サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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活動内容
平成18年度の活動方針

活動報告
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伊豆地域分科会兼地域復興シンポジウム 平成18年7月4日(ホテル伊豆急)
パネル討論:「「輝く伊豆南部へ〜合併、観光復興を探る〜」

 

◆コーディネーター
原田誠治(静岡新聞社常務)

◆パネリスト
萩原聰治(下田商工会議所会頭)
桜井泰次(河津町長)
川ロ良子(川ロ建築都市設計事務所専務)
斉藤民夫(県賀茂地域支援局長)

原田 観光伊豆の発展を考えていくとその先には伊豆は1つだと、何回も言われながらなかなか実現しない。さてどうするか。それを4人のパネラーに本音で語ってもらいたいと思います。自主財源がほとんどない中で予算編成しなくてはならない苦しい伊豆南部の状況をどう見ているか。県内の高齢化率の上位10位までに伊豆南部の1市5町が全部入ってしまっている。その辺を踏まえて今の南伊豆をどう考えているのか。まず、桜井町長さん、お願いします。


南伊豆地域は本当に厳しい状況

桜井 県の平成18年から10年間の財政シミュレーションでは、21年度ぐらいになりますと、南伊豆の1市4町が赤字状況に入り、河津町では約15億円の基金を取り崩しながら何とか10年間はもてるのかなという状況です。国の交付税措置が年々厳しくなってきており、財政はもたないという状況で、それぞれの市町村が行革に徹底的に取り組み、職員の採用も控え、勧奨退職しながらという方向で進まざるを得ない状況です。
 第3次産業の活性化を如何に図るかということが大きな課題だろうと思っていますが、東京のお客さんは東京から伊豆へ3時間もかかってくるよりも、北海道、九州に行った方が早い。また、伊豆へ来るまでの時間で台湾、韓国、中国にも行けることを考えると、本当に伊豆地域は厳しい状況だと思います。伊豆の観光を考えると、縦貫道など交通網の整備は勿論、観光資源の掘り起こしもオンリーワンのものを作り上げていくこと、時間がかかってもあそこに行ってどうしてもこれを見たいというものを作り上げるべきはなかろうかと思います。
 河津桜は2月10日から1ヵ月間、河津でなければ体験できないものがあるということで、伊豆の観光にとって各エージェントがバスを仕立てて伊豆半島にやってくるという大変大きな相乗効果を上げています。先日、JTBでしたか、河津桜は400億、500億円に匹敵する経済効果を発揮していますと聞いたわけですが、こういうようなものを是非他にも作り上げるため、伊豆半島の皆さんが知恵を出す時期かなという感じがします。


行政で言うリストラは合併

原田 萩原さん、いかがですか。

萩原氏

萩原氏

萩原 企業で言いますと、大手企業は身を切るような努力で何千人というリストラをやって、今現在は非常に成績が上がっております。行政でいうリストラは合併じゃないかと思うんです。1市5町にそれぞれ4役、そして議員さんが約84名います。合併しますと3分の1ぐらいで済むわけです。職員が900何人おりますが、それも合併すれば100人ぐらい退職その他で減らせます。金額的には約6億円ぐらい浮くというのが私どもの試算です。こういうものを生かして投資的経費に向けていけば、また経済も活性化してくるんじゃないかと。今はほとんど投資的経費がない現状です。そういうことを勘案して将来に向かって今しか合併する時期がないんじゃないかと思います。合併はきょう言って、明日というわけには行きません。2、3年いろいろなものをすり合わせて初めて出来るものですから、今のタイミングで皆様方に、行政の方たちに、ご決断していただくと。われわれはあくまで縁の下の力持ちであり、やるのは首長さんであり、議員さんだと思っております。
原田 南伊豆の低迷を抜け出すのに今何をすべきか。この間も中伊豆でコミュータ空港の建設候補地の調査をやっていましたが、南伊豆そのものの地域振興に向かってコミュータ空港などの可能性というものはあるんでしょうか。
萩原 桜井町長のおっしゃるように東京からですと下田に来るより北海道、福岡の方が時間が早い。これは空港があるからなんです。世界の潮流として空港のない都市は置いていかれます。奥伊豆に是非、コミュータ空港がほしいと思っています。先日の新潟の大地震のとき、空港だけはしっかりしていたので、空港に支援物資を降ろしてそれからヘリで現地に運んだというように防災にも経済にも利用できる。観光客も国内線をつなぐと直接、東南アジア、その他から来る。静岡空港から来る。いろいろな意味でコミュータ空港は必要ではないかなと思っています。賀茂は1つという思いで市町村合併したら皆で南伊豆を応援していこうよという声が経済界で上がっております。
原田 静岡空港をどう伊豆の振興に結び付けていくかといろいろな人たちからも言われているし、そのアイデアもいっぱい並べられていますが、静岡空港がまもなく出来てしまうのに、静岡空港に来た人たちをどうやって伊豆に連れてくるか、今頃になって考えているのでは遅いですよね。何かできないですか。
萩原 静岡空港に関しては御前崎から富士山を見ながら海を使って伊豆に運んで、東海岸から東京方面に行くルートを1つ考えていること。コミュータ空港については最近半島振興法を使っていけばいけるじゃないかという情報がありまして、知事からもアドバイスいただきまして、伊豆にどうしてもほしいなと動き出したというのが実情です。


伊豆は1つ1つと言える現状を前向きに捉えて

原田 伊豆は1つということに向けて、伊豆縦貫道の整備だとか伊豆スカイラインの無料化などの取り組みはあるが、各市町村が思い思いでバラバラだ、伊豆は1つ1つという悪評もあるそうですが。
桜井 伊豆は温泉場が熱海は熱海、伊東は伊東と、それぞれ特色ある個性を打ち出しているということです。伊豆の道路は有料道路、有料道路できております。私は伊豆の大宣伝をするには「伊豆には有料道路はない」と、スカイラインも無料にすべきという強い気持ちです。伊豆スカイラインは、観光道路というのは法的に厳しいということも聞いていますが、何とか道路を作るよりもまず先に出来上がっているものを来やすい道路にして観光重点施策で取り組んでいただければという気持ちです。
原田 川口さん、伊豆の地域振興の取り組みについて何かありますか。
川口 私は清水にいます。各地の観光振興とか、町づくり、地域づくりのお手伝いをさせていただいています。外から見るとやはり伊豆は伊豆というか、口の悪い言い方をすると「腐っても伊豆だよね」といううらやましい状況があると思います。伊豆は1つ1つと、私も時々耳にしていますが、この伊豆は1つ1つというのをマイナスに捉えるのか、ポジティブに捉えるのかというと、1つ1つ主張できるほどの存在感が各拠点にあるわけですね。他のところだと全体で売るしかないんですが、伊豆は1つ1つと言える現状があるということを、ちょっと前向きに捉えて、1つ1つなんだけれど、1つ1つが小さな塊で主張していても非常に弱いだろうから、つつ光るものがそれぞれ力を持って、全体のベースとか、環境とか、道路とかはやはり全体で取り組んでいく。だけれども1つ1つの光を増すところは、1つずつががんばって、伊豆は1つなんだけれど、1つ1つの塊の集まった1つなんだよという流れがあることが、本当の伊豆の振興になるんじゃないかなと感じています。
 例えば、河津桜のお話がありましたが、観光に行こうという人たち何か理由がほしいんです。河津桜があるから行ってみようと。本当に行動を起こそうする小さな理由をどう提供していくのかということが重要なんです。その場合、まだ未成熟な観光地をたくさん知っている身としては宿泊もある、交通はちょっと物足りないかもしれないが、基盤がある程度整っていて1つ1つがあると。ただひょっとしたら対外的にいうときに、その1つ1つが小粒で、光が淀んで訴求力がなくなっている。そこのところをどう光らせるのか工夫することが必要かなと思います。それを全体的に環境を整えたり、受け皿を作るとき、やはり伊豆は1つでやっていかないといけない。分散していたら非効率ですね。そういう時にベースを作るのは行政だろうから、そのあたりは、効率的に環境作りをするための体制を作る必要があると思っています。


夢のある施策へチャンスを生かそう

桜井氏

桜井氏

原田 ありがとうございます。確かに1つ1つの魅力を発揮するための環境作りが必要だということですね。それで伊豆南部が変わり、発展していくにはやはり今、合併しかないと、萩原会頭がおっしゃったとおりですが、どうなんですかね、現実に新規の建設事業などはほとんど出来ない状況が、まもなく来るわけですね。そうなったときに、市民や町民に向かって首長さんや議員さんは、まだ合併しないで、俺たちは単独で行くぞということを言えるんですかね。
桜井 ここ1、2年はそういう気持ちでいるかもしれませんが、国の交付税措置の流れが、大変厳しい状況で予算も組めないという状況になると、1つになっていこうという流れに確実になると思います。その合併の時には、ただ合併すればいいということよりも、現在の市町村が行財政改革を徹底的に行い、1市5町の皆さんがスリムにして合併し、大きな投資的な財源も生み出すような方向で市民にサービスが出来る体制が生まれないと、なかなか問題かなと思っています。
 賀茂は1つということで、教育行政も先生の異動から子どもの教科書の問題まで進んでいます。太陽農協は賀茂は1つということの見本を示していますし、商工会、教育関係もそういう流れで、この際、国、県のいい支援策を取り込んで夢のある施策を皆で立ち上げてやるべきではなかろうかと思います。
 私も町民に高度の病院を作ってほしいと要望を受けておりますが、1町ではできないわけです。1市5町の皆さんが産婦人科を含めて高度医療を充実させると。一番地の利のいい場所にやっていただければと思います。こういう問題は今、合併という大きな政策をここで取り込んで県、国の力を借りながら、支援策を十二分に出しうるチャンスを生かして、皆して市民サービスを充実させるということが一番夢のある施策ではなかろうかということです。今、経済界は農協、森林組合など、皆、賀茂はつという流れになっていますが、行政だけばらばらですので、そういう点は県知事の勧告権と国の新法、5年以内ということで平成22年までの時限立法の中で、4年ぐらいの期間しかないわけですが、是非、思い切って市民の、町民の気持ちを統合してやることがいいじゃないかと思っています。


自立できる自治体を目指すべきだ

原田 斉藤さん、将来のシミュレーションをするとこの地域の財政状況は相当深刻な状況だと見ているわけでしょう。
斉藤 結論から言って非常に厳しい地域です。経常収支比率といいまして毎年経常的に入ってくる税等が人件費等の経常的な支出にどれくらい回しているのかといいますと、これが90を超えると要注意ということになるんですが、西伊豆町と賀茂村が合併前の平成16年度の決算の数字で、90を超えている団体が3つ、90に近い89台が2つ。あと残り2団体が80の前半というような数字で、毎年の収支をみますと非常に財政的には厳しい地域です。県平均ですと85%を超えるところです。
 財政力指数という、これは税収でどこまでカバーできるか、交付税依存度が高いか低いかという数字なんですが、0.5、50%を超えているのは下田市と東伊豆町だけで、あとは0.3とか0.4とか、交付税の依存度も高い地域です。昨年度実施した財政シミュレーションによりますと、交付税が5年間で2割程度削減されるという前提ですと、積立金のある河津町を除く団体は平成21年度ぐらいまでに収支が赤字に落ちる。
 いずれにしても現在のような小規模のままで行った場合、現在提供している行財政、事務サービスも持続できないのではないかといったことが懸念されるわけです。したがいまして合併による規模の拡大、合併によって行財政基盤を強めていただくことが是非必要ではないかと思っています。財政力の弱い自治体同士が合併しても変わらないのではないかというご意見もよくいただきます。ただ、例えば1市5町が合併した場合、人口規模は7万8000人規模で、規模が大きくなれば行革の余地もかなり広がるはずです。規模を拡大した上でさらに徹底した行財政改革を進めて自立できる自治体を目指すべきであると考えています。
原田 キーポイントが平成21年度ということですが、市民、町民はそういう厳しい実情にあるんだということを分かっていますかね。
桜井 まだ分かっていないと思います。こういうような会合を重ねるにしたがって、だんだん浸透してくるのかなあと思います。自分のところは今のままでやっていけるという方向で、各首長が考えているんじゃないかなと思っています。
萩原 伊豆の住民というのは割りとおとなしいんです。ある程度分かっていてもなかなか言い出せない。辛口の言い方でいいますと、1市5町の首長さんは申し訳ないけれど賀茂が合併した場合、1人分の歳費ですむわけです。それに付随して議会、その他いろいろあります。経済界だったら、こんな生ぬるいことをしていては会社はつぶれてしまいますから、この辺で真剣に検討していきたいと思っています。


夕張市の財政破綻は警鐘

原田氏

原田氏

原田 夕張市が財政破綻して再建団体になってしまいました。観光、観光と大騒ぎして、倒産した民間のリゾート施設を無謀にも一時借入金をこっそり借りて買って借金を抱えてしまっているわけです。議会はチェックのしようもなかったことはあるけれど、市民は、町おこし、観光振興というものについて、お任せだったという問題があるという気がするんです。川口さん、いかがですか。
川口 自分たちは自分たちの仕事を一生懸命やって税金を払って、お任せしておけばよかったという時代が非常に長かったと思うんです。信用しきっていたら、どうもまずいやり方をしていたからもう一度そこを見なさいといわれているんですね。見る習慣、見る能力を養う機会が非常に少ない中で。住民には非常な戸惑いというか、能力不足があるんじゃないかなと思います。
 そこをやはり自覚しなければいけないと思うんです。本当は知らなきゃいけないのに知る機会を与えられてこなかったが、その力を自分たちで養わなければいけない時期が来ている。では何をしたらいいかといえば、経験によってそれを獲得するしかないから、関心を持って見ていくしかなく、なかなかその掘り起こしは難しいという現実もあると思います。
 夕張の場合に、気をつけなければいけないと思うのは、あまりにも極端な例だからうちはいくらなんでもあんなことはしていないだろうという視点で夕張を見てはいけないと思うんですね。ある意味、自分のところもチェックしなければいけない時期が来ているんだという警鐘だと思って、どうしてこういうことが起こったのか、せめて日常の会話の中で行政が潰れるってどういうことなのか、何が起こるのか関心を深める契機にこれをしなければいけないと思います。それを突き付けられていると私は思います。
原田 斉藤さん、再建団体になるとどうなるかということをあらためて説明してください。
斉藤 財政再建団体というのは、実質収支の赤字が2割になると指定を受けることが出来るわけです。受けないと再建がほとんど不可能ですので、受けざるを得ないということです。指定を受けますと財政再建計画を作って国の承認を得て、毎年予算編成を国の管理の下に行うことになります。再建をはかる財源は税収しかないですから、職員の人件費の削減ですとか投資的経費の抑制、さらには各種団体の補助金のカットなど厳しい歳出カットをすると同時に住民負担を最大限アップさせることになります。夕張市の場合は、異常な額ですから計画ができるか、難しい状況ではないかと思っています。自転車操業で当年度の一時借り入れの返済の財源を翌年度の一時借り入れで賄うといったかなり異常な状況でして、これがなぜ議会のチェックにかからなかったのか。一時借り入れは予算事項なので議会のチェックを受けます。監査もどのようになされていたのか、非常に疑問を感じるところです。これから総務省で全国一斉の一時借り入れ状況の調査をやるということですので、これからも続く団体が出てくる可能性があるのではないか思っています。
 静岡県ではこういったことはないであろうと思っています。しかし、近い将来財政破綻ということは現実の問題として十分懸念されるわけでして、他山の石とすべきものだと思っています。やはり予算や決算の透明性の確保ということと議会のチェック機能の重要性というのは、改めて実感されるものです。情報は積極的に、市民、住民に対して開示していく姿勢が必要であろうと思います。住民の方々も関心がないといいますが、それでは済まされない話です。財政再建する場合は最終的に住民の負担になりますので、是非、関心を持っていただきたいと思います。もう賢くなるしかない。
川口氏

川口氏

原田 川口さん、最近、県西部で合併先を巡って混乱している町政があります。結果的に町民に全部しわ寄せが返って来るんですね。だから有権者というのは利口にならなければいけないと思うのですが。
川口 私は前向き、ポジティブ発想で住民主体、市民中心の町づくりということを言ってきたんですが、どうも最近あやしいなと思っていたのは、本来行政の仕組みはものすごくがっちりした体制で形づくられたものであったはずですが、現実はその体制で作られている理想の形とは違うアウトプットになっているんですね。市民感覚としてはそうなんですよ。がちがちに体制が固まっていて、理路整然とそれはこういう仕組みで、こういうバックアップとかフォローがしてあって、こういう間違いは起きないようになっていますと、ずっと理論構築されているわけじゃないですか。
 それが国、地方全部あわせて1000兆円の借金だという。どうやって返すのかなと、庶民感覚でいくとおかしいと最近思ったときに、「僕たちばかりに任せていたら危ないなんだから、皆さん、もっとしっかりやりなさいよ」といわれているような気がしてきたんです。そこで思うのは、そうなったらもう賢くなるしかないのかなと。自分たちが学んで賢くなるしかない。自衛はそこかなと言うのが正直なところなんです。今の時代はそれぐらいの気持ちでいないと、もう駄目なのかなと感じています。
 個人的な見解ですが、行政はやたらにたくさんの部分は担わないでください。少ない人数で効率化できるような、存在感のない行政になってもらいたいと思っています。そういう形をしていく中で、ひとつの手段として合併もあるかもしれない。プロとして今まで構築してきた行政の論理を、そんなものを学んできてもいないし、任せてしまっていた市民が対抗してやっていかなければいけないんだから、もう賢くなるしかないというのが本音です。
原田 現実に私の地元志太地域では14年間、合併協議をしてきましたが、その中でお宅は家族同士で合併のことを話し合いしたことがありますかという世論調査をすると24%ちょっとしかない。ほとんど話題にもしていない。14年間やってきたんですよ。合併協議がご破算になると、こんなはずじゃあなかったと。議員さんとか市長さんを信頼していたと。萩原会長、下田はそんなことはありませんか。
萩原 下田もやはり、親方日の丸で行政は絶対に倒れないという思いの方が大多数だと思います。ですから合併して名目が変わったりすることは好まない。何とかやれるなら現状のままがいいというのが住民の本音だと思います。しかしこうして話を聞いていきますとやはりこれから決断しなければ伊豆は発展はないなという気持ちになってきています。
原田 川口さん、斉藤さん。賢くなるためにはどうしたらいいんですかね。
川口 新聞には載っている。広報には載っている。ありとあらゆるところに情報はあるんだけれど、そのドームの外側で、情報がうごめいているだけで、住民の皆さんは自分の中に情報が入ってこない。それを中に入れてあげるのは誰なのか。バリアを外すのは誰なのかといったら、やはりそれを知った人が伝えるしかない。そうするとまた、地道な活動しかないのかなと。正直言うとそういうジレンマを日々抱えていますが、やはり意識を持った人たちが、口伝えで伝えるしかない。行政とか議員の人たちは、説明する能力を高めていただきたい。説明しているというんだけれど、相手も聞いていないわけではないけれど、何かそこの関係性が非常につながらない。では、つながらない人たちが悪い人たちかというと真面目でいい人たちなんです。そういう人たちにどう伝えるのかといった能力を如何に高めるのかが大事なのかなと思います。非常に抽象的ですが。ただ私が実践としてやっているのはハード1つ、イベント一つにしても常にそれを行うことにおいての地域との係わりを如何に深めていくのかという仕掛けをしていく努力を、地道ではありますがしていくしかないと思います。
斉藤 やはり住民の皆さんの理解を得るのは、口で言うのは簡単ですが、非常に難しい。理想を言えば住民の理解の下に議会と首長が車の両輪となって合併を進めていく。合併の情報というのはかなり専門的な情報になりますので、分かりやすく住民にお知らせをすることが必要だと思うんですが、これまで合併をした市町村の中でもなかなか出来てなかった。この地域では、進めて行かなければならない問題だと思っていますが、非常に難しい問題だと思っています。最終的には地道にやるしかない。この点についてはいい知恵がないというのが実情です。財政問題だけでは住民にとって淋しい。やはり合併を契機としていい町を作っていくんだという考えを行政、議会の方から住民に示していくことも重要ではないかと思います。


来年秋までに合併協議会立ち上げを
 

斉藤氏

斉藤氏

原田 住民がその気にならないと幾ら叫んでもどうにもならないですね。桜井さん、地域で首長さんが先頭に立って、やはり市民、町民が、町の将来であるとか、合併を考える機会を与えていくという役割を、周囲の首長さんたち、議員さんたち皆が持たないと駄目でしょうね。そうすれば絶対進みますよ。やってくださいよ。
桜井 1市5町の首長さんが理解を深めて、みんなして、これから財政状況を十二分に説明をしながら、この新しい法律の5年間の中で、やはり国の交付税はこういう方向になるという点は県の斉藤さんが徹底的説明をしていただきたいと私はお願いしたいと思います。その一方、県の支援策につきましてもこういう支援策があるよということを早めに出していただきたい。それで各地区の住民サイドに私は、部落懇談会ということで回って歩きます。こういう状況ですよという説明会を考えたいと思っています。
原田 斉藤さん、県の支援策はいつごろ地域に示しますか。
斉藤 合併構想と同時に支援プランというものをまとめて、今年3月にすでに公表しました。その中で少し先送りされているものがあります。桜井町長はそのことをおっしゃったのではないかと思いますが、地域の課題に対応するための支援策ともう1つは道路。県管理の道路、農道、林道も含めてなんですが、その辺の支援のための整備をどのように進めるのか。これはまだお示ししていません。現在、県庁の合併推進室が中心になって取りまとめています。7月に出るのではないかと私も期待しているんですが、まとまり次第お知らせしていきたいと思っています。それから知事勧告についてですが、勧告をするかどうか、まず審議会でご議論いただかなかればなりません。 合併のスケジュール等を考えますと、合併協議は、準備から合併まで2年から2年半くらいかかると申し上げています。平成22年3月までに合併するということになりますと、来年の秋ごろまでには合併協議会の立ち上げが現実になっていないと難しい。ですからその前に勧告するかどうかという議論を審議会でしていただいて、最終的には知事の判断になってきます。
原田 石川知事は出来るだけ地域の主体性で合併推進をしていきたいから、できるだけ勧告はしたくないということを言っていますね。だからわれわれが審議しているプランも全部「主体的な合併を進めるために」という枕詞がついているんです。川口さん、委員の1人としてどうですか。
川口 小さなものの改善の総体が全体としての利益になるとは限らないと思うんですね。そこのところの視点で市町村単独の考えでやっていくとその部分の答えとしてはいい答えが出るんだけれど、全体の答えとしてはいい答えが出ない場合は、県の役割が非常に重要になって、そこのところの提示をしていく。それが自主的な合併を促進するために役立っていくというような内容になるのかなと。そういう風に捉えています。


「朝日も夕日も見える町」に

原田 例えば志太地域の場合、本来は2市2町の合併をめざしたけれども当面1市1町の2つのペアで行こうと、そういうことが地元で非常に熱を帯びている。2市2町というのが最大善だとすると、部分的に1市1町同士というのは、それだけの小さな価値しかないわけですね。そういう問題は合併を進めていくといっぱいあると思います。ここの1市5町の話でも1市5町という組み合わせで本当にいいのかどうかということを率直に感じるんですが、桜井さん、例えば西伊豆町は、この間合併して湯気が出ている状況の中で1市5町に組み入れるとなると、なかなか町民の理解を得るというのは難しいと思うんですが。
桜井 西伊豆町の皆さんにしますと大変酷じゃないかなという感じはしますが、「賀茂は1つ」という大きい流れの中で、それぞれの経済団体、産業団体がみんな各種団体まで1つになっている中で、将来を見て決断をしていただきたいと思います。これにつきましては相当手厚い支援策というか、特別の支援策を県の方も出すような方向で1つの立ち上げが出来ればと思っています。
原田 ありがとうございます。斉藤さん、今の桜井さんの話、忘れないでください。萩原さん、どうですか。1市5町で西伊豆も一緒になっていくんだよということは。
萩原 賀茂郡というのは明治27年に郡政が敷かれましてそれから約110年、賀茂郡という単位で教育から行政、経済と、あらゆる分野で郡対抗とかいろいろやってきた長い歴史があるんです。これが昭和30年代に一度各市町村が合併を一度やっているんです。この下田で言いますと、下田、朝日村、稲梓村、白浜村、浜崎村、稲生沢村でつの町が昭和30年に出来ているわけです。それからもう50年たっている。西伊豆町の声はいろいろ聞きます。伊豆市の方に行ったらどうだとか。私は賀茂郡というのは特殊な地域だと思うんです。東海岸で朝日が見れます。西に行くと夕日が見れます。日本でここぐらいだと思うんですよ。これが町がばらばらですと「朝日も夕日も見える町」なんていうキャッチフレーズは出来ないんです。長い歴史のある賀茂郡ですから出来たら1つにして、僕らの年代は一緒に郡大会をやった仲間ですから、是非進めていただきたいと思います。
原田 これだけ話をしても1市5町が合併新法の中の5年間で果たしてゴールにたどりつけるのかどうか。ゴールがまだ見えないんですが、この地域の合併を邪魔しているものとは何なんですかね。
萩原 首長さんは頑張っているんですが、意外に議会の方が抵抗があるんじゃないかなという声が私どもの中では聞こえてくるんです。理由はいろいろありますが、やはり首長さんが提案し、議会が承認しなければ合併は進みませんから、それぞれ議会は温度差がありますからそこは乗り越えて小異を捨てて大同についていただいて、将来の伊豆を考えていただきたいというのが、われわれ経済界の願いです。


責め合いの会話はやめよう

原田 川口さん、合併を邪魔しているものって何んでしょう。
川口 現実を見据える目を持つこと。その目が下がっているのかなと思いますね。だけどその目をクリアにするのはどういう手段かというのがないと思います。
原田 そういう風に目を開かせる、外側から刺激を与える力も働いてないのかもしれませんね。十分に。
川口 その、あらゆる活動とかが、私はいろいろなものの中でも住民側は言ってくれないとか、行政は言ったのにとか、責め合いの関係性になっているんですよね。あらゆるものが。
原田 なるほど。
川口 だから、抽象的な言い方で悪いんですが、いろいろな場面ですごく歯がゆく思うのは、良くしようと思っているのになぜこの人たちは責め合いの会話をするのかなと思うことがあるんですね。それぞれ考えが違うのは当たり前なので、その仲立ちをしたり、方向性を進めていくのが、先程おっしゃったんですが、本来は私の理想とする議員さんですが、厳しい言い方をするとそういう議員さんに遭遇することは極めてまれです。でも「その議員さんを選んでいるのは誰」といったら「私たちだよ」という堂々巡りのある中で、やはり一歩一歩現実を見据える目、それと同時に責め合いの会話をしない賢い議論、本当に抽象的ですが、そういう場面を見たいですね。
原田 萩原さんがおっしゃた小異を捨てて大同につくという大同団結の精神をあらゆるところの人たちが持たないと、川口さんがおっしゃったような話ってできないですね。ずっと対立したままでいってしまう。それをどうやって受けていくかですね。危機感があればそれが実現してくるでしょうが。
萩原 合併でいろいろ問題になるのは町名の問題とか、新市はどうなるんだとか、われわれの字はどうなるんだとか、そういう問題まで含むものですから、そういった議論もそろそろやっていかなければいけないし、川口さんがおっしゃったように我々は選んだ議員さんに対してこういう風なお願いをしたよと、いうことを問いかけることもこれから必要になってくるんじゃないかと思います。


前向きの攻めの部分を持って合併協議を

原田 最後に川口さん、「伊豆は1つ」を達成する前段として賀茂は1つという、それを是非実現するためにこんなとこがポイントになりますよということをお話いただけますか。
川口 合併には、明らかに生活圏が一体であるとか、小さな市町村で自立できないところは合併する必要があるというように幾つかの切り口があるんですが、伊豆の場合、生活圏が広域化しているから生活圏が一体であるという論理展開は個人的にはちょっと無理があるのかなと思うんです。でも行政として効率的にしていかなければならない規模として、1市5町という枠は妥当なラインだろうというのが1つの視点としてあります。もうつあるのが、伊豆は1つ1つと言ったんですが、観光の戦略、発展的な戦略を打ち立てて、これから推進していく主体としての行政を構築する手段として合併があるんだという視点で是非、前向きに議論していただきたい。「腐っても伊豆」でまだ力がある、1つ1つ光っている部分があるというところを戦略的に打ち出していく手段として合併を捉えてもらいたい。前向きの、ポジティブな、厳しい時代だからこそ攻めの部分を持っていて、今、高齢化しているのが、高齢化率が合併の戦略によって下がったぞというふうな未来が見据えられるような、1つの手段として議論をしていくことを是非やっていってもらいたいと思います。
原田 身の丈にあったやり方も視野に入れながら行かないとですね。斉藤さん、どうです。
斉藤 私は4月にこちらに参りまして、皆さんにいろいろお会いします。まだ1市5町で一体となって合併を進めていくということまでには、一致しておりません。現状では温度差があります。そうした中で合併調査委員会が5月に立ち上りまして、これは助役さんを構成員とする議論ですが、まずここで議論をしていただいて、法定協議会まで早期のうちに立ち上っていただければと思うんですが、現在、なかなかそういう状況ではありません。いずれにしても行政、議会、住民の方々が合併の枠組みとか、合併の必然性について議論していただく必要があります。特に議会です。県の勧告とか調停とかありますが、最終的に判断するのは各市町村の議会ですので、議員の皆様には責任ある判断が出来るように十分合併について議論をしていただきたいと考えています。私どももお呼びがかかればどこにでも、いつでもうかがって、県の合併推進構想の内容ですとか、合併がなぜ必要かといったご説明をさせていただきたいと思いますので、是非よろしくお願いします。
原田 ありがとうございました。


萩原聰治(はぎわら としはる)
昭和8年生まれ。昭和27年県立下田北高校卒業。昭和40年〜42年下田町社会教育委員。昭和40年〜43年下田町ソフトボール連盟理事長。昭和58年4月下田北高校体育文化後援会長。昭和59年7月〜平成7年4月下田市議会議員。昭和61年6月下田商工会議所議員。平成元年6月下田商工会議所常議員。平成12年副会頭。平成13年11月会頭に就任。(株)いなぎや商事社長。サンフロント21懇話会幹事。

桜井泰次(さくらい たいじ)
昭和9年生まれ。昭和32年、日本大学経済学部卒業。41年10月河津町議会議員初当選(以後5期当選)。昭和53年5月〜昭和61年5月河津町観光協会長。昭和61年4月河津町長就任(平成元年5月〜平成2年5月観光協会長兼務)。平成11年6月静岡県町村会長(1期)。平成17年11月静岡県市町村職員共済組合理事長。平成18年4月河津町長6期連続当選。

川口良子(かわぐち りょうこ)
昭和57年、豊橋技術科学大学大学院建設工学課程修了。57年〜61年川ロー級建築設計事務所勤務。61年から現事務所取締役。平成6年〜17年静岡県総合計画審議会委員。平成8年、静岡・未来・人づくり塾専任講師。平成15年〜16年静岡市総合計画策定専門委員。平成16年〜17年袋井市商業まちづくり懇話会委員。平成16年〜(財)静岡県文化財団理事。平成17年〜静岡県合併推進審議会委員、静岡県住宅マスタープラン策定懇話会。静岡新聞「時評」執筆。

斉藤民夫(さいとう たみお)
昭和24年三島市生まれ。昭和48年静岡県庁入り。総務部財政課、企画部企画課、総務部市町村課、企画部企画課長補佐等を歴任。平成11年企画部政策推進総室交通政策室長。平成13年総務部市町村総室市町村行政室長。平成14年総務部市町村総室長。平成16年総務部参事(分権担当)。平成18年総務部理事兼賀茂地域支援局長。



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