長野市から車で四十分ほどの所に小布施(おぶせ)という小さな町がある。栗の産地として有名なこの町は十五年ほど前から普段見慣れた街並みをお互いが修景し、毎日の生活を気持ちよく過ごそうと「街並修景計画」に取り組んでいる。身近な発想から生まれたこの取り組みは、徐々に周囲を巻き込みながら小布施を歴史的雰囲気のある街へと変えた。同時に日常生活に快適な町は観光客にとっても快適であることを私たちに示してくれる。そしてこれは三島市の「街中がせせらぎ」事業もこのような形で進めればいいと思う。
「街中がせせらぎ」―三島のまちづくりのテーマとしてこれ以上のものはない。町が近代化する過程で三島の「水」は急速に姿を消し、車社会の到来と共に中心街の活気も失われていった。しかしせせらぎを取り戻したいという市民共通の願いは、せせらぎルートの整備に形を変え再び姿を現しつつある。
このルートが完成するときまちづくりは本当の意味での出発点となる。重点的に費用を投下することに異論もあろうが、まず核を作ること。せせらぎによる快適環境を享受した人が「いいね、自分たちもできるところからやってみよう」という具合に波及していけば、こんなに嬉しいことはない。さらに東海道三島宿の再現へと夢は広がる。大社に繋がる町の一角、道一筋でもいい、今ある古い町並みを大切にしながら、住んでいる人が共にやろうという意志を持ち、まずは「表に格子をはめましょう」から始めてはいかがだろうか。
21世紀の三島はせせらぎに包まれた快適空間に変わっていることだろう。なぜなら「水」というアイデンティティを取り戻した街は大きく発展する可能性に満ちているからである。
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