サンフロント21懇話会 静岡県東部地域の活性化を考える
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活動内容
平成18年度の活動方針

活動報告
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パネル討論
「富士 箱根 伊豆 広域連携による観光戦略」
パネル討論

◆コーディネーター
青山茂  ((株)シード取締役副社長)

◆パネリスト
宇田倭玖子 (白壁荘女将)
赤尾信幸  (ホテルニューアカオ社長、熱海市観光協会長)
赤尾十五郎  (伊豆観光推進協議会会長、東伊豆町観光協会長)
川辺ハルト  (きのくにや旅館代表取締役、芦ノ湖温泉旅館組合長、芦の湯観光協会長)

青山 従来の観光から健康、産業といったものがすべて観光となってしまった現在、観光戦略は点ではなく面として広域連携ということが全国的にも大きなテーマになってきています。例えば、北海道では中国をターゲットにした中国の観光ミッション連絡会議ですとか、東北6県、北陸3県、そして関西、九州などさまざまな広域連携のための枠組みが出来上がり、活動を始めています。実際に静岡、神奈川、山梨県に関しましても3県主導で富士箱根伊豆国際観光テーマ地区協議会が一つ活動しています。この協議会は平成19年5月に外客来訪促進計画を策定しています。それから市町村主導では富士箱根伊豆交流圏ネットワーク会議が組織され、各市町によるサミット会議が平成17年からすでに7回開催されており、さまざまな意見集約が行われてきているわけです。
 行政主導の広域連携の枠組みはある程度出来上がってきているかと思いますが、今回は民間からそうそうたる論客を4名お招きしまして広域連携で何が出来るか、何が課題か、そしてその課題を解決していくためにはどんな方向がよいのかというところを浮かび上がらせていけたらと思っています。それではレディーファーストでまず宇田さん、「THE OKAMI」の会の活動ですとか、新しい観光素材の掘り起こしなどをされておりますが、ご自身の取り組み、広域連携に対する考え方についてお願いできますか。


着物を着ながら海外プロモーションに

宇田 天城山のふもと、元天城湯ヶ島町、今は伊豆市湯ヶ島から参りました白壁荘の女将、宇田でございます。私どもの活動は日本旅館の文化を踏まえた女将さんの文化を世界に発信するということで、伊豆半島が連携しながら女将さんが集まりまして、観光プロモーションを行うという組織です。それが「THE OKAMI」という組織なんですが、横文字を背負いながらこの4年間、政府、マスコミ主催の各種イベントのモニターツアーを仕立てまして、外国人誘客を積極的にプロモートして参りました。ここ1年ぐらいはそれぞれのお宿のスタイルで、研修体験だとか、女将さんのお茶とかお花とか、そういう文化的な面でプロモーションして参りましたが、観光客が伊豆の中で循環してくれるような仕組みをつくりたいと思って各地域の女将さんと連携しているわけです。
 女将さんたちも地元の食材を使いながら、地域の人と連携しながら自分達のお宿も成り立っていくという考え方のもとに活動をしております。今、世界に誇れる日本固有の旅館文化も外資の力も入ったりして、一部破壊されたりしておりますが、女将さんたちのネットワークで一生懸命がんばろう、日本文化も一生懸命発信しようということで、着物を着ながら海外プロモーションにも出ております。先月はタイとか杭州にも行って参りました。
 やはり1軒ではなくて、伊豆が一体となって、それから食の文化でも箱根と一体となってブランド化していきながら自分達の商品構成をしていきたいと思っています。今後は伊豆それぞれの地域、合併後の地域でもありますが、やはり伊豆という一体化は私たち、国際観光には欠かせないものであると思っております。

お琴で迎えるウエルカムコンサートが好評

青山 続きまして赤尾(信)さん、熱海市観光協会長であり、ホテルニューアカオの経営者としてご自身の取り組み、広域連携に対するお考えについてお願いします。

赤尾信幸 氏

赤尾信幸氏
赤尾(信)  私どもが取り組んでおりますインバウンド(訪日外国人旅行)のツアーですが、先ほど話がありましたように海外といっても東アジアが中心になっており、台湾、韓国、香港、そして中国といろいろな国々からツアーにお出でいただいております。国によって非常に旅行の形態が違っていまして、韓国のお客様はどちらかといいますといろいろの視察であったり、表彰であったり、褒賞であったり、そういう形での旅行が非常に多い。台湾はカップルとかファミリーでご旅行に来られる。中国は、熱海はなかなか誘客活動が上手にいっておりませんので行政視察が中心で、民間のツアーはまだ入ってきていません。香港はFITという個人旅行のお客様が多くお出でいただいているのが現状です。
 私どもの創業者が30年前に女子社員に花嫁修業としてお茶とお琴を習ってもらうことを始めましたので、ロビーでたまに演奏会などをやっていたんですが、10年前にたまたまドイツのツアーが来られて、和服を着てお琴を演奏しているのにびっくりしまして、生の演奏を熱海に来て聞かせてもらえるとは思わなかったと大感激をいただきました。そんなことで7年ほど前からインバウンドのツアーを受け始めているんですが、女子社員が和服を着てお琴でお迎えするウエルカムコンサートが非常に喜んでいただいております。外国に行きましてもバリ島ではどこのホテルでもガムランという音楽で迎えてくれますし、ハワイではハワインアン、メキシコに行けばマリアッチというような形で、それぞれの国の一つの文化を使って外国から来たお客様をもてなしてくれる。こういうことは非常に大切なことではないか。そんなことで会社の中にインバウンド推進委員会をつくり、毎月1回定例会を開くような状況です。
 観光協会自体の取り組みとしましていろいろなイベントがたくさん熱海ではあるんですが、そのイベントにすべての予算を使ってしまって広告宣伝が行き届かないことが現実問題でして、やはりPRにもっと力を入れていかなければいけないと思っています。
 熱海には250人の芸子衆がおりまして、芸子さんの踊りを年に毎週土、日曜日、100回行っているわけですが、すべて踊りの方に費やしてしまって、そういうことが知れ渡っていない。何とかもっと広告、宣伝、PR活動に力を入れられないか。是非これからは外国のメディアに対してもPR活動を実施していきたいと考えております。

皆さんと一生懸命、模索している最中

青山 赤尾十五郎さん、伊豆観光推進協議会会長として来ていただいておりますので協議会の紹介と広域連携に対するお考えについてお話しいただけますか。

赤尾(十) 伊豆観光推進協議会は伊豆半島全部の観光協会を網羅したものでして、伊豆は一つという大義をどういうふうにまとめていくか。これが一番問題だと思います。一つの成果として最近完成しました伊豆ナンバーがあります。伊豆のPRをどういうふうにしていくかですが、この伊豆ナンバーの車が他県に行ってPRするのも結構。またお客様が伊豆に来て、伊豆というナンバーが随分走っているなということだけでも大きなPRになるんじゃないか。静かに進行していく効果が徐々に現れてくると思います。
 伊豆観光推進協議会としても何かこういうふうなものに見合った、一つ一つの観光地では出来ないことをまとめていくというと大袈裟になりますが、何かそれを形づくっていくようなことをしていくべきだなと考えております。その方法がどういう形がいいのか、役員の皆さんと一生懸命、模索している最中です。
 日本の有数の国立公園である富士箱根伊豆というものが地図を見れば一目瞭然で決まっているわけですから、それをどういうふうに強力な集客ゾーンとして仕上げていくのか。まとめていくのか。これは大勢の意見を聞きながら、静岡県と神奈川県という考え方ではなく隣同士の中でやっていくのかなと思います。まずは一旦原点に戻って足元を見つめてもう1回考え直すということが大事かなと思います。
 私どもで一つ考えているのが、各地区がそれぞれ研究し、資料も作っています。そういうものを一つ網羅し、伊豆遺産という形で一つの資料を考えております。役員会にかける前に一つテスト版を作って、それを役員会にかけて皆さんからいろいろな意見を聞く。そんなことで、まずは一つ動き出してみようということで、今進めております。

すべてにおいて情報の隔たりがあることが一番の問題

川辺ハルト氏

川辺ハルト氏
青山 それでは神奈川県代表といいますか、川辺さんは、実は三島、沼津と連携の実績を積み重ねられてきた方で、そういったことの紹介を兼ねて広域連携に対するお考えをいただけますか。

川辺 お招きいただきましてありがとうございます。神奈川県では皆さんの張り詰めたような感じというのはないですね。本当に静岡県の皆さんはご熱心だと感服しております。
 まず私ですが、標高850メートル、芦の湯というところから来ました。箱根駅伝がギアチェンジする一番高いところです。ですから冬はマイナス17度から20度と寒すぎるので三島、沼津のネオンの灯りがちょっと恋しくて16年前ぐらいから来ており、結構交友が深いんです。私は12代目ということでして、9代目までは大金持ちでした。なぜ大金持ちかといいますと、江戸から西国に行く時に明日が関所越えだという前日、温泉の湧いている宿はうちしかなかったんです。関所は今で言えば韓国の38度線です。そのぐらいの緊迫感があって、西国と東国のいろいろなものが流通していました。
 そして東京オリンピックが境目でモノの流通が変わってしまいました。それまでは毎日、うちの前の国道1号線を大型トラックがワンワン走っていたのが、新幹線、東名になって急になくなったんです。それと同時に三島と関東の神奈川の一番端っこの芦ノ湖周辺というのは縁が切れてしまったんです。この40年間の隔たりの深さというものはすごいです。つまり神奈川県は関東、静岡県は東海で、関東と東海というと販売エリアが違います。10年ぐらい前から箱根町観光協会の全山誘客宣伝委員長をやっていて5000万円の誘客対策費を使って宣伝していますが、その情報は三島には来ません。当然JR東海とJR東日本もそうです。すべてにおいて情報の隔たりがあることが一番の大きな問題だと思っています。
 箱根はどちらかといえばアンテナショップです。例えばインバウンドがいの一番に来るのが箱根です。ホテル小涌園さんとか藤田グループなど大手の方々のインバウンドの団体旅行はものすごく多いです。今日も芦ノ湖には団体のバスがいっぱいでしたが、中小の旅館にはそれは関係のない世界です。何も外国人だけじゃないです。昭和の旅行がマスツーリズムになっていく過程においてもこういうことは当然ありました。ですからわれわれは別に焦ってはいないです。つまり今は積極的な待ちの状態ということで、特に湖畔地域においては当日に旅館の半分ぐらいは外国人のFIT(free individual traveler)、個人旅行がインターネットで入ってくるということは多々あると思います。

青山 箱根といいますと、当然東京の方を向いてというスタンスでわれわれは考えているわけですが、川辺さんの場合は静岡の方、西を向いているというようなご活動をされていらっしゃいますので、その辺をご紹介いただけますか。

川辺 箱根はとにかく老舗の観光地で昔からいろいろとお偉いさんが、大隈重信さんとか福沢諭吉さんが箱根の観光開発に積極的に乗り出してきました。それは外国の要人を連れて行くのに箱根がいいからということです。ですから国道1号線を一生懸命つくったり、ケーブルカーや大涌谷の温泉開発をやったと。今、静岡県は積極的に攻めの姿勢ですが、こちらはもうどちらかというと待ちの姿勢がずっと続いてきてしまったんです。例えば大型のコンベンションビューローとかありますが、それで箱根がどうのこうのということは一切ありません。やはり大手の旅館、施設にはかなわないということですね。箱根でもいろいろありますが、湯元や下の地域は今でもロマンスカーを中心とした周遊的な観光が基本です。ただ芦ノ湖はこちらも向いています。私も三島の観光協会さんや市役所さんにお世話になっていますが、そのつながりで三島の駅長さんを紹介していただいて去年、JR東海さんが初めて歩け歩けで、三島で降りて箱根に来てくれたんです。そのとき、僕が駅長さんに言ったのは芦ノ湖は三島の観光資源で、京都でいったら宝ヶ池だと思ってくださいと。そういう立地条件だったらお互いに上手くいくんじゃないですかと。今度も4月にまた内定させていただいており、本当に芦ノ湖地区はこちらを向いておりますので、よろしくお願いします。

個人旅行社に情報を伝えることが大切

青山茂氏

青山茂氏
青山 皆さん、広域連携の重要さに関しては異存のないところかと思います。現実の話として将来に向かって広域連携を生かして、そのメリットを引き出していくためにどんなことが課題であろうか。皆様からご意見をいただきたいと思います。

赤尾(信) 先ほどJTBの高橋部長からいろいろ富士山静岡空港の話が出まして、今後の可能性として非常にこの持つ意味は大きいものがあると思います。一つ一つの町の事情を見ていきますと、情報を外国の個人のお客様にも伝えていくようなシステムをつくっていくことが大切だと思います。とくに外国の方は一ヵ所に滞在するのではないんです。広域のいろいろな情報を取りたいと思います。そういう点でインターネットの情報、その情報のインフラを一つ一つきちんと整備していくことが非常に大切であり、駅、ホテル、その他観光施設などいろいろなところで気楽に利用できるようにしていく仕組みが必要になってくると思います。

青山 実際にターゲットとしてはFITという個人旅行客が本筋であろうと思います。ただFITの場合は情報をどう彼らに伝えていくか。その仕組みというものが日本に来る前と来てからの両方、インフラ的にも情報発信の仕組みとしても必要ではないかと思います。個人へどうやって情報を届けるか。そうなった場合に広域連携の中の枠組み、やはり行政と共同プロモーション的なものが非常に重要かなと思いますが、赤尾さん、いかがですか。

赤尾(信) 民間だけではなかなか出来ない。とくに先ほど話がありました交通関係のサインなどはどうしても行政の力を借りなければいけないと思います。そのほかに広域な、いろいろな意味でのフリーパスのようなシステムですね。この辺が箱根は非常に上手く出来ているんですが、伊豆の方はなかなか上手く充実していない。関西では京都を含めて交通機関などいろいろなものが入って広域なフリーパスのシステムが出来ているわけですが、そういうシステムを作り上げていくということが大事なことではないか。民間だけでは出来ないので、官民一体になって仕組みづくりを作っていくことも大切ではないかなと思います。

伊豆にコンベンションビューローを

宇田 私たちは海外プロモーションをこの4年間にわたってかなりやってきました。そして海外の取材記者の方たちも誘客しながら、伊豆半島に足りないものをアンケート調査し行政の方々に結果を上げていきました。それによりますと日本で快適な滞在をするために必要なものは、1番目にフリーパス券があると楽ですね。こんなに乗り換えがあったら私たちは小銭をいくら持っていても足りませんということです。次にハード面ですが、外国語対応のドライバー付き車両、空港もそうなんですが、いろいろなところでハード面での対応が必要だということです。3番目、高品質のガイド、スタッフサービス、ツアーガイド、それからお金持ちが新幹線に乗ってきた場合、荷物を運んでくれるポーターがいない。4番目はもっとソフトの面で外国人が要望している文化体験プログラムの提供が必要であるということ。5番目には空港から来た時、オンラインと各地の空港カウンターサービスの連携が、荷物もそうなんですが、やはりポーターも必要だし、連携プレーが必要じゃないかということを伺いました。6番目が空港でのコンシェルジュサービス。もうちょっと具体的にソフトな感じで動いてくれるコンシェルジュが必要だということを言われました。
 やはり情報の共有化のコンベンション施設が私たち伊豆には必要じゃないかなとつくづく思っていますので、半島全体のプロモーションをやっていこうといったときに是非お願いしたいと思うのは、大型コンベンションビューローは神奈川県にありますが、伊豆半島には情報、教育の場所がないというのが実感としてありますので是非欲しいなと思っております。

大事なのはやはり伊豆縦貫道

赤尾十五郎氏

赤尾十五郎氏
青山 伊豆は一つというのは白壁荘の先代が語られた言葉だそうです。そういう意味で伊豆として情報を共有して、かつ発信していく観光コンベンションビューロー的なものが必要であると。となると赤尾十五郎さんに対する期待が非常に大きくなるかと思うんですが、赤尾さん、箱根と伊豆を結ぶためにはなにが一番の課題だと思っていらっしゃいますか。

赤尾(十) 道路問題がかなり大事じゃないでしょうか。伊豆半島の地図を見ますと箱根と伊豆を結んでいるのは135号線とか伊豆スカイラインとかありますが、その中でやはり走りやすい道路をもう一度よく見直すことが大切かなと思います。135号線がすごく渋滞しますと伊豆関係は痛手になるわけです。ですから僕が東伊豆町観光協会長という立場で5、6年前から伊豆スカイラインの無料化を押し進めてきたんです。まだ結果には至らないんですが、今度は伊豆観光推進協議会という、立場がちょっと大きくなってみますと伊豆半島で大事なのはやはり伊豆縦貫道がトップになるだろうと。それを早く押し進めていくこと、そうすればビューローの件にしても、そういうものが生きてくるんではないかなと思います。各地域それぞれが本気で努力してやっているわけですが、それをいかに線としてつなげていくかというと、やはり道路の問題、それから少しでも渋滞を軽くするということ、道路標識の問題なんかも大分古く出来た地域の標識は比較的地域の名前とかが多いんですが、今のように遠くからもどんどんマイカーで来るような状態ですとかなり遠くまで指したような道路標識があれば、それだけでも渋滞が多少でも緩和されるのかなと思います。

互いの利害をきちっとはかることが大事

青山 川辺さん、情報遮断ですが、言ってみれば三島と箱根というのはくっついているのにも関わらず三島の情報は箱根には入ってこない。それはどうやって民間サイドでは解決していけばいいだろうか。そのほかの課題についてもどういったところから始めたらいいんだろかということをお聞きしたいと思うんですが。

川辺 もうやれることはやってきたということです。平成16年にうちの裏山の湯の花沢が台風で崩落して温泉が出なくなって、箱根は温泉が全滅だなんてテレビが言ってしまったりして、もう10月はキャンセルがダーッと出てしまったんですね。それで地元の旅館組合でどうしようと。じゃあ、足りないところに温泉を配ってでも温泉をやろうと、急きょ、小田原保健所に温泉の配送許可を貰ってみんなで温泉を配送しました。配送してみて、これ配送できるんだと。じゃあ足湯をやろうよと、そういったところに、たまたま三島からお電話で大社祭りでやってくれませんかということで三島に行ったら今度は三島のお年寄りの方が、昔は良く箱根に行ったけれど今は足が不自由で行けないんだよと言われて、「そうだね。うちで待っているだけが商売じゃないんだな」と。これを三島に持ってきて硫黄泉のいい臭いをプンと出すことがこれからのうちの温泉のやり方なんだなということにはっと気がつきまして、その後すぐ三島の市役所さんと共同で箱根と三島の双方の観光資源を出し合って、それで作ったと。やはり互いの利害をきちっとはかることが大事だと思うんですね。
 あと観光地に大事なのは観光経済だと思っているんです。要するに経済力のない観光地というのは絶対に上手くいかないです。やはりイベント一つ開くんでも箱根の人口は10年前は2万人あったんですが、今は1万人なんですね。1万人でいろいろなイベントをやって、この間も関所の大名行列をやりましたが、何とかかき集めて100人です。ということは1%ですよ。この間、山中城址のお祭りを見させていただきましたが、1000人単位でやっていましたよね。三島の人口を聞いたら10万人だというじゃないですか。やはり経済力ってすごいんだなと思いました。箱根って国際観光地と言われているけれどお医者さんはどうなっているか。医療体制はぜんぜん駄目ですね。1万人ですから。それからなんといっても外国為替が出来ないです。外国為替はどこだと言ったら、静銀さんとか、そういうところで口座を開くというけれど県境がまた邪魔をしてしまうんです。「神奈川県ですか。駄目です」と。こういうことが結構あります。ですからいかに県境というイメージを取り払っていただいて、なおかつお互いの経済を補完して、共通項を見出して利害を見出してやればうまくいくっていうのはあると思います。

広域連携は可能か
 

宇田倭玖子氏

宇田倭玖子氏
青山  たまたまテレビを見ていましたら、群馬県で一泊目の旅館が二泊目の旅館へのお客の受け渡しのコーディネートをしっかりやる。例えば二泊目のチェックインというのは一泊目のところからデータが行っておりますので、サインをするだけ。一泊目で苦手な食材があった場合、連絡が行って二泊目では出ない。荷物は旅館から旅館へと配送されると。実際にそれを利用されたお客様の感想がありましたが、何の心配もなく旅行をリラックスできたということで、これが連携の長所であろうと。宇田さん、例えば川辺さんのところとそういった連携は可能なんでしょうか。

宇田 実際に女将さんたちは伊豆半島中でやっております。新世紀創造祭のときに、5年前ですか、そのときに荷物を宅急便にお願いして宿泊所から宿泊所へというルートを作ったんですが、立ち消えになっておりまして、それをまたちゃんとしたものにつなげたらいいなと思っています。それはすぐに出来ることですし、ホテルも旅館も同じ宿泊業ですのでそのメッセージはホットラインで、メールでも何でもつなげていけるんじゃないかと思います。

青山 川辺さん、いかがですか。

川辺 現実的な話になってしまいますが、よく旅行会社さんでもこういう話が出るんですが、伊豆をどういうふうに外国に売るかといったときに、是非ですね、箱根の芦ノ湖の冬の雪景色で富士山が写っている写真を借景として使っていただきたいんですね。そういう意味での連携というのは幾らでも出来るんですよ。

青山 県境を超えて、先ほどコンベンションビューローという話もありましたが、そういった橋渡しをしていくブリッジ役として伊豆観光推進協議会の一つの大きな役割になっていくのかなあと思うんですが、赤尾さん、いかがですか。

赤尾(十) 聞いていまして本当に大事だと思いますね。早速、そういうものがどういう形で可能なのか、すぐやってみたいと思います。

大切なワンカットの写真

青山 共通して皆さんから出たのはPRということです。PRというのは要するにプロモーション、情報を発信していくことだと思いますが、それは民で出来ること、官で出来ることがあると思いますが、とにかくプロモーションとして、どういうプロモーションをすべきか。一言ずついただけますか。

赤尾(信) 外国のメディアにしっかりと情報を発信していくことも大切だと思いますし、インターネット、ホームページのようなものを日本語だけではなくて、いろいろな国の言葉に翻訳してきちっとしたものを流していくということが大切だと思います。また、インバウンドのお客様がお出でいただけるようなホテルではCS放送のようなものを取り入れていくことが大切ではないかと思います。実は私ども英語は当然として韓国語と中国語の放送を入れてみたら、何と韓国語の放送を韓国の方が見るだけでなく日本人の観光客が見て韓国語の放送が非常に面白かったとアンケートに書かれていたり、意外なプラスアルファもあったということです。

赤尾(十) 僕らの場合は国内に向けてのプロモーションをどうするか、ということを考えていきます。具体的にはどうしたらいいんだということを、もうちょっと若い頭で考えないと分かりにくい気がしますので、もう少し皆さんの意見を聞いてみたいと思います。

川辺 皆さん、若い時、兼高かおる世界の旅ってご覧になったですね。私もドイツのノイシュバンシュタイン城ですか、あの写真がきれいで、あれにあこがれてドイツまで行きましたよ。25歳の時に。イメージってあると思うんですね。外国人が日本に抱くイメージって。その1枚、ワンカットの写真が世界中に一人歩きすればいいと私は思っています。その意味で先ほど申し上げた冬の芦ノ湖の写真などはいかがでしょうか。雪景色というのは台湾の人もあこがれます。中国の人たちは川端康成など純文学にあこがれていますよ。牧歌的で本当に純粋思考の人たちって中国ではまだまだ結構メジャーです。そういう人たちに本当に伊豆の踊り子を訴える。そういう原点のことが一番海外から求められるのではないでしょうか。失われていったものの価値の再発見を考えないと駄目だと思います。

宇田 皆さん、当たり前に思っている伊豆半島の観光資源ってよそにないものが結構あるんです。それをもう1回見直してみてください。そうしてブランド化すると具体的な商品になっていくと思います。

<会場と>
豊富な発地型フリーパス

青山 折角ですから会場ともやり取りしながら進めていきたいと思います。どなたかいらっしゃいますか。

会場1 東海バスの石井と申します。先ほどフリーパス券のことが触れられておりましたが、伊豆半島の場合、箱根と違って非常に広域でして、とくにJRさんとの提携切符が多く、フリーパスはあります。こだま号と伊豆半島の伊豆箱根鉄道さん、私どもの東海バスを全部網羅した伊豆フリー切符というのがあります。おもにJR東海が発売しておりますが、これは民営化によりまして東日本と東海と分かれてから東日本の方は特に踊り子号を中心に売りたいということで、南伊豆踊り子切符を東海岸、伊東から伊豆急行さん全線と、伊豆南部のバス全線乗り放題という切符がありまして、これが今圧倒的に売れております。特別に伊東の場合は伊東市内全域の、これはJRさんとバスとくっつけた形ですが、伊東観光フリーパス、または伊豆高原フリーパス、それから中伊豆に行きますと伊豆箱根さんと連動しました中伊豆フリーパス、西伊豆フリーパス。バス単独では天城フリーパス。こういうブロック別のフリーパスもたくさんあります。いわゆる発地型のフリーパスになっていますが、伊豆全域を自由に乗り降りできる切符はありますので、是非みなさん方も認識していただいて何らかの形で宣伝に努めていただきたいと思います。

青山 JTBの高橋部長、今のような発地と着地の情報ギャップといいますか、そういうのは何かしら解決の方法があるのでしょうか。

会場2 高橋です。発地の立場で申し上げますと、箱根、伊豆についても商品造成はしているということです。箱根のフリーパスの場合は小田原発着も販売できますし、東京発着もできます。伊豆の場合は東京発着しか現在は販売していないんです。この違いがありますので、今後商品造成の中で例えば企画旅行商品を使わないお客様が現地に見えた場合、現地で購入できるような販売体制もこれからは必要かなと思います。

青山 ありがとうございます。もうおひと方、お願いします。実際に官の立場で連携に関わった三島市の芦川さん、どうぞ。

会場3 三島の芦川です。川辺さんがおっしゃった通りで、出来ることからやり始めたということだと思います。お話を伺っていましてインバウンドの観点から、それから国内旅行の観点から、突き詰めていくと自分の身近にある観光資源というか、魅力的なものをどう見つけ出して、宣伝するのかというのは一番のポイントだと受け止めさせていただいたことが一つと、最後の方で外国のお客さん向けに魅力あるものというのと、これから国内で観光しようと思う動機になるような大きな魅力が、ひょっとしたら同じところにあるのかもしれないなと感じました。それは日本らしさそのものとか、古い歴史とか文化とか、地域らしさというんでしょうか。その二つは実はここにいらっしゃる皆さんがお持ちになっている原風景であるとか、自分の子どもの頃に見た日本の風景であったりとか、各地区によって少しずつ違うようなものを三島としましては探しながら、こんないいところがあります。こんなふうに面白かったです。身近なところで面白いものがありましたというようなことを、お隣の芦ノ湖さんと共同で宣伝をするような手法を展開していきたいなと考えています。

まとめ

青山 ありがとうございます。広域連携ですが、インバウンドに関しては新しい需要を掘り起こすという意味で富士山静岡空港をいかにビッグチャンスとしてとらえていけるかということが一つあるかと思います。そして民間サイドとしてはとにかく出来ることからやっていくと。その前提としてまず情報が行き交うこと、県境を超えて、発地、着地を超えて、情報が行きかう仕組みをつくっていくということが大切であり、出来ることから始めようというスタンスに立って、その中でも出来ること、今では出来ないこと、切り分けながらとにかく具体的に一つ一つ、そして民間ならではのスピード感を持って進めていくことの重要さ。そしてもう一つはPR、とくにインバウンドを考えた場合には海外のメディアにいかに露出していくか。それは富士、箱根、伊豆はこの1枚の絵ですと言い切れるぐらいのきちっとした明確なイメージ訴求が前提になってくるということだろうと思います。


< 略 歴 >

青山 茂 (あおやま・しげる)
早稲田大学法学部卒業。(株)オリエンタルランドを経て、現在(株)シード取締役副社長。日本航空民営化イベント「NewJALレセプション」、第10回全国スポーツレクリエーション祭「スポレクおきなわ」、栃木、群馬、沖縄の観光誘客プロモーション事業、九州沖縄サミット関連事業などをプロデュース。県内では伊豆新世紀創造祭、第15回海の祭典しずおか、東海道四百年祭などに参画。サンフロント21懇話会のシンクタンクTESSの研究員として研究・提言活動をサポート。

宇田 倭玖子 (うだ・いくこ)
伊豆市(旧中伊豆町)に生まれ、短大卒業後、旧中伊豆町役場に勤務する。1980年白壁荘に嫁ぎ、文化人でもあった先代の遺志を夫と共に引き継ぎ、家業の日本旅館の女将として修行する。また、地場産品の山葵を活かした料理研究に力を入れる。1999年地域産物と観光を考える会「山葵倶楽部」を立ち上げると共に、伊豆地域への外国人観光客誘致に向け2003年、伊豆一円の旅館女将による「THE OKAMI」の会を立ち上げ、会長に就任。伊豆観光の国際化に奔走している。52歳。

赤尾 信幸 (あかお・のぶゆき)
熱海市生まれ。1974年青山学院大学経済学部卒業。1976年株式会社ホテルニューアカオ入社。1988年同社代表取締役社長就任。現在、主な公職として熱海市観光協会長。55歳。

赤尾 十五郎 (あかお・じゅうごろう)
1968年稲取温泉旅館協同組合副組合長。1975年同組合長。1991年東伊豆ライオンズクラブ会長。1995年稲取観光協会長、東伊豆町観光協会副会長。1996年稲取環境基盤整備推進協議会会長。2002年より東伊豆町観光協会長、東伊豆町産業団体連絡会会長。2007年より伊豆観光推進協議会会長。現在に至る。73歳。

川辺 ハルト (かわべ・はると)
箱根芦之湯きのくにや旅館12代目。大学を卒業後、家業に戻るのを拒否しロックバンドでLPデビューするも早速にバンドが解散、家業に就く。13年前より11代目他界により社長に就任。他の役職として、箱根ロータリークラブパスト会長、トップツアー箱根湯河原支部長、箱根音楽大賞副実行委員長。趣味は働くこと(DIY)、遊ぶこと(飲んで歌ってギターを弾く)。52歳。



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