サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
トップ 最新情報 政策提言 活動内容 サンフロント21懇話会とは 飛躍 風は東から

活動内容
平成18年度の活動方針

活動報告
平成24年度
平成23年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
平成19年度
平成18年度
平成17年度
平成16年度
平成15年度
平成14年度
平成13年度
平成18年度総会 平成18年5月15日(沼津東急ホテル)
「静岡県政の現状と道州制について」
県知事 石川 嘉延


 挨拶にたった石川嘉延知事は「サンフロント21懇話会は、日頃から活発な活動を展開され、有益な提言を県政にお寄せいただいておりますこと、心から御礼を申しあげます」と述べた後、「静岡県政の現状と昨今話題になっている道州制について、私がどう考えているか私見を申し述べたいと思います」と約20分間にわたり静岡県の現状とこれからの地域づくりの方向について持論を展開した。


一人当たり県民所得全国一を

 本県の一人当たり県民所得は、平成15年度で322万6000円、全国第3位です。今年1月末に出た平成16年度の国民所得統計でも3位を維持しています。平成5年が9位、平成10年が4位、平成15年が3位と5年刻みで比較致しましても着実にランクアップしてきておりまして、この数字を見ますと愛知県の背中は見えてきたけれどトヨタを中心とした猛烈な勢いをみますと愛知県を抜くのは難しいと思われるかもしれません。ましてや東京などは426万円で100万円も多いからとても抜くのは無理だと思っておられるかもしれませんが、大いにがんばって行きたいと考えているところです。
 一人当たり県民所得はトータルでその県の経済状況を現すものだと思いますし、これをもとにわれわれの生活が築かれるわけですから意味のある数字だと思います。


事業所の分社化で県税が減収に

 その中で最近こういう状況に直面しています。平成10年に静岡県は31年ぶりに企業立地日本一に返り咲いて、15、16年と1位をキープし17年度も3位と大変順調に企業立地を実現しています。こういうものが県民所得にもつながってきているわけですが、その中で静岡県に立地をしている工場、事業所が分社化、子会社化されて新しい会社の本社が静岡にあるということで、一見いいことだなと思いますが、待てよ、この会社が法人事業税をいくら払っているかと見ますと、何と減収になるんです。例えば、工場、事業所が分社化されて100%子会社の場合に、どういう親会社と子会社の間で経理が交わされているか分りませんが、子会社の方は赤字にならない程度にしか本社からお金が回ってこない。親会社から受託生産のような恰好になるんでしょうか。そのために静岡県の子会社は利益が上らないような仕掛けになっているんです。一つの法人格であった時には、その法人の所在地が東京にあっても静岡県にある工場の償却資産とか、あるいは給料の支払額とか、そういう外形標準をもとに法人事業税が分割されて、静岡ではこれだけ税金を払ってもしかるべきだということで法人事業税が分割されてくるわけです。それが親会社、子会社の関係になってしまうと、子会社の法人事業税なり県民税は、そこが上げた所得に課税されるわけですから、利益が上らない形式で会計処理されてしまうと全然税金を取れない。その結果、ほとんど法人の大手は東京にありますから、利益が東京に帰属する恰好になるわけです。
 これはとんでもない問題だということで、問題提起をしつつあります。
 これが是正されていくともっと変わってくると思いますが、そういう問題を含みながら、世界の所得、国民一人当たりの所得を国際比較すると、小国でもアメリカや日本をはるかに凌ぐ国民所得を上げている国がたくさんあるわけです。スイスとかフィンランド、ノルウェーなどたくさんありますから、そういうところも視野に入れながら県民所得日本一をあきらめてはいけないと思ったりしている昨今であります。


大きなテーマになっている道州制

 一方で、道州制をはじめとした市町村を超える広域的な地方行政組織をどのように再編成するか、これが今大きな日本のテーマになってきております。2月末に総理の諮問機関である地方制度調査会から道州制についての答申が出されました。この答申で本県は道州に再編成した時、どうなっているかといいますと、愛知県を中心とする東海州、もしくは中部州に編入する案になっています。東海州は東海4県、中部州はそれに北陸3県を入れたものです。この道州制の議論の行きつく先がどうなるのか、これからまだまだいろいろと紆余曲折があると思いますが、道州制の議論をめぐって、例えば北陸3県にしても中国地方にしても、ホットな議論になっているのが州都がどこになるのか、です。
 何故かと言うと、日本全体が東京一極集中、先ほどの会社制度も含めて一極集中の流れが滔々としてある。それが道州制という議論の時には暗黙の前提になっているんです。中心が栄えて、中心から外れたらひどい目に遭うと。そういうことが暗黙の前提になっていますから、必死になって州都は俺のところだとやっているわけですね。
 静岡は一方で州都がどこになろうがあまり関係ないと涼しい顔をしていますが、一極集中的な地域構造をとっておればおるほど、ぴんと来るんですね。北陸3県もそうですが、県庁所在地1市が極端に栄えてその他の地域はそれにぶら下がるような地域構造になっている。47都道府県の大部分もそういうふうになっているんです。各地が東京にぶら下がるような恰好になっていますから、北陸新幹線にしても九州新幹線にしても、どうしても新幹線をひけということになる。東京と結ばれないと成り立たないという地域構造、あるいはその中でも州都、県都ならば何とかやって行けるという地域構造。これを放置したまま、道州制を導入してもろくなことにならない。
 それに反して静岡が涼しい顔をしておれるのは、実は静岡県は一極集中スタイルになっていないためです。悪く言えばどんぐりの背比べ、よく言えばそれぞれの都市がそれぞれに成り立っている。結果として機能分担し合いながら多分散になっているんです。


欧州型ポリセントリックな地域形成を

 実はこれからの地域構造を一極集中タイプでやるのか、静岡県のように多分散でいくのか。これは大きな選択の対象になりうるんです。どっちの方向に地域構造を持っていくのか。それについて参考になるのはヨーロッパにおいて、オランダのアムステルダムやロッテルダム、ハーグ、ユトレヒトという都市を含むランドスタットという地域です。人口550万人くらいで、最大の都市でもアムステルダムの72万人。適当な規模の都市が間に田園とか林間地など豊かな緑地空間を介在させながら、高速道路、鉄道で大体1時間圏内で結ばれ、スキポール空港とかロッテルダム港という国際規模の、非常にグレードの高い国際的な出入り口を持っている。そういう地域が、今ヨーロッパの中でも一番経済活動が活性化している。
 大都市への一極集中ではなくて、ポリセントリックな、多中心の地域形成の方がより満足度の高い人々の生活が確保できると。そしてまた経済の活力も生まれるというふうに考えて、こっちの方にEUの地域構造政策は大きく舵を取られつつあるといわれております。
 ひるがえって日本を考えた場合、われわれ行政に携るものの実感として、地方分権、地方の自主性にもっと委ねて、地域政策、地域経営をやったほうがずっと満足度の高い地域が出来るんじゃないかということを、ひしひしと感ずる昨今です。
 そういう方向にどうやって中央政府を含めた統治構造の改革をするか。これが今ものすごく重要なテーマとして持ち上がってきているわけで、その中にこの道州制の問題も位置づけられているわけです。それをやるときにヨーロッパ型のポリセントリックな地域形成を念頭において分権改革を進めるのか、それとも暗黙の前提として、誰もが疑わない一極集中的な地域構造を前提としたような分権化をはかるのか、これは大きなテーマになってくると思います。


多中心の地域形成が可能な静岡県

 静岡県の場合はこれから東海道線の利便性の向上、国際的な機能を持った空港の開港、第2東名の完成、東駿河湾環状道路から伊豆縦貫道、そして中部横断、三遠南信という高速道路のネットワークが完成していく。こういう基盤、条件をもとに一極集中でない、多中心の地域形成を図ることが不可能ではないというふうに思っているわけです。東、中、西に一ヵ所ずつ位、ある程度高い機能を持った都市を配置するという点でいうと、この東部地域は非常に脆弱なわけです。
 相当大規模な国際的コンベンションを静岡、浜松には持ってくるということは、条件が整いつつあって不可能ではないですが、東部というと、さあどこでやるのかなと、首をひねってしまうと。そこのところをもう少してこ入れをしていくと、静岡県全体で考えると東、中、西で上手く機能分担とか、順繰りに輪番的に大型のコンベンションを引き入れながら、全県に存在しているさまざまな観光資源、その他集客機能を上手く利活用しながらこの地域全体が浮上していくということが可能になってくると思います。今後はこういうことを念頭におきながら、一極集中でない静岡県の地域形成に全力を挙げていきたいと考えている次第です。


もっと高い志を持ってがんばっていきたい

 かつて福岡ドームがオープンした時にマイケル・ジャクソンが輝きを失っていない時代でして、彼は福岡ドームで公演をして香港に行ってしまったんですね。マイケル・ジャクソンの福岡ドームでの公演は大成功しているわけです。このようなことが、これから当たり前にならなければいけない。ヨーロッパにしてもアメリカにしても、そういうことは当たり前に行われているわけでして、それに反して日本では何かあると東京とか大阪、ことによったら名古屋ぐらいが超一流というか、超世界的レベルのものは、そこで行われるのが当たり前だと。それでちょっとグレードの下がってくるようなものが、静岡や浜松に来て、大喜びしていると。私は志が低いのではないかと思うんです。
 われわれはもっと高い志を持ってやれば、そういうことだって夢ではなくなる。国際空港機能を持った空港も出来るんですし、夢を描いて富国有徳、創知協働のスローガンの下にがんばっていきたいと考えているところです。




▲ページトップ
入会案内お問い合わせ事務局案内リンク Copyright(c) SUNFRONT21.ALL RIGHTS RESERVED.