、人口が急減する地域では、銀行支店の維持も人材確保も難しく、交通も大きな課題です。また、進学などで若者が都市へ出るとなかなか戻ってきません。産学官金で、もう少しドラスティックな仕掛けを一緒に探さないと、地域の仕組みが持たなくなるところまで来ていると思います。
鈴木 小さな自治体では職員確保や施設維持がより厳しくなります。本来は広域で人や施設を共有する発想が必要ですが、現実には地域の合意形成が難しい。そこで県として、例えば退職後も元気な技術者を登録し、小規模自治体を支える「建設技術者人材バンク」のような仕組みづくりにも挑戦していきます。

■鈴木康友
静岡県知事



■地域を伸ばす産業と戦略

溝口 ファルマバレープロジェクトは本年度で第4次戦略計画が終了します。医薬品・医療機器の生産金額は8年連続で1兆円超(※1)という統計も出ています。成果をどう総括しますか。
鈴木 第一に、本県が男女とも健康寿命1位となったことです。背景となる住みやすくストレスの少ない地域づくりに、ファルマバレーの取り組みが効いていると思います。第二に、医療関連産業が育ったことです。コロナ期にはテルモさんの人工肺装置ECMO(エクモ)が多くの人の命を救ったといわれていますし、検査キットのタウンズさんも上場しました。さらに山梨県と連携した先端医療の総合特区など、新しい挑戦も始まっています。
溝口 第5次戦略計画に向け、発展の方向性をどうお考えですか。
鈴木 AIの進化が加速し、ロボットなどの先端技術が医療分野に本格的に入ってきています。こうした技術を活かして、ものづくりをどう進めるか、また、医療田園都市構想をどう進化させていくかが今後の重要なテーマです。
今後、地元の力だけで発展しつづけるのは困難です。メディカル分野などで、首都圏から先進的な企業やスタートアップを誘致し集積させることが必要です。そのために県は、ファンドサポート事業や、産業団地の整備を進めていきます。首都圏の投資・人材・企業を呼び込む受け皿として、ファルマバレープロジェクトを進める東部地域は有望です。
清野 東部にはものづくりの蓄積があり、例えば自動車部品の企業が医療分野へ転換するような「第二創業」も可能性がありますね。ジヤトコ(富士市)が開発した「移乗機構付き車いす」もその例です。創薬は莫大なお金がかかりますが、既存企業の新規事業なら融資で支える余地もある。スタートアップは出資、第二創業は融資、と使い分けながら挑戦を増やしていきたいですね。
鈴木 地域企業の第二創業は重要です。自動車分野から医療分野に参入した東海部品工業さんは新しい事業の柱ができた素晴らしい成功例ですね。
ファルマバレーセンターにモデルルームのある「自立のための3歩の住まい」は今後、新しい要素を取り入れていきます。例えばファンド支援を受けたマジックシールズさん(浜松市)が開発した転倒による骨折リスクを抑える床材「ころやわ」のように、現場課題に直結する技術を普及させ、時代に合わせて変化し続けることが重要です。

■清野眞司
静岡中央銀行会長
サンフロント21懇話会代表幹事
■溝口将人
静岡新聞社取締役



■暮らしを形にする新たな実装

溝口 最後に、医療田園都市構想について、県としての狙いをお願いします。
鈴木 もともとの田園都市構想は、「田舎は本来暮らしやすいけれど都市機能がなくて不便」という話で、都市的機能を地方に実装できれば「住みやすくて便利な町」ができる、という発想なんですよね。それが近年、デジタルなどの先端技術がここまで普及してきて、実装できる時代になってきました。こうした技術を活かし、がんセンターをはじめとする医療をベースとして自然が豊かで都市的機能も充実している―そういう「誰もが健康で豊かに暮らせる理想郷」を目指すのが医療田園都市構想です。
溝口 一方で地域差も出てくる懸念がありますね。
鈴木 県内における医師の偏在は大きな課題です。ですから指導医と専攻医をセットで派遣したり、総合診療医を増やしたり、拠点となる大学病院と地域病院をつないでオンラインで診療を行ったりなど、様々な方法で医療の課題に対応していきたい。今、国や市町と連携しながら、私が力を入れている「ライドシェア」も、こうした環境整備の一助になると思います。医療田園構想が一部のエリアだけのものになってしまわないように構想の効果を県内に波及させていきたいですね。
清野 懇話会は医療田園都市構想の「テストケース」をつくったらどうかと考えています。例えば修善寺駅周辺に再開発ビルを建て、行政、クリニック、銀行など合同庁舎のように安心して暮らすための必要な機能を集約し、ワンストップで対応ができるようにするといったことです。実際にやってみることで、色々と分かってくることもあるのではないでしょうか。
さらに住宅の面でも、先ほどの「骨折しにくい新たな建材」のような話を組み合わせていけば、利用が広がるほど需要は増えていくと思います。高齢者は転倒して骨折すると、その後の生活に影響が出ることもあります。だからこそ、そこを防げるのは大きいと思いますね。
溝口 医療と暮らしを一体で実装するモデルを、まずこの地域で形にしていくことが大事ですね。本日はありがとうございました。

※1 厚生労働省薬事工業生産動態統計調査による




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