サンフロント21懇話会の19年度総会の記念講演は、危機管理の第一人者で、先の都知事選で石原慎太郎知事の選対本部長を務めた元内閣安全保障室長の佐々淳行氏が「混迷時代の危機管理」と題して、都知事選やあさま山荘事件など自らの体験をまじえながら企業コンプライアンスの重要性を説いた。
佐々氏は「日本は危機が山積している」としたうえで、例えば、最近のはしかの流行について予防接種を任意にした以降の若者たちに流行しているとし、もし天然とうが出たらどうするのか―等アルファベット順に危機を挙げ、日本の危機管理体制の弱さを指摘した。
その中で「C」のコンプライアンスに絞っての解説で、「コンプライアンスは法令順守ではない。組織防衛だ。組織に対するあらゆる要求、不平不満、リコールなど悪い情報をいち早く入手し、トップを中心に決断し応諾すること」とし、「コンプライスは、英語では応諾という意味がある。基本的には相手の言っていることをやわらかくまとめること。法令順守では履き違えている」とし、石原慎太郎知事の高額な旅費問題などは「違法か合法かではない。当不当かを言っている。違法性がないといっても妥当性があるかが問題」と指摘。自身が選対本部長を務めた先の都知事選における石原知事の「反省」を中心とした対応について明らかにし、危機管理の成功例として具体的な取り組み方について説明した。
また、企業にコンプライアンスヘの認識の甘さがあり、対応のまずい代表例として雪印食品やシンドラーエレベーターの問題などを紹介。「一番最初に悪い情報をトップに伝えることが大事。そういう部下を大切にしてほしい」と説いた。
また、愛知県の発砲立てこもり事件、松岡利勝農相の自殺を、ここ数力月に発生した危機管理の失敗例とし、とくに撃たれた巡査部長をそのままにしていた愛知県警の手法について「全国の警察官が見ていた。部下の命を何と思っているのか。俺だったら10分で救出する」と強調。「不作為の責任は県警幹部が負うべき」と厳しく指摘した。
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