サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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県東部地域連合「ひかり輝く地域づくり」に向けて

 県東部特集「風は東から〜ひかり輝く地域づくり」の第11回です。
 毎月1回、県東部と関わりの深い各界の方々にご登場いただき、県東部の将来像についてさまざまな視点から光をあてていきます。案内役はサンフロント21懇話会アドバイザー、静岡産業大学国際情報学部教授の大坪檀氏。
 今回は三島商工会議所会頭峰田武氏、鈴木工務店社長鈴木菊三郎氏にご登場いただき、「街中がせせらぎ」事業への取り組みなどについて対談していただきました。
風は東から
3周年記念  ●対談シリーズヲヲ11
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目指すは日本一歩きたい街地域、商業振興に広域連携模索

峰田武(みねた たけし)三島商工会議所会頭
峰田武(みねた たけし)三島商工会議所会頭
昭和38年三島信用金庫に入り、58年常勤理事、平成元年常務理事を経て、4年理事長に就任。平成6年より三島商工会議所会頭。清水町出身。
歴史と湧水に培われた交流と文化の蓄積。
水都復活が活性化のカギ
大坪 三島と言えば三嶋大社。今年の正月三が日は六十一万人もの人出があったと聞いています。これはすごい。県東部の約半分の人が来たことになる。
峰田 もともと三嶋大社の門前町として始まり、江戸時代には東海道の五大宿場の一つに数えらました。伊豆へ延びる下田街道の起点として、古くから東部、とりわけ田方の拠点的な役割を担ってきた歴史があります。ところが元旦営業する郊外型の大型商業施設に三が日の人の流れが影響されるように、中心市街地の空洞化、とりわけ商業面の衰退がやはり問題となっています。本年四月、大通り商店街の中程に「VIA701(701通り)」というコミュニティホールが完成しますが、これは官民で作った「みしま街づくり株式会社」を母体としています。様々な情報発信を通じて、新しい交流拠点づくりに結びつけていきたいと考えています。
大坪 しかし今は新幹線に、JR、伊豆箱根鉄道。さらに国道1号に136号、北には東名、246号がある。旧市街地は今も随所に歴史的なたたずまいを残し、駅北にはハイテク産業や新しい住宅地が林立している。これらをうまく整合させていくと、この地域の将来は非常に有望です。湧水を活かした街づくりも動き出したようですね。
鈴木 大社を例にしても年間四百万人を超す集客力があります。ただそれが活かされていない。ほとんどの人がそのまま帰ってしまうというんです。これでは街が寂れていくのも仕方のないことかもしれません。幸いここには歴史的な蓄積があり、今も部分的にはその姿をとどめている。また枯れつつあった湧水も戻ってきています。街中の渋滞も伊豆縦貫道、東駿河湾環状道路の整備によって解消へ向かっていくでしょう。そのとき、ここに住む私たち市民一人ひとりが何を誇りとして持てるか、街の未来をどう拓き後世に何を残していくか、それには街中に溢れる湧水の流れを活かした街づくり、「水の都」三島の復活にほかならないと考えたわけです。


官民一体で地域振興ビジョン。
湧水を活かした環境整備が再び街を潤していく
鈴木菊三郎(すずき きくさぶろう)鈴木工務店社長
鈴木菊三郎(すずき きくさぶろう)鈴木工務店社長
昭和33年鈴木工務店創業、34年代表取締役就任。街中がせせらぎ委員会委員長として三島の街づくりをリードしている。趣味は絵画、ゴルフ。



大坪 その核となるのが今三島市で進めている「街中がせせらぎ」事業ですね。
峰田 商工会議所五十周年事業の一環として提案したものですが、住みたい街、歩きたい街、観光の街、産業の街の四つをテーマに市民が誇れる街をみんなの手で創り上げようというものです。既に三島市の「都市計画マスタープラン」にも組み込まれ、新しい地域振興ビジョンとして官民の協力はもとより、多くの市民グループの賛同も得ています。いずれは市民全体を巻き込んで、より大きな事業に育てていきたい。まずは中心街の見所を結んだ散策ルートの整備に着手していきたいと考えています。
大坪 先日ある新聞のアンケートでは、三島が住みたい街の部門で全国二十四位になっていた。この「街中がせせらぎ」事業が三島を住みたい街に変え始めている。
鈴木 まずは「歩きたい街日本一」を目指していきたい。市中心部には四筋の川が流れていますが、特に源兵衛川沿いから佐野美術館、そして田町駅から大社、桜川沿いへと繋がる散策ルートの完成が最初の目標です。それには大社の門前町の街並みづくりに向けた景観条例の整備なども重要です。せせらぎが奏でる四季の美しさに、芸術や歴史が彩りを添えるウオーキングコースは、三島を誰もが歩きたくなる街に変え、集まった多くの人に回遊してもらう有効な手だてになるはずです。数年後の完成時には全国へ「日本一歩きたい街」をPRしていきたいと考えています。
大坪 歩きたい街は観光の街へ発展し、またその集客で産業面の活性化も図っていく。さらに住みたい街、三島の魅力を培っていく。
鈴木 例えば高齢化社会においては、中心街はむしろ住環境に適している。特に三島は街中にも駅があり非常に便利なんです。美しい街並みを縫うように走る幾筋ものせせらぎ。そのほとりをのんびり歩いて買い物にも行ける、それも三島の魅力です。将来的にはヨーロッパの都市のように美しい街並みを保ち、下に商店街、上に集合住宅といった新しい都市空間の創出にも発展させていきたいですね。



大坪 檀(おおつぼ まゆみ)さん
大坪 檀(おおつぼ まゆみ)さん
静岡産業大学国際情報学部教授。サンフロント21懇話会アドバイザー
せせらぎから波及する市域全体の活性化。
新しい市民連合で未来を拓く
大坪 二十一世紀を直前に控え、今地方は新しい枠組みへの転換が求められています。行政の広域化、地域連合や合併問題なども時代の要請から生まれてきている。しかしながら安易な広域化や合併などは、一方で地域の独自性や魅力の喪失にも繋がりかねない。周辺市町村との連携の中で何を合理化し、一方で何を魅力として残し、磨いていくか、そこが問われている。
峰田 さらにそこへどう住民なり市民が主体的に関わっていくかが問題ですね。現在、駿豆地区商工懇話会では、地域振興や商店街振興について民間の立場からの広域連携を模索しています。すぐに合併というより、まずは部分的な連携なり連合を通じて、市民や民間からの合併の機運を盛り上げていきたい。その上で行政がやらざるを得ない状況を積み上げていき、最終的には中核市や政令指定都市を目指していくのが理想ではないでしょうか。
大坪 「街中がせせらぎ」事業一つとっても市民の主体的な参加は必要不可欠ですね。
鈴木 むしろこの事業を核に新しい市民連合を形成していきたい。今、グランドワーク三島実行委員会が事業の一環で花いっぱい運動を進めています。ところが木製プランターに花を植えて歩道に置くと余計なことをするなと怒る方がいる。また中心部ばかりにお金を使うなと反対される方もいる。しかし、多くの人が訪れる中心部の方はプライバシーを犠牲にしてまで協力していることを忘れないでほしい。今後は地域同士で魅力を競いあう時代です。そのとき、やはり三島は水の都としての活力を取り戻し、それを核に市域全体の活性化へ波及させていくしかない。手遅れだという声もあります。しかし何もせずに手をこまねいていても何も良くならない。むしろ現状維持さえできない。新市長も市政演説の中に明確なビジョンとして取り入れていましたし、目標期限をどんどん短縮して一日も早く誇れる三島を取り戻したいですね。
大坪 いつでも第一歩。私も三島の街を散策したくなってきました。地域連合の中でひときわ輝く三島市の姿に大きな期待を寄せています。


サンフロント21懇話会からのメッセージ
「三島まちづくりの夢」


室伏勝宏(むろふし かつひろ)さん
みしまプラザホテル代表取締役社長
サンフロント21懇話会運営委員
室伏勝宏(むろふし かつひろ)さん
室伏勝宏(むろふし かつひろ)さん
みしまプラザホテル代表取締役社長
サンフロント21懇話会運営委員

長野市から車で四十分ほどの所に小布施(おぶせ)という小さな町がある。栗の産地として有名なこの町は十五年ほど前から普段見慣れた街並みをお互いが修景し、毎日の生活を気持ちよく過ごそうと「街並修景計画」に取り組んでいる。身近な発想から生まれたこの取り組みは、徐々に周囲を巻き込みながら小布施を歴史的雰囲気のある街へと変えた。同時に日常生活に快適な町は観光客にとっても快適であることを私たちに示してくれる。そしてこれは三島市の「街中がせせらぎ」事業もこのような形で進めればいいと思う。
「街中がせせらぎ」―三島のまちづくりのテーマとしてこれ以上のものはない。町が近代化する過程で三島の「水」は急速に姿を消し、車社会の到来と共に中心街の活気も失われていった。しかしせせらぎを取り戻したいという市民共通の願いは、せせらぎルートの整備に形を変え再び姿を現しつつある。
このルートが完成するときまちづくりは本当の意味での出発点となる。重点的に費用を投下することに異論もあろうが、まず核を作ること。せせらぎによる快適環境を享受した人が「いいね、自分たちもできるところからやってみよう」という具合に波及していけば、こんなに嬉しいことはない。さらに東海道三島宿の再現へと夢は広がる。大社に繋がる町の一角、道一筋でもいい、今ある古い町並みを大切にしながら、住んでいる人が共にやろうという意志を持ち、まずは「表に格子をはめましょう」から始めてはいかがだろうか。
21世紀の三島はせせらぎに包まれた快適空間に変わっていることだろう。なぜなら「水」というアイデンティティを取り戻した街は大きく発展する可能性に満ちているからである。


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