景気は踊り場から拡大に 波乱要因は参院選
年前半は景気の踊り場局面、年後半は再び緩やかな拡大軌道に戻るが、波乱要因は夏の参院選−。2007年の国内景気を大胆に予測すれば、こういうことだろうか。「亥(い)年」だから経済も猪突(ちょとつ)猛進と宣言したいが、残念ながらやや曲折をたどりそうだ。鍵は個人消費の動向にある。
昨年は、4年9カ月続いた景気拡大局面の「いざなぎ景気」を11月に追い抜き、戦後最長の景気拡大は現在も続いている。しかし、所得格差や地域間格差が顕著になり、さらに家計が潤わないといった理由で「景気がいいとの実感がない」との声はあちこちから聞こえる。
振り返れば、いまの景気拡大は2002年2月に始まった。時は小泉前政権誕生の翌年。当時、株価は下げ止まらず、失業率は5%を超えていたが、半面、米国や中国向けを中心に輸出が息を吹き返した。その後は日本を苦しめてきた「設備、雇用、債務」の3つの過剰問題もおおかた解消、前向きな設備投資が活発になり、現状に至っている。
後は個人消費に円滑なバトンタッチが行われれば景気拡大シナリオも万全となるが、このバトンの引き継ぎがもたついている。企業業績は回復しているが、激しい国内外市場の競争に勝つために設備や研究開発投資は怠れず、最終商品もなかなか値上げできない。給与は上げにくく、だから所得も増えず、個人消費に点火しない。ことしは所得税と個人住民税に適用されていた定率減税も廃止され、実質的な増税感も消費の足を引っ張る。
政府、日銀とも、景気拡大はいずれ「企業から家計に波及する」との見方で一致するが、年央までは景気の一時小休止状態、いわゆる踊り場に陥るとみる。日銀が1−3月に追加利上げする可能性も高く、景況感にややマイナスに働きそうだ。
だが、過度に悲観する必要はない。引き続く企業業績の好調を背景に、ボーナスを上げる企業は多く、実質的な賃上げにさえ踏み切る企業もでてこよう。年後半には労働需給の逼迫(ひっぱく)度合いが高まり、賃金が上昇に向かうとの見方は多い。踊り場を経て、徐々に個人消費へバトンが引き継がれ、緩やかな拡大局面が年後半には再び訪れると予想したい。
波乱要因は参院選と冒頭に記したが、結果次第では、こうした景気シナリオが崩れるかもしれない。与党が大敗して参院の多数を野党が占めた場合、安倍政権は国会運営で行き詰まり、ひいては為替や株式、国債などの金融資本市場で株安などを誘発する可能性は否定できない。市場に大きな影響力を持つ外国人投資家が、荒れるであろう政局を嫌気して日本売りに走るリスクはある。景気の先行きを占う意味でも参院選は注視したい。
民間経済の分野では、企業の合併・買収(M&A)や株式公開買い付け(TOB)が、ますます盛んになるのは間違いない。村上ファンドの村上世彰元代表の逮捕で一時は鳴りを潜めていたアクティビスト(行動型)ファンドが、日本での活動を再び強めている。昨年、米国系ファンドから敵対的TOBを仕掛けられた明星食品が最終的に日清食品の傘下に収まったように、行動型ファンドの動きは結果的に再編につながるケースが多い。
5月には三角合併と呼ばれる子会社を使って企業買収をする手法が解禁となる。外国企業が日本企業を買収しやすくなるといわれ、狙われる企業も多々、出てきそうだ。ただ、最も注目すべきは日本勢同士の買収合戦だろう。日本市場の成熟化や減り続ける人口などの構造問題に対応して、生き残るためのM&Aを検討する企業経営者は数多い。2007年は、日本勢による仁義なきTOB合戦が繰り広げられるのが珍しいことでなくなる。そんな予感が強くする年始めである。 |