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合同会議記念講演 平成19年3月29日(サンフロント)

「都知事選と参院選の展望」
時事通信社 静岡総局長  加藤 清隆氏

 

時事通信社 静岡総局長  加藤 清隆氏

 講演は、統一地方選挙を目前にひかえた3月29日に行われた。テーマは「都知事選と参院選の展望」。この時点で石原慎太郎氏圧勝という都知事選の結果を見事に言い当てるとともに、加藤氏は7月の参院選挙について、現時点では自民党は厳しいと予測。しかし「参院選は政権選択選挙ではなく、安倍総理は負けても辞めない」とし、9月に大きな内閣改造や党人事があるとの見方を示した。



東京都知事選はダブルスコアで石原氏

 東京都知事選は、本来なら統一地方選挙最大の目玉になるはずなのに目玉になっていません。盛り上がっていないんです。前回4年前の投票率が44・9%ですが、今回も50%を超えるのは難しいところではないでしょうか。その最大の原因は、石原慎太郎の対抗馬である浅野史郎です。僕に言わせれば宮城県でしくじった人が東京都知事をやるというのは、そもそも間違っている。
 私は参院補選を含めて統一地方選のトレンドは宮崎県知事選で現れたような無党派の流れをいかにつかむかだと思っています。その「そのまんま東現象」が東京都知事選挙にあるのかというと、ない。その最大の原因は、主に浅野史郎さんに原因があるのではないかと思います。
 最初に結論を言います。本当は選挙の前に選挙の結果予測を言うのは馬鹿だといわれるでしょうが、あえて言いますと、恐らくダブルスコアだと思います。簡単に言うと石原慎太郎が200万票とったら、次点で浅野さんが100万票行くか行かないか。超えても10万票。そんなもんだと思います。
 私が聞いた範囲で言えば、スタート時点では石原さんと浅野さんの差は世論調査上では13ポイントと接近していたので、関係者はひょっとしたらと思ったらしいんです。ところが、1週間たち、10日たってそれが倍になっている。つまり20ポイント以上の差がついている。実際の票はどうなるのか。いろいろなものが影響しますので一概には言えませんが、なかなか石原さんの牙城を切り崩すのは難しい。つまり接戦にもならず大差がつくであろうと私は思うんです。
 私に言わせれば、その決定的なところは、やはり浅野さんを支持している市民グループなるものの正体がはっきり言って民主党の支持者ですらないことです。一番多いのは社民党の支持者です。東京都民は白けてしまう。つまり、「そのまんま東現象」のような無党派層を突き動かすインパクトにはなりえていないのが現状であり、恐らくそのままの結果になるだろうと思います。
 その一番のいい例は、もともと民主党の衆議院議員であった神奈川県知事の松沢成文、それから埼玉県知事の上田清司、この2人がなんと石原候補の選挙カーに乗って、3人で演説したんです。そして石原さんが横浜に行って松沢さんの選挙カーに乗ったんです。松沢さんは民主党ですよ。つまり浅野さんではなかったということです。私は選挙の流れから言えば決定的な事件であったと思っています。
 振り返ってみれば東京都というのは、いわゆる地方都市と考えるのはちょっと無理があると思います。一般予算だけでも6兆円です。もちろん他のものを加えると10兆、20兆円という単位になるような一つの中規模の国家、例えばエジプトと同じ国家並みの予算規模を東京都は持っているんです。ということは普通の市長選挙や県知事選挙ではなくて、いわゆる国家の大統領を選ぶような選挙だと見た方が、私は分かりやすいと思います。そうした点から見れば、石原さんは、いろいろありました。4男の石原延啓のこと、知事ご自身の海外出張があまりにも豪華じゃないのとか、ありましたが、それを差し引いてもなお石原慎太郎という人の大統領的なカリスマ性の方が上回っているというか、勝っている。浅野さんは敵になっていないと感じるんです。


菅直人が出るべきだった

 一つ強調させていただきたいのは、本来であれば都知事選には菅直人が出るべきだったと私は思っているんです。現在、民主党の代表代行である菅直人が出ていれば、石原さんといい勝負をした可能性がある。そこは菅直人という人の市民運動家から出た政治家としての限界かなと思っているんです。
 つまり菅が出て、徹底的に石原さんと戦えば、石原さんの票はもっと下がっていたんです。石原さんの最初の都知事選の得票は166万票。そうすると民主党の基礎票が130万あるとすれば、もし菅さんが出てガチンコ勝負をやっていれば結構いい勝負をした可能性があるんです。
 もしですよ、今の東京都の有権者は1000万人いる。ということは投票率が5ポイント上がると50万票増えることになります。仮に菅さんがこの大部分を取れば、かなりいいところになったんです。それくらいのブームを起こす気持ちで菅さんが衆議院議員を辞めて都知事選に出て、もし都知事に当選するようなことがあれば、統一地方選挙の流れは変わっていくし、7月に予定されている参議院選挙でも民主党は本当に有利に戦えたんです。
 だけど菅さんは何を考えているのか。小沢さんは参議院選挙で腹を切って辞める。次は俺じゃと。でも菅には行かないんです。民主党の中ではいまさら菅や鳩山ではないんです。そういう時代じゃないんです。菅さんは、私はチャンスをみすみす逃したのではないのかなと思います。


したたかな安倍総理

 安倍政権のことです。最初に申し上げておきますが、私、安倍さんの裏のブレーンのような仕事もしておりますので、私の話はかなり身びいきになります。ですから皆さん、ちょっと割り引いて聞いてください。
 安倍政権は、ご存知のように出だしは非常によかったです。最初に電撃的な訪中、訪韓をやり、そのちょうど間を縫うようにして北朝鮮が核実験を強行した。つまり、総理の訪中が10月7日、8日に移動し、9日に韓国に行くんですが、その真ん中の日に北朝鮮は核実験を強行したんです。これは北朝鮮が日本政府を狙い撃ちするために、わざわざ10月8日という日を選んで核実験を強行したんです。もちろん北朝鮮の最大の狙いはアメリカを引っ張り出すことです。そのアキレス腱である日本を狙い撃ちしたのがこの核実験です。
 その後のアメリカは中間選挙で共和党が負け、ブッシュ政権は今や死に体状態です。したがって6カ国協議であろうが、もういいように北朝鮮に引きずり回されているじゃないですか。北朝鮮の狙いは本当は日本なのです。なぜかというと、金を出せるのは日本だけだからです。だからその前にアメリカを屈服させてしまえば、日本がそれについていくんだという狙いでやったんです。ところが安倍晋三は一見ひよわそうですが、なかなかしたたかなんです。安倍晋三はテコでも動かない。これは小泉さんのようなポピュリストですとすっと変わってしまう。ブッシュに任しておけばいいんだと。
 そこで日本は一見崖っ縁に追い詰められているように見えるんですが、そうじゃないんです。ここは日本ががちっと構えて、北朝鮮が折れてくるまで妥協しては駄目です。
 私なりの考えで言えば、総理、宰相の条件は3つなんです。1つ目は洞察力というものがなければいけない。物事を見通す力、できれば30年後、50年後、本当なら100年後を見通して自分の政策を実行していただきたい。2番目は歴史観、国家観というものがあるか。国を運営するにあたって、いかに日本国というのものを動かすかということを決めるのは歴史観、国家観だと思うんです。3番目は長期ビジョンだと思うんです。最低でも30年後の日本をこうしますという青写真を見せて欲しい。
 この3つに関して言えば小泉純一郎は一つもなかった。彼のは歴史観じゃないんです。時代小説観なんです。単に本を読んでいただけです。彼は時代小説観でとどまっていたんです。なんでそういうことを言うかというと、対中国です。安倍政権になって安倍総理は真っ先に中国に行かれました。小泉さんは何であんなに中国は嫌いで、靖国神社のことを固執していたのに、安倍晋三は耐えられたのか。安倍首相はひ弱に見えるかもしれませんが、実は保守本流なんです。つまり保守本流ということは、私が言った3条件の2番目の歴史観、国家観がちゃんとある人間だからです。つまり根っこがきちんとしている。逆に言うと瑣末な部分では妥協が出来るんです。


小泉外交の問題点

 外交交渉では100%、100点満点取ってはいけないんです。日米でも日中、日朝間でもそうです。100%では逆に相手に恨まれます。ですから外交交渉では常に7割でベストであると言われています。どんなに取っても7割で後の3割は相手に与えなければいけない。この与える部分が妥協なんです。つまり靖国について言わないならば、こちらも言わないようにしようと。中国側もそれで妥協できたんです。
 小泉さんはなぜ妥協できなかったのか。それは歴史観、国家観がない人は自分の言葉にこだわらざるを得ないんです。小泉さんは総理になる前に靖国神社に行ったことはほとんどないんです。総理を辞めてから、あれだけ靖国、靖国といっていたのだから靖国に行ったことがあるかといったら、恐らくこれもゼロでしょう。なぜ総理の時にあんなにこだわったのかというと、それは2001年4月の総裁選で、相手の橋本龍太郎さんは日本遺族会の会長をやり、遺族会に大変大きな影響力を持っていた。対する小泉純一郎候補は、その橋本龍太郎さんの牙城を崩すために「私が総理大臣になったら8月15日は必ず靖国に参拝します」と公約してしまったんです。この言葉にこだわったんです。
 ポピュリストは自分の言葉に引きずられるんです。それが人気の源泉だから。根っこの部分じゃないですよ。ここの部分で小泉さんは妥協することが出来なかった。だから外交はブッシュにお願いしたんです。そのことによって日米間は一時的にしろいい関係にありました。でも逆にいえば国家間の外交というものは例え総理大臣や大統領が代わっても連綿として続くものですから、個人的関係において成り立っている外交は本当じゃないんです。
 その証拠に小泉さんが代わり、ブッシュがいまやレームダックの状態になったら日米間がおかしくなっているでしょう。その最大のものは従軍慰安婦の問題。上院で日系の議員が日本に対する決議案を出して可決する寸前まで行っているじゃないですか。あるいはワシントンポストもニューヨークタイムズも日本のことを非難しているじゃないですか。ブッシュ政権が力の強いときにはあんなことはありえませんでした。今は日米関係が変質してきているんです。つまり個人的関係のみにおぶさった外交関係は本当ではないんです。
 本当の関係はもっと対等に話をし、あるいは日米だけではなく、日中も、日韓も、日朝も、あるいはASEANもアフリカも付き合わなければいけないのに、小泉政権5年半の間に、あんなに固い日本の支持国であったASEAN10カ国とアフリカ30数カ国は全部中国に食われてしまった。
 皆さんご存知ですか。北京で今や、アフリカの首脳会議が開かれているんですよ。それは胡錦濤主席が全部回って援助をばらまくからです。日本からもらった年間3兆円ほどのODAをスルーしてばらまくんですから。しかも日本では絶対やらないような紛争国までばらまくんですから、皆なびいて来ます。今や、日本外交の金城湯池であったASEANもアフリカも全部中国にとられているんです。それなのに小泉さんは日本を国連安保理の常任理事国にすべきだと言って大使を130人も東京に集めて会議をやっている。こんなものがなんの役に立つんですか。常任理事国5カ国の一つである中国が反対し拒否権を発動されれば日本は入れないんです。それだけではなく本来なら日本を支持してくれたASEANとアフリカ諸国が全部中国になびいている。それでどうして常任理事国に当選できるんですか。
 その点、今の安倍晋三さんは、歴史観、国家観がちゃんとしているから、外交に関しては小泉さんよりはるかにいい判断が実は出来ていると思います。この辺は2割引きで聞いてくださいね(笑)。


参議院選挙に負けても政権を継続

 安倍内閣も最初はよかったんですが、いろいろなことがありました。掛川辺りにいらっしゃるおやさしい方もそうです。言ってはいけない事を言ったら政治家として失格です。あの発言は1月27日、私は菊川におりまして太田菊川市長の後援会で講演をやっていました。実は私の前に彼が話をすることになっていましたが、ドタキャンになったんです。それで他に行ってあの発言になったんです。こちらに来ていればよかったのに。そんな余計なことをやるからいけないと。
 でも、私は翌日にその話を聞いて総理の側近に電話しました。「小さいうちに手を打った方がいいですよ。これはでかい話になりますよ」と言ったんですが、総理に側近は「いや、もう駄目なんですよ。総理はもう抱えていくことを決めましたから」と。つまり1人でも切ってしまえば頂門の一針といいますか、堤防が一気に切れてしまって、周りが崩壊しかねないからこのまま行くと。どんなことがあっても参院選まで抱えていきますと。それで最初は70%余の支持率が今、3割台から4割前半になってしまいましたが、ここで下げ止まったと思います。それで仮にこれ以上下がることがあったとしたら30%というのがデッドラインです。これを割り込むと政権が危ないということです。30%は徳俵のようなものですが、そこまではいかないで40%前後でいければ、間違いなく7月の参議院選挙までこの態勢で行きます。わけの分からない新聞、テレビ、とくに政治評論家が「予算が上がったら内閣改造がある」「衆参同時選挙がある」「安倍晋三が政権を投げ出す」と言っていますが、そんな変わるわけがないじゃないですか。何でか。それはすべて総理の専権事項だからです。総理の専権事項なら総理に確認しろと。
  それはないんです。本人がちゃんと「ない」と言っていました。衆参同時選挙はまだよく分かりませんが、少なくとも交通事故に遭うとかテロに遭うとか、とんでもないことがない限りは、安倍政権はこのまま行きます。
 新聞に書いてない重要なことを一つ申し上げます。安倍総理は、実は参議院選挙は負けても辞める気はありません。片肺飛行になりますが、政権を継続します。本人がそういう決意を固めました。衆議院が3分の2を超えたという前提の下に参議院が減ってもこのまま行くと決断しました。これは私、はっきり申し上げます。このまま行くことを決めました。したがって参議院選挙は勝とうが負けようがこのまま行くんだということは、長期政権の可能性が高くなる。比較すればかつての佐藤内閣のようになる。全部やれば6年間ありますから、6年間の長期政権になる可能性があり、私は最終的には憲法改正まで突き進む可能性が非常に高いと、申し上げておきます。政治というのは日々変わるものですが、私がここで断言するには中途半端な情報で申し上げているのではありません。


参議院選挙は政権選択選挙ではない

 これから安倍政権はどうやっていこうかという話です。渡辺喜美君が行革担当大臣になりました。彼がやっている公務員制度の改革、公務員の天下りの問題です。これを徹底的にやると。法案が成立しても成立しなくてもどちらでもいいと。それで参議院選挙まで突っ走ると方針を決めています。したがって、これからどんなに役人が反対しようが、自民党員が反対しようが、どんなことをしてもまっすぐ行くというふうに言っておりました。
彼は、芯は強い。結構打たれ強いです。これがなかなかしたたかなところです。
 参議院選挙に負けたら小泉さんが又出てくるとかいろいろ言われていますが、それはないです。小泉総理が辞める1カ月前、私が幹事をやっていた会合に当時まだ総理だった小泉総理をお招きして2時間半飲みました。その間いろいろな話をしました。おっしゃった中で重要なことが2つあるんです。その1つは、まるめた言い方をしますと、自分が次の衆議院選挙に出ないと。次男が今ワシントンにいてなかなか優秀らしいんですが、これをどうも後継者にしたいらしいんです。話を戻すと、小泉さんは衆議院選挙に出るつもりはないとおっしゃっていました。2つ目が参議院選挙は政権選択選挙じゃないんだよ。だから参議院選挙で負けても政権の座を降りる必要はないんだと、去年9月におっしゃっていたんです。
 私はそのとき、「そんなことを言っても総理、参議院が過半数割れになれば片肺飛行になり、衆議院で可決された重要法案が参議院で否決されてしまうじゃないですか」と聞いたんですが、「違う。重要法案は衆議院に戻して3分の2あるんだからもう一度可決すればいいんだ」と。それ以外の法案がつぶされるようであれば、それはつぶした民主党や野党が責任を追及され、国民の非難はそちらに回るだろう。そんな責任はあちらにあり、そんなことは出来るわけがないという言い方をされていました。
 小泉さんならそうかなと思っていたんです。ところがこれはあるところで、小泉前総理と安倍総理、中川幹事長の3人の席でその話をされて確認をしていると聞いております。したがって、朝日新聞をはじめとする左翼マスコミは別として、それ以外の中立的、保守的なテレビ、新聞は安倍政権で行くんだという合意が大体できていますので、私はこの辺のところはこのまま行くんだと。ついては小泉さんの描いた絵柄に沿っていくのかなあと思うわけです。


今、安倍政権で何が起きているのか

 新聞が書いてない、今、安倍政権で何が起きているのかをお話します。一つは今、安倍政権の中で起きていることは路線対立なんです。安倍総理と幹事長の中川さんとの対立なんです。
 私なりの解釈で申し上げますと、安倍さんと中川さんとどう違うかというと、先ほどから申し上げているように安部晋三という人は、やはり保守本流なんです。私の解釈によれば、保守本流は貧しい方々、弱い方々も含めて皆で一緒に行こうという、そういう精神だと思うんですね。私はそういうふうに理解している。
 これに比べて私は小泉さんの評価はかなり厳しいんです。小泉さんは典型的な勝ち組政治だったんです。したがって社会のトップだとか企業のトップの人たちなどを優遇して、そういう人たちが頑張ることによって社会全体を底上げしようという考え方です。これは米国流の新自由主義といわれている考え方ですが、そういう人たちにどんどん頑張ってもらって税金をたくさん納めてもらうという考えです。
 それを受け継いでいるのが中川幹事長です。ですから中川さんは「上げ潮政策」というご本を出された。これに対して安倍総理は下の人たちも一緒に行こうじゃないかという自民党の伝統的な保守主義の考え方なんです。この辺の差というものがいろいろなところでチラチラと出る。
 実は安倍内閣の最初の人事で安倍さんの本音は平沼赳夫さんを幹事長にしたかったんです。でも平沼さんは復党しなかった。その次は麻生幹事長のつもりだったんです。ところが森喜朗さんからどうしても自分の腹心である中川を幹事長にしてやってくれと頼まれて、安倍さんが折れたんですね。これが小泉さんだったら引きはしないです。ある意味では安倍さんは優しい人なんです。だけど中川さんとはことあるごとにぶつかっている。
 一番支持率が下がった理由は郵政造反組の復党問題です。安倍総理の指示は「直ちに全員復党させろ」だったんです。それなのに中川さんが2カ月も引っ張った上に、現職の議員でありながら踏み絵まで踏ませたでしょう。あれで連日どんどん書かれるし、イメージがどんどん悪くなっていき、その上にご存知のように閣議の前には総理が入ってきたら立って一礼しましょうと。小学生じゃないですよ。あんな阿呆なことを言うから今や総理と幹事長の間がぜんぜん駄目です。


内閣改造は9月20日過ぎに

 私が聞いている範囲では、参議院選挙が終わっても、人事はすぐにやりません。9月20日過ぎです。なぜなら自民党の役員人事が9月30日に切れます。それに合わせて内閣改造をやります。そのとき安倍総理が一番替えたいのは中川幹事長。2番目に参議院の幹事長。そして全取っ替えです。安倍さんはやっと自前の人事が出来ると考えています。最初は配慮して、配慮して、いろいろなわけの分からない内閣人事や党人事になってしまっている。今度ばかりはやりたいようにやりたい。出来ることなら中川幹事長更迭、片山参議院幹事長更迭。それが出来るかどうかは分かりません。これはもう権力闘争ですから。
 幹事長の後任ですが、本当は平沼さんに戻って来てやって欲しいけれど、脳梗塞で倒れてお元気になるかどうか分からないので、やはり本命は麻生さんでしょう。本当は古賀誠という話もあったんですが、古賀さんが山崎さんと加藤さんにくっ付いて、新YKKとかいわれる方に行ってしまったから、したがって本命は麻生太郎さんに行くんだと思います。
 それから官房長官です。そもそも官房長官は総理大臣の女房役であり、内閣の大番頭と昔から言われているんです。サッカーで言えばキーパーなんです。総理に何かあったら自分の身を挺して守り、とにかく自分の後ろには行かせないというのが官房長官の役目です。彼は無茶苦茶にたたかれてもいいんですよ。でも塩崎さんは官房長官をスポーツで言えばラクビーだと思っている。受け取ったボールをぽっと後ろに回してしまいます。ぜんぜん自分のところで止めようという意思がないんです。
 ついでに言えば、もっと問題だと思うのは事務の官房副長官です。本来、事務の官房副長官というのは役人に対する目配り、力があるということで旧内務省系統の方が務めてきたんです。今の官房副長官は的場順三さん。旧大蔵省出身なんです。中曽根内閣のとき内閣審議室長、そのあと国土庁事務次官をやった後、民間に出て大和総研の理事長になり、16年間民間にいたんです。われわれでも16年も上の人って知りませんよ。16年間民間におられて役人の元締めである官房副長官になっても、案の定押さえができない。
 これからの安倍内閣が一番取り組まなければならないのは公務員改革なんです。この公務員改革は当然ながら財務省をトップとして役所側が徹底して抗戦しているわけです。自分たちの人事権を取られるわけですから。その筆頭が財務省です。だから的場副長官は、総理の方に立って戦わなければいけないのに、何とお役所側なんです。これでは駄目です。
 だから今度の内閣改造は全取っ替え内閣なんですね。ありとあらゆるものを全部入れ替えることになるんじゃないかと思います。もしこの公務員改革が上手くいけば渡辺喜美が官房長官の筆頭の候補なんです。


厳しい参院での与党の過半数維持

 参議院選挙はご存知の通り、7月5日に公示、20日投開票の予定です。与党が過半数を維持するためには非改選の議席と合わせて65取らなければいけないんです。自民、公明合わせて65議席取らなければ過半数を割り込むんだということが大前提です。そのうち公明党は13議席なんです。そうすると差し引き52議席を自民党が取らなければいけないんですね。もう一つ前提があるのは、統一地方選で福島と沖縄で参院補欠選挙が行われます。両方とも知事選に参議院議員が出たものですから、補欠選挙がある。このとき自民党が2つ取ってしまえば自民党は52議席ではなく50議席になるんです。だから最低でも自民党は50議席を取らないと過半数を割り込むんだということをご理解いただければいいと思います。
 ところがこの20年間の参議院選挙を見ていると自民党が50議席を超えたのは2001年7月、小泉政権が出来たときの小泉大ブームです。すごいブームで小泉さんが行くところ1万人、2万人が駅前を埋め尽くす。そういうときに自民党は64議席も取りましたが、これは例外中の例外なんです。
 3年後の前回選挙の時、小泉総理・総裁、安倍幹事長のとき自民党はなんと49議席、民主党は1議席上回る50議席を取ったんです。たった1議席ではないんです。この1議席が大きかったんです。比較第一党の政党は民主党であり、自民党ではなかったんです。この1議席が超えられない。つまり自民党の今の実力は40議席ぐらいがせいぜいなんです。
 振り返ってみて、あれだけ人気の高かった橋本内閣でも最後の最後の1週間で特別減税の発言がぶれたものですから44議席しか取れず、内閣総辞職しました。それ以外の選挙でも40議席台しか取れない。では今の安倍内閣で52、53議席取れるかというと、はっきり言って結構厳しい。
 いろいろな見方はありますが、概括的に言えば一番厳しいのが、今年は参院選と統一地方選挙が一緒になるのは12年に1回。イノシシ年というのは必ずダブるんです。その時は大体自民党は負ける。なぜかというと、市議選、県議会、県知事選挙で地方議員の皆さんは忙しい。自分の選挙が心配であまりなじみのない参院選はやらないのです。昨年は平成の大合併で以前は3300あった市町村が1100まで減った。議員もそれに伴って大きく減っているんです。そのうちの7割、8割は自民党議員です。彼らが本当は一番動く選挙運動員なんです。ですから自民党の力がかなり弱くなっている。この辺のことを考えると、自民党が厳しい状況にあるのは間違いありません。


比例と1人区が焦点

 参院選で一番重要なのは1人区です。今までは1人区は27選挙区あったんです。今回からは栃木と群馬が1人区になるので29ですが、これまでの27選挙区でみますと、小泉ブームで64議席取ったときは25勝2敗で、たった2つしか取りこぼしていない。3年前の選挙では14勝13敗で、1つしか勝っていないんです。つまりそれが響いたんです。1人区でいかに勝っていくかです。あと比例がありますから、比例は2000万票取れるかどうかの戦いです。3年前に自民党が負けたのも自民党が比例で1900万票台しか取れなかった。それに対して民主党は2100万票取っていたんです。
 比例と1人区が一番差が出るところなんですが、この辺のところが私は最大の焦点になると思っています。
 結論になりますが、私は与党が過半数からプラスマイナス5議席の範囲だろうと思っています。どちらか分かりません。大勝も大敗もないと思っています。マイナス5議席内であれば、国民新党とかミニ政党を自民党に引っ張り込むか、ないしは民主党にすでに手が入っています。その辺のところもあります。
 それで国会が閉幕するちょうど1カ月前の6月23日の時点で与党か野党のどちらに風が吹いているのか、その風の強さはどれくらいなのかを見極めれば、おおよそどちらか分かると思います。もっと厳密に言えば、投票日1週間前の7月15日、この時点でどうかです。




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