サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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県東部地域連合「ひかり輝く地域づくり」に向けて

 県東部特集「風は東から〜ひかり輝く地域づくり」の第12回です。
 毎月1回、県東部と関わりの深い各界の方々にご登場いただき、県東部の将来像についてさまざまな視点から光をあてていきます。案内役はサンフロント21懇話会アドバイザー、静岡産業大学国際情報学部教授の大坪檀氏。
 最終回は石川嘉延静岡県知事にご登場いただき、2000年に行われる伊豆新世紀創造祭や富士山こどもの国、県東部地域の発展の方向性などについて対談していただきました。
風は東から
3周年記念  ●対談シリーズヲヲ12
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世界に誇れ伊豆の自然 富士山麓は立地に磨きを

石川嘉延(いしかわ よしのぶ)静岡県知事
石川嘉延(いしかわ よしのぶ)静岡県知事
昭和39年自治省入省。国土庁官房審議官を経て、平成3年自治省官房審議官、4年7月行政局公務員部長を歴任。5年8月静岡県知事に当選。2期目。
伊豆の”復権“を賭ける新世紀創造祭。
地域の人たちの活動のプロセスを通じて「新生・伊豆」を確固たるものに
大坪 十二回にわたって連載してきた「風は東から」シリーズも最終回となりました。ぐるっと東部を一周して市長さんらにお話をうかがってきましたが、地域づくりに向けて新しい息吹が芽生え始めていると感じました。活性化へ試金石となる伊豆新世紀創造祭開幕まで一年を切りましたね。
石川 今年の大みそかにスタートして再来年の一月一日まで足掛け三年のロングランです。既に伊豆全域で二百三十一本のお祭りや行事などのイベントが組まれています。イベントだけで終わり、というわけでなく世界に通用するまちづくりにまでつなげていく。観光地伊豆の”復権“を賭けた新しい試みですから、是非とも成功させたいですね。
大坪 よく伊豆をドライブするんですが、富士山、駿河湾の景観はもちろん、自然の宝庫、歴史の宝庫そのものです。ただ、うまくアピールされていない、住んでいる方々が宝と気づいていない。
石川 スポットで見れば素晴らしい特色がいっぱいあります。問題なのはそれが地域の魅力として活かされていないことです。地域の方々が外からの視点で伊豆本来の美や良さを再発見し、世界中の人々の審美眼や感性に訴えられるようなエリアに育てていくことが大切です。ですから、創造祭は博覧会タイプのイベントのように何百万人集まったから大成功、というものではありません。プロセスを通じて様々な活動に地域の人々が参加し、その成果が地域の資産として残っていく。あるいはそれが出発点となって地域の発展の土台をしっかり作る。むしろそういう部分に期待したい。素材という点では申し分ない地域ですから、これをなんとかしようという人材がスクラムを組んで試行錯誤を重ねながら世界に通用する観光地、ユニバーサル・リゾートにしてほしい。
大坪 将来、静岡空港ができると、ユニバーサル・リゾートも夢ではありませんね。
石川 ヨーロッパやアメリカで盆栽ブームが起きているように、今、地球規模で自然に親しむ、環境を良くする動きが広がってますね。自然と調和する日本の美意識は今後ますます注目されていくでしょう。自然と調和する観光地として伊豆は一級品ですから、外国の方にきていただくチャンスは確実に増えていくと思います。


富士山こどもの国は健全育成への日常空間に。
地域の魅力の競い合いで地方分権推進
大坪 高齢化、少子化への対応も二十一世紀のテーマですね。閉塞状況にある子供の未来も心配です。来月二十六日にオープンする富士山こどもの国は体験型の大型施設として期待も大きいですね。
石川 子供たちが目一杯遊んでたくましく育つような環境というのは、本来、われわれの日常的な生活の中に確保していくものです。雄大な富士山をバックに、大自然の中で家族がのびのびと楽しめる富士山こどもの国を日常的な空間にしたい。そのためには月に一回、年に数回といわないで、生活感覚で気楽に利用してほしい。そうすればこどもへの関心も高まり、健全なこどもが育つ機運も醸成されていくのではないでしようか。
大坪 富士山こどもの国をベースに富士、富士宮、芝川が役割分担をしながら、富士地区全体を一大テーマパーク化したらどうかと提案してるんですよ。これからは地域の魅力をどう特色づけていくかが大切です。
石川 みんなが同じようなことをしていては、当然、地域の特色は出ない。また、あれもこれもとやっても人々が満足するようなレベルの高いものは出てこない。何かに特化して日本一や世界的レベルのものが生み出せれば、その地域の人はもとより、各地から多くの人が集まってくるようになります。そして互いに足りない部分を補完しあい、個々の特色を結んでいくことで、レベルの高い地域ネットワークが形成され、さらに大きな効果が得られるようになる。文化や歴史、自然、こどもと切り口は様々ですが、これからは地域の魅力の競い合いの時代です。そういった力が地方分権を推進していく原動力になっていくのではないかと考えます。



大坪 檀(おおつぼ まゆみ)さん
大坪 檀(おおつぼ まゆみ)さん
静岡産業大学国際情報学部教授。サンフロント21懇話会アドバイザー
官が舞台を作り、民間、産業界が育てる。
三位一体で世界に誇れる東部が見える
大坪 これからは地方の役割が高まり、地域の魅力が厳しく問われるようになるわけですね。それには地域を支える官、民、産の主体的な協力態勢がますます重要になってきます。
石川 その中で官の役割というのは、相対的に後退していく、また後退していくべきだと思います。何か地域で特色のあるものに特化して力を入れていこうとした場合に、官の役割は多様なニーズにどう応えていくかが最大の使命ですからどうしても最大公約数にならざるを得ない。官は舞台を作り、お膳立てをする。特化し特色を出していく部分は民間や産業界に委ねるのがいいと思います。昨年できた沼津市の「キラメッセぬまづ」は民間や産業界がさまざまな形で利用し、稼働率が好調なようですが、成功した一つの例ではないですか。
大坪 富士山の麓にある都市が今後発展していく上でどんなことが課題となりますか。
石川 東部は富士山というかけがえのない天の恵みを持っている。自然環境と人が理想的な形で共生できる空間であり、ワールドワイドで活動している企業がその素晴らしい環境を求めて立地したい、といいます。高度な研究開発と一体化した製造、付加価値の高い生産活動にこれほど適した場所はないということでしょう。しかし、今のままでは物足りない。コンベンション施設、利便性の高い交通網などを始めとする高次都市機能の整備が不可欠です。業務や生活する上でのユーティリティーの高さと、もう一方で都市的な快適さ。それが揃うことで東部全体が名実ともに世界に誇れる地域に生まれ変わると思います。
大坪 近い将来、東京に一番近い東部が静岡県全体の発展の牽引力になっていくのではないか。わくわくするような未来が東部にはありますね。ありがとうございました。


読者からの提言
「県東部の将来像」


自営業・長泉町在住 四方義男(よも よしお)さん
長泉町在住四方義男(よも よしお)さん
長泉町在住四方義男(よも よしお)さん
 東部はいわゆる静岡圏と東京圏の混ざり合うところ、その境界が時代によって多少変化しつつ発展してきたという歴史的な背景の中で、大きな核となるものがないまま今日に至っている。例えば中部は駿府城を取り巻く商業中心の地域として、また西部は産業が興り、それが核になって発展してきた。東部にはそれがない。しかし、今からその中心的なものを創るのではなく、それぞれの町がそれぞれの良さを活かしながら互いに配置しあえばいいのではないか。中部の、西部のまちづくりの真似をする必要はない。
 では東部には何があるか。日本の心の原風景としての富士山の価値は計り知れない。では他には?三島には大社、水辺の風景、韮山には反射炉があった。お台場を作った江川太郎左右衛門がいた。しかしそれらは全て過去の遺産、もとからある自然である。それらを活かしつつさらに魅力を高めるには今後どうしたらよいか。例えば「癒し」や「遊び心」をキーワードとしたコンダクトとコーディネイト産業はいかがだろう。
 名物、名所あるいは文化を作っていく、これも大切なアクションである。沼津は燦々ぬまづ踊りを始めた。市民が積極性を持って始まった。では、うちもやってみよう、うちもやろう、みんなで競い合うことでパワーが生まれ、やっていく中で手を組めば、それがさらなるパワーとなる。そこに住む人々の知恵で新たな文化や産業ができれば、それらを融合させ、切磋琢磨させていけばいい。都市と都市との間に良い意味での拮抗、ライバル意識は必要である。
 東京も静岡も東部都市ネットワークの一つととらえ、各地域が競い合いながらも連携し、山梨県に匹敵する程の経済力を大いに活用する、それが東部地域の発展に繋がる。

■ この提言は昨年四月に募集した『読者からの提言「私のビジョン ・県東部の将来像」』に応募された方の中から選ばれたものです

■企画・制作/静岡新聞社営業局

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