サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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県東部地域連合「ひかり輝く地域づくり」に向けて

 県東部特集として「風は東から〜ひかり輝く地域づくり」の第4回目です。
 毎月1回、県東部と関わりの深い各界の方々にご登場いただき、県東部の将来像についてさまざまな視点から光をあてていきます。案内役はサンフロント21懇話会アドバイザー、静岡産業大学国際情報学部教授の大坪檀氏。
 今回は御殿場市内海重忠氏、米久社長庄司清和氏にご登場いただき、北駿を中心とした「匠の村構想」などについて対談していただきました。
風は東から
3周年記念  ●対談シリーズヲヲ4
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実現したい匠の村構想 「感動」あれば人は集まる
恵まれた自然環境と
交通アクセスを背景に発展した北駿エリア。
世界の芸術家集まる地域へ
大坪 一昔前の御殿場は自衛隊の演習場がある町というイメージが強かったのですが、今は裾野、小山も含めて北駿の二市一町は様々な産業が集積するハイテク、研究所の町というイメージの方が強い気がします。さらに、最近は御殿場、裾野両市でさわやかな高原という環境を生かした音楽祭が開かれるなど文化的なイメージも重なってきた。すっかり有名になった地ビールもこの土地に似合いますね。あか抜けしたエリアに「変身」しているのではないですか。
内海 北駿は周囲に富士山や箱根、富士五湖、伊豆といった観光地を控えた観光拠点なんですが、東名の開通が転機となって首都圏が近くなり、ハイテクを中心とした産業拠点にもなりつつあります。この恵まれた交通条件や自然条件、特に富士山の一部の街、高原のまちですので、この富士山の魅力を十分に生かした美しさや豊かさ、荘厳さなどをまちづくりに取り込みながら地域の発展に生かしていきたいと考えています。
大坪 そこに今度は匠の村構想という話も持ち上がっていますね。
庄司 もともとは富士山に心酔している著名な芸術家が富士山を見ながら創作活動ができる場所を探しているという話を聞いたことが始まりです。そこでこの敷地の一部を提供すると申し出たところ、それならば、ぜひ仲間も連れてここに住みたいという話になって匠の村という発想が生まれたわけです。例えば浜松にはオートバイや楽器といった世界に誇れる特色がありますが、それには何かきっかけがあったのではないか。ですからこの地域の将来を見据えた場合、何か大きなきっかけというかショックを与えることが必要だと思います。それがこの匠の村構想であり、将来的には世界中の芸術家たちをこの御殿場、富士山麓に集められる環境づくりに発展させることができればと考えています。


産業の発展と芸術・文化のまちづくりは車の両輪。
まず文化的施設の整備を
大坪 よくルネッサンスはどうして興ったか、それは芸術とそこに科学があったからだと言われます。つまり科学と芸術は相伴うものであり、芸術的な価値がないところでは科学、いわゆる産業も育っていかないと。
庄司 先頃裾野市にキャノンの研究所ができました。三千人もの人が働いているということですが、残念ながらほとんどの方は東京から新幹線で通っています。産業誘致としては成功ですが、そこに住んでいただけなければ地域の将来に結びついていかない。ではハイテクにせよ、新しい研究所にせよその場に住んでもらうには何が必要か。それはそこに住む人たちの環境整備であり、そこに文化や芸術を通じたまちづくりの意味が生まれると考えています。その意味においてもこの地域に文化的な施設を作るということは、地域の将来的な発展へ向けた重要な要素になるのではないかと思います。
大坪 たしかに優れた芸術の周りにはいろんな人やものが集まってくる。するとまちがきれいになり様々な情報発信もされて、まち全体が活力を帯びてくる。この北駿には芸術家が住みたくなるような優れた環境条件があるということですが、その反面、さまざまな規制もある。やはり行政の協力なくしてこのような素晴らしいまちづくりはできないのではないでしょうか。
内海 すぐに規制緩和というのはなかなか難しいとは思います。ただ将来的にH規制緩和の流れの中で、例えば文化や芸術に特色のあるまちづくりといったものへの配慮が進んでいくことも十分に考えられます。またこの地域は幸いにも経済的に恵まれているので、住民が文化や芸術に対する関心を持ってもらえる素地はできているのではないかと思います。そういったことに関心を持ってもらいながら、例えば美しい物を美しいと愛でる気持ちのようなものを醸成していくことが結果的に芸術家を受け入れたり、あるいは芸術家に色々な機会を提供したりということに繋がっていくと思います。


横並び発想からの脱却と地域の個性の研鑽。
魅力ある地域づくりはそこから生まれる
大坪 ところで静岡、清水の例をとるまでもなく、地方分権への流れの中で最近は地方における広域行政や地域連携が将来的な課題として取り上げられています。このエリアも例えば北駿二市一町の連合、連携といったものも当然視野に入ってきているのではないかと思われますが。
内海 たしかに市町村が合併することで効率化する面はあると思います。しかしながら、それぞれの地域にはそれぞれ固有の歴史があり、その結果としての今日ですので、住民感情としてはすぐにあの町とこの町が一緒になるという事にはなかなかならない。むしろ、まず地域ごとに豊かな個性を磨く方が先決なのではないか。その中でまずお互いに共通の仕事、あるいは市民同士の共通のイベント、そういうものを広げていく事が大切なのではないでしょうか。
大坪 一言で連合といっても当然そこには多様な在り方があると思います。一緒になって無駄を省く、お互いに役割分担をして発展していく、そういう視点が大切ですね。
庄司 やはり、あの町で文化会館ができたからうちも作る、図書館を作ればうちも欲しいといった横並び的な日本人の体質が大きな障害なのではないか。そんな中での合併というのは非常に難しいことですし、エネルギーもいります。ですから安易に合併を目的とするのではなく、同じ地域の中で同じ物をみんなが同じように作るという、その考え方を改めることが今は重要であると思います。
内海 我々の中には「人と同じように」という意識が根強くあります。しかし、これからは個性豊かにひと味違う、そういうものを目指していくことが大事であろうと。その上で連携を考えていかないと本当に魅力的な地域づくりはできないのではないか。それには何かを作るときでも、隣の町と同じ物は作らないといった発想に変えていく必要があります。そうしないと本当に良いものや質の高いものはなかなか出てこないのではないかと思います。
大坪 芸術は感動であり、感動あるところ人は集まる。そしてそれが個性豊かな地域の創造に繋がっていく。この一帯が感動あふれる地域に育っていくことを期待しています。


内海重忠(うつみ しげただ)御殿場市長
建設省入省後、建設省住宅局木造住宅振興室長、国土庁大都市圏整備局特別整備課長など歴任。平成5年御殿場市長に就任。御殿場市生まれ。

庄司清和(しょうじ きよかず)米久株式会社社長
昭和40年米久創業、現在翼下に米久グループ18社の企業を率いる。趣味は登山、ミュージカル鑑賞、クッキングなど。裾野市生まれ。

大坪檀(おおつぼ まゆみ)さん
静岡産業大学国際情報学部教授
サンフロント21懇話会アドバイザー

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